針谷卓史
書くという営為は孤独、苦痛であり、だったら止めればいいじゃん、という内的な声を否定することも難しい。自意識に駆り立てられていて、そのくせ自信がない。ノートに向かうと、いつもそんな自分が見える。にもかかわらず続けてこられたのは、何より、書くことが楽しくて仕方がないからだ。
その上、賞に応募、評価していただこうなど貪婪なことであり、ひたすら恐縮している。三田文学の関係者各位には感謝しているが、この恩義は次の作品を書くことでしか報いることができないと考えている。
快であれ不快であれ、読者に何某かの感動を与えられれば、これ以上の喜びはない。
末筆ではありますが、同僚、友人、家族親族にお礼を申し上げます。特に、尻尾を降り降り作品を押し付ける私にイヤな顔一つせずに的確な批難を投げかけて下さった方々に。これからも随分迷惑をかけると思いますけれども、ひとまずこれまでどうも有難うございます。
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[略歴]
はりや・たくし。1977年生まれ。慶應義塾大学文学部国文科卒。現在、東京都府中市在住。高等学校教員。 |
荻野アンナ、巽孝之、武藤康史、室井光広
※選考座談会および予選通過作品は、「三田文学」No.85(2006年春季号)に掲載されています。
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