甲州古式仕込み

シャトー・メルシャン 甲州古式仕込み 2002

メルシャンのハーヴェストフェスティバルの際、メルシャンの工場敷地の広場ではバイザグラスコーナーのワインたちがならんでいた。そんな中で、甲州古式仕込みという新製品のワイン(といっても500本のみでメルシャン勝沼工場のみで購入できるワイン)のプロモーションがあった。



 このワイン、係の人によると「メルシャンにとても貢献のあった方がこの前亡くなられてその遺言により作られたものなんです」という説明をしてくれた。そこで、「麻井さんのことですか」と聞いたら、そうですということであった。麻井宇介氏(本名麻井昭吾氏)はメルシャンの工場長から理事までされてから、主としてワインに関する著述業に入られた方である。係の人からはくわしい説明を聞かせていただいたが、私の理解能力のせいで内容をうまく把握できず、何度か聞き込んでようやく輪郭がつかめてきたものの、まだ詳細には良く理解することができなかったので何か説明を書いたパンフレットみたいなものがあったらくださいということになった。親切な係の方は、パンフがないにもかかわらずメルシャンの書物倉庫みたいなところから「日本のワイン・誕生と揺籃時代ー本邦葡萄酒産業史論故」(日本経済評論社)という麻井さんの書物を探しだしてきてくれ、その古式仕込みに関する引用箇所のコピーを渡してくれた。どうもありがとうございました。 

 でそれによると赤白いずれも破砕せず、直接圧搾して果汁を取るというシャンパンの仕込みのようなスタイルと、発酵槽の中で圧搾区実を積み替えながら絞るという方法のようである。不正確ではいけないので、原文を引用すると、成熟の実を槽にいれ、葡萄液の10分の3を搾り、その後上下を積み替え、10分の5を絞り、また前のごとく10分の2を絞るのだそうである。それによりフルーティーな厚みのあるワインができるということで、なくなる前にもう1度あの作り方で造ってみてくれないかと病室で話されていたそうである。赤も今後製品化を考えているということである。
 麻井さんの遺作ともいえるこのワイン。思わず1本購入させていただいた。