石川さゆり、3月25日発売の新曲『転がる石』
…と、いうワケで阿久悠「転がる石」を読んでみた。
以下、同小説の概要です。
平成13年7月15日/文藝春秋刊/定価(本体1524円+税)

 まず、本の帯コピーを紹介。
「何者かになるために、少年は島を捨て東京を目指した 『瀬戸内少年野球団』から二十年。著者渾身の自伝的小説」
 ここで著者略歴より同小説で描かれている部分を紹介すれば、
…昭和12(1937)年、兵庫県淡路島生まれ。明治大学文学部を卒業後、広告代理店の宣弘社勤務。39年に退社し放送作家として独立。43年から作詞を始め、数々のヒット曲を世に送ってきた…。
 小説は淡路島の高校生時代からR&Bの曲に詞を付けるところで終わっている。


第1章「偽兄弟」
 昭和29年、淡路島。高校生・草介はヌード写真を雑誌に発表した赤井健に興味を持った。モデルは誰か。級友が想像するのはクラス・マドンナの堀井静香だった。赤井を訪ねると、彼の従姉妹で美少年のような二葉が出て来た。硬派の級友6人が、草介と赤井を襲った。闘いの後に喀血する草介の背を、赤井が優しく撫ぜていた。二人は魂がふれあった証明を残そうと同人誌作りを開始し、誌名を「転がる石」に決めた。転がる石には苔がつかない…。二人は苔が付かぬよう一生ゴロゴロだぞ、と握手。赤井がほとんどの原稿を書き、草介は題名の精神を詩にした。「転がる石はどこへ行く/転がる石は坂まかせ/どうせ転げて行くのなら/親の知らない遠い場所…」。二人は大学受験のために島を後にした。
第2章「田舎者」
 草介、赤井は大学が違えど高田馬場・小滝橋近くのアパートを二人で借りて生活を開始した。草介は喫茶店「恋文」で代書のアルバイト。赤井は歌人としての才を発揮しつつも前衛演劇集団作りに情熱を注いだ。草介は新宿で天丼に没頭する若い女を見た。堀井静香だった。金を貸してくれ、と彼女は言った。「警官襲撃・拳銃強奪事件」容疑者のモンタージュ写真にどこか似ていた。赤井が劇団・狂歌団にスポンサーが付いたと部屋を出て行った。そこへ静香が頻繁に訪ねて来た。何かの中継場所にしているようだった。或る日、二人でピンポンに興じ、静香が流産した。入院中の彼女を大勢の男達が来て誘拐するように連れ去った。その後、フと現れた静香はお礼に「マッチ売りの少女」になってあげると、トレンチコートの中で裸の股間に草介を誘い、マッチを手渡した。
第3章「天才ごっこ」
 草介、駒込に移転。「狂歌団」を訪ねた3日間の回想…。乱交に近い集団生活。「狂歌団」の旗揚げ公演は、酷評した劇評家を舞台で暴行するなどで無残な結果に終わった。赤井は転がり過ぎ、草介は転がることも忘れて普通の大学生になっていた。葛飾の中学で教育実習。同じ大学から実習に来ていた峰子との交際。幸福な一家と門限を守る峰子。そんな或る日、少年のような二葉が訪ねて来た。赤井を立ち直すために結婚したいと言う。従姉妹同士は草介ひとりの立会いで熱海の旅館で結婚。草介、わずかに喀血した。
第4章「月光の弟子」
 アパート隣室の放送作家・杉町八郎との交流。四畳半の部屋を出ないと杉町のように、ここが居心地よく思える人間になってしまうと、気分が重くなって来た。そこへ何かを決意した峰子が来た。薄汚れた布団を前にたじろぐ峰子に草介は言う。「処女のまま教壇に立て、先生になれよ」。草介は広告代理店・宣友に入社。同社ではテレビ映画「月光仮面」を制作していた。彼をかいがいしく世話する先輩社員の木原友子がいた。

第5章「夢の泡沫」
 数年後、草介は放送作家になって南青山のマンションに住んでいた。或る日、プロダクション社長とテレビ・ディレクターと音楽番組制作のためにゴーゴーダンスを踊る素人娘を駆り集めるために川崎のゴーゴークラブに行った。エレキバンド・クーパーズの追っかけ少女たちが騒ぎ出し、それをなだめていたのが広告代理店で彼の世話を焼いていた友子だった。これを機に友子が草介のマンションに立ち寄るようになった。クーパーズの内紛に苦労し、披露困憊して倒れ込むように眠り込む彼女。男女の関係になりようもない。やがて彼女はクーパーズの再生に熱中した。七人の侍のような曲者揃いで新メンバーが集まりつつあった。駒込のアパートの隣人・杉町が自殺したの報に富津の実家の葬儀に出かける草介が、南青山のマンションに戻るとテープレコーダーを持った友子がいた。草介が風邪で高熱を出しているもかかわらず、これに明日の朝までびっくりするような詞をつけてと友子はテープを回した。「誰も魂を揺さぶる、性に刺激を与える、時代や社会をぶっ叩く詩がかけないの。書けるのはあなたしかいないの」。同じ曲を十回聴いて、言霊が叫んでいるのに気付いた彼は、朝、詞を完成させていた…

3月25日リリースの新曲『転がる石』については、
太田プロデューサーへの取材を含め、
「30周年、苔むさぬよう、何時までも転がる石のように…」的見出しで、
会報「さゆり倶楽部」に書く予定です。
掲載後に、ここに収めます。


 

さゆりTOPに戻る            EnkaTopに戻る

HOMEに戻る