石川さゆり・シングルのライナーノーツ

ここは、さゆりさんがポニーキャニオンに移籍した来た1993年から
新曲リリース毎に宣材(宣伝材料)チラシにコピーを書いて来た、まぁ、業界内配布のライナーノーツ。
資料処理のために、ここに収録です。

『純・情歌』 
1993年10月6日発売
作詞:伊藤薫/作曲:彩目映/編曲:飛澤宏元


 デビュー21年目の石川さゆり移籍第1弾シングル『純・情歌』は、実に通算54作目です。今までのキラ星のような歌々を振り返ってみると、そこには「日本に生まれたこと、日本女性として生きてきたことを大切に、日本の情感を女性らしい感性で表現していきたい」という彼女の姿勢が貫かれていることに気付きます。この一貫したテーマ追求と真摯な姿勢は、画家や小説家に共通する表現者としての厳しさも感じられます。彼女がここから開拓してきた音楽世界は実に多彩。繊細な叙情歌、情感溢れる歌、底知れぬ情念がうねる歌、悲恋の歌、清冽なエロティシズムをも醸しだす歌、時として発表されるポップで軽快な歌…私たちは、そんな彼女の歌々によって“豊かな日本”を再認識します。
さて、『純・情歌』を聴くと、石川さゆりの世界がまたひとつ広がったように思います。悲恋の局面に、人生という長いレンジの視野を重ねて、スケール大きな鎮魂歌にも似た世界を構築です。石川さゆりならではの、まさに大人の“純・情歌”。繊細で落ち着いた歌声が、次第に透明感を増して時を超えるかのような広がりを展開します。不埒な恋が純愛に昇華し、その瞬間の感動が人生を貫きます。
 溢れる性の情報と退廃の風潮に、私たちは確かな感動を失い、曖昧さの中に生きています。彼女の清冽な歌声は、そんな私たちの心を洗い流すシャワーにも似て、少年少女のあの新鮮な感性を甦らせてくれます。
「いまの“ま”と言った瞬間に、今は想い出に変わるから今を、今を…大切に生きて歌いたいと心から思います」
 石川さゆりは、こう語っています。今を歌える歌手は恋、愛、感傷、情念を歌って、人生のレベルまで高めてしみじみと聴かせることができる。そんな歌手は石川さゆりをおいて他にいない…。

『飢餓海峡』
1994年4月21日発売 作詞:吉岡治/作曲:弦哲也/編曲:桜庭伸幸

 清冽な純粋愛を描いた『純・情歌』から一転!
 新曲『飢餓海峡』は、不器用だけど一途に生きる女の底知れぬ情念がうねる力作です。ドラマチックなオーケストラに絡む美しくも哀しいパンフルート。石川さゆりの歌は、熱い思いを抑えながらも、詞とメロディーの劇的な展開と共に次第に激しさを増し、歌にこめられた“女の情”が一気にドラマチックに展開します。過去と孤愁を背負った女が、命を賭けてでも愛を信じようようとする情念。“飽食”の時代に失ったものの多さに気付いて、今はむしろ“飢餓の時代”か。

 
同曲は説明するまでもなく水上勉が昭和38年秋に発表した長編小説「飢餓海峡」をモチーフに作られています。その2年後には、3時間の長編映画となって大ヒット。そして原作から約30年を経て、いま石川さゆりが新たな感動を歌い切ります。何時しか私たちが失った愛の強さが甦ります。この歌を人々はどのように思いで聴くのでしょうか…。

『北の女房』
1995年2月1日発売 作詞:吉岡治/作曲:岡千秋/編曲:川村栄二

「イヨッ、さゆりチャン!」
思わず膝を叩き、掛け声を発し、さらには上気した彼女の傍に駆け寄って、♪ヤンレー ヤンレー!と声を合わせ、共に汗を流したくなる…待望の“庶民派演歌”の登場です。
 音作りも、最新の珠玉さながらのサウンドから一変。どこかザラッとした感触で、生身の存在感を感じさせる仕上がり。のっけから下っ腹に力をタップリ溜めての、小気味良いコブシの効いたパワフルな歌声が響き渡ります。
 ここ最近のさゆり作品は、どちらかと言うと情念や叙情がギリギリまで追求されて“美”へ昇華された楽曲が続いて来たように思われます。聴く者はいきおい正対し、襟を正すようにに聴きがちで、気安く口ずさもうものなら“美”を冒涜するかのおののきさえ覚えます。が、新曲『北の女房』で一転です。女性歌手ナンバーワンの気負いもなく、庶民女房のそりゃ〜もう見事なまでに振っ切れての“今を生きている歓び”を謳歌です。
♪ヤンレー ヤンレー ヨイトヨイトマカショ 
 石川さゆりが両足を踏ん張り、背筋に力を込め、全身に汗を浮かべて歌っています。その声に彼女の火照った体温、肌に光る汗が伝わって来ます。そこに女の気風と逞しさ、健康的なセクシー、抱きしめたい可憐さが心を捉えます。こんな生身の温かい、身近で親しみの湧く石川さゆり、今までに見たことも、聴いたこともない…。石川さゆりの庶民派演歌の傑作誕生。
 いま、石川さゆりは汗流して働く男たちの“港”、元気の源です。

『大阪のおんな』
1995年7月21日発売 作詞:吉岡治/作曲:岡千秋/編曲:南郷達也

ノリにノッてる石川さゆりの期待の新曲、ついに登場です。
 下っ腹に力をためて庶民女房のバイタリティーをパワフルに発揮した『北の女房』大ヒットに次ぐ新曲は、気負いや力みが微塵もない“自然体・さゆり”の可愛い『大阪のおんな』。
 長引く不況に飲まずにいられないすべての男と耐える女に贈る応援歌です。♪難儀なもんや 難儀なもんやね 大阪のおんな 
 『大阪つばめ』『夫婦善哉』に次ぐ大阪演歌ですが、彼女の大阪演歌は従来より、ありがちなドロ臭さ、粘りや力みなしですが、新曲はこれらの楽曲よりさらにきれいな仕上がりです。しかし、アクがなくてインパクトに欠ける、と思ったら大間違い。石川さゆりが自然体で歌うと、思わずそのか細い肩を抱きしめたくなるほどに可愛いおんなが出現です。大人の匂いと、どこか少女のコケティッシュが同居した不思議な可愛さ、優しさが心ときめかせます。
 長引く不況、ここまで難儀な状況に追い込まれますと、浪速のド根性も空回り。余裕の笑顔で厳しい日々を送ってやるのが得策というもの、ネ、ご同輩! 作品は、おなじみ吉岡治、岡千秋コンビ。ごきげん気分の千鳥足にも似たゆったりしたテンポ、揺れるメロディー、そして優しくていねいな歌唱。歌い易さと親しみ易い詞で、カラオケ・ファンの誰もが飛びつかずにはいられない、またまた大ヒット期待曲です。
 ♪難儀なもんや 難儀なもんやね 大阪のおんな… 
 飲まずにいられない男がいて、可愛いおんなが思いきりすねて、甘えて、耐えています。ウン、難儀なもんやけど、こん可愛いおんながいる限り、頑張りましょ。
 なおカップリング曲『夏、うれしいね』は、石川さゆり大好評のキャッチーな仕上がりのCF曲。タイアップはおなじみ「金鳥」で本人出演。

『昭和夢つばめ』
1996年3月21日発売 作詞:荒木とよひさ/作曲:市川昭介/編曲:川村栄二

 『北の女房』『大阪のおんな』と、絶好調の石川さゆり庶民派演歌、期待の第3弾は北の、大阪の…と地域指定を外した大スケールの『昭和夢つばめ』。ホップ・ステップ・ジャンプ!の大ブレイクと参りたいところです。
 歌詞にある「昭和二桁」世代といえば、昭和10年から昭和63年生まれの現在61歳から8歳まで、日本の人口の約70%が対象です。しかし詞を吟味してみれば、この昭和二桁は昭和10年から昭和20年代生まれの、現在61歳からちょっと疲れを覚え始めた団塊の世代までか…。そう、彼らに共通するのは国土の復興、所得倍増、経済大国へと休む暇もなく明日の夢を追い続けて来た“夢つばめ”。そして今、バブルの崩壊とすっかり定着したコンピュータ社会。経済も政治も文化の様変わりし、疾走する時代にちょっと気後れを感じる世代になっています。そんな人々に、石川さゆりが遠い宇宙から銀河を超えてやって来たような効果音に乗せて…
「私たち、昭和から飛んできたつばめなのね」
 と、やさしく語りかけます。演ずる歌から一転、自然体の歌へ変化した石川さゆりの歌唱は、逆に説得力が増しています。昭和一桁の作曲家・市川昭介のメロディーも優しさに満ちています。
「夢つばめさん、今までほんとうにご苦労さま。これからもよろしくね」
というメッセージが歌唱の裏から聴こえてきます。日本はすでに高齢者社会に突入です。『昭和夢つばめ』は、その意味では高齢者の仲間入りをした人々と、明日の高齢予備軍(団塊の世代)への優しい鎮魂歌、応援歌。もはやヤング世代を超えて、一大勢力となった全中高年層を対象にした同曲は、平成の愛唱歌として限りなく広がりそうです。

十人十色を聴きこめば、日本女性の誰もが秘めた多彩な魅力。
すべてがあなた、すべてが石川さゆりです。

1997年3月21日、25周年5W10作品リリース

『愛告鳥』作詞:阿木燿子/作曲:南こうせつ/編曲:今泉敏郎
 膝枕の彼の寝顔に見とれつつ、愛の幸せをしみじみ感じるノンドラマの作品です。アコースティック・ギターが、そんな静かなくちろぎの雰囲気を盛り上げています。愛する者への母性的な優しさが庭先いっぱいにこぼれます。石川さゆりに、女性の穏やかな優しさを歌わせたら間違いなく天下一品。阿木の大人の詞、こうせつのギター・メロディー、さゆりの歌唱…新たな世界の誕生です。
『夕顔情話』作詞:荒木とよひさ/作曲:市川昭介/編曲:南郷達也
 夫婦ではない男と女の小粋な生活に漂う…甘美で、哀しい情景と心情が描かれた作品です。かなわぬ男と女の歌は、とかくハイテンションで訴えるように描かれがちですが、この作品はしっとり濡れた、艶やかな仕上がり。女性のいじらしさが前面に出て、このへんは石川さゆりならではの独壇場です。男女の妙に冴えた荒木とよひさの詞、哀愁満ちた市川昭介のメロディーが見事に合致。
『タンポポ』作詞:下地亜記子/作曲:加藤将貫/編曲:南郷達也
 ワルツのメロディーにのせ、石川さゆりが語るように、つぶやくように、ちょっと古風な謙虚で控え目な女性を歌っています。人を恨み、裏切り、泣かすより、信じて傷つく方がいい。そのこころは、根雪の下のタンポポ…。深刻にならぅ、いつかは咲くだろう花に、はかない夢を托します。現代女性が失った、かつての日本女性のけなげさ、可愛さいっぱいです。
『好きだから』作詞:久仁京介/作曲:岩上峰山/編曲:南郷達也
 「イョ!さゆりちゃん」と、思わず声が出る軽快ムード歌謡。コーラス入りで、カラオケ意欲をそそる楽しい作品です。男のわがままを何でも許してくれる“もの分かりのいい可愛い女性”。男にとって都合のよい女性ですが、ほんとうは、こんなに可愛い女性を泣かしちゃ、絶対にいけなんですよね。石川さゆりの歌声が、心はずませてくれます。
『恋路』作詞:たきのえいじ/作曲:叶弦大/編曲:今泉敏郎(松竹映画「必殺始末人」主題歌
 ドドド・ドーンッと迫力満点のサウンドで始まる、雪の港町女演歌です。テンポある詞に、石川さゆり
のヴォーカルがなんとも歯切れ良く快感です。胸に刺さる雪も小気味良く、勢いがあります。サッパリした男まさりの女性ですが、港にひとり残されて、やはり…こころの奥に抑えた哀しさがあふれ出ます。夢を返して…。たきの・叶コンビならではの、独特の港町演歌です。

『梅に鶯』作詞:たかたかし/作曲:岡千秋/編曲:南郷達也
 春を感じさせる日本情緒のサウンドにのせて、男に従順に寄り添って生きる、今は懐かしい夫婦演歌です。夫唱婦随がなによりの、女の歓びです。「ねぇ、あなた」とさしつさされつの旅の宿。夫婦ならではの艶が満ちています。日本の色艶を書かせたら右に出るものはいない、たか・岡コンビ作を、これまた絶品のさゆり節。こころ豊かになる日本の夫婦像がここにあります。
『歌麿 UTAMARO』作詞:吉岡治/作曲:弦哲也/編曲:若草恵/邦楽:西川啓光
 邦楽と現代歌謡がドッキングした意欲作品。邦楽にある神や霊の気配が、女性の情念の底深さを演出しています。全編、情念が総毛立つハイテンションなヴォーカル。♪滅びるだけのつらい恋…耽美世界の妖しい魅力の華麗な展開は、まさに石川さゆりの真骨頂。女性なら誰もが秘めているだろう、思い込んだら一途の情念。それはやがて現実をはなれてUTAMARO…。
『薄月夜』作詞:土田有紀/作曲:水森英夫/編曲:前田俊明
 演歌メロディー、演歌歌唱です。石川さゆりにはめずらしい硬質な歌唱から、したたかに、そしておおらかに生きようとする気丈な女性の強さと、その裏側に秘めた哀しみが、薄月夜のように浮かんできます。土田・水森コンビによる今までの石川さゆり作品になかった“さゆり演歌”の新境地です。
『愛の言葉よりくちづけを』作詞:岩田時子/作曲:三木たかし/編曲:若草恵
 ♪ブーゲンビリア 咲き乱れて その向こうは 海ばかり…。石川さゆりの透明感ある高音と共に、陽光をあびた南国の情景がパッとひろがります。年上の女性の心をまどわせる、多感な青年の黒い瞳。南仏の青春映画を観ているような、胸ときめく展開です。年上の女性の揺れる心に翻弄される青年。悪いのはどっち?
『残照恋鏡』作詞:小椋佳/作曲:宇崎竜童/編曲:川村栄二
 特徴的なメロディーが印象的です。燃えさかる夕陽に向って“一途な思いは恋花…散りません 散るもんですか”と高らかに歌い上げる石川さゆりがいます。海、雲、花…豊かな自然は女性そのもの。大地にしっかり根を張って美しく咲く南国の花々にも似た、たくましくも陽気な恋心…。唄い語るさゆり節に、のどかに揺り揺られて下さい。

『月の盃』
1998年4月17日発売 作詞:阿久悠/作曲:吉田拓郎/編曲:吉田健

 意表を突くほどに浮世離れしたノン・テンションの作品です。夜空を感じさせるサウンドに、スローテンポのおだやかなメロディー。石川さゆりの歌声が月夜の静謐な溶け込むようにのびやかに、清々しく広がります。結果的に緊張を強いる現代社会に心が荒んでいたり、煩悩に心が乱されていますと、同曲はきっと素っ気なく通り過ぎて行くだけでしょう。ぜひ、心がゆったりした余裕を取り戻した時に聴き直して下さい。
 微塵のけれん、てらいのない歌唱と素直で透き通った歌声が胸に広がって来ます。また同曲は、阿久悠の石川さゆりへのメッセージも含まれているような気もします。言うまでもなく「さゆり世界」を構築したのは阿久悠です。『津軽海峡・冬景色』、続く『能登半島』『暖流』『火の国へ』で彼女をスターダ
ムに押し上げたのが彼で、25周年を集大成した3月18日発売の『石川さゆり大全集』にはこれら歌を含めた9曲の阿久作品が収録されています。改めて聴き直してみると、これらヒット曲は、情念や叙情を凝縮、結晶化させたハイ・テンションのインパクトある作品で、これら代表曲を背負って走り続けて…25周年。そして今、新たね旅立ちに際して、阿久悠が石川さゆりに、こう語っているような気がします。
25周年ご苦労さま、さぁ、ここで生まれ変わったような清々しい新たな旅立ちをするがいい…」
 と。阿久悠と吉田拓郎、そして石川さゆりが、どこかで聴いたコマーシャルではありませんが「のほほん、のほほ〜ん」と心おだやかにに、清々しく生きることの大切さを訴えているようです。あなたの心はなごやかですか?『月の盃』が素通りするほど心が荒んでいませんか?

『長良の萬サ』
チラシ探しています。

『昭和名勝負』
チラシ探しています。

『酔って候』
チラシ探しています。

『人生情け舟』
2000年9月28日発売 作詞:吉岡治/作曲:弦哲也/編曲:前田俊明

 作詞・吉岡治と作曲・弦哲也のコンビは、これまでに『天城越え』『夫婦善哉』『越前竹舞い』『飢餓海峡』『歌麿−UTAMARO』と数々のヒット曲を生み 出して来た。石川さゆりを知り尽くした二人が、テイチクエンタテインメント移籍1弾、かつ二十世紀最後の作品として提供した『人生情け舟』には、企みとこだわりが感じられます。共に斬新さを信条とする二人が、幅広い音楽性を有する石川さゆりに敢えて七・七・七…と続く古風な定型詩に、おなじみの演歌メロディーを選んだのだから…。
 コンピュータ中心の二十一世紀を目前にしての、アナログ感に満ちた同曲は、去り行く二十世紀へのオマージュ(讃歌)であると同時に、その普遍的な良さを新しい世紀のも歌い継いで行こう、という熱い意気込みが感じられる。これに応えて石川さゆりも「あれこれ考えず、歌に真正面からぶつかってザックリと唄った。唄って、聴いて元気が出る新曲になりました」。
 その卓越した歌唱が、聴く者をポーンッと遥か時代を遡って“真菰がくれに水棹を操る夫婦舟”の情景に誘ってくれる。もはや映画や小説でしか体験できない情景を描いて、現代人の心を打つのは至難の技に違いなく、それを石川さゆりに託したのだろう。
 新曲『人生情け舟』を聴いて元気が湧いたら、それは石川さゆりの歌唱力と、演歌の普遍性の勝利。二十世紀は明治
36年から。演歌が生まれたのはその頃からで、百年を経た二十世紀の最後に石川さゆりが、その真価を問う『人生情け舟』。きっと世紀の“掉尾の勇”となって大いに賑わせてくれそうな気がします。

『涙つづり』
2001年5月1日発売 作詞:池田充男/作曲:水森英夫/編曲:佐伯亮

 テイチク移籍第1弾、オーソドックスな演歌『人生情け舟』でヒットを放った後は、従来から定評のある文芸作品では、と期待させていたものですが、それをいい意味で裏切っての、またまた本格演歌作『涙つづり』。作詞・池田充男、作曲・水森英夫、編曲・佐伯亮で“平成夫婦演歌”と言える楽曲。
「穏やかに流れる河のような水森さんのメロディーです。これに合わせ大きくうねるのあるアレンジ。あたたかさが満ちています」
 とさゆりさん。そして平凡とも思えるスタンダード演歌について、こう語ります。
「私、陶芸をやりますが、情感を凝縮してドラマチックに展開するいつもの石川さゆり楽曲が、アーティステックなオブジェ作品とすれば、スタンダードな演歌は“抹茶椀”のようなものだと思います。地味ですが極めて奥が深く、最も難しい。しかし鑑賞するだけではなく、実際に使って楽しむもの。手触り、形、寂び、色艶…と極めが難しいんです」
 なるほど、一見簡単そうな楽曲ほど、歌手の真価を問うと言う。
「だから歌唱のすべてが勝負です。私の声の色、スピード、向き、艶、手触りの微細な変化具合を抹茶椀を鑑賞するように楽しんでいただけたらと思っています」
 前作『人生情け舟』同様に親しみやすく、カラオケしたくなる楽曲だが、そんな細かい表現変化にも挑戦してもらえたらうれしいと語る。(月刊「ソング
ブック」6月号掲載のアッシの文章より抜粋)


ご苦労様でした。さぁ、お戻り下さい。

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