ビオ6 踏み固めないこと〜土壌の団粒化構造


1、序 耕作の歴史 鋤鍬による人力の時代から、牛馬による時代、それからトラクターによる耕作の時代と変遷してきたが、トラクターによる耕作には様々な問題があるということでビオの造り手は馬による耕作を採用しているところが多くなってきているようだ。

 
  ロマネコンティの畑を耕す馬 3月
  photo by tojo

 耕運によって土は柔らかくなるが、この柔らかくなったこと自体は、団粒構造とは直接の関連はない。トラクターによって表面は一見柔らかくなるが、その下層が踏み固められてしまうことで団粒構造を破壊し、ブドウの根が伸びなくなること、ブドウの枝を傷つけるのが欠点なのである。

2、よいブドウを収穫するためには、良い土を作る必要がある。
良い土であるためには次の条件が必要とされる。

@水はけ(排水ないし透水性)・水もち(保水性)がよいこと、A通気性があること、B酸度が適正で、有機肥料が行き届き、さらに肥料持ち(保肥性)が良いこと。
 団粒構造こそがこれらの@ないしBのキーワードとなる。団粒構造とは、土の粒子が数個ずつくっついて大きな粒子を作っている状態で、団粒構造のある土壌を作るためには堆肥など有機物の投入が必要となる。

 堆肥を畑に入れることで、
@投入した有機物は、微生物によって分解され、農作物が吸収しやすい形になり、作物の栄養源となる。
A微生物がミミズなど微小動物の餌となり、その活動を活発にさせ、さらに微生物の種類を増やすことで、有害微生物による病害が減らせる。ミミズは植物の遺体と土を一緒に体内に取り込み、消化の際にカルシウムを分泌するので、そのフンはカルシウムに富む有機物と土の混合物となり、土の団粒化を促進させます。また、ミミズの活発な移動は土の攪拌を促します。
B堆肥の腐食が土の粒をくっつける糊の役目をはたし、土壌が団粒化する。
C土が団粒化すると隙間ができて、通気性、水はけ、水持ちがよくなり土が柔らかくなる。通気性がよいと根が呼吸できる。保水性がよいと光合成に必要な根から吸い上げる水と養分がある
D土が柔らかくなると作物の根が良く伸び、生育がよくなる。

3、ミミズについて
(1)ミミズとは、環形動物門・貧毛綱に属する生物である。、
 
これまで動物の大きな分類としては、脊椎動物門、ホヤなどの原索動物門、なまこやウニ・ヒトデの棘皮動物門、昆虫やムカデ・クモ・カニ・エビなどの節足動物門、蛸やイカ・貝などの軟体動物門、くらげやイソギンチャクなどの腔腸動物門、海綿動物門、ミミズの属する環形動物門があり、環形動物門はさらに原始環虫綱、多毛綱、貧毛綱、ひる綱、ゆむし綱、吸口虫鋼の6つに分類された。ミミズには水棲と陸棲のものがいて、陸棲の中にはフトミミズなどの大型類、ヒメミミズなどの小型類がいる。大型類は生息地によって、堆肥棲息型、枯葉棲息型、表土棲息型、下層土棲息型の4つに分類される。雌雄同体であるが、通常は2匹の交尾によって繁殖する。

(2)ミミズの効用  かつてアリストテレスがミミズは「大地の腸」と言い表し、ダーウィンがミミズが土を耕し、団粒をつくりよりよい土にすることを発見した。ミミズは土壌・農作物にとってどのような効用を持つのだろうか。
 @穴をほることによる土壌への影響
   ミミズが通路を作ることで、土壌の通気性がよくなる。その結果、微生物が活発になって有機物の分解が早くなり、その結果土の栄養分ができる。また大量の雨が降った場合に多すぎる水を地下へ運ぶ通路となる。また、先述のようにトラクターの使用により地下に固い層ができると根張りが低下し、根張りのよい場合に比べて病気の被害が大きくなる。ミミズは10度〜20度が生育適温で夏は表層10センチくらい、冬は地下40-60センチまでもぐるので十分地下の固い層を壊してくれる。縦横無尽に穴を掘るので土壌の透水性、通気性が改善され、根張りがよくなる。
  Aミミズの糞による土壌改良効果〜団粒構造をした糞 
   ミミズの糞は、腸から出る粘々した液で土壌粒子と細かくされた有機物が固めれた団粒構造を形成する。その結果、通気性がよくなることのほか、排水性がまし、糞は水に浸しても溶けづらく保水性も20%近く高くなるとも言われる。
  Bミミズの糞による土壌の肥沃化〜肥料効果
   ミミズの糞には落ち葉などから出た土の養分が多く含まれ、多くの土の栄養(窒素、リン、カリウム)が含まれている。保水性の高いみみずの糞は肥料としても雨水に流されることなく、じっくりと少しずつ植物に吸収される。また、フミン酸類を排泄する。フミン酸類は草丈、葉面積、枝条あるいは根の乾重量を増加させ、花や果実の成長をよくする効果がある。さらに腸管にある石灰腺の働きによりPH6程度の適正値に近いものにし、周囲の土壌に比べ窒素やカリウム、マグネシウム、リンなどの含有量が非常に高まる。また、ミミズの糞は微生物が多量に含まれている。
 C有機物の分解機能
   ミミズは1日に自らの体重と同じくらいの土を食べ、体重の半分ないし倍の量の糞を排出する。ミミズは土中の有機物などを食べ、肥料成分を植物が吸収しやすい形態にする。また落ち葉や腐った根などを食べて細かくし排出することでトビムシ等がさらに細かくしやすくなり分解が早まる。
 D分泌物の機能
   ミミズの体表から分泌される粘液蛋白がミミズの穴に残り、微生物の餌になったり、根の発達を促したりする。