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- 18 / Mar / 2005 Pisco - Lima, Peru.
7時に目が覚める。
ツアー客を見送った後、魔人ブーとピッコロが朝飯を食っているので「ブー、俺も腹減ったよ〜」というとおばちゃんに頼んでパンとコーヒーを持ってきてくれた。ラッキー!既に3人はマブ達なのだ。「もう一泊してくれよ〜!」と二人に懇願されるも今日はリマで旨い日本食の夕飯が待っているのだ。残念だが出発することにする。
ここからリマまでは約250キロ。デカイ首都なので明るいうちに宿に着きたい。
8時半に出発する。
この辺りからパンナムは点々と小さな町を通過する。30分も走ると街があるので休憩も街道沿いの食堂でインカコーラを飲みながら走る。リマまで40キロほどの場所まで走ると、スラムが広がり始めた。こんな所ではあまりゆっくりしたくないので市内まで一気に走ることにする。
薄汚れたシャツを来た女の子が道端に座り込み俺を見つめている。ゴザのようなもので作られた小屋もある。なぜこれほどまでに困窮するのか?そしてこの女の子はどんな生活をし、これからどんな人生を歩むのだろうか?考えざるを得ない光景が広がる。
道はいつの間にか2車線になり、3車線になった。高速で車が俺を追い抜く。バスが後ろから迫ってくる。追い越し車線に入れば良いものを、わざわざ俺の直ぐ後ろまで迫り、クラクションで煽る。
くっそ〜っ!意地が悪いにも程がある!俺を風圧で路肩までふっ飛ばし、俺の脇30センチをかすめて走り去る。もしどこかで追いついたら運転手ぶん殴ってやると決めて、ナンバーを暗記し『殺すリスト』に加える。これからアンデス山中に入る場合もこのバス会社だけは絶対に使わないぞ!っていうか同じバス番号を見つけたら、タイヤに釘の5,6本もぶち込んでやる!
そうこうしているうちにリマ市内に入る。どこでこの高速道路を降りていいのか見当もつかない。仕方なく適当に降りて、食堂でビールを飲んでいるオヤジ達に道を聞く。大分遠いところで降りてしまったようだ。日本人だと言ったら、オヤジ達は親切且丁寧に道を教えてくれる。ビールまで進められたが、これは遠慮する。お礼を言って走り出すも、曲がるべきところで他の車が邪魔して曲がらせてもらえない。元の道に戻ろうとしても他の車に煽られ、思い通りに道を進めない。しばらく粘るも、再び道に迷う。段々と日が傾き始め、気持ちばかりが焦るが、道も判らないし、判ったところで思い通りに進めない。もう、うんざりして路肩で休憩する。
不貞腐れてタバコを吸っていると一台のバイクがやってきた。何処に行くのかと聞くのでサンミゲルに行きたいというと、再び道を教えてくれる。ありがたいが、教えてもらってもその通りには走れないので、歩き方の地図を見せ、ここが何処なのか聞く。現在地を教えてもらい、なるべく右折左折をしない道を検討する。最良と思われる道を決め、腹を括って走り出す。煽る車、進路妨害をする車には中指を付き立て無視して走る。
前も詰まっているのに後ろでクラクションを鳴らしつづける車にはいい加減切れて、メットを上げて睨みつけながら、フロントガラスに唾を吐きつける。相手も怒って出てくればぶん殴るだけだ。俺の怒りのオーラが最大放出のためか、車は静かになる。
民度、知性の低い奴ら程、クラクションを良く使う。ハンドル握ると性格が一変する奴がいるが、車の威を借りて気が大きくなっているだけだ。車から降りて勝負を挑んでくる奴などそうはいない。
宿に近くまで来て驚いた。大型ショッピングセンター、デパート、カジノが建ち並び、多くのおしゃれな人々がワイワイと歩く姿に絶句した。先ほど郊外で見たスラムの女の子と彼らが同じ国に住む人間とはとても思えない。彼らとあの少女は何ゆえこうも違うのか?何がこれほどまでの格差を作り出すのか?夢でも見ているようだ。
5時頃、ようやくお世話になるペンションカントゥータに到着する。
歩き方では日本人が経営する土産物屋として掲載されているが、民宿もやっていて日本食の夕飯も出してくれる。いくらなのかは判らんが、払えない額ではないだろう。屋敷の広さにビビる。4階建ての豪邸の最上階に通される。出迎えてくれた早内さんにお世話になりますと挨拶すると、「今日は美味しいもの沢山食べさせるからね」と涙の出るような暖かいお言葉。街中でびっしょりかいた汗をシャワーで流し、NHKを見ながら夕飯を待つ。夕飯に呼ばれる。オジサンにビールを勧められる。く〜ぅ、旨い!唸り声を上げていると、卓にはお刺身、天ぷら、ウニ、ナスの味噌和え、おしんこ、昆布の佃煮、そして銀シャリが並ぶ。
これは夢じゃないのか?夢ならお願いだから、食い終わってから覚めて欲しいものだ。
一口食っては唸り、二口食っては溜息を出し、三口食っては昇天しそうになっている俺を他のお客さんはビックリしながらもニコニコと見つめている。目の前のご馳走に完全に満腹中枢が破壊され、4杯も飯を食う。他のオジサンたちが、「ほら、ウニ残してもしょうがないから、食べな」と言ってくれる。この食事、生涯忘れることは出来なくなるだろう。リマまで頑張って良かった!ここで終りたいとは思わないが、ここで全てが満たされてゆく。
リマを出る時はフルスペックで再出発できそうだ。正直、まだ食えたが、暴飲暴食は体調を崩す原因となることを思い出し、自制する。
既に明日の朝飯が楽しみになっている自分が笑える。
おじさんが漫画あるぞというのでゴルゴ13を数冊持って部屋に戻る。
至福の時を過ごす。
- 19 / Mar / 2005 Lima, Peru.
朝起きると9時だった。
食堂に行くと俺だけまだ飯を食っていないようで、一席だけ食事の用意がしてある。納豆と目玉焼き、ほうれん草のおひたし、おしんこ、昨日の残りの天ぷらが並ぶ。
こんな贅沢が許されるのか?出来ることなら、これら一品一品を保存してこれから先へと持っていきたい。朝から3杯も飯を食い、夢心地。しかし、俺ばかりこんな贅沢をしている訳には行かない。コルデーロ号も砂まみれ、3000キロ以上もオイル交換をしていない。チェーンもやばくなり始めた。タイヤもローテーション時期かな?
宿の人に近くのバイク屋を教えてもらって下見に行くが、はやりこの町はあまり走りたくない。多分真っ直ぐいけないし、真っ直ぐも帰ってこられない。自分でやるか。近くのホームセンターで4サイクル用エンジンオイルと大きめのペーパータオルを買う。宿でペンキを入れる容器を借り、宿の駐車場で作業開始。ドレンが固くて開かない。交換時期を過ぎていることを知っていながら無視していたコルデーロ号の恨みか、勢いつけてネジを回すとレンチが外れ、右手首を泥除けで切る。結構血が出たが、たいしたことはない。この程度の傷はアメフトで慣れている。真っ黒なオイルがドロっと出てくる。あのほぼ全開走行をよく堪えたもんだ。オイルは1Lあるので半分程度入れてフラッシングする。次は何処で交換になるかなぁ?チェーンカバーを外し、チェーン、スプロケの砂を拭う。チェーンはいつでも交換できるように予備をここで切っておきたい。
ピンを削ってくれる工場を探し、町を歩く。しかし来る時にはいくらでもあった町工場がこの辺りにはない。散々歩いて帰るのも億劫になるのでバスに乗る。日本のマイクロバスを改造した乗合だ。道は判っていたが、「サンミゲル?」と聞くと頷くので乗り込む。1ソルだ。バスが走り始め、俺の予想では曲がるべき交差点を突っ切る。
脳内に警告ランプ点灯!いや〜な予感感がする。バスはドンドンと走る。脳内にアドレナリンが滲み始める。交差点については客呼びするために止まるので、後ろの車がクラクションを鳴らす。気違いじみたこの町の騒々しいクラクションはこのバスのが主原因になっているようだ。客は数ブロックで降りる。歩いてもたいした距離ではないのに危険なのか、裕福層が多い地域だからか良く判らんが、それでも徐々に客が減り始める。
脳内警告ランプが黄色から赤に変わり、ブエノスアイレスでの一件がフラッシュバックする。前回は注射器だったが、今回は凶悪そうなチェーンを持っている。どっちにしろヤバイ東洋人であることには変わりがない。受け入れ難い事実だが、誠に残念ながらどうやらまた遭難したようだ。それでも前回に比べて心に余裕はある。なぜならポッケには宿の地図を持っているからだ!遂に乗客が俺一人になる。
太陽がどう考えも明後日の方向にある。
予感的中!バスが郊外に向かって爆走を始める前に軌道修正しなければならない。すっかり暇になったバスの車掌に地図を見せると首を横に振る。デンジャー!やはり違うサンミゲルに行くのかっ!とっととバスを降りる。脳ミソがアドレナリンの海に浮かんでいる!落ち着け、俺!スラムチックな場所で通行人は殆どいなかったが、新聞屋が一件あったので「ここからプラザ・サンミゲルは遠いのか?」と聞く。オヤジは店から出てきて「バスに乗れ」と乗るべきバスを教えてくれる。バスが来ると車掌に「コイツはプラザで降りるからな」と伝えてくれる。お礼を言ってバスに乗る。
バスから街中を見ていると車の修理工場らしい工場が幾つか並ぶ一角があった。そこからプラザは数ブロックだったので、一旦プラザまで行き、降りて、再び来た道を歩く。人気は少ないが、暴漢に襲われたところでこっちはチェーンという最強の武器を所持している。気分は宍戸梅軒。しかも、チェーンを持った手は先ほどの作業で切った手首から流れ出た血が固まっていて迫力十分なので、多分大丈夫だ。
でも、今日もまた警官には会いたくない。
歩くと結構距離があった。工場のアンちゃんにチェーンを見せ、切ってくれ、このピンを削って叩けば抜けるとジェスチャーで説明。意志は通じ、アンちゃんはさっそく作業に入る。ピンを削るもなかなか抜けない。俺も作業を手伝いながら何とかピンを抜こうと二人で頑張る。20分程頑張ると漸くピンが抜けた。よっしゃー!二人で喜ぶ!でもホントはどうやってピンを抜くんだろう。また石井さんに教えてもらわないとな。10ソル渡したら暫く考えて、5ソル返してくれた。ありがとう!
夕暮れの道を埃にまみれ、真っ黒な手にチェーンを入れた買い物袋を持って歩く。ショッピングセンターで買い物を楽しんでいる客達が俺を怪訝な顔して見ている。信じられない程冷たい目で俺を見る。露骨に邪魔してわざわざぶつかってくる。今日は一日作業をしていいて確かに薄汚れた身なりだが、俺とお前ら一体何が違うのだ!?ここには綺麗な格好じゃないと来ちゃいけないのか?かなり不愉快な思いをする。彼ら裕福層の選民思想的態度こそが、この信じられないような貧富の差を生むのだ。ここでショッピングを楽しんでいる奴等は貧しい人々にチャンスを与えることはきっとない。
スーパーでジュースを買おうと思ったがやめた。俺は時に人に怯え、人と笑い、人に怒り、人と喜ぶこともある。しかし、知性の欠片も良心の一片も持たない奴以外、人を蔑む事はしない。
あれほど冷たい目を俺は持っていない。
- 20 / Mar / 2005 Lima, Peru.
今日は完全OFF。
日記をつけ、これからのルートを研究する。
明日行く予定のクスコ・マチュピピュのついて予備知識を頭に詰め込む。
再びご馳走を食べて、ゴルゴを読んで、本能の赴くままに寝る。
- 21 / Mar / 2005 Lima, Peru.
朝6時に起きる。
体調万全。恐らく高山病も平気だろう。昔、中国―パキスタン国境の4千数百メートルの峠をバスで越えたことがあるが、少し動くと息は切れるものの、バスで唯一元気だったことを思い出す。環境に対する適応能力には多少の自信がある。
8時前に空港へ行く。空港でチケットを買おうとカウンターに向かうも今日は満席だと言う。なんでも復活祭なのだそうだ。観光地に足を向けようと思うと得てしてうまく行かない。キャンセル待ちもいっぱいいるというので、素直に明日の昼のチケットを買う。
92ドル。バスは安いらしいが、あんなクソバスには一円たりとも払う気がしない。
少しかっこ悪いが宿に戻る。
今日ものんびりするかぁとまっすぐゴルゴを取りに書庫に行こうとすると、武雄さんに「マンガ読むくらいなら天野博物館でも行って勉強して来い!」
痛っ!ぐふっ!(吐血)うぅ〜、おっしゃる通りです。少しは観光してきます。
一旦昼飯を食いにプラザのケンタッキーに行く。レジの女の子がメチャクチャ可愛い。注文をすると名前を登録され、引渡し券になるようだ。「ジャッキー・チェン」と名乗る。真顔でレジを打つ女の子の頬がピクっと動く。「ジャッキー・チェン?ホントに?」と聞いてくるので「ごめん、ウソ。ホントはゴクウっていうんだ。オラ・ゴクウ!腹が減ってカメハメ波が出ない。」とつぶやくと、店員皆大爆笑。後ろの客まで笑いながら「日本人か?」と聞くので「いや、サイヤ人だ。」と答える。男の店員は腹を抱えて笑っている。
昔、電波少年でドロンズがリマで売れたことがあるが、ペルーのお笑い、さほどレベルが高い訳ではないようだ。
尋常ではない量のフライドポテトが出てきた。
どうやらサービスのようだ。ラッキー!
昼飯を食ってから宿に戻ると今日来た旅行者も一緒に行くという。春からお医者さんになる中田君。青山さんとハンガリーで会ったらしい。二人とも凄い旅をしている。
天野博物館は予約制で入場無料。日本人の研究者が親切に説明してくれる。考古学は極限まで高められた想像力と地道な調査を要する夢の学問。いままで色々な博物館に行ったがここが一番面白かった。観光もしてみるものだ。
その後、中田君と新市街まで歩く。新市街でアクセサリーを見て廻る。二人とも下手な女の子より品定めが厳しい。お互い納得の品を手に入れ宿に戻る。明日の夜のフライトで日本に帰る中田君に日本へのお土産を持っていって貰いたいとお願いすると快諾してくれた。あり難い。
最短3日で届く特急便を中田君に託す。
宜しくお願いします。
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