葡萄の搾りかす

 ブドウの搾りかすをどうしているかであるが、各ワイナリーでは自社畑などで一箇所にまとめて捨てるところが多いようである。夏場はかなりの匂いになるので土をかぶせるなどするというが、このようなやっかいものである搾りかすを有効に利用できれば素晴らしいと思う。このところいくつか新しい報告があったので、整理してみた。

第1、飲食への利用
1、粕取りブランデーとしての用途。
(1)マール フランス アルザス以外は樽熟させるので茶褐色を帯びる。マールの造りかた
(2)グラッパ イタリア 樽熟させないものが多く無色透明。
(3)オルホ スペイン スペイン北部ガリシア地方のガリシアオルホが有名。アルバリーニョ種使用が多い。
(4)バガセイラ ポルトガル
(5)トレスターブラント(Tresterbrand)  ドイツ
ブルゴーニュにならい、勝沼にも共同の蒸留場を作ったらどうかという提案はいかがでしょうか。各ワイナリーのしぼりかすを集めて粕取りブランデーを造り、各ワイナリーのエチケットを貼って出すというイメージです。
(6)日本の粕取りブランデー
 日本国内でもブドウの搾りかすを原料とした粕取りブランデーをリリースしている貴重な蔵がいくつかあるので、紹介させていただきます。
グラッパ
葡萄華(カタシモワイナリー) 日本人にも飲みやすくするためにアルコール度をわざと下げて作ったとのこと。。
内田葡萄焼酒(白百合醸造) 焼酎などでよく使われている減圧蒸留によってマイルドに仕上げています。旧名メフィスト。蔵めぐりの際うかがったことによると、甲州を使う場合は一旦醸し作りの甲州ワインを作り、途中、搾りかすを引き揚げると白葡萄ではあるがアルコール分が残るので蒸留酒ができるとのこと。透明なボトルはイタリアから輸入したものとか。どうりでおしゃれです。山梨県のデザイン大賞を受賞。
神戸グラッパ(西山酒造) 丹波ワイン、神戸ワインから搾りかす、ワインを分けてもらって製造。青いボトル。
マール
マール・ド・キザン ブラッククイーン種ワインのしぼりカスをもう一度発酵させて造った原酒をシャラント蒸留器で2度蒸留したものでフルーティー。透明であまりくせがありません。
北信シャルドネ・桔梗が原メルロのマール(メルシャン) 専門の軽井沢蒸留場にて蒸留。ブランド価値が相互補完しますね。 

2、チーズ
(1)イタリアの酔っ払いチーズ ウブリアーコ
チーズを隠した(戦後、兵士たちの略奪から隠した)
ブドウの搾りカスの入った樽の中にそれぞれのワインと相性のいいチーズを樽の中に封じ込め、三ヶ月ほど密封されたまま熟成したもの。熟成期間中には、樽を随時転がしてワインの風味が浸透するようにする。
(2)フランスのトム・オ・マール・ド・レザン セミハードチーズ。これも同様搾りかすに漬け込んだもの。
(3)エポワス 表面をマールでウオッシュする。
3、つけもの 
甲州ブドウのジュースとブドウの搾りかすにつけこんだ大根(笑。でもおいしそう)


第2、ポリフェノール(Polyphenol)の効果
 果皮や種に含まれるポリフェノールには抗酸化作用、抗がん作用、血栓症、動脈硬化予防に有用とされているが、搾りかすにもポリフェノールが残存するため、各種実験が行われているところである。
1、アルツハイマー予防  中央葡萄酒さんが提供した搾りかすで現在研究がすすんでいる。ポリフェノール成分がアルハイマー予防やアレルギー防止に効くのだそうです。
2、消臭剤 ポリフェノール成分が残る搾りかすに消臭効果があることが発見されています。
3、カタシモワイナリーさんの取り組み
(1)カタシモワイナリーでは、グラッパの製造を行うとともに、搾りかすをぶどう畑の肥料に戻すなどの努力をしてきた。ただ、肥料化は環境には優しいが、そのままでは酸性が強過ぎて1年間は寝かさないといけないし、肥料的な価値はそんなに高くないという。
(2)グラッパのために蒸留しアルコールの抜けた後のワインですが、渋くていがらっぽいものの、普通の赤ワインに多く含まれ循環器系に良いと話題になった有機酸、ポリフェノールを赤ワインより何倍も持っています。しかもミネラルや繊維質も含まれていて捨てるにはもったいない。これをもろみ酢に加工してはと考え、健康ドリンクの「ぶどうもろみ酢」を製品化した。
(3)最後に残るのが、グラッパに使った搾りかすの、そのかす。凍結乾燥したその微粉末を分析すると、老化や突然変異を防止することが出来る「抗酸化物質」というものが含まれており、将来的にはがんの予防も期待できるようです。いま、近畿大農学部の研究室などと共同で、栄養補助食品として利用したり、青汁や豆乳などに混ぜることによってより効果的に摂取したりできるよう研究を重ねているとのこと。


第3、リサイクル(いろいろなところから引用しました。いい話だったのでほぼ「まま」で載せさせてもらいました。ごめんなさい)
1、甲州ワイン牛 エサとして利用
 日本一のワイン生産量を誇る山梨県で、ワイン製造で必ず出る大量の搾りか すを利用した牛肉づくりに挑戦している小林輝男さん(53歳)は、酪農の経営が年々 厳しくなるなか、14年前に地元ワイナリーが処理に困っていた大量の搾りかすに 目をつけ、それを牛のエサとして与える肉牛生産を始めた。ポリフェノールをた っぷり含んだ搾りかすを食べることで脂肪が少なく、それでいて焼くと肉汁が逃 げない、ヘルシーでおいしい牛肉ができることがわかった。小林さんは、今では年 間200トンの搾りかすを使って650頭の牛を出荷。安全性や情報公開にも力を注ぎ、 パックに印刷された番号から牛の生育場所やエサの種類はもちろん、病歴や治療、 投薬経験までの情報をすべて検索できるシステムを作った。また小林さんは、畜舎で寄生バチを飼ってハエを退治し、殺虫剤の使用を減らす試みも行っている。 地域の果樹農家と結びつき、循環型農業を確立すると同時に、「霜降り」一辺倒 だった国産牛に新たなおいしさを生み出そうとする畜産家の取り組みである。
2、堆肥としての利用 発酵など手間とコストがかかりそうですね。
3、エネルギーとしての利用
 岩手県北部、横浜市とほぼ同じ面積に人口8800人、人間より牛の方が多いという岩手郡葛巻町。「北緯40度のミルクとワインの町」というキャッチフレーズに「クリーンエネルギー」の一語が挿入されて6年目になる。
 風力、太陽光から、滝を利用した小水力発電まで、町で可能な自然エネルギーはことごとく試みてきた。
 その結果、今年度には年間5600万`ワット時の発電量を見込めるまでになった。
 これは、町の電力需要の185%に当る。突出した「葛巻方式」の成果にならおうという視察が年に200件、5千人にのぼる。
 「誰が中心人物だったということではないんです。町の振興を考える過程で、『いまさら温泉探しでもないし』と、エネルギーを真剣に考えようという話がでた。町、議員、町の人たちが自然に盛り上がって・・・・・。だからこそ、ここまで来られたんです」と環境エネルギー政策課の方は分析する。
今年度からは新たに、蓄糞やワインづくりで出るブドウの搾りかすからのバイオガス(メタン)を利用する燃料電池の実験に力を入れる。ガスを燃やす形での発電はすでに実験ずみだが、町で飼育されている牛の2%足らず、200頭分を処理するにとどまっている。
 牧場は広い町内に分散している。それを一ヵ所に集めて燃やすのでは、運搬のエネルギーがかかり過ぎて意味がない。そこで、牧場ごとに処理ができる燃料電池方式への転換を思い立ったのだという。
                                                                  以上