都はるみ『命ゆきどまり』
岡千秋と対談風に…

『浪花恋しぐれ』から22年振りのデュオ復活で燃える都はるみ・岡千秋…。
年輪を重ねた方々にこそ唄っていただきたいデュエット新曲です。


『浪花恋しぐれ』から22年振りのふたりのデュオは、互いの個性がからむ妙を 100%楽しむカラオケ待望曲。ご両人いわく
「芝居がかろうが、軽快に唄おうがどうぞご自由にお楽しみ下さい」。
さぁ、あなたはどう唄うか、そこが問題だぁ〜!


 6年前にカップリング収録された『川舟哀歌』が余りに良かったものだから、ずっとあたためてきたんです。
岡 互いに、同曲への思いが深かった。
都 当時は私一人で唄っていましたが、今、互いに50代半ばになって、年齢的にもピッタリ。やっぱりこれはデュエットでしょう。
岡 で、デュエット用に詞を一部変えていただいた。久しぶりのデュオですから二人とも入魂のレコーディング…
都 ミキサーさんは別々に録りたかったんでしょうが、二人並んで唄ったんです。ある意味では『近松心中』でもあり『昭和枯れすすき』でもありますから、お好きな方はお芝居世界にどっぷり浸るように陶酔の歌唱を楽しんで下さい。
岡 大衆演劇風にね(笑)。テレビ収録の一番最初が「平成歌謡塾」だったんですが、気持ちが入り過ぎて泣いちゃった(笑)。
都 「歌謡コンサート」では、ちょっと軽快な感じで唄ってみました。この曲は、そうやって好きなように唄える良さがある。皆様もどうぞお好きなように唄って下さい。
岡 CDでははるみさんが一番をずっと唄っていますが、今は私が最初の2行を唄って、次の2行をはるみさんが唄っています。フリをつけてもいいし。僕は5着も衣装を作っていただきました(笑)。
都 いろんな感じで唄えますから、さて今日はどう唄いましょうか、と迷ったりして(爆笑)。
岡 そうです。『北の宿から』を唄うなら、その歌唱法で唄わなければなりませんが、これはいろいろな唄い方が出来る歌です。
都 えぇ、非常に珍しい歌ですね。
岡 今日はこういう声を出してみようか、明日はこう唄ってみようか…と。これも歌が持っている力なんだと思います。
都 強いてカラオケ・ポイントを言えば…
岡 サビの♪ここがふたりの ゆきどまり〜の箇所だけは必ず二人でハモって下さい。そして真ん中の2行♪忘れ去られた舟よ〜の部分のみ、ちょっとリズムが変わりますから、ここはしっかりマスターしてください。そう、最後の♪いとおしきおまえと〜♪いとしいあなたと〜 はぜひ互いに情感をこめ合って下さい。
都 タイトルは『命ゆきどまり』ですが、この最後のフレーズを心こめて唄っていただけると、人生応援歌になります。
岡 50代半ばまで後ろを振り向かないで必死に人生を歩んできた。ここでちょっと立ち止まって、互いに“あぁ、よう頑張ってきたなぁ、また明日から二人で生きて行こうなぁ”って感じです。
都 団塊世代の応援歌。この歳になって♪いとしきおまえと〜 なぁ〜んて言ってもらったら女はうれしいんですよぅ(爆笑)。『浪花恋しぐれ』は 30代でも唄えますが、『命ゆきどまり』はやはり50代過ぎが唄える歌ですね。あぁ、春団治もお浜も、一生懸命に生きてきたんだ、なぁ〜んてことを思ったりしながら唄っています。
岡 応援歌であると同時に、僕たちも一生懸命に唄っていますから、そこから唄う楽しさも共感いただけたらと思っています。
都 そう、自分が楽しくないと聴いている方もつまらないと思うんです。私は復帰して15 年が経ちますが、最初の5年間は無我夢中だった。そのうちに歌って楽しい、唄うことって楽しいと再認識できたんです。で、ステージでカーブを投げたりフォークを投げたり…そんな風に唄い方を変えてみますと、お客様もそれを上手に受けてくれて、それだけで会場といいキャッチボールが楽しめます。この曲はデュエットですから、今日はこう唄う、変化球の投げ合いで唄ってみようと、二人の絡み合いの妙を存分に楽しんで欲しいです。
岡 ステージといえば、素晴らしい賞をいただきましたね。
都 昨年の新宿コマ劇場に対して第55回芸術選奨文部科学大臣賞をいただきました。
(編集部注:受賞理由=シリーズニッポンの歌「新歌謡」都はるみコンサート(新宿コマ劇場、 12月)において、自身のヒット曲、代表曲の数々に取り組み、唸るこぶしが物語る独自の持ち味、個性を遺憾なく発揮。同時に大衆的な歌謡歌手としての存在を強烈に印象づけた。昭和の歌謡史に残る市川昭介氏による初期のヒットや代表作における現在の彼女を映し出した新たな解釈、自身が手がけた新作における歌への取り組みなど、そのひたむきな姿勢、意欲からも、今後の活躍が大いに期待される。)
 これは20年振りのコマ劇場公演で、24名のオーケストラと私のバンド「閻魔堂」を含めた総勢38 名のミュージシャンで、歌だけで3時間のステージでした。コマはやはり唄い易い、走り易い(笑)。お客様とも近い感じがします。
岡 はるみさんと初めて出会ったのも、21年前のコマ劇場の時でした。
都 素敵な出逢いがあり、たくさんのヒットも生んでくれた劇場です。このデュエットも大きなヒットになれば、と思っています。

<目下進行中のワーク>@さきほど「全歌集」を刊行した歌人・道浦母都子さんの短歌に曲を付けて唄うプランが進行中とか。道浦さんは都はるみさんと同い年。結婚はしていても子供がいないことも同じで意気投合。A野坂昭如さん、黒田征太郎さん、近藤等則さんらが続けている「戦争童話集シリーズ」の戦後 60年編「ピカドン・プロジェクト」のなか「黒い雨」を古謝美佐子さんと競&共演予定。その他、活動は多彩です


都はるみ 『風雪夫婦花』
●07年1月24日発売(オリコン掲載原稿)●

新曲は“十八番歌唱”の『風雪夫婦花』。来年の45周年に向って助走開始…

1月24日発売の新曲『風雪夫婦花』が好調。“夫婦”と言えば、昭和59年の引退直前の歌が『夫婦坂』だった。
「“夫婦”と付けば自分のもの、と思っています。あの時、市川昭介先生はこうおっしゃった。“これは引退するお前ひとりの歌ではなく、皆に唄って欲しい歌なんだよ”と。新曲も同じく、私の歌ではなく皆様の応援歌です」
 作詞は『夕陽坂』など故・市川昭介とコンビを組んできた坂口照幸。作曲は“市川先生が大好き”な杉本眞人。
「市川先生だったら、きっとこんな感じ…と考えて作られたそうです」
 その歌唱は当然“はるみ節”。その歌唱解説は稀だろうから、詳しく訊いてみよう。
「デビュー翌年『涙の連絡船』や復帰後の初シングル『小樽運河』などは、うならずに唄っていますが、新曲は私の十八番の唄い方にぴったりです。唄い出しの♪ここで逢ったが〜の「こ」の母音化「ぁ」を響かせ、「が」で溜めて、♪百年目〜の「ひゃ」「め」を母音化して響かせつつポポッと上げて走らせているのかなぁ。五木寛之先生にこう言われたことがあります。…唄い尻を上げる人・下げる人がいるが、はるみさんは上げますね。きっと持って生れたものでしょう…と。私は母から譲り受けたものだと思っていますが」
 歌唱説明を続けてもらう。
「引退後、新人をプロデュースしていた時に“うぅうぅ〜〜わっ!”(音が向うから来て反対側に飛んで行く感じ)という練習をよくさせたものです。言葉を勢いよく飛ばす練習。お腹から声が出ていないと飛んで行かない。これが出来れば小さい声でも言葉と心を、遠くに届けることが出来るようになります」
 ここにも“はるみ節”のヒントがある。新曲には巻舌もある。
「先生が“はるみの巻舌はいいよなぁ。僕は一番好きだぁ”とおっしゃった。でもこれも無意識なんです」
 ラ行に巻舌。フッと力を抜いた優しさの表現、各言葉が強弱、方向、硬軟の音色多彩で粒立っている。新曲には3拍子の心地良さもある。
「皆さんがワルツでノリ易いとおっしゃる。そう言われて後で3拍子だと気付いた(爆笑)。メロディーも唄い易く、それも良かったのかなぁと思っています」
 16歳でデビュー。来年が45周年。この新曲をもって早くも助走開始。眼が輝いている…
「市川先生が亡くなった昨年は辛かったが、今年は光が射し込んできたようです。昨年1月に故郷・京都府の文化賞をいただいた折、西陣織の人間国宝・山口伊太郎先生 (105歳)が帯を作って下さるとおっしゃって、それが今年完成したのです。手にすると温かくて眩しくて…。それからいい事が拡がってきたようです」
 山口先生に亡き父の面影もダブる。今年は春から全国ツアー約60会場。
「今まで武道館が8回。来年に10回目ができたらいいなぁ」
 野外コンサート、日生劇場のロングランリサイタルなど動員力が際立っている。
「今、団塊世代がコンサート会場に積極的に足を運んで下さっています」
 世代代表としてもクローズアップ。これからどんな世界に誘ってくれるのだろうか。
「私は着物ですが志向はポップス。J−POP歌手がどんな発声で…と口許が気になります」
 その姿勢は前向き。都はるみの挑戦がジャンルの枠を外してくれそうな気もする。
(文/スクワットやま)



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