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- 13 / Jan / 2005 San Antonio - Sierra Grande, Argentina.
1518K→1825K(307K)
昨日は速度の出ないネットで写真を太一に送るのにエラク時間がかかり、2時に寝た。おかげで大寝坊をかましてしまう。しかし今日は150キロも走れば大きな街があるので疲れたらそこで泊まればいいと、ジャネットとホテルのおばさんにカブにメ ッセージを書いてもらい、9時に出発。
日差しが強く熱風が吹く。休憩しようにも日陰が無い。11時頃に漸く数本の大きな木が生えている場所を発見し、休憩を取ろうと思ったら、ガサガサと茂みがゆれる。ビビッていると、子犬がヨロヨロと出てきた。大分衰弱しているようだ。耳の周りから首筋に大豆程に大きくなったダニをいくつも付け、それをこそげ落とす体力もない。可愛そうに片目と顔半分が殆ど腐っている。もう片方の眼も化膿し完全に塞がってしまっている。
ここは旅人が木陰を見つけ休憩するせいか、ゴミ捨て場のようになっているので旅人の残す食べ物を食べて生きてきたのだろう。俺の目の前でぐったりと横たわり、クーン、クーンと鳴く。俺の持っている食い物と言えばビスケットとペットボトルの水1/3、そしてオレンジ2個だけだ。ビスケットを分けてやろうかと思ったが、やめた。多分ビスケットを食べる体力は残っていないだろうし、食べれば今度は水を欲しがるだろう。残念ながら分けてあげる水は持っていない。前にも後ろにも数十キロ以上町はなく、通る車も少ない中で転倒でもすれば、俺がこの子犬のようになってしまう事だってある。死というものをスゴク身近に感じ、怖くなった。
子犬の鳴き声から逃げるようにその場を離れた。
俺はこのまま何もせずに行って良いのか?何度も自分に問い掛ける。けれど、俺には何も出来ないんだ。下手な動物愛護の精神はこの荒涼たる大平原には不要のものだ。延々と続く3号線では轢かれた動物を多く見る。動物を避けて自分が事故ってしまってはいけないのだ。 あの子犬が蛇だったら俺は助けたか?蛙だったら助けたか?ネズミだったら助けたか?答えはNOだ。可愛そうだが、あの犬は運が悪かったのだ。そう自分に言い聞かせながらひたすら走りつづけた。
少しでもあの場所から離れたかった。
2時過ぎにサンアントニオの町に着いた。飲み干したペットボ トルを捨て、新しく一本買いバイクに括り付けた。GSに併設さ れていたレストランに入りメニューを見るとサーモンと書いてある。うおー、鮭が食えるのか?感動してサーモンオムレツを注文すると、随分と時間が掛かった後、ムニエルのようなものが出てきた。いざ、ナイフで一口大に切る。 「!?」 白身だ。いくらここが日本から遠く離れた地球の裏側、アルゼンチンだからといって、鮭が白身になるわけネーだろ!しかもしょっぱい、全然旨くない。しかし、あの犬から逃げるように走ってきた俺が食べ物を残すようなもったいないことをしてはいけない。あの犬の分までと、噛み締めて白身の鮭を食う。
まだ時間が早いので、もう一つ先のシエラグランデという町まで行くことにする。相変わらず熱風が吹く中、バイクを止めて食うオレンジが旨い!
6時頃、シエラグランデの町に到着。地図には一万人の住人マークがあったので、たぶんホテルもあるだろう。町に入る道にインフォメーションがあったので安いホテルを聞く。ホテルまでの約1キロが未舗装なのに閉口する。トロトロとゆっくり走る。こんなところでカブを痛めるわけには行かないのだ。
ホテルは何だか合宿所のようだ。髭のオヤジがバイクを裏に止めろといってくれる。ここはフロントから良く見えるので安心だと。このバイクでウシュアイアまで行くというと、呆れていた。満タンでどれ位走るのかと聞くので約200キロだと答える。この先400キロガソリンスタンドが無い区間もあるぞというので、コーラのペットボトルを見せるとそれではダメだと、俺を厨房に連れて行く。厨房で使い切った5Lの洗剤容器をくれ、「これを持って行け、それから水もたくさん用意しろ」と言ってくれた。
オヤジは俺のことを随分と心配してくれる。本当にありがたい。
レストランの場所を尋ねると、3号線の反対側にあるらしい。
カブをいたわって歩いていく。チキンとコルデーロ(子羊の肉)が最高に旨かった。
俺は今日も生きている。それだけで最高の一日だったと、感動した。
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