山本智子(日本コロムビア)『東京雨ん中』
〜ソングブック4月号〜

4年目4作目で出会った等身大の楽曲に、
山本智子らしさ満ち、期待高まります! 


 生きるってことは、自分探しの旅なのかも知れない。山本智子の4作目シングルを聴いていて、フとそう思った。従来の3作はたきのえいじ・徳久広司コンビによる演歌で、新曲は伊藤薫の作詞作曲でニューミュージック系『東京雨ん中』。明るく爽やかなサウンド、これにジャスト・フィットした清潔感と伸びやかな山本智子のヴォーカルがしっとり、時にその抑えた歌唱の中でインパクトも演出しつつ、ジックリと聴かせている。
 山本智子は、同曲で間違いなく、確かな自分に出会ったような気がする。今、
23歳…。
「デビュー前、そして3作目までは両親の影響に端を発した“演歌一途”が続いて来たけれども、どこかで何かが変わったの…」
 現在、彼女はラジオ番組
4本を担当。先輩ゲスト歌手を迎えたトークなどを通し、自身の世界を大きく広げたこともあろうが、やはりターニング・ポイントになったのは、昨年秋のファースト・コンサートだったかも…。
「ポップス、フォーク、ニューミュージック系の歌をたくさん唄って、そこから何かが見えて来た」
 生きることは、自分探しの旅…とは言え、青春はアッという間。幾つもの人生を試みるなど出来るワケもなく、小説を読むように他人の歌を唄っての疑似体験で、自分が見えて来ることもある。ここで得たキーワードが“今を生きる”と“街”。現代社会ではもはや体験出来ぬ叙情や情緒重視の演歌は、もはや虚構世界で、ここで勝負するなら着物姿で凛と決める大覚悟が必要ってもの。
 しかし、彼女のステージ衣装は洋服で、演歌の虚構を唄って存在感出すのは至難のこと。で、新曲です。これが実にいいのです。ここには確かな若い女性の息遣い、存在感があって、その瑞々しさが聴く者に安らぎと癒しさえも生み出す魅力も…。
「ジャンルに関係なく、山本智子らしさをアピールして行きたいのです」
 その“らしさ”がここにある。そもそもの歌との出会いは、永井龍雲『暖簾』だったと言う。フォーク、ニューミュージック系楽曲が好きだったワケで、原点に戻って確かな自分を得たと言えそうです。また歌謡曲シーンも氷川きよし君に代表される股旅のド演歌系に比す揺り戻し現象も出て来て、目下フォークやニューミュージック系歌謡曲に脚光が集まり出していて、その意味でも新たな山本智子は注目の存在。
 迷いから脱皮し、自身の魅力的世界を掴んだ彼女の活躍に大期待です。

「目下、ギター弾き語りが出来るように一生懸命に練習中」。ファッション、イラスト、プロデュースと多彩な才能発揮の智子ちゃんのこと、ギターが自在に弾けるようになれば、自作曲への期待も生まれます。



キラ星館目次に戻る                  EnkaTopに戻る

HOMEに戻る