松下里美
堀内孝雄プロデュース『背中の氷河』(ゼティマ2002年1月17日発売)
〜ソングブック2月号掲載(最後まで芯が食えぬままに強引に書いた原稿です)〜

テイチクEのチェウニ、ビクターEのシュンケイ…と「おとな派かようきょく」路線はゼティマにも広がっていて、
注目すべきは堀内孝雄プロデュースの松下里美『背中の氷河』。
16歳の時にジャパニーズロック系でデビューして、間もなく30歳。
磨き込んで来たキャリアをJ−
POPと演歌の狭間“歌謡曲”にぶつけて、
同世代女性に共感を広げようとしている。
プロデュースの堀内孝雄、作詞の荒木とよひさ両氏にとっても松下里美3作目のチャレンジで、
そろそろ結果が欲しい段階で、プロモーションも熱くなりそう。
平成14年の「おとな派かようきょく」の一翼を担う新たな存在としてクローズアップです。


松下里美プロフィール1972年、横浜生まれ。16歳でジャパニーズロック系事務所からデビュー。最初のステージはプリンセス・プリンセスのオープニングアクト。その後ライブハウス中心の活動、テレビ番組のテーマ曲などのリリースを経て、1992年にアップフロントエージェンシーに移籍。堀内孝雄プロデュース・シングルは今回で3作目。大人の女性たちに共感広げる歌謡曲シンガーを目指して奮闘中。

●16歳でデビューし、今29歳。バラードが歌える歳になって会心作リリース。

 スィートなハイトーンが心地好く広がるバラード『背中の氷河』。ティーンの弾ける若さでもなく、成熟して落ち着いた喉でもなく、その狭間で揺れる30歳直前の、それはきっと女性として最も輝いているだろう時期の声で、逢ってみれば「あぁ、声って正直だなぁ」と改めて思えた…松下里美さんだった。
 想像通りということは、感性を素直にのびのびと発揮して来た好印象お嬢さんが、今、居場所を求めて揺れ動いていて、ちょっと危なく妖しい魅力を発揮している感じ…。荒木とよひさ作詞も♪もう最後ね、あなたの人形(おもちゃ)にならないわ…と、窓あかり探して、洋服を着替える女性のモノローグ。で、これは!
「新たな自立を暗示のシーンかしら」
 と問えば…
「さぁ、また戻って来たりしちゃう不器用な女性だったりして(笑い)。でもいいんです。揺れながらも、そこにしっかり立って歌ったら、歌謡曲が成り立つのだと思います」
 なるほど、信念を歌うのがロックで、過去を振り返るのが演歌で、その狭間で今の揺れる心を歌うのが歌謡曲…とも言えそう。
「今やっと、等身大の歌が唄えるようになって来たと思っています。流行りものに跳び付くのではなく、自分の判断で“いいなぁ”と思った曲をじっくり聴いてくれる年代、30歳から40代の方々に聴いていただけたら嬉しく思います。」
 キラキラした眼をさらに輝かしてこう語る松下里美さんに、自身の歌を求め、悩み、考え続けて来た真摯な姿勢が感じられた。ここに至るまで実に14年…。デビューは16歳だった。
「プリンセス・プリンセスの1988年のサマーツアーのファイナル、横浜スノーピアの1万3千人の観客を前にしたオープニング・アクトが最初のステージでした」
 事務所が渡辺美里さん、佐野元春さんと同じでジャパニーズロック、ライブ中心の活動から、20歳になって現在のアップフロントエージェンシーに移籍。それまでにシングル6枚、アルバム3枚、ビデオ2作をリリース。無我夢中だった時期もあったろうが、これでも、あれでもないと自身の歌を求めて悩み続けた年月…。
「8枚目のシングル『永遠に−翼をあげよう−』(大阪新国際空港イメージソング)から堀内孝雄さんにプロデュースしていただきました」

●堀内プロデュース3作目。透明感あるハイトーンで辛く重い恋を唄って出たリアルさ、インパクト…

 ニューミュージックを代表するブループ“アリス”から、今は歌謡曲ジャンルで活躍する堀内孝雄さんに、何かを見つけたに違いない。
「最初にプロデュースして下さった楽曲は荒木さんの詞に、堀内さんのメロディー。大人の恋の世界で、未だ21歳だった私には背伸びしてもちょっと歌いこなせなかった」
 その後、小坂恭子さんのフォークっぽい楽曲『土曜日にしなさい』、2000年に再び荒木、堀内コンビ作『愚図で馬鹿でお人好し』を経て辿りついたのが今回の新曲。気が付けば29歳。大人の恋、バラードを歌うに満を持したリリースになった。
「ずっと前からバラードが好きで唄いたかったのです。自分の声をしっかりメロディーに乗せて、楽曲と一体になる感じが大好きなんです。堀内さんのバラードを聴いて、いつか自分も年齢を重ね、味わい深いバラードを唄いたいなぁ、と思っていました」
 作曲の三木たかしさんは初めで…「私のステージ・ビデオなどを観ていただいて、ライブ感のあるメロディーを書いていただいた。レコーディングに当たっては、これは楽にサラッと唄う歌ではない。苦しんで唄って下さい、のアドバイス…」
 その結果、身体の奥から絞り出される伸びのあるハイトーンが、聴く者の胸を揺さぶる見事な仕上がりに…。
「僕が予想した通りの声が出ていました、と三木先生にお誉めいただきました」
 そして荒木先生は…
「歌詞ひとつひとつの言葉が持つ意味をていねいに教えて下さった。唄い出しは♪指先に刺さった 見知らぬピアス…ですが、この何でもない名刺の“ピアス”を立たせるように唄ってみなさい。言葉のひとつひとつをそうしてていねいに表現することで、歌に立体感が出て来ます…と」
 そしてプロデューサー・堀内さんは…
「具体的な歌唱指導ではなく、歌詞に書かれた女性の内的世界のアドバイスでした」
 その伸びやかなハイトーンを活かして、クリスタルな世界や至福感の表現に走りたいところですが、そうすればポップス系になる。そこを逆に、辛くヘビーな恋愛シーンを歌って歌謡曲になった。
「えぇ、ステージではオリジナルの他に久保田早紀『異邦人』、高橋真梨子さん『for you…』などのカヴァ−も歌っていますから、私の声でポップな楽曲を歌った時の感じは容易に想像出来るんです。むしろこの声で生々しい恋の現場を歌うことで、逆にリアルさが出る、ギャップの面白さも出てインパクトが生まれたんだと思っています」
 鋭い自己分析は、さらに続いて…

●一人でも多くの方に、この声に興味を持っていただきたい。そうしたら次の世界に誘います

「男性がこの曲を聴くとドキッとするそうですね。“ヤバイ、俺もそうして女性を泣かせたことがある、泣かせている…”と。ですから男女それぞれに聴いていただきたく思っています」
 と今度は小悪魔的な微笑み。
「私も辛さを美化して主人公になりきって唄っている時もあれば、冷静に主人公を観察しつつ唄っている時もある。私も自在に変化していて、歌っておもしろいなぁ、と思っています」
 と、今度は複雑で神秘な魅力も覗かせ、松下里美への興味が増す。別の楽曲を唄う彼女に、またアルバムやステージの彼女に興味が涌いて来る。
「私のこの声を覚えていただき、アルバムやステージに関心を持っていただけたら、まずは目標達成です。そのためにもNAKの皆様方に応援いただいて、ぜひ新曲『背中の氷河』を一人でも多くの方々に広めていただけたらと願っています」
 目下は神出鬼没の楽曲プロモーションと、堀内孝雄さんのオープニングアクトとして30分ほどのステージを展開中。新曲の魅力はもとより、カヴァー曲歌唱で見せるだろう彼女の大きな可能性にも注目していただきたい。
 最後に、歌唱アドバイスをうかがった。
「決めセリフがあって、ちょっと照れそうですし、またテクニックで唄おうとすると違った雰囲気になりそうですから、自分を信じて曲に真正面から体当たりして唄って下さい。そうして唄えば、曲になじめるような気がします」
 また新たな「おとな派かようきょく」の期待の星・松下里美さんにご注目下さい。


『背中の氷河』1月17日発売!カップリング『そんな女がいたことを』作詞:荒木とよひさ/作曲:三木たかし/編曲:今泉敏郎※CD:EPDE−1094 ¥1,121(税込)CT:EPSE−1095¥1,020(税込)

 音楽を聴きながらの長距離ドライブが好き。目下は地元の女友達と格好良くビリヤードが出来たらいいなぁ、と練習中。このへんはいかにもハマッ子です。また4年前からウェイクボードを、今年はスノーボードに挑戦で、かなりのスポーツ派。格闘技観戦も大好きだそうで、男性と話が弾みそう。新曲キャンペーンで神出鬼没ですが、堀内孝雄さんのコンサートで間違いなく会えそうです。


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