園まり 『2人はパートナー』
デビュー45周年記念、25年ぶりの新曲
この再チャレンジ楽曲に“本物の園まり”がいるような気がする…。


「ソングブック」平成18年11月号掲載

存在感のある中低音の響きをベースに、持ち前の高音も発揮で説得力ある人生応援歌。
中高年の新たな“星”誕生!!


 60年代初頭…。ロカビリー旋風、水原弘やザ・ピーナッツ、そして橋幸夫・舟木一夫・西郷輝彦の御三家に、中尾ミエ・伊東ゆかり・園まりの三人娘らが連日のようにテレビを賑わせて昭和歌謡曲の百花繚乱時代を迎えた。
 その頃に胸をときめかせていた方々は、あれから 40数年の今、定年を間近にした団塊世代かその周辺世代だろう。
 当時、『何も云わないで』『逢いたくて逢いたくて』『夢は夜ひらく』の大ヒットを放った園まりが、再び私たちの前に帰ってきた。
 デビュー45周年記念、25年ぶりの新曲は『2人はパートナー』。原曲は韓国ドラマ「初恋」挿入歌だが山上路夫訳詞、日本歌謡曲の編曲で『二人でお酒を』彷彿の軽快リズムとサウンド。耳に飛び込んで来るのは、太い中低音の響き。“園まり”と言われなければ、新たな歌手と思ってしまうだろう。揺れる高音のわずかな部分に、どうにか当時の面影がにじんでいる。
「あの頃はソプラノでムード歌謡風に唄っていて、今の声・歌唱とはまったく違います。あの頃は自信もなく好きでもなく唄っていて…」
 衝撃的の告白は続く。
「父に連れられて渡辺プロ社長宅でオーディション。宮川泰先生のピアノで大津美子さんの『ここに幸あり』を唄ったんです。私には伊東ゆかりさんのように幼少期から米軍キャンプで唄うなどのキャリアもなく、ポップスも知らぬまま“三人娘”が結成されたんです。三人での活動は 3年間でしたが無我夢中、忙殺スケジュールの中で次第に自分を見失って行くようで、徐々に仕事の現場から遠ざかっていった。イヤイヤ唄っていましたから喉も閉まっていたんでしょうね」
 今明かされる秘話…。
「その後、家族で花屋を経営。バブル全盛期にお店が売れて、ポツポツやっていた仕事からも解放され、 42歳で念願のマンションひとり暮らし。渡辺プロダクション退社後“六甲のおいしい水”CMソングで話題になりましたが、やがて完全休業…」
 平成15年。草月ホールで40周年記念リサイタル。菅原洋一とデュエットした『アマンU』を22 年ぶりの新曲としてリリース。
「この頃になってやっと自ら“唄ってみたいなぁ”と思うようになった。人との出会いが楽しくなってきたんです。芸能界には無縁のお友達とカラオケにも行ったりして、改めて“歌っていいなぁ”とも思いました。すると不思議なことに喉も開くんですね。あぁ、声って身体や心とつながっているんだと気付きました」
 その頃から“3人娘”再結成を誘われるが、まだ慎重だった。
「もうちょっと待って…と何度も繰り返し断っていて…」
 昨年、40年ぶりに再結成。1月の中野サンプラザホールを皮切りに3人娘コンサートを全国約 30会場で展開。さらに「ロカビリー三人男&三人娘コンサート」を国際フォーラムと大阪城ホールで開催。
「“友情っていいなぁ”と思いました。同時に同世代の皆様方と青春を共有しあった歌で、再び楽しく元気に励まし合えることに感動しました」
 新曲『2人はパートナー』は、こうした諸活動を通して改めて磨き込まれた喉でレコーディング。ここにはかつての彼女とはまったく違った声・歌唱があって、 45年を経た今こそ“本物”と思わせます。
 その太い中低音に、強靭な芯と艶もある。生きること、唄うことのスタンスが固まって、初めて得た声と歌唱。
♪いつも笑顔でいましょう 愛と友情胸に
 生きるのよ そうよ二人は大事な パートナー
 かつての彼女には考えられぬ説得力充ちた人生応援歌。
「この年齢でも、新たなスタートができるんです。それを同世代の皆様にお伝えしたい。3人娘コンサートで中尾ミエちゃんが客席に“ノッてるか〜い”と言いますと“おぉ〜!”という鬨の声が上がるんです。今、私たち三人は還暦前後で“これから本当の楽しさが始まる”と語り合っています。団塊世代を含めて私たちの世代は人口もパワーもありますから、新たな時代が作れるのではと…」
 意気軒昂。カップリング『恋歌』も華やかだった昭和歌謡曲テイストで新たな園まり世界を構築。
♪五日逢わないと 命が枯れる
 六日逢わないと 死にたくなるの
「最初は照れ臭かったんですが、そぅ、恋ってこんなに激しく辛かったんだわ、と思い出して…華やいでいます。紆余曲折がありましたが、それも今のために必要な年月だったと思っています。これからですね…」
 夢みる少女のように微笑んだ。

『2人はパートナー』
06年4月26日発売
(原曲:韓国ドラマ「初恋」挿入歌)
作詞:ユ・スンヨブ
訳詞:山上路夫作曲:ユ・シンヨブ
編曲:久保田邦夫



キラ星館TOPに戻る       HOMEに戻る