会話レッスンの効果的活用法     


通訳として日本語からフランス語に訳せるためには、まず自分の言いたいことくらいはフランス語ですらすら言えることが前提になります。

その意味でフランス語の表現力を強化するには、基本的構文の暗記など様々な方法があります。しかしある段階で、フランス人を相手に実際に喋ってみる機会が必要になります。フランス人の ami(e) ou petit ami ou petite amie でもいれば別ですが、ある程度まともに喋れない内はそれを獲得するのも難しい。となると、お金を払って会話の個人レッスンを受けるしかありません。その際に、なるべく投資効果を高くする方法をご紹介します。

1)普通は一時間ン千円払ってフランス人の先生を独り占めにするわけですが、自分がぺらぺら喋れない内は、相手の先生が好き勝手なことを言って時間を埋めてしまうことになりがちです。しかし今ではヒアリングの練習は、インターネット上の podcast 等を利用すれば充分できます。例えば普段から France Culture の色々な番組を聞き、面白そうなものは全部聞き取れるまで何度も繰り返して聞くなど。

従って個人レッスンでは、自分が喋ることに専念すべきです。しかし何も用意せずに出掛けて行って喋ろうとすると、自分の趣味でも語ってあっという間に種切れになります。それを避けるには、一時間のあいだ自分が喋り続けられるだけの内容を、事前に用意していくのが宜しい。時事問題なり映画や小説の感想なり、要点を日本語でメモして行き、その場でセンテンスを作りながら話を展開します。その上で、fautes de français や、聞いていてすぐに趣旨の通じない箇所があったら、どう言うべきかを先生に教えてもらうのです。

従って、一連のレッスンを始める前に例えば次のように先生に頼みます: J'ai besoin d'améliorer mes capacités d'expression en français. Je vous prie donc de m'écouter sans prendre la parole vous-même, et d'intervenir uniquement pour corriger des fautes de français ou pour modifier des phrases qui ne sont pas facilement compréhensibles.

このように説明してもこちらのニーズが理解できないフランス人や、ついつい自分で喋ってしまうフランス人は、余り頭が良くないわけですから、お金を払って先生にする価値はありません。本人か授業を受けている学校に言って、さっさと他の先生と取り換えて下さい。

2)会話の個人レッスンは、何十回も受けると相当なお金が掛かります。その代りになる手法として、自分の気に入ったテキストを選んで、数ページ、出来れば数十ページ暗記するという手もあります。前置詞その他も含めて一字一句違わず暗記するには、時間とエネルギーが要りますし、それなりにしっかりした文章、しかも自分の気に入る文章でないと出来ません。  

しかしそうやって相当の量を丸暗記すれば、フランス語の構文というものが頭にしっかり刻み込まれるでしょう。その蓄積を元にフランス語で話すと、余りインテリでないフランス人には「そんな喋り方する人いないよ」とからかわれるかも知れません。それでも、通訳の際に意味不明のセンテンスを並べるよりは遥かにましです。

3)最後に余談を一つ。フランス語で喋る際に en fait, eh bien, si vous voulez, comment dire, ... 等の合の手を連発する人を時々見掛けますが、それで自分のフランス語が流暢に聞こえると期待するのは、全くの幻想です。仕事で相手にするフランス人は、必然的にあるレベル以上の知性を持っているわけですから、そのような小手先の工夫は何の効果も無く、耳障りだと感じられるだけです。問題は、一旦そういう合の手を入れる習慣を付けてしまうと、後になってそれを無くすのは至難の業だということで、最初から気を付けることをお勧めします。

追伸その一。お読みになる方に失礼と思って最初に書きませんでしたが、「自分の言いたいことくらいはフランス語ですらすら言える」ことを目指す前提として、動詞の活用と基礎文法を身に付けてあることが不可欠です。それ無しにレッスンを受けても、投資効果は期待できません。

追伸その二。ついでにヒアリングの訓練について。
 ネット上も含めてテレビ・ラジオのニュース番組を聞くのも良いのですが、ニュースは往々にして事実の提示に留まり、解説・分析はあってもほんの僅かです。それより、France Culture の討論番組などが、知的内容のある議論の展開をフォローする訓練に適しています。例えば
   Du grain à moudre
   L'esprit public
   La rumeur du monde
などは、インテリを二、三人連れてきて特定のテーマについて議論させる形式を取っています。申すまでもなく、上に挙げた他にも多くの番組が podcast 形式で入っていますので、繰り返し聞くには便利です。また
   Concordance des temps
は、最近の事件を過去の似たような事件と結び付けて、時代・風俗の変遷を感じさせるという、面白いコンセプトの番組です。