村木教授のワイン教室


20033.16 緑ケ丘自治公会堂

山梨大学の名誉教授である村木先生に誘われて、ワインのお話を聞きに行った。対象は緑ケ丘自治会の皆さん。近く緑ケ丘に引っ越す予定との話を村木先生に話したことによる。ワイン文化のあけぼのシリーズと称して、第1回は、「ワインの起源」。生きている間に全部話し終えるかわからないと言いつつ・・。

ワインの起源には諸説ある。たとえば旧約聖書でノアの箱船の話がある。大洪水がひいたとき、葡萄を植え、ワインを作り、飲み、裸で寝ていたノアをどう息子たちが扱ったかで息子たちの取り扱いを決めたという話、エジプトでは墓の中の壁画にワインつくりの情景が描かれているという話など諸説あるが、そのように記録される前にワインは誕生していたはずである。
 ワインの作り方を知らない以上、ワインを作ろうと思って作ったわけではなく、偶然にできたはずである。サルがどぶろくを造っているのを見て人間がまねて作ったという説もあるが、これも現在の動物学者が数百種類あると言われる猿を実験したところ、酒を造った猿はいなかったというから、これも違うであろう。
 それで偶然説には4つの疑問があるというのが今回のメインのお話であり、その疑問に答える形で結論を導き出す。
 第1の疑問。ワインは果汁から作られるが、発酵するためには数日置いておかなければならない。果汁を飲まずに何日か置いておいたのはなぜか。答え。貯蔵するつもりだった。ではなぜ貯蔵しなければならなかったのか〜まず、ワインが作られ始めた時期の問題とからむ。それは農耕文化が始まる前であったろうということ。農耕が始まる前は、食料確保の計画が立たないので、貯蔵が必要かつ切実であった(飢えないように)。農耕が始まったのは7000年から9000年前と言われている。このことはグルジア共和国で大量に発見された葡萄の種の年代測定が7000〜9000年前ということとも合致する。そして、葡萄は、穀物よりも古くから作られているのでここまでの推論から9000年以上前からあったのだろうということになる。次に場所の問題。熱帯雨林などでは食物の調達は用意であろうから貯蔵文化は発生しないであろう。これに対し、温度が涼しく、雨が少なく水が乏しい、高原地帯では、貯蔵の必要性は大きい。
 第2の疑問。普通葡萄を貯蔵するときは粒のまま貯蔵すると思うが、わざわざ葡萄をつぶして貯蔵したのはなぜか。高原では食べ物を探し回るとき飲み水が無かったろうから、水代わりだったのでは。葡萄が食料というよりも飲料としての独特の役割を持っていたのであ。 第3の疑問。当時の野生葡萄の当分量はどれくらいあったのだろうか。ワイン酵母の他、野生酵母(いやな香りになる酵母)、カビ、細菌などワインにとって有害なものが多い。ワイン酵母は発酵前は少数派だが、発酵が始まると、他の野生酵母、カビ、細菌を圧倒し、主流派になる。これはなぜか。まず、ワインは酸性であるから、ワイン酵母以外の酵母やカビ、細菌は酸性のなかでは生きていけない。炭酸ガスの発生により、酸素がないとカビ等は生育できない。ワイン酵母はこの点むしろ酸素が無いほうがよい、またアルコールが発生し、当然に殺菌作用があることになる。ワイン酵母はこの点アルコール耐性が高い。で、炭酸ガス、アルコールは、糖分が余分である。はちみつをくわえて発酵させた可能性も否定できないが、はちみつも簡単には入手できない。そこで当時のワインはヌーヴォーとワインヴィネガーとの中間の味わいだったのではなからろうか。
 第4の疑問。容器の問題。
 動物の革の袋の可能性もあったが縫製技術がそこまでなかったであろう。木をくりぬいた可能性もあったが石の斧では難しかったろう。土器のつぼかかめという可能性。土器がはじめて作られたのはいつ?年代測定によって1万5000年前に作られて、3000年かけて、ワインの起源の地に渡ったのではないか。
 以上の推論から次の結論的なものが導き出される。農耕が9000年。甕が1万2000年。そこでほぼ1万年前くらいじゃないか。場所は葡萄の原産地に近い高原地帯。葡萄の原産地としてはコーカサス山脈のふもとにあるグルジアとかアルメニアの付近ではないか。現在でもグルジアはワインの名産地であるし、アルメニアはブランデーの名産地である。氷河期でヴィニフェラ種以外の葡萄品種はみんな滅びてしまい、寒さに強かったヴィニフェラ品種のみが生き残りそこの原産地はグルジアやアルメニアではないかと言われている。
 なお、留保しておきたいのは1箇所か同時に作られたかわかならいということ、、もっと昔に作られていたが、文化が伝播しなかった可能性もある。
 ちなみに酒が好きな動物は猿。平気でウイスキー1本開けてしまうという。逆に嫌いな動物は象だそう。次の機会があれば、メソポタミアに新しい国が出来、そこでワイン文化がさらに発展したということで、その話をしたいということ。

 教室終了後、SB、リースリング、メルロ、シラーの品種別特性を利くということでロワールのプイィフュメ。ドイツのシュペートレーゼ。ナパのメルロ。チリのシラー。エルミタージュのシラーんぽ5種類のテイスティング。エルミタージュがもっとも値段が高いだけあって、バランスもよかった。