大月みやこ 『今夜は離さない PARTU』
大月みやこ&徳光和夫
「ソングブック」08年1月号掲載

これぞ“熟年の味わい”。聴いてよし、いや、デュエットしたい名曲誕生!!

 24年前のデュエットヒット曲『今夜は離さない』(橋幸夫&安倍里葎子)と同じ作家陣が、題名だけ同じの新曲を創った。唄うは大月みやこ&徳光和夫。甘い低音ながら音程・リズムを外してなるものか…そんな健気さを感じさせる徳光に比し、大月の若々しく艶っぽい歌唱。このバランスの妙で聴く者を魅了する秀逸の仕上がり。誰かとどこかで、こんな甘い歌をデュエットしてみたいが、まずは曲の誕生経緯から…。
「作曲の幸先生とは19年前『乱れ花』からのお付き合い。大月みやこのデュエット曲に…と創って下さって、さてお相手は…と考えたら同じく公私共に 20年以上のお付き合いをいただいています徳光さんに白羽の矢が立ちました。一昨年の銀座・博品館コンサートでサプライズ出演されて一緒に『東京ナイトクラブ』を唄ったんです。フランク永井さんのような素敵な低音でした…」
 依頼に快諾の徳光だが、新曲をゼロから作り上げる現場の大変さ、緊張に眼を丸くするほど驚いたそうな。それが幸いしたのだろう、とろけるほど甘いデュエット曲を男女共に甘く唄ったら聴くに堪えぬが、その緊張感が伝わる徳光歌唱の一方、大月みやこがたっぷり濡れてのバランスが実にいい味わいを生んでいる。
 大月は前作『ひとり語りの恋歌』がワルツで明るい音色を発揮していて、ここではその明るさに艶っぽさをプラス。恋する歌は、かくも女を若く艶やかにするものか…。そう褒めれば、こう言って逃げた。
「詞は甘美でも、軽快なリズムで気分よく楽しめる仕上がりですから…」
 皆様もデュエットする際はここがポイント。女性は思い切り華やいで艶っぽく、そして男性は情感を抑え気味がいい。そしてリズムにしっかり乗って楽しくです。
 そして大月ファンはカップリング『月下美人のように』に注目。デュエット曲で発揮の艶が、さらに甘い溜め息が伝わってくるほどの甘い歌唱で、彼女の隠れた顔が表れている。皆様もデュエットが終わったら男性を席に戻して、この曲をとことんスィートに唄って殿方を悩殺するがいい。その夜のその後は当方は関知しない…。

『今夜は離さないPARTU』
2007年11月21日発売
作詞:藤波研介
作曲:幸耕平
編曲:丸山雅仁


●新曲『今夜は離さないPARTU』のカラオケ映像は大月みやこ・徳光和夫の歌唱が交互に映る楽しい内容。●大月みやこの他のデュエット曲は 8年前の小金沢昇司との『東京しのび逢い』があって、平成19年11月12日の博品館コンサート(7年連続7回目)では、彼がサプライズゲストで出演して同曲をデュエットしている。他には弦哲也と『今夜は二人』がリリースされている。●「私にはいろいろな歌の抽斗がありますが、唯一ないのが粋な俗曲系。ふふっ、私、得意なんですよ。スタッフにそんな楽曲も作って下さいとお願いしているのですが。俗曲を今風アレンジでヒップホップの若いグループとコラボレーションしても面白いかな、とも思っています」。大月さんの抽斗はまだまだ増えそうだ。


大月みやこ 『ひとり語りの恋歌』
「ソングブック」掲載

ドラマチック歌唱から一転。シンプルな楽曲・歌唱
中低音メロディーに響く明るい音色。
“素”の大月みやこがここにいる!!

この明るい音色は…40周年も過ぎた今、
大らかな心で肩肘張らずに生きるようになってから生まれたもの…。

シンプル・イジ・ベスト…は素材勝負で音色がクローズアップです。

 新曲は3拍子で、明るくサラッと唄っている。編曲もギター中心で、まさに“シンプル・イズ・ベスト”の歌唱。それまでの楽曲を振り返れば三連符ながらしっとり系艶歌『女ひとりの日本海』、その艶をさらに深化させた『恋文の宿』、さらに“泣き歌唱”展開の前作『乱れ雲』。回を追う毎にテンションを高めてきて、ここで見事に一転…。
「凝った美味しいご馳走を食べ続けた後は、お茶漬けがふと食べたくなる、そんなグッドタイミングの新曲です。楽曲をいただいた瞬間に“あぁ、肩の力を抜いて明るくシンプルに唄いたい曲だなぁ”と思いました。でもよくよく考えてみると、シンプルって難しいんですよね。装飾物がありませんから、必然的に素材がクローズアップされます。素材すなわち“素の音色”が勝負だと思いました」
 ここ最近のドラマチック楽曲は、歌唱をいかに組み立て唄うかが勝負で、それがまた唄い甲斐だった。
「私はそうして練り上げ、組み立てた歌唱が多いから、普段の大月みやこはどんな人なのだろうか…というミステリアスな部分があったように思います。それも歌手には魅力な要素でしょうが、今回はそうした虚飾を捨て去って“素”の大月みやこが出たようです」
♪ひとり語りの 恋歌は
 泣かせるギターが ほしいのよ
 3拍子(ワルツ)に乗った中低音中心のメロディーに、大月みやこの明るい流れるような歌声が響いている。
「ですからこの歌のカラオケ・ポイントは歌唱技術より、この明るい音色でしょうね。♪あなたが悪い〜と唄っていますが、これは相思相愛の中のノロケなんです。もっと私の方を向いてぇ〜と甘えている。そんな弾んだ恋心が秘められていますから…」
 恋する女性は世代を超えて“華やいだ若さ”を帯びるもの。それはキャリアを重ねて得た深みのあるサビ味とは別の、10代20代にも通じる明るさだろう。インタビューに笑いながら応える声に、そんな明るさが覗いている。
「声が響くというのはメロディーを唄っている時だけではなく、こうして喋っている時もけっこう響かせているんですね。声は嘘をつきません」


音色を決めるのは心。前向きに希望を持てば…明るい音色が出てきます。


 さて、歌唱の上手下手ではなく音色がカラオケ・ポイントとなれば、その音色をいかに獲得するかが問題だ。
「音色の前に気持ちが先行します。気持ちが暗ければ暗い声に、意地悪なら意地悪な声になる。だから唄う前にイヤなことがあったらそれを忘れる。明るい前向きの気持ちなってみるのが肝心。ここでは恋する気持ちになって胸をときめかせてみたらどうでしょうか。そうすればきっと明るい音色が出てくるはずです」
 なるほど、改めてジャケット写真を見れば、大月みやこが実に穏やかな、それでいて明るさを秘めた表情をしていることに気付く。音色の前に心あり…は間違いない。心の変化を訊いてみた。
「40周年をいささか過ぎまして、物の考え方が“大らか”になったように思っています。何をするにも肩肘張らずに考え、行動できるようになってきた。そんな変化があって生まれた音色なのでしょう。その意では今までの大月の世界にはなかった声の響き、音色です」

 シンプルな楽曲・歌唱だからこそクローズアップされる声質。その明るい音色は心の有り様を反映で、唄とはかくも心を表すもの。皆様も同曲を唄った自身のテープと大月みやこの音色を比べてみることをお勧めだ。同じ明るい音色に近づいたら、きっとあなたの顔も穏やかな表情、弾む心を有しているに違いない。いやはやカラオケが心の在り様を問うとは難しい…。大月みやこはこんなエピソードも披露してくれた。
「先日、NHK-BSの新番組“演歌いっぽん勝負”で7曲唄ったんです。41年前の『ひなげし小唄』を18歳の時と同じキーで唄って、アルバムの中から『蘇州夜曲』をピアノ演奏で唄って、あとは新曲を含めた代表作 4曲。全7曲それぞれ世界が違って、頭の中のアンテナがピピッと反応して、次々に違った歌唱・音色を使い分けて、それは歌手冥利とも言える醍醐味でした」
 ベテランならではの歌唱・喉の使いこなし。珠玉のステージが想像できる。さらにベテランの領域を楽しみたい方は、新歌舞伎座 7月の小林旭芸能生活50周年の特別公演をお勧めしたい。大月みやこが特別出演で一部芝居が「無法松の一生」で、二部がビッグ2オンステージ。
「小林さんがお声をかけて下さったんです。今まで座長公演の経験はありますが、今度は相手役ですから、どんな感じになるか私も分からずワクワク・ドキドキしているんです」
 無法松こと松五郎と未亡人・吉岡良子、その息子・敏雄との交流…。二人の超ベテランが繰り広げる舞台は限りなく味わい深そう。ここでも互いに恋心を秘めた演技で、その音色はどこか明るい感じになりそうだ。

『ひとり語りの恋歌』
07年3月28日発売
作詞:池田充男
作曲:伊藤雪彦
編曲:丸山雅仁


大月みやこ 『乱れ雲』
「ソングブック」掲載

哀切な心の叫びに託した…前向きの激しさ
その“泣き歌唱”は正面を向いた本調子で「私、今も進化しています」。
デビュー42年、ますます絶好調!


 女の哀切な心の叫び、ドラマチックな艶歌…と思いきや、大月みやこは…「今まで秘めていた情熱を解き放って、この新曲では前向きに生きる私のメッセージもこめました」と語った。デビュー42年目。まだまだ進化、新たな目標と意欲をたえぎらせたエポック・メイキングな新曲。こっちも腰を据えて激しく燃える胸のうちを伺った…。
 前々作『女ひとりの日本海』はドラマチックなアレンジ、3連の軽快リズムながら静謐な佇まいを思わす落ち着いた旅情を唄っていた。前作『恋文の宿』は哀しさを心の奥に抑えて唄っていた。そして新曲『乱れ雲』…。
 やってくれました。気持ちよいほど思い切り身もだえた泣き歌唱。えぇ、腰が据わっていなければここまで泣けません。
 大月楽曲おなじみのドラマチックなイントロ(アレンジ)だが、唄い出しは高音をフゥと抜いて哀切感を演出。そして中低音を響かせた後に…
♪背中が寒い 無口が怖い
 あなた あなた奪って なにもかも
 のサビで思い切り泣いている。歌舞伎はキメるところで正面を向き、しっかりと大見得を切って観客を沸かせます。このサビの大月みやこ歌唱はまさにそれ。腰を定めて堂々と身もだえ叫んでいる。何か大きな自信を得てのことに違いない。
「この歌は愛を求めて叫ぶ詞ですが、歌に対する私のポリシーや前向きに激しく生きようという主張も込めた歌でもあります」
 哀切な恋唄ながら、積極的な己の姿勢をもアピールしていると言う。ダブル・ミーイング。これは詳しく訊かねば分からない。
「私はどちらかと言えば、今までは情熱やファイトを心の中に秘めてきました。いささか長い年月ですが40周年も過ぎ、そろそろ自分の思いや主張を前面に出して積極的に生きてもいい、唄ってもいいのかなぁと思ったんです。そんな気持ちもこの新曲にこめました」
 切ない恋や艶を語ってもらえるかと臨んだインタビューだったが、自身のアイデンティティーや信条を語るズシリッと重い応えが返ってきた。大月みやこの眼を見やれば、従来にない強い輝きを放っているではないか…。
 サビに至る4行詞の3コーラス各フレーズは、愛を求めて耐える女の情念が描かれている。それを大月みやこはこう解釈しましたとワンフレーズ毎に熱く説明をした。話が長いから要約すると、ますます厳しくなる世の中にあって、一人で耐えては生きては行けない。言葉を発しつつ互いに手を携えあって前向きに生きて行こう、そういうメッセージでもあると解説したと言う。なるほど、ちょっと難しいが、そう言われてみればそうも解釈できる。
「ですから今までの大月の世界にプラス・アルファーが加わって歌唱表現に変わったかなと思っています。新曲は作詞、作曲、編曲共に約20年前の『女の駅』の制作陣です。石本美由起先生はある意味で私の世界を作って下さった先生ですから、私のことをよくわかっていらっしゃる。この辺で胸に秘めるばかりではなく、気持ちを積極的に前面に押しだしてごらん…そう言って下さったようにも思います」
 なおカップリングも同じ制作陣で『夕霧』。表題曲より艶の情緒たっぷりに酔わせてくれる。改めて歌手人生を振り返ってもらえば…。
「前半の20年は諸先輩方の教えを学びつつ歌ってきた幸せな年月。後半の20年はその時代・時代の波を受けて人間として、歌手として栄養を蓄えてきた年月。そして今です」
 デビュー42年にして…。
「はい、今も進化途上です」
 と楽しそうに微笑んだ。
「ゴルフだって、飛距離も正確さも進化しているんですよ。私は男性を立てるタイプなんですが、何かを始めたら次々に追求して行くタイプです。歌では女性の艶や情緒を唄っていますが、大好きなビールだってひとりでは飲まず、スタッフの皆さんとワイワイ飲むのが好き。女の情念と前向きな姿勢…そなんな両面が、この楽曲で同時に表現できたかな…と思っています」
 自己分析と自らの信条をシカと改めて捉えれば、歌手のスタンスも強固になって説得力を増す。その意では大月みやこにとっては大事な節目となる楽曲。ターニングポイントになりそうな感じ。改めてジャケット写真を見れば、眼や口元の表情も今までとどこか違って、強い意思が浮かんでいる。…となれば次作、今後の活動も気になってくる。数年後の大月みやこは?
「ギンギンに唄っていますとも」
 おどろくほどに自信の溢れた言葉。さらにこう続けた。
「これも私のポリシーで、楽曲などはスタッフ任せなんです。スタッフが私に魅力や可能性を感じてくれて、私に新たな挑戦をさせてくれます。ですからスタッフにそう思われなかったら進化はありません。そんな私とスタッフの丁々発止も若さや元気の源。これはまた、人はひとりでは生きて行けず、皆さんとの絆や出会いを大事にしている結果でもありますね」
 テクニックではなく声質について、同席のディレクターは、こう言った。
「高音域をカ〜ンと伸ばし響かせるのがセールスポイントだった時期もありますが、今は音域も広く安定しています。新曲は中低音が響いて、サビの高い音域との対比が素晴らしい効果を生んでいます」
 最後に大月は…
「これからがますます楽しくなってきました」
 目の前で大輪が咲いていた。

●10月2日(月)恒例の銀座8丁目「博品館コンサート2006」。アットホームかつ銀座という土地柄で粋な趣向も…と計画中。●10月4日(水)川崎市教育文化会館●1月10日(金)土浦市民会館。

『乱れ雲』
06年9月6日発売
作詞:石本美由起
作曲:桜田誠一
編曲:丸山雅仁


 大月みやこ『恋文の宿』
06年1月25日発売(キング) 〜月刊「ソングブック」3月号掲載分〜

情念を抑えた大人の落ち着いた艶歌は“粋の領域”。「今の私の歌」完成です

 昨年の40周年シングルは三連符のリズムながらしっとり系艶歌『女ひとりの日本海』で、今年の新曲は“艶”をさらに深化させた『恋文の宿』。作詞はその分野得意の水木れいじ、作曲は岡千秋。
「今の大月みやこを感じていただけるのでは、と思っています。詞もメロディーも思い切り“身もだえ”するように唄える楽曲ですが、私はその哀しさの奥を表現できたらいいなぁと思って唄いました」
 もう“身もだえ”たり、脂ぎったりするほどには若くもなく、年代相当の落ち着いた大人の情念表現です…と言うが、それこそが情感を抑えた“艶歌本領”のような気がする。
「今の大月が無理せず自然に唄って仕上げました」
 というが、歌唱の組み立ては繊細かつ多彩。
「フフッ…。出来た歌を改めて聴いてみれば、短いフレーズも結構神経が行き届いていました」
 組み立てよう…という特別な意識もせず、喉や身体が自然に歌を作っているのだろう。これぞベテラン芸“粋な艶”の領域でしょう。逆に質問された。
「やはりコテコテに唄った方が歓ばれるのでしょうか…」
 いえ、カラオケ大会ステージではメリハリと大見得が張れる楽曲にアピール力がありましょうが、実際のカラオケ中心層は60代。その年代が無理せず自然に情感表現の出来る範囲はここ。情感を抑えてこそ上品な艶になる。
「そうね、だからといって枯れてもいない。その狭間の艶が出せたらいいですね」
 村田英雄御大の最後のツアーをご一緒したという大月は…
「男も女も、幾つになっても芸に艶がなくてはいけません…とよくアドバイスされました」
 そういえば昨年の日本作詩大賞で、歴代大賞の歌々披露のコーナーで大月みやこは美空ひばりの都都逸入り『車屋さん』を唄って、その艶っぽさが評判になった。
「そうした和の世界の“艶”は、油ぎってないところに“粋”が出るんですね。その意味ではこれからなのかもしれません」
 芸者さんとの芸遊びの世界も好きだという大月みやこの眼は、失われ行く和の艶世界に向くのだろうか。一方、趣味のゴルフも絶好調。
「ゴルフ歴25年目の昨年、初めてホールインワン。皆さん100ヤードそこそこのだろう、とおっしゃいますが160ヤード、クリークでのショットでした」
 心身共に若い大月みやこの明るさはカップリング『花・ときめいて』で華やいだ雰囲気を広げていて、これまた秀逸です。
 ベテランならではの新たな等身大世界を構築して、ますます期待が増します。

<キャプション>恒例新春の東京コンサートを2月22日日比谷公会堂を終えて、4月21日に東京ヒルトンホテルでバースティ・ディナーショーを開催。

『恋文の宿』
1 月25日発売
作詞:水木れいじ
作曲:岡 千秋
編曲:丸山 雅仁



大月みやこ『女ひとりの日本海』
作詞:荒木とよひさ作曲:幸 耕平編曲:丸山雅仁
3月発売(キング)


いよいよ胸にしみ込む季節です。新魅力発揮。優しいフェザーバイブレーション

 ♪ドドドド・ド〜ン。
 ドラマチックなイントロで始まりますが、意表を突くほどに静かな歌いだし。彼女の小刻みビブラートが、優しく繊細に揺れて癒してくれるよう。“フェザー・ビブラート”いや、歌全体にこの感覚が貫かれているから“フェザー・ヴォーカリズム”か…。
 とにかく心地良い。大月みやこは新しい世界を発見したな、と思った。
「わかりますか。『女の港』に代表されるドラマチック歌謡とは別の、大月の新しい歌のような気がして、とても新鮮な気持ちで唄っています。3連のリズムの軽快さと言葉の斬新さ。落ち着いた情念で、なんだか“今の大月”の歌のような気がするんです」
 詞から判断すれが、激しい情念表現も可能でしょうが、どこか静謐な佇まいで唄っている。大人の落ち着き、味わいが充ちた歌唱。これが“今の大月の歌”の真意。
「私の歌はすべてスタッフに委ねています。ですから今ここで、こういう楽曲をプロデュースしてくれたスタッフに“あっぱれ”とほめてあげたい。私もスタッフも新しい大月の発見に、ますます意欲的になっています」
 同曲は3月発売。しかし8月に大阪・新歌舞伎座公演があり、楽曲の季節感が冬ということでこれからが本格プロモーション。
「9月10月にテレビの歌番組で同曲を唄います。10月11日が銀座・博品館コンサート。11月は1日が平塚市民センター、2日が中野サンプラザ、10日が札幌市民会館です。じっくり聴いていただきたい」
 8月の新歌舞伎座には若手の田川寿美を抜擢した。
「私がデビューした頃は、まず前座の日々があって先輩から勉強させていただきました。後輩にチャンスを提供していくのも私の使命です」
 そして自らもチャレンジ。それが博品館コンサートでファッションも洋装、英語詞にも挑戦。昭和歌謡曲や先輩歌手の継承も使命。大月みやこにはますますの諸活動が期待されている。
 最後に『女ひとり日本海』カラオケ・アドバイス…。
「簡単そうですが、実は唄いだしから難しいんです。3連のリズムにのって深刻にならず重くならず、アレンジの空気を感じて軽めに唄って下さい」



●大月みやこ『心の駅』●
〜ソングブック2月号掲載〜

久々に本筋“ドラマチック歌謡”に戻っての本領発揮作。…とは言え、力まず、奇をてらわずのナチュラル歌唱に本物の色艶が充ちています

 大月ファンなら“アッ!”と頷く作家陣。そう、1月8日リリースの新曲『心の駅』は、昭和62年の日本レコード大賞・最優秀歌唱賞受賞『女の駅』とまったく同じ作詞:石本美由紀、作曲:櫻田誠一、編曲:丸山雅仁の布陣。大月さんの決定打と言えばその4年前『女の港』(星野哲郎作詞/船山徹作曲)で、新曲はこれら本筋“ドラマチック演歌”に久々に戻った注目作品です。
 これは前作の軽快でキャッチーな『巡る愛』がすこぶる好評で、その勢いに拍車をかけるべく、ここぞとばかりの真骨頂発揮路線の復活…。
「そればかりじゃありませんのよぅ。今の私には、昨年の諸活動を通じて自身が担うべき役割・目的がハッキリと見えていますから、新たな意欲と元気、明るさがいっぱい(笑)。そのせいでしょうか、皆さん“キレイになったねぇ”“若くなりましたねぇ”“なにか良いことがありましたかぁ”なぁ〜んておっしゃるんですよ」(笑)
 そこまで言われちゃ、詳しく聞かずはなるまい…
「昨年秋の銀座・博品館コンサートのゲストに五木寛之さんをお迎えしましたところ、こうおっしゃって下さった。“私が初めて貴女のステージを観たのは30数年前で、札幌のキャバレーのショーでした。そして今日のステージを拝見し、こう思います。貴女には日本の良き歌謡曲を後世に伝えて行く担い手のトップランナーでいて欲しい”…と。また12月のNHK「二人のビッグショー」で船村徹先生とご一緒させていただきましたが、先生もこうおっしゃって下さった。“ここまで歌って来たからこそ、今、唄い継ぐべき歌もあるはずです”…と」
 ちなみに博品館コンサートは着物なしのドレス衣装替えのみのチャレンジ魂充ちステージでした。さて、説明を続けて聞けば…。
「日本の良き時代の歌謡曲を築いて下さった先輩の多くの方々が亡くなっている今、それら名曲たちを歌い継いで行けるのは、その時代を知り、かつ今も現役の私に課せられた役割、運命なんだと…」
 こう改めて認識して、それまで揺れていたスタンスが固まって、そこにスックと立つ自信と自負。そして今ふたたび日本の歌謡曲創世記を築いて来た石本美由紀さん、櫻田誠一さん、丸山雅仁さんによる本筋楽曲に戻っての新曲『心の駅』です。ここには良き時代の歌謡曲の薫りが充ち、名曲たちへ誘うパワーも秘められています。…と言って、大月さんの見事な点は力まず、こねくり回さず、奇をてらわずの…これまた良き歌謡曲本来のナチュラル歌唱が披露されている点でしょう。
「手を抜いているワケではないんですよ(笑)。これは私の歌唱ポリシー。唄うには歌唱法の組み立てが必要ですが、創り過ぎても練り過ぎてもいけない。練って創っているけれども、それを悟られずに自然に聴いていただけて、よく聴けばそこにある奥深さに気付いて、後でジワァ〜ッと感動が広がる、そうした歌唱をずっと目指していますから…」
 アレンジも含めてドラマチックな楽曲。それに乗ってブリブリとコブシを効かせてパワフルに唄いたいところでしょうが、そこをグッと抑えて心の奥の感動を伝える…そんな落ち着いた歌唱です。
「難しいトライですから、これは一生のチャレンジですね」
 改めて『心の駅』を聴けば、歌唱がそのドラマチックな楽曲を呑み込まず、共存する感じで持ち前の小刻みな高音ヴィブラート、控え目なコブシ、機微に亘る情感表現がビッシリ込められていることに気付かされます。歌手の自己主張ばかりが目立つ今の歌唱法とは違って詞、曲、編曲と共存しつつ大きな感動を広げようとする大月さんの歌唱。きっと、これは良き時代の歌謡曲の魅力のひとつなのでしょう。同時にこのヴォーカルには懐かしい“癒し”も感じられます。
 そして他の何よりも感心させられるのが、その声にイキイキとなまめかしい色艶が充ちていること。
「お陰さまで。声だけは若い時分と少しも変わっていないんですよ」
 そう語った大月さんに、誰かが言った言葉を思い出した。「20代、40代なんてまだ本当の女の艶は出て来ないんです。オンナは50代から…」。
 大月さんの歌唱には良き歌謡曲への誘いと、本物の艶があります。さぁ、たっぷりと楽しんで下さい。



★大月みやこ編 その1『巡る愛』★
作詞:岡田冨美子/作曲:幸耕平/編曲:丸山雅仁 (キング)

キャッチーな詞とメロディー。一度耳にしたら、一緒に唄いたくなってくる名曲です。
〜月刊「ソングブック」6月号掲載〜


 いやぁ〜、いい歌ですねぇ。唄い出しはファルセットのア・カペラでワンフレーズ。グッと聴かせます、惹き込みます。そして一転、軽快サウンドが弾み出して、大月さんの力みのない明るい歌声が広がります。そのヴォーカル、蝶の如し。語尾の心地好いビブラート。失礼な表現かも知れませんが、その声の張り、弾み具合、多彩な変化を持って展開する色艶は20代、30代歌手にも負けません。加えて一度耳にしたら、しっかり頭に残って消えない、すこぶるキャッチーな詞とメロディー。歌好きな方なら、一緒に唄わずにはいられなくなるでしょう。
「さぁ、一緒に唄いましょよ」
 大月さんの心地好く揺れる歌唱が、そう言っているようです。エンディングもまたカッコ良く、クラプトン風エレキギターがビシッと決めています。詞、曲、サウンド、そして大月さんの歌唱が見事に一体になって、極めてヒット性高い名曲の誕生です。
 カップリング『ひとり酔い』も同じ作家陣で、表題曲の唄い出しア・カペラの続きかと思わせるギターだけでワンコーラス。たっぷりと大月ヴォーカルの醍醐味を堪能させてくれて、思わず眼を閉じて聴き惚れてしまいます。ツゥーコーラスからはストリングスも入って情感をグリグリと盛り上げてくれます。
 さて、インタビュー。
 1、2年に1度、幸耕作メロディーの歌謡曲タッチの曲をリリースですが、と訊けば…
「自分で何かを決めれば自己満足に陥り易いですから、私はすべてをスタッフに任せています。スタッフは私を、ユーザーを、状況を見極めて楽曲を創り、私は与えられた楽曲をいかに表現するかに撤しています。また私はスタッフに私の新たな可能性探しに意欲を持ってもらうべく、自身の歌唱から生き方まで魅力的であり続けようと努力しています。私は新たな冒険にも、歌唱追及にも貪欲です」
 そう言えば、大月さんの趣味の車もゴルフも、そんなチャレンジ魂の結果。最近行なわれた新宿コマ劇場のコンペでは9.6のシングル・ハンデで優勝した、とおっしゃる。
「パソコンだって、始めましたよ。でもまだ私の頭の方が回転が早い…。もっと使いこなせばまた違って来るのでしょうけれども…。私はそんな自分が大好きなんですよ。もし私が男だったら、私みたいな女に惚れますね。顔やスタイルを別にすれば“いいオンナ”ですもの(笑い)。ネチネチ考えない、落ち込まない、明るく前向きですから…」
 と豪快な笑い。大月さん、着物姿でしっとりイメージですが、根はざっくばらんの快活派。再びテーマを歌唱に戻せば…
「まず詞の主人公の理解を深めます。それから、どう歌唱を作り上げて行くかを考えます。ここで肝心なのは、聴く人に作っていることがわからぬよう、自然に聴こえるようにしなければならない点です。作りの技術が前に出て来るようではいけません」
 また幸耕平メロディーについて…
「私の曲でなくても、幸先生の世界が大好きですから、リラックスしてのびのび唄えます。今回の楽曲は新たな冒険ではなくて、すでに大月みやこの抽斗の中にあったもの、と思っています。サウンドは今風ですが、この位なら私は着いて行ける自信がありますから、楽しいレコーディングでしたよ」
 大ヒットが期待される同曲をもって、まずはラジオ・テレビに集中出演が予定されていますので、皆様もお楽しみに…。
 そして昨年大好評だった銀座博品館劇場でコンサートが、今年は9月17、18日には開催決定です。
「アットホームな会場で、企画性に富んだステージを…とスタッフの皆さんが考えてくれています」
 きっと、その頃には新曲『巡る愛』大ヒット中かも…です。(インタビュー・伊豆田/文・スクワットやま)

昨年の大月みやこ楽曲を課題曲にした「大月みやこ杯カラオケ日本一決勝戦」、また3月の第18回日本アマチュア歌謡祭グランプリ大会のゲスト出演を振り返って「歌謡曲や演歌の低迷が言われますが、実際はカラオケ好きな方々は元気でパワフル、熱気ムンムンなんですよねぇ。頼もしい限りです」

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