30周年スタート!
3月25日…シングル『転がる石』アルバム『さゆり』同時リリース


テイチクエンタテインメント

太田輝プロデューサー語る、熱きメッセージ!
(談話構成:スクワットやま)
会報原稿に試聴会LIVEのゲストとの会話、ソングブック取材をプラスしたウェブ・ヴァージョンに暇をみて仕上げる予定。


『転がる石』作詞:阿久悠/作曲:杉本眞人/編曲:川村栄二
カップリング『すっぴんさん』作詞:阿久悠/作曲:弦哲也/編曲:南郷達也●CD/TEDA−10532 CT/TESA−532 各¥1,100(税込)

苔がつかないように、ゴロゴロ転がり続けます!30周年最初の
シングル『転がる石』は阿久悠さんの同題小説の“テーマ詩”


 まず、30周年シングルの趣旨説明からお話致します。同時発売のアルバム『さゆり』から年間に数枚をシングル・カットして行く予定です。アルバムから次々にシングル・カットは洋楽風ですが、これは、さゆりさんはもちろんのこと作家陣、スタッフ全員が全曲それは素晴らしい作品を創ったという大きな自負から生まれた方針です。
 その方針のもと、最初にシングル・カットするのが『転がる石』。これは売れる売れないに一切関わることなく、まずはアルバム・コンセプトの“脱ジャンル”を代表するにふさわし楽曲、かつ最初はインパクトのあるメッセージ性の強い楽曲が、30周年の挨拶替わり最適だろう、と思っての選曲です。
 『転がる石』は、阿久悠さんの平成13年7月出版の同題小説の“テーマ詞”とも言える歌詞に、杉本眞人作曲、川村栄二編曲で誕生した楽曲です。阿久さんの小説は平成10年9月から12年9月の間に断続的に「オール読物」に発表。物語は同氏の自伝的作品で、主人公・草介と赤井健が高校生時代に共に魂をふれあった証拠を残そうと創った同人誌題名が「転がる石」で、主人公が同誌に題名の精神を詩に託して発表したことになっています。
 高校生の二人が、同人誌名を「転がる石」とした後で、こう記されています。 …転がる石に苔はつかないというのは、苔のつかないように転がりつづけろという意味なのか、苔がつくように転がるなと解釈するのか、どっちだろうということになった。結局のところわからなかったが、赤井が、
「お前なら、どっちの生き方を選ぶ?」
 と云うので、草介が、
「俺やったら、苔のつかんように、ゴロゴロ転がりつづける」
 と答えると、それならいい、それなら誌名に決めようと云い、ゴロゴロだぞ、一生ゴロゴロだぞと手を握りに来た。
 小説の引用までしましたが、これでおわかりの通り、同曲には石川さゆりさんの30周年とは言え、苔むすなどとんでもない、限りなく新たな挑戦し続けます、というメッセージも込められていると思われます。
 さて、同シングルは今までさゆりさんが出会って来なかったタイプの楽曲で、そのハードな歌詞に対峙し、そこまでやるか!と思わす果敢な歌唱挑戦が満ちています。詞の行間をも掘り起こそうとする気迫に満ち、その低音に凄み、併せて哀愁も表現されています。
 ワンコーラスはリズム隊少なく、エリック・クラプトン風エレキ・ギターの弾き語り風仕上げ。さゆりさんが今までに聴いたこともなくハードな声質、低音を響かせつつ叩きつけるように唄っています。あたかも阿久さんの青春を一身に背負って歌ってみせます!の気迫が漲る感じです。また同詞は、初めて唄える歌手が出現してあらぶる生命力が注入されて歓喜の声をあげているようです。阿久さんの「この唄える歌手がやっと出て来た」と呟く姿が浮かびます。
 カップリングは『すっぴんさん』は作詞:阿久悠/作曲:弦哲也/編曲:南郷達也
 純演歌リズム。弦さんにもっと明るく、もっと親しみ易くと再注文。弦さんはお正月のハワイ滞在中に再トライして下さって「ENKA IN HAWAII」の誕生です。さゆりさんも「素直な私を感じて下さい」と言っているように唄っています。で、どう感じたかって?言うまでもありません、限りなく可愛いさゆさんがここにいます。歌唱、声共に素直さに満ちています


●アルバム『さゆり』
CD:TECE−32287 CT:TETE−32287¥3,200(税込)
<収録曲>風帰行/故郷によろしく/湯の町シネマ/すっぴんさん/風花温泉から/転がる石/〜近松情話〜夢の浮橋/螢の夜/湯の花KOUTA/おもちゃ/悲歌(えれじい)/花ふたたび


脱ジャンルで上質なアルバムを目指して…。どこから聴いても
クォリティー高い名曲ばかり。新たな魅力と可能性満ちています


 今まで演歌歌手は通例のように年に1度、オリジナル・アルバムをリリースしていましたが、最近はそれに費やす膨大な時間とコストから“余程”じゃないと創らなくなっています。しかし、今年は30周年。その“余程”の事ですから腰を据えて取り組みました。
 最初のミィーティングは、確か昨年の新歌舞伎座公演中の、真夏日続く最中でした。まずここで「ジャンルにこだわらず、上質なアルバムを目指そう」と方針が決まり、さらに「30周年にふさわしく、石川さゆりの新しい可能性に満ちた内容…」と絞り込まれました。正直言って「これは大変難しい仕事になりそうだなぁ」と思ったものです。
 まず詞を吉岡治、阿久悠両先生に依頼することに決め、阿久先生のお宅に伺ったのが8月。最初に吉岡先生の10作品が出来、逸る気持ちを抑えて阿久先生の詞を待ち続けました。やがて阿久先生の7編をいただき、すべてが揃った段階で詞に合う作曲家をバランス良く選定。全12がバラエティー豊かになるべく絞り込んだ12曲の詞、曲の直しを含めてオケ録りが始まったのが秋口でした。さゆりさんのテレビ出演、コンサートの合間を縫って連日のスタジオワーク。最終作業のマスタリング終了が1月31日でした。
 今、レコーディングを振り返りますと、あの日々は異次元世界とも言いたい程の、想像絶する緊張の日々でした。具体的に申せば、さゆりさんは12曲それぞれに5パターンのヴォーカルをもって挑戦して来ましたから、計60パターンもの挑戦に一瞬の気の緩みなく対峙せねばならぬ、息もつけぬ真剣勝負の連続。楽曲に合わせ、無数の表現法をもって挑戦し続けるさゆりさんの表現力の凄さ。こちらも全神経張り詰めて、それらすべてを受けとまなきゃいけませんから、もう息の出来ないほど…。
 ここで皆様に質問。ミカンとオレンジの味の違いを述べてみて下さい。至難ですよねぇ。歌唱の微細な変化はきっとこれ以上。さゆりさんの次々に放つ表現法の微細な変化の数々…。それはフと力が漲ったり抜いたり、輝きの光度が強くなったり弱くなったり、華やいだり沈んだり、さゆりさんが繰り出す歌唱ニュアンスの変化を、ミキサー室とマイク前のさゆりさんとの丁丁発止…。
 加えて作詞家、作曲家、編曲家の誰もが独りよがりではなく詞が、曲が、編曲が、歌唱が「立つ」ことを考えての超プロ仕事…。こうした1曲1曲を仕上げて、終わった時は魂も抜けた、と告白しましょう。
 レコーディングを終えた今、携わった全スタッフが音楽仕事の妙味、醍醐味を体験し、忘れ得ぬ充実感に満たされています。そんな凄い制作現場だったとご報告します。
 結果的に、どこから聴いてもクォリティー満点のビックリ箱。曲順に意味はなく、どの曲を聴いても、さゆりさんの新たな可能性が満ちる衝撃作ばかりです。
 と言うことで、お待たせ致しました。では1曲づつのご紹介と参りましょう。


『風帰行』
作詞:吉岡治/作曲:ソン・ミンホ/編曲:若草恵

 青山劇場の音楽会で発表された楽曲です。音楽会のテーマ「日本歌謡の源流を綴る」が決定後、現代の日韓融合曲を求め、韓国のアルバムをさまざま聴いてシンガー・ソングライターのソン・ミンホさんに白羽の矢を立て作曲依頼。これに吉岡さんが作詞された楽曲です。ステージを念頭においた楽曲ですから、大スケールでドラマチック、インパクトある仕上がりです。同曲をアルバム・オープニング曲にしたのは、まず音楽会の芸術祭・優秀賞受賞の確認とアルバム・コンセプトの“脱ジャンル”の象徴的な楽曲だったからです。
 悠久の時を渡る風音のようなイントロ。長音符の多用で、さゆりさんがあたかも日韓の海を渡る、大きくうねりつつ吹き抜ける風のようにパワフルに唄っています。まさにオープニングにふさわしい大曲です。


『故郷によろしく』
作詞:吉岡治/作曲:岡千秋/編曲:南郷達也

 強風のSEにじょんがら三味線の響き…。アップテンポでダイナミックなサウンドで、『風帰行』に負けぬ元気いっぱいの楽曲です。ワンコーラスが何と13行。通常演歌に比して倍の長さで、岡千秋さんが相当に苦労されての作曲でした。5パターンも作って下さった中から、さらに直していただいての完成。純和風ですが、これまた大スケールのアレンジ。詞は青森県・十三湖を故郷にする人の頑張る心を歌っていますが、さゆりさんの歌声を聴いていると、熊本から上京して来たさゆりさんの心の頑張りも聴いたように感じました。故郷があるから頑張れる、さぁ、元気を出して一緒に頑張りましょうとパワフル迫る応援歌です。聴けば元気モリモリ湧いて来ます。


『湯の町シネマ』
作詞:吉岡治/作曲:花岡優平/編曲:矢野立美

 作曲の花岡さんとは初組み合せ。「ジャージィな感じでやってみましょう」とスタートし、狙い通りに仕上がった楽曲です。昭和初期の温泉町の情緒とジャージィ・テイストが一体となって、素敵なムードを醸し出しています。それをまたさゆりさんが「あっ、いつかジャズ・ヴォーカルの勉強をしっかりなさっていたに違いない」と思わせる、それは見事な歌唱を披露しています。ジャズでこう言うのもおかしなものですが、大向こう唸らす“粋”なヴォーカルというのがあって、サビの部分はゾクゾクものです。思わず立ち上がって口笛吹き、4ビートで身体揺さぶりたくなって来ます。50、60代スタッフが絶賛した作品です。

『すっぴんさん』
作詞:阿久悠/作曲:弦哲也/編曲:南郷達也
 シングル・カップリング曲。シングル紹介頁をご参照下さい。


『風花温泉から』
作詞:阿久悠/作曲:岡千秋/編曲:南郷達也

 さゆりさんも含め個性豊かな制作陣全員が自己主張を抑えて、フワ−ッとそれは見事な淡彩仕上げの作品を創ってくれました。間奏にシャンソン風編曲のアコーディオンが入って、ちょっとヨーロッパ風の味付けも特徴です。しっとり心地好く聴いているうちに、フと紅葉に包まれた温泉情緒が浮かび、作品世界にくつろいでいる自分に気付きます。ここには「えらく優しい、いいオ・ン・ナ」=さゆりさんがいます。艶やかでしっとりした叙情に、男性ファンにはメロメロ…。
さゆり:先生の曲には「…から」が多いですね。
阿久:そう、僕はいつも1ヶ所にとどまっていないんです。お酒の中腰で飲んでいるし(笑い)。で、僕は『津軽海峡・冬景色』で上野から津軽までたった2行で行ったのが自慢なんだ。あれは三木さんの曲がダダダッと来たから一気に行けてんです。
さゆり:先生は詞を書かれる時はどんな風に…
阿久:おい、これから詞を書くから布団を敷いてくれ!えぇ、腹んばいになって書くんです。
さゆり:この曲をいただいた時、「湖畔の宿」のイメージが重なりました。
阿久:歌は人によって、いろんな景色が見えて来るから面白いんだ。実は僕の兄貴は「湖畔の宿」を買って来て、その後、19歳で戦死した。父が警察官で退廃的な歌を好まぬもんですから、僕は兄貴の「湖畔の宿」を押し入れの中で聴いたもんです。
さゆり:26年目に独立して小さな事務所を構えた当初、テレビにも出させてもらえぬ辛い時期があったんですが、その時に、先生が歌手は次々に新しい歌を唄っていなきゃダメだと「月の盃」を書いて下さって励まして下さった。

『転がる石』
作詞:阿久悠/作曲:杉本眞人/編曲:川村榮二
 シングル紹介頁をご参照下さい。


『〜近松情話〜夢の浮橋』
作曲:吉岡治/作曲:弦哲也/編曲:若草恵

 一昨年の新歌舞伎座公演のテーマ曲初CD化です。さゆりさん十八番の極限まで追い詰められた日本情緒のなかの女性美、死へ昇華されようとする恋の美を歌い上げた楽曲です。すでにファンの皆様には舞台やステージで耳に馴染んだ歌ですが、ここでは「見せる歌と聴かせる歌唱はこうも違いますよ」とさゆりさんが言っているような、新たな歌唱が展開せれています。ビデオの同曲と聴く比べて下さい。

『螢の夜』
作詞:吉岡治/作曲:三木たかし/宮川彬良

 さゆりさんにとって久し振りの三木メロディー。共に得意とする真骨頂世界のぶつかり合い。ガラスのこっち側(ミキサー室)から聴いていて、そのぶつかり合いが新鮮、斬新さに満ち、実に面白かったです。テンションを抑えつつも、そのなかで盛り上がりを作って行くという高等技術をご堪能下さい。タメたり出たり、跳ねたり沈んだり…の歌唱の妙。ほぼ一発録音風に制作しましたから、リズムボックスを使わず、さゆりさんの生身のリズムで、心地好く揺れつつ聴いて下さい。
吉岡:蛍の郷の旅館のおかみさんがねぇ、ポッと蛍一匹採って袂にいれたんです。夏ですから絽の着物で、虫篭のようにポ〜と灯って、あぁ、これで1曲書けるなぁと
さゆり:先生はエッチな詞が多いですよね。これも、かなりぃ
吉岡:いえ、あなたがエッチなんですよ。
さゆり:この曲は三木(たかし)さんが息を吸ったり吐いたりを、特に感じながら唄って下さいって…。

『湯の花小唄』
作詞:吉岡治/作曲:杉本眞人/編曲:矢野立美

 ファンキーな芸者さん楽曲を、というさゆりさんのアイデアから生まれた楽曲です。おきゃんで、おちゃめなさゆりさんのこと、これまた真骨頂発揮です。吉岡先生のキャッチーな数え唄。その軽快メロディーと共に一度聴いたら、もう一緒に唄いたくなる、そんな心弾むさゆり小唄です。ここにいるのは、ひねくれていない素の、元気いっぱいの可愛いさゆりさん。


『おもちゃ』
作詞:阿久悠/作曲:都志見隆/編曲:若草恵

 都志見隆さんとも初組み合わせ。阿久さんの詞は「転がる石」と同じくメッセージ濃い内容ですが、こちらは女唄。観念の愛に死ぬほど悩み抜いた後、サビで♪ああ 目が覚めた/ああ いい天気/ああ それなら わたし 生きますよ…と生身の感覚に正直になってみせる見事な変わり身。阿久さんならではの人生歌でしょう。演歌ファンではないポップ志向のスタッフの多くが、この曲に票を投じた楽曲です。


『悲歌』えれじい
作詞:阿久悠/作曲:韓国民謡/編曲:宮川彬良

 青山劇場で披露された楽曲です。アリランは韓国それぞれの地区にあって、その数、実に何百とも言われているうちの一つ。演歌にもポップスにもないアリラン独特の節まわしを、強引に譜面に起こした上で阿久さんに詞を書いていただいた楽曲です。ドラマチックなアレンジに、これまたステージとは違った絞り出すような至難の歌唱で、歌の圧迫感が迫って来て来ます。聴く側も息苦しいほどの『悲歌』です。


『花ふたたび』
作詞:阿久悠/作曲:三木たかし/編曲:宮川彬良

 明るい沖縄風メロディーで、どこかエスニックな感じです。サビからスタートしてみましょう、の注文に三木さんがその場でギターを弾きながら仕上げて下さった楽曲です。アレンジも宮川さんならではの弾む感じが素敵です。全体的にさゆりさんにとっても珍しいタイプの楽曲で、カラッと明るい高音、発声を発揮しての歌唱。南国のカラフルな鳥がさえずっているようです。サビの繰り返しがとても耳に残る作品です。



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