大石まどか『冬のれん』

自作“節まわし”に、歌心を育んだ民謡が!
さぁ、今宵はまどか女将の店で呑みましょ


 コロムビア移籍後、ずっと続いてきた弦哲也メロディーから作家陣をガラリと変えた新曲は居酒屋演歌。…と言えば本格演歌かと思われましょうが、同曲は明るく軽快なテンポ。主人公の女将も元気で華やいでいる。そのシチュエーションは…
「私より数歳上の3歳位の女将。お店はカウンターだけ。お客さんは50、60代男性。♪苦労の荷物は忘れて呑みましょ…と、人生を深刻に受け取らない明るくライトな感覚。そんな私っぽいお店です。そんなプロモーション映像も撮れました」
 同曲をよく聴けば、その軽快な歌唱の中に民謡の節まわしがあるのに気付く。
「今までは弦先生の指導で、そうした匂いはカットの方向でしたが、今回は“ここに民謡っぽい節を”の要請を受けて、自分でいろいろとトライしてOKが出た節まわしで唄っています。ですからこの新曲は自分で創った感覚もあってうれしいんです」
 彼女のノドから自然に発せられたのは、子供時代に培った民謡の節まわし。大石まどかの原点と言っていいだろう。
「父が民謡の先生をしていましたから、幼児期から父の民謡、三味線が子守歌でした。本格的に習ったのは小学 4年から中1まで。私の血に流れているんでしょうね」
 わが身に流れる血を意識するも、日本の芸(例えば民謡、長唄、義太夫、浄瑠璃など)への関心より気持ちはポップスに傾いて、まだ腰は定まらない。
「今、新たに始めるならダンスのレッスンを受けたいなぁ〜」
 間もなく15周年。どっちに進んでいくのだろうか? さて今宵は亡き弟似の客を相手に呑む“香西”女将「居酒屋『敦賀』」か、♪性根を据えなきゃ抱かれない“さゆり”女将「居酒屋『花いちもんめ』」か、明るくライト感覚で華やぐ若い女将、大石まどかの店で呑みましょか。
 おっと、『冬のれん』をくぐるなら、その前に随所に出てくる節まわしをしっかりマスターしましょう。ポイントは民謡風味付けです。

●“演歌系アイドル”も間もなく15周年。着物姿に落ち着いた色香は漂わす大人の歌手を目指すのか、「いえ、アクティブなダンスにも憧れます」。で、目指すは和洋両方の世界を広げて行くのでしょうか。発展途上真っ只中の大石まどかです。

『冬のれん』
作詞:仁井谷俊也
作曲:幸斉たけし
編曲:石倉重信

大石まどか『熱き血汐』
〜与謝野晶子「みだれ髪」他詩集より〜

大石まどか15周年記念曲は文芸作。その歌唱の見事さよ!
“芸達者”から“大人の唄い手”へ本格始動…


「ものまね王座決定戦」で定評の“芸(喉)達者”だ。今さら「うまい」と褒めても意味はなく、いかに「心を打つ歌手になるか」が 15周年を機にした新たな挑戦なのだろう。その意でも、大石まどか初の文芸作は注目だ。しかも一筋縄では行かない与謝野晶子に挑戦。
「12人の子を産み、かつプレイボーイ鉄幹を凛として愛し続けた才女です。でも新曲は与謝野鉄幹に出会った頃…、“みだれ髪”を書いた頃の若々しい晶子を、いやらしくなく艶っぽく歌いました」
 3拍子。ワンワード毎、拍子毎…と言っていいほどに多彩な表現。言葉のひとつ一つが有する“気”が次々に現れて、それは見事な歌唱。その味わい奥深いこと。
「メロディー的には前作『冬のれん』の方が広音域で難しい。新曲は唄い易い分、こまかい部分まで表現しようと挑戦しました」
 作家陣も移籍後のレギュラー、土田有紀・弦哲也コンビに戻って
「弦先生から“どう唄えば、どう伝わるか”と細かいアドバイスをいただいて…」
 やわ肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君 佐藤春夫は反俗の詩人・鉄幹が「道を説く」わけもなく、この歌は鉄幹に会う以前の作だろう…と書いているが、ここには女の冷徹な眼と赤裸々な官能の両方がある。
「私が本領にしたい歌は“艶歌”です。凛とした一途さを有しながらも身もだえて…」
 インタビューはジーンズだったような気がするも、ステージは着物姿でスックと立ち“凛かつ優艶”に唄う大石まどかの姿が浮かんでくる。
 演歌アイドルから15年…。そんな“カッコ良さ”を有すれば、同性が見ても異性が見ても惚れ惚れするだろう。それがきっとスターの磁力。新曲はそんな大石まどかがチラッと見えてきて、いよいよ本格歌手へ新たなスタートが始まったような気がする。
 またカップリング『女のとまり木』にも、前述のような彼女の味わい深い艶っぽさがいかんなくなく発揮されていて「ひと皮剥けたな」と改めて感じさせてくれる。
 まずは新曲キャンペーン。そして8月30日リリース予定の15周年アルバムの制作。
「アレンジを変えた『深い川』『忍び里』がすごくカッコ好いんです」
9月8日に「大石まどか1周年バースデーリサイタル」を浅草公会堂で開催。
「初リサイタルです。民謡もやりたい。いま熱中の社交ダンスも披露したい。高校時代の2年間にジャズダンスもやっていましたから、いずれはジャージーな歌やミュージカルにも…」
 歌の上手さに加え、その優艶さを磨き、さらに洋楽系の巾を広げようとする姿勢に20 、30周年の姿も見えてきた。今が成熟へ急成長の一番おいしい時期のような気もする。

歌手生活15周年記念曲
『熱き血汐』
〜与謝野晶子「みだれ髪」他詩集より〜
作詞:土田有紀
作曲:弦 哲也
編曲:前田俊明

●9月8日浅草公会堂「大石まどか1周年バースデーリサイタル」問合せは…ベルワールド●ファンクラブ「円華倶楽部」入会問合せは…サンミュージック後援会



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