2003 ブルゴーニュ


ブルゴーニュワインの2003年の第一印象は、総括して述べれば、赤ワインはフルボディで力強く、白ワインは豊かで濃密である。今年はぶどうの糖度が高かったので、補糖はあまり行われなかった。黒ぶどうは皮が厚く、果汁が少なく、タンニンが多く、熟したキャンディーの様な果実のアロマがあり、味わいはスムーズでよく熟していて魅惑的なワインとなった。収穫直後は、少ない酸が懸念されたが、フルボディであったので、うまくカバーされ、傑出した年となっている。一方、少ない酸のために、白ワインは、「とても良い」レベルである。フレッシュであるより、熟していてコクがある点が目立つ。バトナージュはほどほどの回数に抑えられるだろう。アペラシオン毎に評価するには時期が早すぎるが、斜面のふもとの、深い粘土質の土壌のほうが、水分を蓄えやすいというメリットがあったようだ。(ブルゴーニュワイン委員会広報誌”en direct de la Bourgogne“ 10月号)

ブルゴーニュワイン委員会
 ジャン・シャルル・セルバン氏
 ブルゴーニュ地域の収穫開始日は例年より3週間から1か月早い。(8月13日=クレマン・ド・ブルゴーニュ、マコネ、コート・シャロネーズ、マランジュ。8月18日=プイィ・フュイッセ。8月19日=全てのAOCレジョナル、AOCコミュナル、オート・コート。8月25日=シャブリ、ヨンヌ県のAOC)
 例年、コート・ド・ニュイ、コート・ド・ボーヌ、オート・コートの間には一週間程度のずれがあるが、今年は8月18日に殆ど一斉に始まった。至るところ好天で暑く、成熟に差が出なかったためだ。こうしたことは今までに一度も例がなく、本当に例外的な年となった。過去には1893年にコート・ドールで8月24日に収穫を始めたという記録があるが、今年はその記録を塗り替えた。
 多くの栽培家は例年通り9月10日頃からの収穫開始を前提に準備をしていたのでだいぶあわてたところもある。例年収穫に駆けつける人がヴァカンス中だったり、他の仕事に就いていたりで直ぐには収穫作業に加われなかった。特に、宿泊施設を持たず、毎日収穫人を集めるドメーヌは苦労した。このため、シャブリやマコネでは例年以上に収穫機械が注目された。しかし、使用できる台数に限りがあり、また、使用する時期が重なるため今年に限って機械摘みが急激に増えることはないだろう。余りにも急激な暑さに襲われ、場所によっては旱魃と一種の超熟によって葡萄が乾いてしまった。幸い8月第4週から通常の年の気温に戻った。
 フランス各地で水不足が伝えられているが、ブルゴーニュは地中に蓄えられた水が十分にあったため旱魃の被害は最小限に抑えられた。また量は少ないが8月に2日間雨が降った。太陽に炙られ一時的に葉が乾いても、これは表面的な現象で、実際には水分が補給され続け光合成は続いた。
 収穫量は7月段階で例年より20〜25万hl少ない135万hl程度と発表したが、これをさらに下回ると思う。猛暑で実が凝縮し果汁の量が少ないことと同時に、春に起きた大きな霜害が影響している。特に白ワインは霜害で15〜30%の収穫減が見込まれている。加えて雹による被害も出た。中には霜害と雹害が重なり殆ど収穫が見込めない畑もある。極めて異常な気象条件が重なる年となった。
 心配は猛暑で葡萄が炙られ酸が非常に弱くなったこと。酸はワインに新鮮さをもたらし、菌の繁殖を防ぐために欠かせない。pHが高い今年は醸造で酸の水準を高く保たなくてはならず、例年以上に注意深く醸造を見守る必要がある。しかし、収穫葡萄は赤、白共に腐敗のない素晴らしいものだ。