iPad 活用法                                  


まず色んな辞書が持ち歩けます:
   Petit Robert
  『小学館ロベール仏和大辞典』
  『大辞林』
       (「『大辞林』に出会って『広辞苑』と別れる」参照)
  『リーダーズ英和辞典第2版』
   辞書ではないが Le Monde 閲覧アプリ
などなど。

他の活用法にいく前にひと言申しますが、iPad を手にすると、不思議と事前に想定していなかった使い道が見えてきます。購入の際には、くれぐれも容量に余裕を持たせることをお勧めします。
 そもそも私が iPad4 を買ったのは、自分の単語帳を全部持ち出せると気付いたからで、ケチってそれに必要最低限の 16GB を買いました (「iPad と WiMAX」)。ところがいざ使ってみると、パソコン同様、アプリ次第で何でもできる。Le Monde 閲覧アプリも、自宅のデスクトップ iMac で同紙の pdf ファイルを拡大・スクロールしているより遥かに読み易い。しかも毎日ダウンロードして行くと、結構空き容量が減っていく… というようなわけで、音楽・動画の類を一切入れなくても 16GB ではじきに足りなくなります。以下、辞書以外の使い方の例をご紹介しますが、飽くまで頭の固い私が思い付いたことであって、可能性は無限にあるとお考えになった方が宜しい。

1)電子書籍アプリ iBooks。私も本を読むなら紙の本と決めてかかっていましたが、手元に iPad がある以上、iBooks でストアも覗いてみる。すると漱石の小説から新刊のものまでかなりの選択肢があり、八重洲ブックセンターとは言わぬまでも、それなりの規模の書店に行ったのと同じです。しかもどの本にもサンプルが付いていて、数ページは立ち読みができる。立ち読みするとつい買いたくなる。普通、紙の本より少しは安いので尚更です。フランス文学の古典も検索すれば出てきて、しかも大抵は無料で入手できます。恥ずかしながら、既に La Fontaine, Racine, Diderot, Balzac, Maupassant 等の全集をダウンロードしました。ほんとは古典を読まなきゃいけないのに、ちっとも読まない疚しさから、無料と見るとついダウンロードしてしまうのです。字の大きさなども自由に設定できるし、取り敢えず手元に置いておけば、どうしても暇で困った時に開いてみる気になるかも知れません… もっとも古典を幾ら入れても、本棚に並べて悦に入る楽しみは無いし、枕の代りにさえならないところは、紙の本に負けます。
 古典と言えば先日、あるシンポジウムで日本人発表者の一人がルソーの一節を引用しました。それも和訳の方を引用したので、通訳は仏語に戻さねばならない。でも私が時間を掛けて仏訳したって、ルソーの文章とは掛け離れた代物になるは必定。頭を抱えた末に iBooks のストアで全集を入手して検索することを思い付いた。実際、ルソーの全集も出ていて、只ではないが 250 円。準備のために何かの資料をコピーするより安い。購入して、発表者がキーワードだけ元の仏語を示してあったのを検索したところ、あっという間に引用箇所が出てきました。

2)自分の作成した分野毎の単語帳を全部持ち出せます。しかもパソコンを開いて見るより、遥かにスペースを取らない。勿論、私の自家製単語帳 (「自家製単語帳を順次公開」) をダウンロードなさるようにと申しているわけではありません。単語帳は、自分で作ったものが一番です。その作成法については項目「テーマの理解に役立つ単語帳作成法」をご覧下さい。
 その時々の仕事に合わせた単語帳は、現場で色々書き込む必要があるので、やはり紙で持って行きますが、もっと一般的なものとか医学・生物学などの単語帳が予想外に必要となることもあります。手持ちの単語帳を全部携帯できれば便利です。最近はワープロソフトで作成した文書を pdf 化できますから、全て iPad に入れられます。

3)クライアントが参考資料として送ってくれたものは、途中で一瞥できるように、そしてちゃんと目を通してあるとクライアントに感じてもらうため、プリントして持参していたのですが、全部持つと結構重いこともある。それが iPad 一台で済む上に、インク代も節約できます。pdf 文書ばかりでなく、パワーポイントやワード文書もメールで送っておけば、添付ファイルとして見られます。pptファイルは、pdf 化して iPad に入れればスライドとして見られます。その後、Office の iPad 版も出ました。

   .....

総じて、編集等の作業をする積りが無く、目を通すだけで良いものは全てiPadで用が足ります。

ここで iPad 版 Petit Robert の宣伝を少ししますと、『小学館ロベール』は基本的に Petit Robert を包含した上で専門用語等を加えたようですが、1988年に出版されて以来、改定版が出ていないようです。というわけで、Petit Robert には『小学館ロベール』には見当らない表現が色々入っています。私が気付いたものを幾つか挙げますと:

demi-teinte の言わば成句として、
   en demi-teinte : mélangé, incertain, peu affirmé. Bilan en demi-teinte, ni bon ni mauvais.

parachute の用例として、
   parachute doré : indemnité de départ négociée par un dirigeant qui accepte de démissionner, qui est écarté.

people
   Presse, magazine people, qui traite des vedettes, des personnalités (notamment de leur vie privée).
   Célébrités dont il est question dans ces médias.

sexy 日本語と同じ意味の他に、
   Plaisant, attrayant (hors du contexte sexuel). Une nouvelle maquette sexy.

追伸。これだけiPadの便利さを宣伝した以上、そのリスクについてもお伝えせねばなりません。と申しますのは、アプリ『南山堂医学辞典19』を持っているのですが、iOS 11にアップデートした途端、使えなくなった。販売元のロゴヴィスタに問い合わせたところ、こんな回答です:

「弊社製品をご利用いただきありがとうございます。
ロゴヴィスタサポートセンターでございます。

お問い合わせいただきました内容につきまして
恐れ入りますが、「南山堂医学大辞典19版」はサポート期間が終了しており、 iOS9以降動作保証外とさせていただいております。
そのため、iOS11への対応予定はございません。

また、iOSアプリの販売はApple様側で管理されているため、
旧版をお持ちのユーザ様限定で割引等を行うことができません。
恐れ入りますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

ご確認のほどよろしくお願いいたします」

ふざけてると思いません? 19版だって18,000円前後払っているのです。それなのに、勝手にサポートを止めておいてアップデートの特別料金など一切提供せず、この辞典を使いたければ20版をまた18,800円払って買えと言うのです。医者ばかり相手にしていて、金銭感覚が鈍くなっているのじゃなかろうか。

ちなみに『ステッドマン医学大辞典 改訂第6版』は、ちゃんと無料でiOS11に対応しました。