|
|
|
- 15 / May / 2005 Mexico City, Mexico.
気の良い『ナイフ使い』に別れを告げて9時に出発する。
手持ちが無いので町の銀行に行くもカードを受け付けないので、仕方なく一般道で次の町に行ってみる。日曜日だし、カードで金を下ろせないとまずいぞ。
しかし、次の町であっけなく金を下ろすことが出来た。
金さえ手に入れりゃこっちのモンよ。
高速道路に入り、一路メキシコシティを目指す。やはり高速道路は高い。昨日泊まる予定だったプエブラの町をスルーし町外れのGSでガスを補給する。
飯を食って2時頃シティに入る。ぼろビートルが無理な追越をする中、目標の公園に着くも、イマイチ方向感覚が掴めず、1時間ほど迷いながらようやくサンフェルナンド館に着く。日本語で意思を伝えられるのはやはりホッとする。
宿のネットでホンダのサービス工場を探す。
- 16 / May / 2005 Mexico City, Mexico.
洗濯の後、昨日数件ピックアップしておいた工場のうち、一番近そうな工場に地下鉄で行く。「地下鉄はヤバイからスリに気を付けてください」と同部屋の日本人に言われるが、最近、髭を剃らず、薄汚れたジャケットを着て乗り込む俺を、むしろ他の客が避けているようなので問題ないだろう。
9駅ほど乗って住所を頼りに歩く。結構距離があったが、サービス工場に着く。カブのメンテナンスマニュアルを指差しながら、必要な部品を伝えるとなんと奥から部品が出てきた。取り寄せで一週間位は掛かるだろうと予測していたのにこんなにすんなり部品が手に入るとは、正直驚いた。
工場では何人ものスタッフがホンダの作業着を着てスピーディに作業を進めているので「バイクを持ってきたら今日中に整備してくれる?」と聞いてみる。部品販売担当者が整備責任者に相談すると、OKと言うことだった。宿に帰りついでに交換したいスプロケとエアクリーナを持ってコルデーロ号で向かう。
地下鉄なら15分なのに、迷いに迷い、2時間程掛かって工場に辿り付く。
早速交換作業に取り掛かる。3人掛かりでまるでレースのピット作業のようなスピードでドンドンコルデーロ号がばらされていく。スプロケはまだまだ使えるとスタッフが言うが、何時までも重たい予備品を積んで走りたくないので、構わず交換してくれと伝える。ついでにオイル交換もやる。しめに丁寧な洗車をしてもらう。わずか1時間弱で作業終了。
見違えるように綺麗になったコルデーロ号。折れたミラーは左右ともに丸ミラーとなり良い感じだ。スタッフが試乗で辺りを一回りしに行き、帰ってくると「エンジン音がおかしい」と言ってチョコチョコと調整する。再び一回りしてきて「OK!」となった。何だかエンジンが静かになったような気がする。感謝感謝!
実は事前に「速やかに部品が手に入るよう、パーツセンターのようなものは無いか?」とホンダのお客様相談センターにメールを入れたところ、「メキシコホンダのHPで調べてください」と素っ気無い対応にがっかりしていた。世界のホンダ、その母国のユーザーに対する「ホンダスピリット」とはこんな程度か、世界各地で強靭なカブの性能を披露し、何人もの出会った人々に「ホンダは凄い!」と思わせてきたのに、夢追うホンダスピリットとは今やこんなものかと、とても残念だった。
客と顔を合わせることも無い相談センターのスタッフのメールには魂を感じなかった。どうせ回答もマニュアル化されて、つまらなそうなツラ下げてPCに向かっているんだろう。やり方次第では面白い仕事だろうに可哀想な奴だ。
それに比べて、工場の対応はどうだ?スタッフは俺のコルデーロ号に興味津々でマニュアルを眺めている。他の客に「このバイクはアルゼンチンから走ってきてるんだ!これからアラスカまで行くんだぜ!」と自慢し、交換の必要有無をアドバイスしてくれたり、最後は記念写真までとって整備工場のシールを誇らしげに貼っている。スタッフ総出で「良い旅を!」見送ってくれる。最高の気分で後半戦を戦える気持ちになった。
快調に走り宿に戻る。他の宿泊者と話をしていると、朝見かけたゴツイ体の人がやはり俺の知っている人だと判り驚く。その人とは、元全日本プロレスの奥村選手。
まさかこんな所で会うはずがないと思っていたので声を掛けるのも遠慮していた。奥村さんとは縁があって以前実家の隣りのアパートに住んでいたことがある、超ご近所さんなのだ。2年程前の正月に横浜文化体育館に試合を見に行ったこともある。
今は全日を辞め、フリーで本場メキシコで戦っているとの事。今日はプエブラまで試合に行っているらしい。夜遅くに帰ってきたが疲れていそうなので明日声を掛けてみることにしよう!
- 17 / May / 2005 Mexico City, Mexico.
朝飯を食いながら起きてきた奥村さんに声を掛けてみる。以前隣りに住んで居た齋藤ですと話すと本人も驚いていた。「お母さんとか元気ですか?」と聞かれるので「元気でやってます」と答える。今夜は近くで試合があるとの事なので見に行くことにしよう。毎日連戦で疲れませんか?と聞いてみると「カナダにいたときは10連戦とか普通だったから」とさらっと言う。
ここメキシコでは試合に出る為には事前練習に出ないといけないらしい。それが結構辛いらしい。そりゃそうだ、昨日も帰ってきたのは夜中の1時過ぎなんだから。「俺の試合なんて見てもしょうがないよ、先に進んだ方がいいんじゃない?」と言うが、俺は奥村さんの戦う姿を是非見てみたいと思った。
話が終ると昨日奥村さんの事を教えてくれた人が「普通に喋れるなんて羨ましいなぁ」という。ファンからしたらそうだと思う。こうなったら何が何でも試合を見に行けなければ!奥村さんが滝のような汗を流しながら練習にいそしむ時間、買い物に出かける。シティにはウォルマートがたくさんある。またには米が食いたいと色々買い込み自炊するも米も肉も超不味い。仕方が無いので、ツナ缶に醤油を掛けて食う。
高い食事代となってしまった。
7時頃、いよいよ戦場に向かう。俺が戦うわけではないが緊張する。本場のプロレスはいかなるものか?奥村さん、頑張れ!会場はリングも近く、選手が客を煽り、中々の盛り上がりだ。奥村さんの試合はセミファイナルだった。3対3の3本勝負。
ココでは日本人は悪役のようだ。試合は混沌として最後は反則負けのようになって終ってしまった。会場中が叫び、笑う。観客を楽しませるのがメキシコのルチャ・リブレ。
その中で俺は一人感動していた。こっそり俺は泣いた。
不慣れな異国で文字通り体一つで奥村さんは戦っている。彼は旅行者ではない。今夜限りでは終らない、人生を懸けた戦いなのだ。俺のしている旅とは次元が違う。イヤでも逃げ出す訳にはいかないリングの中で戦う奥村さんは輝いていた。勇気を分けてもらった思いがした。感謝すると同時に俺もやるぜ!と思う。人生は連続した時間の積み重ねだと思う。「今だけ」とか、「これだけ」といった特別な経験など存在はしない。
出会った人々の言葉、自分の経験する出来事、全てが積み重なって、連続する時間と自分という存在を作っていく。
「この旅を経て自分が変わる」というような思いは持たないが、この先、何かにぶつかった時、これまでの自分とは異なる「もう一つの視点」で物事を捉えることが出来るようになれればいいと思う。
そんな旅にしたいと思う。
- 18 / May / 2005 Mexico City, Mexico.
靴を探しにショッピングセンターに行くも不漁。明日この町を出る事にする。
夜に帰ってきた奥村さんに自慢の珍満T-シャツを「練習着にでも使ってください」進呈する。と「普通に着させてもらいます」と快く受け取ってくれた。
頑張れ!奥村さん!俺も頑張るぞ!
- 19 / May / 2005 Mexico City, Mexico.
住めば都。
3日以上滞在すると出発するのには相当なエネルギーが必要になる。ダラダラと出発準備をして10時に出発する。どうせ今日中にはグアダラハラには着かない。地図を見て丁度半分くらいのところにあるモレーラまで300キロ程走る事にする。
相変わらず高い高速代に泣く。一日走ると30ドル位掛かってしまう。
物価から考えれば日本より高い高速のような気がする。
70キロ位のスピードで走っていると後方でサイレンが鳴り、驚いて路肩に停まる。この旅初めてパトカーに掴まる。メキシコの警官はかなり腐っていると聞いていたので何を要求されるか構えていると何やら高速道路を走るにはこのバイクは小さすぎると言っているようだ。そんな事言ったって、車と同じ料金払ってるじゃネーか!と思いつつ、『路肩を走りなさい』というような事を身振りを加えて説明されるのを黙って聞く。
特に金は要求されなかったので一安心。
聞いた話では強盗に身包み剥がされ警察に盗難証明を貰いにいったところ、証明書発行のチップを請求された、なんて酷い話もあるというので、今回はラッキーだったに違いない。
路肩は舗装が切れていたり、砂利やゴミが多く、こんな所を走っていたらコケるかパンクするのが目に見えているので、後方をマメにチェックしつつ通行帯を走る。夕方モレーラに着くが出るのが面倒そうなデカイ町なので、手前のモーテルに泊まる事にする。
26ドル。高いが下手な宿よりよっぽど快適だ。
朝晩冷えるシティで風邪を引いたのかぐったりと疲れているので、飯も食わずに爆睡する。
- 20 / May / 2005 Mexico City, Mexico.
やっぱり風邪か、体が重い。とにかくテキーラの里グアダラハラまで行って静養しようと気合で走る。100キロ程走った高速の料金所で「次のGSまでどれ位だ?」と聞くと90キロだ、と言う。既に金を払ってしまったので、サービスエリアにコルデーロ号を置いて、ポリタン持って近くのGSまで歩く。
うぅ、体がだるい。ヘロヘロとGSまで歩いていると、道行くオッサン達が「オラ、アミーゴ!」と声を掛けてくれる。
田舎町はみんな良い雰囲気を持っている。3L程買ってサービスエリアに戻る。木陰で一息ついていると、目の前の花にハチドリが飛んできた。空中で静止しながら密を吸うハチドリに見惚れる。思っていたよりも小さな鳥だ。辛い時のラッキーな出来事に「もうひと頑張りだ」と気合が入る。
4時頃グアダラハラに着く。グルグル街中を走り回り、駐車場のある安宿を見つける。
ココから日本のアミーゴ達にテキーラを送る。
そしてゆっくり風邪を治すことにしよう。
|
|