三門忠司 新曲『男の地図』
「ソングブック」平成20年1月号掲載

新内や東北民謡の稽古成果か…高音域に艶が出て滋味深くなった三門節

 新曲毎に演歌チャート上位を飾る人気歌手になった三門忠司。『大阪夜雨』『男の燈台』に続き新曲3作連続1位を期待を期待したが…。
「関ジャニエイトと杉本眞人さんの『吾亦紅』にはとても勝てません(笑)。でも3位は上に向かう夢があっていいですよ」
『男の地図』を聴いた。唄い出し高音域で“あっ、進化している”と感じた。高音に余裕が生まれ艶が出ている。それは最終フレーズの高音域の節まわしにも感じられた。新内のお稽古3年目の成果…
「半音高くなりました。唄い出しの♪男の胸〜の「む」の母音「う」が一番高い音で、そこを引かずに押しきれた。最後のフレーズは最近お稽古を始めた東北民謡のコブシが出たのかなぁ。自分では気付かぬうちにお稽古している喉がポツリ・ポツリと出て来るんですね」
 デビューが遅かったせいか、60代の今、芸の深さや滋味が滲み出て本人もファンも楽しさ一杯。従来は“心地よい太くまろやかな声質と素直な歌唱”が最大魅力だったが、最近の稽古で得た高音域の艶や喉を閉めた歌唱も身について、味わい深い“新・三門節”が生まれている。
「“新内”は今まで何度かステージで披露させていただきましたので、今度の年末ディナーショー(12月25日の大阪新阪急ホテル)では民謡もお客様に楽しんでいただきたい…、そう思って勉強していることが普段の歌唱に表れているんですねぇ」
 “身に付けた芸は自分のもの”。前向きな姿勢が歌唱に新魅力を生んで、ますます期待高まる三門忠司。そう言えば、ちょっと聴かせましょうか…と粋な都々逸を唸ってくれた。江戸情緒がテイチクの応接間に響き、しばしうっとりしてから後に、カップリングの女歌『大阪化粧』を聴いた。
「『男の地図』は等身大で唄えましたが、女歌は優しく唄わないと女心が出てこないし、優し過ぎる気持ち悪くなる。そのバランスがわからなくて四苦八苦しました」
 だが三門忠司の着流し姿で今聴いた粋な喉で、改めて女歌が聴きたくなってきた。進化を続ける彼の新領域はまだまだ広がりそうで期待が膨らむばかり…。

『男の地図』
2007年10月24日発売
作詞:仁井谷俊也
作曲:山口ひろし
編曲:佐伯亮

●2007年11月21日『三門忠司2008年全曲集』好評発売中。●1月19日(土)大阪府貝塚市の「コスモスシアター大ホール」@ 14時〜A18時〜で「コスモス演歌祭り」開催。主な出演は三門忠司、山本譲二。●「中村美律子さんの新歌舞伎座で二人で“新内流し”をやらせていただいたんです。三味線はギターのように肩から吊れず腰で止めて弾くから粋なんです。でもバランスが悪くて四苦八苦…。うっとり聴いていただきたいシーンなのに爆笑シーンになってしまって(笑い)。でも、そこがチューさんらしい…と変に褒めていただきました。江戸音曲の芸をひとつでも身につけたく思っています。ある意では歌謡曲・演歌のルーツですから、ここを学べが芸の根が張ります…」



三門忠司 新曲『男の燈台』
「ソングブック」平成18年1月号掲載

テイチクE移籍5年目…オリコン演歌チャート2週連続1位の快挙。冴える“三門節”定着

 平成13年にテイチクに移籍。その時に三門はこう言ったものだ。
「テイチクに三門忠司あり…と言われるようになりたい」
“大阪に三門あり”から“全国区人気”への意欲。その5年後の新曲『男の燈台』が、オリコン演歌チャート2週連続1位で、その後も上位をキープ。目標を見事に達成した。
 新曲を改めて聴けば、三門忠司の“大きさ”が見えてくる。太くまろやかでパワフルな声。優しく包み込む大きな包容力も感じられる。加えてクセのない素直な歌唱が好印象。こねらない、てらわない、小細工しない三門ヴォーカリズム。
「いい詞があり、いいメロディーがあれば、自分の歌唱が際立つ必要はない。詞・曲・編曲・歌がひとつになって作品世界が醸し出せたらいい。それが聴いて下さる皆さんの耳に胸にスッと入って行くんだと思います」
 心地よい声質にクセのない素直な歌唱を聴いていると、大船に揺れる心地よさ。これが“三門節”の魅力。
「僕らが唄っているのは演歌ですから難しい必要はなし。身近な感じでオバちゃんやオジさんが、聴いていてホッと癒される、心地よくなる、楽しくなる、そんな歌でありたい」
“脱サラ”しての遅いデビューだが、謙虚で素直な人柄反映の“三門節”が確立するに従って、その人気がジワジワと全国浸透…。
「ここ数年、関西以外の地でも“忠さんサインちょうだい”など声をかけて下さるお客さんが増えてきました。長野県でディナーショーをやれば満席になる。九州に行っても“待っていました”と迎えて下さる」
 そんな好状況下にリリースされた『男の燈台』は、低く高く大きくうねったメロディーで、そんな三門節の魅力を大きくクローズアップしている。太くまろやかな声は中低音向きだが、高音の長音符もすこぶる気持ちがいい。そう褒めると…
「2年間前から、中村美律子さんと同じお師匠さんについて新内のお稽古を開始。男の三味線は普通一本なんですが三本(一本より半音三つ分高い)でお稽古。なぜ三本かと言えば中村美律子さんと、いつか二人で“新内流し”の舞台シーンをやってみたいから。僕が本手を弾いて、みっちゃんが上調子を弾きつつ花道から“新内流し”で出てくる…。そんなことを夢に稽古を続けているうちに、高音が楽に出るようになったんです。この歳になっても喉は鍛えれば開発されるんですね」
 素直な歌唱を信条とする三門にとって、喉の開発は余りに大きな収穫。
「三味線は撥が手に収まるまで1年、2年でまぁ弾ける、ちゃんと弾けるのは3年からと言われています。三味線が弾ければ新内、都都逸から小唄、長唄、端唄…と粋な江戸音曲の世界が拡がります」
 芸の巾や深さが増せば、歌唱やステージに反映されないわけない。関西から全国人気へ力強い飛翔を開始した三門忠司の明日は、その芸の巾を含めて大きな可能性を秘め、眼が離せない存在です。

●11月22日、アルバム『三門忠司2007年全曲集』リリース。“三門節”に揺られる心地よさが堪能できます。●オリコン演歌チャートのトップに躍り出た三門忠司の次なる夢は「NHK紅白歌合戦」出場。共に夢を見て応援するのも楽しそう。

『男の燈台』
06年10月25日発売
作詞:仁井谷俊也
作曲:山口ひろし
編曲:佐伯 亮


★掲載文ははしょったが新内お稽古話が面白かったんで、取材翌日のサイトで以下のように紹介した。
<三門忠司:新内お稽古の芸話>
 2年前から新内のお稽古をしているんですよ。新内は高音中心ですが男の三味線は普通一本なんだが三本(一本より半音三つ分高い)でお稽古しているんです。三本は結構きついですよ。なぜ三本かと言うと、中村美律子さん(お稽古の1年先輩)と二人で「新内流し」をやりたいから。みっちゃんが手拭ほおかぶり、僕が頭にちょいと乗せる置手拭きで花道から「新内流し」で出てくるってぇのが夢で。粋でしょ。師匠も二人にそれをやらせたいんだ。
「忠さん、三本でお稽古しておけばみっちゃんとやれるよ」
 ってワケなんだ。僕が本手(ほんて)を弾いて、みっちゃんが上調子を弾いて…。
 最初は高い声が出なかったんです。♪え〜え〜って。それがやっている間に♪え〜え〜(インタビュー室で大音声)と出るようになった。新内は裏(声)も遣うんですが、お陰で今までより高い声が出る、きつかった音が楽に出せるようになってきた。
「あぁ、60歳を超えても頑張れば開発できるんだ」と思いましたね。今、お稽古しているのは粋で高い「二上がり新内」
「師匠、いくらなんでもこれは俺には出ないわ」
 と言ったんです。
「忠さん、出なくてもいいから、やっている間になんとかなるって」
 で、やっていたら手が届くようになってきた。
 男が持つのは中棹で、女性は上調子の細棹。男がツンと弾くと、女性がチャラランって弾く。
♪ツン・チャチャ・ツン・チャララン・ツン・チャチャ…。
 この高い所を女性が弾くんですね。この間、美律子さんの大阪リサイタルがあって「一日遊びに行かしてもらいます」と言ったんです。そうしたら本番3日前に電話があって
「忠さん、私、三味線弾くねんけど、ステージから呼ぶから一緒に弾はへん」
 で当日、師匠と三味線を弾いているみっちゃんが
「こんなん弾いていますとウズウズしている人が来てまんねん。忠さん、上がりぃ〜な」
「はいはい」って。僕が「さのさ」を弾き、美律子さんが唄う。「さのさ」のアンコに婦女系の男女の台詞を入れて。
「忠さん、今度は私が三味線弾くから都都逸やってぇ」
 普通では面白うないから即興で… ♪今日のみっちゃん特別きれい(はぁ〜)お客酔わせる美律子節
 ってやったんですよ。そしたらお客さんが喜んでくれましてねぇ。普段は♪きょおぉ〜のぉ〜って、普段出さない高い声ですからお客さんシーンとして、みっちゃんの手も止まって。…ややして「忠さん、なかなかいいなぁ〜」
 僕らの世代でも「都都逸」や「新内」をリアルタイムで知らないんだけれどもお芝居や映画で観ていて、子供の頃にはラジオで流れていたかしら…。でも30代40代の方になるともう
「新内?そんなこと僕らはシンナァ〜イ」
 ですものね(爆笑)。江戸前の文化ですね。津軽の太三味線は若い方が結構やられているんだけれども…。小唄、長唄、新内、都都逸、端唄…ね。粋なイナセな江戸の文化なのに、なんでみんなやらないんだろうて。関西の僕らがやっちゃおうって。僕らが通常唄っている歌とは、声の遣い方、まわし方が違うんですけれども、どこかにそういう匂いが活かせるんじゃないかと。そういう気がしますね。貴重な芸なんですから…。美律子さんに
「今に追い着いてみせまっせ」
「ふふふ〜ん、そうはさすかいな」
っていいライバルです。そういう事を含めて芸を磨く、歌の世界を広げるというか、まぁ、勉強していてマイナスにはならないだろうから。新内の師匠もこう言ってくれます。
「忠さんの新内は本格的だからどこに出ても恥ずかしくないからね」
 去年の暮のディナーショーでお稽古始めてまだ1年だったんですが新内をやったんです。美律子さんが1年目の暮に自分のお店でやりましたから。追いかける身の僕は、クソッ、俺も1年でやりたいって頑張ったんです。「三味線三年・琴三日」と言いいます。撥が手に収まるまで1年、2年してまぁ弾ける、ちゃんと弾けると言えるのは3年からと言われるているです。うん、頑張りますよ。



三門忠司『大阪かたぎ』
ソングブック」平成13年11月号掲載


テイチクに“三門忠司あり”を目指して移籍第1弾
そのソフトな声、その素直な歌唱で…大阪の人々に愛されて

 この夏、テイチク移籍第1弾シングル『大阪かたぎ』をリリースした三門忠司。
 現在57歳ですが、デビュー当初は“脱サラ歌手”として話題になり、39歳で競作『片恋酒』25万枚ヒットで“大阪に三門あり”を全国にアピール。以後『雨の大阪』『大阪夜曲』など次々に大阪楽曲をヒット。今や押しも押されぬ大ベテランで、新曲『大阪かたぎ』は、岡千秋の大阪メロディー。
 そのキャリア、年齢からきっと、こだわりやクセに固まった歌唱で、コブシを効かせた粘っこい歌唱…と予想すれば見事に裏切られます。聴けば、その声は限りなくソフトでまろやか。その歌唱は初々しいほどの素直さに満ちています。
 新曲発売1ヶ月後の9月にリリースされたアルバム『三門忠司全曲集』(オリジナル曲に加え三波春夫さん、田端義夫さんの楽曲も収録)を聴けば、そんな彼の素直な歌唱に、心が洗われるようです。
 そして彼に会ってみれば、その素直さが人柄だということも分かります。
「いい歌に対峙すれば、自然に素直になります。またそう唄うのが使命だと思っていますから…」
 歌は自身をアピールする前に、まずその歌の良さを知ってもらうことが肝心…。この言葉には、三門忠司の歌に対する謙虚な姿勢があり、同時に彼が強烈な個性をもって人々を惹きつける歌手ではなく、誰もに親しく愛される歌手…そんな癒し系の存在であることも物語っているようです。男性が4、女性が6のファン層。
「“乗りかかった船やから、最後まで応援せなぁ〜、しゃ〜ないだろう”と応援してくれる男性ファンがいて、“わたしが顔を出さなければチューさんが寂し〜でしょうから”と熱心に応援してくれる女性ファンに支えられています」
 大阪には、三門忠司を共に頑張る同士、仲間と思って熱心に応援するファンが大勢いる。彼らが最も楽しみにしているのが、年に一度開催の公演。
「平成9年から11年までは大阪道頓堀中座で、平成12年からはワッハ上方で、お芝居と歌謡ショーの5日間公演を続けています。私の笑い出したら止まらないクセを知っている共演者たちがアドリブで私を笑いに誘い、お客さんもそれを待っているんです」
 アットホームで温かい舞台の雰囲気が見えて来る。すでに同曲はそんな熱心な大阪のファンに愛され始めていますが…
「大阪に限らず、テイチクに三門忠司あり…といわれるヒットにぜひ広げたく思っています」
 脱サラしてプロ歌手になった当初、キャンペーンに明け暮れた留守の家を子供ながらに健気に守ってくれた長男も今は30歳とか…。しかし、そう語る三門忠司は57歳を感じさせない若々しさ。未だに青春している感じです。12月21日に新阪急ホテルでディナーショー、12月、29、30日に梅田コマ劇場の「演歌まつり」に看板歌手として出演が決定。ぜひ、そのソフトな声、素直な歌唱をご堪能下さい。


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