プレパラシオン(preparation 仏 調合とか調合薬のこと)


  プレパラシオン(プレパラート)=ビオディナミ特有の調合剤は、大きく2つに分類される。1つは直接農園に散布される2種類の調合剤であり(501.502)、もう1つは堆肥作りに用いられる6種類の調合剤で(502〜507)である。

 いずれも素材の物質そのものを与えるというのではなく、畑にエネルギーを与えることに主眼がある。後に述べるようにだから極少量を与えるのみ。ブドウの樹や土壌の活性化、そしてもうひとつは病気の予防にもつながるのである。


農園散布用のプレパラシオン
500番 Bouse de Corne 
@内容 「牛の角に詰めた牛糞」 
 雌牛の角に詰める理由
 (a) 雌牛は、頭から太陽の力を特に受けます。この証拠として、エジプトの女神である牛の角の間には、太陽盤が置かれています。この、雌牛の角に牛糞を入れ、土中に埋めます。すると、この牛糞の活力は、角に入れないで埋めた糞より80倍(最近の生命)も強くなります。
 (b) また、牛は消化作用に大変なエネルギーをかける。その消化力は牛の全身を満たすが、角はその貫き出ようとする力を内に圧し止める性質をもっていて体の外には出て行かない。だから体の中に押し止められた高度な消化エネルギーはそれだけにいっそう牛の糞に集中していく。そしてさらにこれを角に詰めれば糞に蓄積した力も外に抜け出て行かない。
A使用法 
 (a) 牛の角に牛糞を詰めたものを、土の中に冬季6ヶ月間埋める。土中に半年間寝かせることで、宇宙エネルギーを蓄えさせる。埋めるのは土の活動が活発になり始める秋分の日が望ましい(収穫後秋の最初に降る雨を待ってから埋める)。
 (b) 6ヶ月後、これを取り出す。(さらに6ヶ月日光で乾燥させる場合もある)。牛の糞と言っても、時間をかけて土中で完全発酵しているから汚くないし、においも臭くないそうである。
 (c) 角から取り出した糞を雨水で希釈し、これを1時間充分に攪拌する。牛の角は捨てられるそうだ。攪拌の方法は具体的には、大きな桶で桶の壁に沿って、底の真ん中が見えるまで攪拌〜渦巻き効果、その後逆周りに攪拌。この段階で激しいカオスが生ずる。これが大事。すなわち、ロウトの形になるまで渦を作ると、水の中に宇宙空間が再現される。一旦その流れを止めて混沌の状態に戻し、また逆回りに渦を作る。このくり返しを1時間続けることで、牛の角の中に蓄えられた宇宙エネルギーを情報として水に伝える。1時間もすると、水がなめらかになり、香りさえもよいにおいがしてくるのが体感できるという。 糞自体は水で希釈されることになるが、ビオディナミでは、希釈とはエネルギーの強化を意味する。医学におけるホメオパシー療法の薬品が希釈率が高まれば高まるほど効果が増強されるというのと同じ。
 (e) その後これを畑に散布する(1haあたり200グラム)。特に作物が植えつけられる前の農園に対して散布される。午後から夕方にかけ、多少湿り気のある土に対して噴霧される。
B効果 葡萄の根の強化。根が下層土中深く伸びていく。 


501番 Silice de Corne
@内容 「牛の角に詰めた水晶の粉」 無色透明の水晶、石英、長石を砕いて粉末状にしたものを水で溶き、牛の角に詰めたものを、夏・秋季土中に埋める。5月末に埋め、11.12月頃取り出す。その後6ヶ月間日光に当てる。
A使用法 500番と同様、この結晶を水の中で、1時間、活力強化し、調合液を作る(50リットルの水で作る)。そして、1ヘクタールあたり4グラムの割合で葡萄畑に散布する。季節的には春から夏にかけて数回使用。「501番」の調合剤は植物に対して散布されるもので、これは晴れた日の午前中に噴霧される。
B効果 根から上の部分の強化。光合成を良く行なう。特に日の出の時に噴霧すると、光合成が非常に発達する。光と熱が物質に変わり、葡萄の樹の働きを助け、より良質な種子や葡萄が実る。珪素の光吸収効果による光合成効果と土中の過剰な湿度のコントロールする効果がある。植物の代謝を高め、空気中の微量元素を葉が吸収するのを助ける。茎や葉の成長を刺激し、葉緑素の同化作用を促進する効果がある。
 


堆肥のためのプレパラシオン

 
502番 Achilee Millefeuille 
@内容 「鹿の膀胱に詰めたノコギリソウ=アキレーの花」 鹿の膀胱に詰める理由:鹿は地球よりも、地球を取り巻いている宇宙的なものと強く関連している動物で、それゆえにある種の力の流れの一部が外に放出されるという役割をもつ枝上角をもっている。鹿は宇宙の諸力と密接に関連し、いわば宇宙の姿そのもの。動物相は、植物相より優れている。植物にとって、動物界は大変優れたもの。植物を適切な動物の器官の中に入れると、植物は影響を受け、働きが大変活発になる。

 
  葉っぱがぎざぎざしているので
  ノコギリソウと命名された。

A使用法  ノコギリソウの花を摘み取り、ごく短時間乾かし、その花を鹿の膀胱で包み、夏の間日光の良く当たる場所にぶら下げ、10月に土に埋め、復活祭(4月11日)の頃に掘り出す。乾燥させ粉末にする。それを煎じたものを(煮出すということ)10トンの肥料に数グラム混ぜる。
B効果 硫黄分の供給。アキレーの花の中にある硫黄が地中のカリウムを引き出し、植物を活性化させ硫黄分の供給につながる。502番を混ぜた肥料は、大地を活性化する能力を取り戻し、宇宙からやってくる物質、ケイ素や鉛など、地上にやってくる微量な物質もまた、大地に吸収される。



503番 Matricaire
@内容 「牛の腸に詰めたカミツレ=カモミール」 雌牛の腸を選んだ理由:この動物の腸が、一番消化活動に優れたものであるから。牛の反芻(一度呑みこんだ物を、再度、口に戻して消化する)能力を見れば分かる。医療薬の特質のあるカミツレの花を牛の腸の中に入れると、その成分はとても活発になる。 

 

A使用法 カモミールを健康な牛の小腸に詰めて発酵させた後、ひと冬越えた土の中に埋めておく。乾燥させ粉末にする。それを煎じたものを10トンの肥料に数グラム混ぜる。
B効果 石灰分の供給。カルシウムの代謝に関係があり、窒素量を調整する役目を果たす。




504番 Ortie Piquante 
@内容 イラクサ イラクサの葉と茎を土の中に埋めて腐葉土にする。

 

A使用法 乾燥させ粉末にする。それを煎じたものを10トンの肥料に数グラム混ぜる。
B効果 鉄分の供給。土中に窒素と鉄分を与える。
 


505番 Ecorce de Chene 
@内容 「家畜の頭蓋骨に詰めたオークの樹皮」 
A使用法 9月にオークの樹皮を剥ぎ、細かく刻む。それを家畜の頭蓋骨に詰め、湿った土の中に埋める。乾燥させ粉末にする。それを煎じたものを10トンの肥料に数グラム混ぜる。
B効果 石灰分の供給。カルシウムと関係があり、植物の力を強め、病気への抵抗力をつける。



506番 Pissenlit
@内容 「牛の腸に詰めたタンポポ」 

 

A使用法 タンポポを牛の腸に詰めて9月末に土の中に埋め、翌年の4月に掘り出す。乾燥させ粉末にする。それを煎じたものを10トンの肥料に数グラム混ぜる。
B効果 珪酸の供給。珪酸のレベルに重要な影響を与える。



507番 Valeriane 
@内容 カノコ草 カノコ草の花びらを搾った液体 

 
 
A使用法  ヴァレリアンの花を瓶に入れ、水に浸し、その瓶を木に吊るす。乾燥させ粉末にする。それを煎じたものを10トンの肥料に数グラム混ぜる。
B効果 リンの供給。 ヴァレリアンはリンを多く含み、植物に熱を与え、成熟を促進する。花の色を鮮やかにする。


マダム・ルロワによると、6種類のハーブを入れた堆肥につき次のように説明されている。「この堆肥はMaria Thum(マリア・トゥーン シュタイナーの農業の後継者の名前である)というもので、一種の高濃度肥料です。構成は牛糞(新鮮なもの バケツ5杯)、玄武岩(500g)、卵の殻(100g)で、これをノコギリソウ、カモマイル(マトリカリア)、イラクサ、カシの幹、タンポポ、カンコソウなどの薬草から作った酵母とともに敷きます。薬草の一部は予め動物の臓器の中で発酵させたものを使用します。Maria Thumは多種多様なバクテリアを含み、これらがお互いに影響・共鳴しあう中で土に生命力を吹き込み、さらに分解プロセスを活性化します。さらに、この肥料は植物が必要な土と腐葉土の組成を助けます。」とのこと

最近では、バレル・コンポストという商品名で、これ1つで、シュタイナーの考案した6種類の調合剤の代理として使えるという便利なものも売っている。シュタイナー農業の入門用としては重宝なものです。この1ユニットを約3ガロン(4.5リットル×3)のぬるま湯に溶かす(20分攪拌するとのこと)