3:ムシカ・クリオーヤの種類
クリオーヨの音楽のほとんどは、踊りと密接に結びついています。音楽、歌、踊りの三者が、どれも深く結びつき、大衆音楽として成長してきたと言えます。そのため、ほとんどの音楽には、それぞれの踊りがあります。また、踊りのつかない歌曲なども、全て音楽形式や歌の詩の形式が厳密に決められた枠の中で作られてきたものです。というと堅苦しく聞こえますが、そのパターン性こそが、大衆音楽の重要な要素であったとも言えます。現代では、失われたその特性を、ペルーの大衆音楽では、今なお色濃く持っていると言えるのです。
ではクリオーヤ音楽の代表的な形式について見ていきたいと思います.
バルス Vals
ムシカ・クリオーヤを代表する音楽。19世紀半ばにヨーロッパから伝わったワルツがペルーに土着化したもの。ワルツのゆったりとした三拍子が、狭い部屋で大量の人が踊るために動きが細かくなり、8分の6拍子的なノリも加わった独自のものへと発展していった。歌うためのバルスと踊るためのバルス(ハラナ)の二つの流れがあり、近年は黒人音楽の影響が強く現れる曲が作られ、人によっては、南米一黒いバルスと言う人もいる。
ポルカ Polka
20世紀前半期に非常に好んで演奏された東ヨーロッパ起源の舞踊歌曲。ノリのよい二拍子のリズムに垢抜けた歌が乗り、フィエスタなどでの盛り上げ役として大いに演奏された。しかし黒人音楽が人気を呼び始める20世紀後半になると、ポルカは次第に演奏される機会を失っていった。
ヤラビ Yaravi / トリステ Triste
ポルカ、バルスなどがムシカ・クリオーヤの中心的存在となる前には、ペルー全土で、アンデス先住民音楽ハラウィを起源とするゆったりとした歌曲ヤラビが好んで演奏された。この音楽は、ギターのゆったりとした伴奏にのせて歌われる静かな歌曲であった。また、ペルー北部では、ヤラビはトリステと名前を変えて演奏された。これは、ヤラビが哀歌としての側面を強く持っており、切々とゆったりと歌われる音楽であったためである。現在でもペルー北部では、トリステを、後半に黒人系音楽トンデーロをフーガとして伴いながらしばしば演奏される。
その他の音楽としては、ボレロ、タンゴなどもクリオーヨたちは好んで演奏していた。