お待たせ致しました!待望の新曲、4月19日発売!
『高瀬舟』
作詞:水木れいじ/作曲:五木ひろし/編曲:池多孝春
C/W『旅路』作詞:水木れいじ/作曲:五木ひろし/編曲:南郷達也 CD:FKCM-10 TAPE:FKSX-10


五木演歌の“王道艶歌”。それは滋味、錆味の利いた和の珠玉芸
本格艶歌の初作曲。女性カラオケファン渇望の新曲が遂に登場

 

 哀切感に充ちたメロディーに、ほのかに煌めいているサウンド…。変化に富んだ瀬の流れにも似て琴、マンドリン、ギター、クラビエットの音色が多彩に重なる。
♪雪も桜も 蛍火も〜
 五木さんの真骨頂。咽喉の奥でころがし、響かせる歌唱が艶の情緒をワッと広げる。これぞ五木節の王道“艶歌”。女性歌手が艶歌を唄えば、どこか生身の“身もだえ”となって油絵風…。それに比し五木艶歌は水彩画のように淡くもなく、版画のようにシンプルでもなく、渋味と錆味がたっぷりと効いた顔料で描かれた日本画のよう。歌唱の「品」は“てらいのなさ”をもって言われることが多いが、五木艶歌の場合は芸が珠玉になっての「品のある艶歌」で、これは他の歌手にはとても到達できない域だろう。
 昨年春、金沢で『ふりむけば日本海』初キャンペーンでのこと。五木寛之先生がこう言った。
「この新曲(『ふりむけば日本海』)が五木節の男性版とするならば、五木節の女性版代表が『細雪』だと思います。近代的でありながらも日本情緒と日本語の美しさもある。この両曲のコントラストが実にいい。僕のリクエストとしてぜひ『細雪』を唄って下さい」
 『細雪』は今から 23年前。作詞・吉岡治、作曲・市川昭介、編曲・池多孝春。題名は谷崎潤一郎の小説からだが、詞は小説に関係のない艶歌…
♪抱いて下さい もう一度〜
 五木さんは翌年、腰を抜かすような大ヒットを放った。『長良川艶歌』。100万枚を超えるスーパーヒットで第 15回日本歌謡大賞と2度目の日本レコード大賞の各大賞を受賞。 TBS系「ザ・ベストテン」600回記念で12年間総合ベストテン第1位の偉業も達成。
 五木ひろしに“艶歌シリーズ有り”と言わしめたエポックメーキングな連続ヒットになった。
 そして 20数年後、五木先生の言葉がヒントになったかは定かではないが、その頃から“再び艶歌を…”の意欲がみなぎり、そのアイデアが次第に発酵していったのだろう。
 私たちには見えない糸でいくつもの“必然”がつながっているようだった。「着物カレンダー」の制作。ここでウラ話を公開すれば、一度撮ったすべての写真をボツにし、五木プロデュースで入念に撮り直し。むろん採算度外視、これが一流を求める完璧主義者の流儀…。 7月25日、ヤマノホールディング「五木ひろし着物ブランド」制作記者発表…。
“艶歌を着物で唄おう”。次第にコンセプトが明確になって、ディレクターに作品発注を指示したのが9月。 With石川さゆり「ふたりのビッグショー」最中だったと言う。
 一方、新任ディレクター・飯沼もこう考えていた。
「五木さんの劇場ステージ “和のコーナー” は『長良川艶歌』と『細雪』が定番だが、あとは『傘ん中』の和風ヴァージョンや『夢しずく』、あるいはカヴァー曲になるんです。ぜひとも艶歌のオリジナルがもう 1曲欲しい…」
 かくして水面下で秘かに作品作りが進行。編集部が、この新曲コンセプトを耳にしたのは 1月末。「ミュージックバード」収録現場。話題が着物カレンダーの素晴らしさに及んだ際に、ポロッとこう言った。
「僕は今年の新曲を着物姿で唄おうと思っているんですよ。今までテレビで新曲を唄う時はいつだって洋服だったからね。紅白歌合戦も 35年間出演していますが、着物での出演は数えるほどしかありません…」
 間髪を開けずレコーディング取材。5行詞の4コーラス。
♪旅路の夏に〜の部分が「秋に」「冬に」「春に」と四季を巡った『旅路』。
 しかしスタジオでは、同曲はカップリングだろうの雰囲気。そして『高瀬舟』のオケ撮り。
「五木さん、仮り唄をお願いします」。
 ミキサー室にブースの中の五木艶歌が充ちた。
♪たとえ 一夜の罪でいい〜 
 うごめく妖しい情念が、その地味、錆を有した声と歌唱で次々と情緒充ちた絵を浮かべて行った。誰かが言った。
「これぞ、五木演歌の王道艶歌です」
 レコーディングは順調…と思われたが、新曲資料(音源)が届く気配が一向にない。明治座公演中に小耳に入る。前作『ふりむけば日本海』がそうだったように、タイムリミットぎりぎりまで可能な限り妥協を許さずに変更、修正を繰り返し練り上げるのが五木流儀・・・。
 改めて『高瀬舟』を聴いてみる。まずタイトルは『細雪』と同じく文芸作(森鴎外)からだが、内容はまったく別。
3コーラス・サビ「♪女泣かせの 高瀬舟〜」を聴きながら、なぜか「♪女泣かせの 五木節」と思った。
 そう呟いて、フと大変なことに気付いた。『ふりむけば日本海』がカラオケ層に浸透し、巷で唄われたことがセールスを牽引したが、そのカラオケ層の約7割を占める女性たちにとっては、ただ指をくわえていたのではないかと。女性たちの五木艶歌への渇望が渦巻いているに違いない。
 ザッと遡ってみる。『アカシア挽歌』 『逢えて…横浜』。『北物語』は女性詞だが艶歌ではなく、『愛のメリークリスマス』 『傘ん中』、『渚の女』は新曲ではなくニューヴァージョン。『逢いたかったぜ』 『浮浪雲』 『おふくろの子守歌』 『風雪に吹かれて聞こえる唄は…』 『山河』…。
 あぁ、なんということでしょうか。艶歌系楽曲がこれほど長きにわたって途絶えていたとは驚愕。アルバム『美空ひばりを歌う』を例に挙げるまでもなく“女歌の第一人者・五木”がここまで女性ファンを待たせたか!
 しかも3連符を得意とする本人初!本格艶歌の作曲。『ふりむけば日本海』のヒット、W五木アルバムに自作曲を収めるなどして、満を持しての自作メロディーによる艶歌。全国カラオケ好きの全女性の皆々様、長らく・長らくお待たせ致しました。“五木ひろしの王道艶歌=『高瀬船』”を、さぁ、心おきなく存分に唄って下さい。爆発ヒットの予感がしてならない…。

写真上は『高瀬舟』の水木れいじさん、五木さん、そして編曲の池多孝春さん。
写真下は『旅路』の南郷達也さん、五木さん、水木さん

『ふりむけば日本海』お陰様でロングヒット達成〜
皆様の熱心な応援、ありがとうございました〜
日本アマチュア歌謡連盟「流行歌大賞」も受賞しました


 平成 14年の潟tェアイブズエンタテインメント設立から最も大きなヒットとなったダブル五木作品『ふりむけば日本海』。発売当初からパワフルなセールスでオリコン演歌チャートベスト 10位内に長期維持。聴く歌であると同時に唄いたい歌として男性カラオケファンに浸透。巷で唄われ出してセールスの勢い止まらずでした。 11月新歌舞伎座楽屋でキングレコードよりヒット賞を、また明治座楽屋で日本アマチュア歌謡連盟より男性歌手初の「第 16回NAK日本流行歌大賞」を受賞。ちなみに同連盟05年度「感動した歌」と「カラオケ大会男性愛唱歌」各1位。今年の新曲『高瀬舟』は女性カラオケファン殺到でまた大大ヒット予感です。


<執筆後記>
こうした原稿の多くは、音が上がった時点で本人取材なしのまま音源から推測し、その楽曲その歌唱特性を探り、できれば必然性まで探り出して原稿を書くことが普通だ。まぁ、ここが書き手の真剣勝負。本人が思っているだろうコンセプトをずばり文章にできれば成功だし、この方向が狂っていたらライター失格だろう。そんな危ない仕事を、振り返れば30歳ごろからずっとやって来た。当初の主な仕事はニューミュージック系のヤマハで、創作過程もレコーディングの様子も分らず上がったばかりの音を渡されて、新曲チラシ用のコンセプト・コピーを書き、それが宣材になり、セールストークになり、そこからキャッチフレーズも生れる。ある時、あるディレクターが言った。「やまちゃんは、いつも怖い仕事をしているねぇ。でもいつも当たってるからいいけれども…」。
『高瀬舟』のプロモーション体制が整い、あたしは次にカラオケ誌の記者として取材する。五木さんは、なぁ〜んだ、おめぇ〜かという顔をして、こう言ってくれたもんだ。「会報の原稿いいよ。僕が言いたいことがもみんな書いてあった」。あたしのクビがつながった瞬間だった。


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