夏川りみ
〜アルバム『空の風景』セルフ・ライナートーク〜
ファン倶楽部誌創刊号掲載より

 2003.3.19の4th Single『道しるべ』、3.26の2nd full album『空の景色』、皆さんは何度も繰り返し聴いていることでしょう。ここで改めて、夏川りみ<セルフ・ライナートーク>をファンクラブ創刊号の特別企画としてお届けです。ここから伺えるのは世代を縦断して人々の心を惹きつける、アーティスト・夏川りみの新たな可能性…。さぁ、いっぱい・いっぱい「りみ」の歌声を聴いて下さい。(編集部)

01 『
満天の星』 作詞:新城和博/作曲:上地正昭/編曲:今田誠一
 カヴァー曲は自分で選ぶことが多いんです。この曲は石垣島生まれの新良幸人(あら・ゆきと)さん率いる「Parsha club」が唄っているのを聴いて“あぁ、いいなぁ〜”と思ったんです。私の三線がちょこっと入って、島言葉で、島唄はより島唄らしい節で…に留意して唄っています。皆様に沖縄へもっと興味を持って欲しい、好きになって欲しいなぁ〜という気持ちを込めて…。(編集部:島言葉による新世代オキナワンバラード。作曲は元りんけんバンド・メンバーで、今はParsha clubのギタリストの上地正昭さん)

02 『
道しるべ』 作詞・作曲:ちはる/編曲:吉川忠英
 Kiroroのちはるちゃんといろいろ話し合って、そこから1曲生まれて、でも、その後に電話があって「今、新たなサビが浮かんだの。ちょっと聴いてくれるぅ〜」で、「今の方がいいなぁ」「うん、これでもう一曲創ってみるね」…で生まれたメロディーです。そこにりみが好きそうな言葉、りみだったらこう唄うだろうなぁ〜、とちはるちゃんが想像しながら完成させてくれました。私も仕上がった曲調にどんな声質、どんな歌唱がいいかなぁ〜と考えて唄ってみました。kiroroのあやのちゃんの“『涙そうそう』は島唄っぽい節で唄ったから、今度はサラッと唄ったほうがいいかも”というアドバイスも参考にして…。えぇ、アルバム各曲毎にいろんな声質、歌唱でトライしています。(※「ちはる」さんは、宣材チラシにこうコメントしています。…レコーディングにお邪魔させていただきましたが、りみの一声を聴いたとたん、心臓なのか、内臓なのか、血液なのか、よくわからないけれど、ぶるぶるってふるえました。目をつぶってると、遠いところへいってました。涙が出ました…。また「あやに」さんは…目をつぶると、沖縄の海が思い出されてすごくなつかしくなります。レコーディングもおだやかな空気の中で始まって、あっという間に終わってしまいました。唄の上手さに脱帽です…)

03 『
サ・ラ・ラ』 作詞:RIMI/作曲:平井夏美/編曲:京田誠一
 今まで“創作は出来ないよぅ〜”と逃げていたのですが(笑い)、今回は創る前に平井さんとジックリ話し合ってイメージを固め、曲が先に出来たんです。で、それに私が詞をつけました。イメージが固まっていましたから、すんなり詞が書けました。で、出来てみれば“結構いいかも”(笑い)。自分の言葉ですから、もっと思いを伝えたいと歌唱にも力が入ります。今度は作曲にも挑戦したい。今、皆様にお誉めいただいて、俄然、創作欲が湧いています。フ・フ・フッ、今後にご期待下さ〜い。(編集部:サード・アルバムではさらにりみちゃんの世界が明確に構築されそうです)

04 『
遥か…』 作詞・作曲:原一博/編曲:京田誠一
 これは“静”の歌唱。私はこうしたスローテンポの曲、大好きなんです。普通はこうした曲は難しいと言われているのですが、レコーディングは至ってスムーズでした。メロディーも凄く好きです。(ビクターE・宣伝室・志村氏“以下、志村”:リズムに合わせてドンドン行く音楽は勢いやノリで唄えますが、スローな曲は長い時間に少しの言葉、でもそこに表現を出さなければならず、高度な表現力が要求されます。でも、さすが夏川りみです。ファンの方には、こうしたスローな曲に感動される方も、パワフル・ヴォーカルが好きだと言う方それぞれですが、夏川りみは“一アーティスト・一個性”に収まらない才を有しています。さまざまな歌それぞれに完成度の高い歌唱を自在に発揮ですから、バラエティー豊かに楽しんでいただきたいと思っています)

05 『
さとうきび畑』 作詞・作曲:寺島尚彦/編曲:京田誠一
 これは「りみに唄って欲しい曲」アンケートの第1位曲でした。7分ほどの長い歌ですから、飽きずに最後まで聴いていただけるよう、さまざまにアイデアを凝らして唄っています。特に何度も繰り返される♪ざわわ ざわわ…の表現をいろいろ変えていますからご注目下さい。あとは風の流れ、うねりが伝わるように工夫しています。何パターンか唄って、いいのをチョイスしつつのレコーディングでした。(編集部:このヴォーカルの何という素晴らしさヨ。りみちゃんの歌唱アイデアひとつづつを、ぜひ発見して下さい)

06 『
鉛筆画の瞳』 作詞:岡本おさみ/作曲・編曲:吉川忠英
 これは洋楽っぽいオシャレな楽曲。フフフッ…、で、この曲が一番苦労したんですよぅ〜。私、絵を描かないものですから、詞の意味を探るのも大変(笑い)。まだまだ攻め足りない、と思っています。(志村:40代の大人の雰囲気…。そんな夏川りみが果敢に挑戦しています。ここからまた新しい夏川りみの可能性が見えませんか?)

07 『
誰にも言えないけど』 作詞・作曲:森山良子/編曲:京田誠一 
当初の予定にはなかった楽曲。良子さんから「りみちゃんにプレゼントしたい曲があるのよね」とご連絡があって、デモテープを聴かせていただいたのです。ご自分で三線をティン・ティンと弾きつつ、バラード風に唄われていて、急きょアルバムに入れようと決まったんです。良子さん、誕生プレゼントにスタッフから三線をいただいて、嬉しくて爪弾いていたら出来た曲なんですって。で、京田さんいアレンジをお願いしたら、クラプトン風ギターがフィーチャーされたギンギン・ロック。“りみの曲なのにギターがウィン・ウィ〜ンと鳴っているぅ”(笑い)。でも私、カッコ良くて大好きな曲。唄っていても気持ちいいんです。もっと派手なステージ・アレンジで唄ってみたい、と思っています。(志村:シングル候補曲として人気の高かった楽曲。ニュー・アルバム大好評ですが、この曲がアルバムの流れにいい効果を発揮しているようです)

08 『
島々清しや』 作詞:久米仁/作曲:普久原恒勇/編曲:京田誠一
 ギターがギィ〜ンと鳴って、さて次はどんな曲…と緊張している皆様方に、今度はホッとしていただきたくての八重山民謡です。『涙そうそう』に出会ってから、私“あぁ、生まれ育った島をもっと大切にしなきゃいけないなぁ〜”という気持ちがどんどん強くなっています。これからの沖縄民謡を夏川ヴァージョンで遺して行きたく思っています。(編集部:出だしの瞬間からホッの癒しパワー。りみの島唄に改めて、凄いやぁ〜です)

09 『
月ぬ美しゃ』 作詞・作曲:八重山民謡/編曲:京田誠一
 八重山民謡の、男女の掛け合い唄。中秋の名月に開催される“とぅばら〜ま大会”では、このメロディーを三線で弾きつつ、それぞれ作詞の唄を披露し合います。石垣島の人間として、夏川りみの「月ぬ美しゃ」をぜひ録りたかった。沖縄や石垣の方々にも聴いていただけるアルバムですから、息継ぎとかに気を付け、ここからここまでは我慢して・我慢して、一息で…とか真剣にトライしました。父から「最高だねぇ〜」の評価をいただき、あぁ、良かった・良かったと胸をなでおろしています。※シングルのスペシャルトラック『鷲ぬ鳥節〜三線弾き語りヴァージョン』も、父から「誰に習っての?」と訊ねられ「いやぁ、先生はいないの。自分でやったんだよぅ〜」と応えましたら「いや、凄いねぇ〜、良かった、上等だよぉ〜」と誉めていただいたそうです。

10 『
いとしい人へ』 作詞:鮎川めぐみ/作曲:千住明/編曲:京田誠一
 最初は静かに、徐々に盛り上がって、サビで歌い上げています。「ありがとう、ありがとう」…とラストソングにぴったりでしょ。唄っていますと「良かったねぇ〜」という皆さんの声が聞こえて来るようです。(志村:ここには『涙そうそう』ヒットに対する夏川りみの感謝の気持ちが充ちています)。でね、これで終りだ!と思ったら、ボーナストラックがありました、って構成です。

11 『
涙そうそう』 作詞:森山良子/作曲:BEGIN 
 ボーナストラックとして夏川りみwith森山良子・BEGINのスペシャル・ライヴ・ヴァージョンが最終曲になっています。収録協力はTBSラジオ「森山良子のハートオブポップス」です。

 最後に夏川りみは、ファン倶楽部の皆様にこうメッセージしてくれました。 皆さんに応援していただけるから私は頑張れるんだと思っています。そんな気持ちを時間の許す限り「Rime−Net」にも書き、またこのファンクラブ誌で表明して行こうと思っています。アルバム収録曲『いとしい人へ』の♪ありがとう ありがとう…を皆様に感謝の気持ちで捧げます。皆さん、アルバムでいっぱい・いっぱい…、りみの声を聴いて下さい。(構成:スクワットやま)



夏川りみは昔、星美里。ポニーキャニオンで事務所は確か田辺エージェンシーだった。当時、ポニーキャニオンの演歌担当・三井健生が“第二のひばり”だったか、そんなキャッチフレーズで育てていたが芽が出なかった。三井はポニーキャニオンの演歌撤退で退社し、自らの社を立ち上げた。「金剛と榛名」なる軍艦の名を冠した男性デュオ(命名は星野哲郎)をプロモートしていたが上手くいかなかった。そこに再び三井を頼って夏川りみが戻ってきた。夏川りみはその歌の上手さから、ディレクターがいじくり過ぎていろんな分野にチャレンジさせていた。三井に頼まれて「演歌路線に方向性を定めよ」なぁ〜んてプロモート計画書を書いたこともあった。その趣旨は2本立てで、その1は船村徹・星野哲郎、阿久悠・三井の実弟の水森英夫…両路線で行こうというものだった。そんなこともあって、ややして『涙そうそう』で火が付いた。上記はそんな経緯があったんで、彼女のファン倶楽部会報創刊号をちょっとお手伝いした。


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