小金沢昇司 『もう一度札幌』
●平成19年3月21日発売(キング)/掲載「ソングブック」●

20周年記念曲の第1弾シングル。前作のロングヒット『ひとひらの雪』に続いて女歌の第2弾
キャッチーなリフレインが大魅力のヒット性に富んだ期待曲です。
優しくソフトに…。リフレインのサビがうまく唄えたら合格。お気に入りカラオケ・ナンバーにどうぞ


デモテープを聴いた瞬間に “これは行ける”と確信。
こんなことは初めてです


 前作『ひとひらの雪』がロングヒット。勢いにのってデビュー20周年記念曲第1弾が、同じ作家陣で『もう一度札幌』。共に“北の歌”…。
「僕の歌の8割が北の歌です。男歌ばかり唄ってきて前作が初女歌で今回が2作目。とにかくソフトに優しく…。前作と同じ高いキーです」
“これは唄い易い”と女性層が飛び付いてのヒット。前作との共通項はまだあった。前作は♪ひとひら ふたひら〜 と♪ひと月 ふた月〜のリフレインが印象的だったが、新曲も♪札幌あなたとふたり〜の2行がキャッチーなリフレインになっている。
「デモテープを聴いた瞬間に“これは行ける”と直感した。こんな感触は初めてです」
 新曲もカラオケファンの多くが唄い出すに違いなく、さっそくカラオケ指導…
「最初の2行は“あの時の淋しい別れを”思い浮かべて優しくソフトに唄って下さい。そしてポイントのリフレインが意外に難しい。軽快なリズムに気持ちよく弾むと、切なさが消えてしまいます。リズムに先走らず“たっぷり目”つまりリズムを溜めるような感じで唄って下さい」
 そして最後の2行…
「再び優しくソフトにです。最後の♪北の街〜は逢いたい切ない…心の叫びです」
 これで“今年のヒット曲は決まり”。そんな気がしてくるから不思議です。『ひとひらの雪』との共通項はまだあった。

制作参加でつかんだヒット。
…僕の原点はニューミュージックやロックです


「実は僕が制作に参加したのは前作からなんです。“今まで男歌ばかりだから、今度は女歌に挑戦してみたい”とディレクターに相談しての実現でした。オケ録りで鈴の音を入れたく、編曲の先生にお願いしました。でも奏でる人がいなくて僕がやったんです。今回も女性ソロコーラスと鈴を入れてもらいました」
 女性コーラスが哀愁を増し、鈴の音も効果的。
「演歌は偉い先生方が多いから、作っていただいたものを“ハイ”と素直に唄う場合がほとんど…。ある時、オヤジ(北島三郎)がこう言ってくれました。“昇司、妥協するな。自分が唄うのだから、生意気と言われない程度に自分の考えを言ってもいいんだよ”。本当はそうでなければいけませんよね。だって自分が唄う歌なんですから。良くも悪くも制作に参加すべきです」
 それが20周年直前でやっと実現した。自分の意見が言えるようになるまで、それだけの時間を要したってことでもあろう。
「子供の頃に身体に染み込んだ音楽は、生涯を貫くように思います。先輩歌手は昭和歌謡でしょうが、僕らの世代は山口百恵やニューミュージックです。僕も学生時代にロックをやっていましたから…」
 新曲のC/W『大人たちのストリート』はアリス風楽曲。むろん、ここではコブシもビブラートもなし。
「それが僕のナチュラル。シャウト気味のバラードが好きですね。一方、演歌はオヤジについてから勉強で、オヤジの楽曲などはスイッチをガラッと切り替えて唄っています。『義経伝説』(原譲二作曲)はコブシをコロコロです」
 多彩な引き出し。その意ではシングルよりアルバムやステージで本領発揮なのだろう。“よくぞ聴いてくれた”と彼の顔が輝いた。
「20周年ですから、少しでも多くライヴをやりたいと思っています。100名規模のライヴハウスでも2千名の会館でもキャパにこだわらず積極的にやりたい。僕には若者たちによるバックバンド“T−GROOVE”がいますから…」
 小金沢昇司は若いバンドと新宿や渋谷のライヴハウスにも出演する稀有な演歌歌手である。この辺は余り知られていない音楽性。神宮外苑の花火大会にはジーパンで大型バイク・ハーレーに乗って登場もした。
「僕は演歌界の新庄(笑い)と思っていますから。NHKのステージでもボロボロのジーパンで唄ったりしているのは僕くらい…。えぇ、今年は路上ライヴもやろうか…とスタッフに言っているんです」
 そんなナチュラルなキャラクターが本格メジャー展開されるのはこれからだろう。まずはここで20周年を振り返ってもらった。
「僕は修行時代が長くて29歳でデビュー。他の方より倍は走らなきゃいけないと思ってきたんです。昭和33年生まれですから百恵さん、森昌子さん、山川豊さん、石川さゆりさんらと同世代。石川さんが今年 35周年で、僕は走り続けてやっと20周年。今はこの大きな節目をじっくり大切にしたいなぁと思っています」
 腰を据えて勝負に臨めば、そこから明日も見えてくる。
「僕がこの世界に入ったのは映画スターに憧れて…ですから、いつかは主演、主題歌で映画がやりたいなぁ。夢は限りなく大きいんです」
 前作『ひとひらの雪』のロングヒット、そして20周年記念の新曲ヒットでさらに大飛躍が期待されている。デッカイ夢が叶う日も遠くはあるまい…。

『もう一度札幌』
07年3月2日発売
作詞:麻ことみ
作曲:加藤将貫
編曲:今泉敏郎

(キャプション)●3月13日から毎月第2金曜に、新橋SL広場でライブ決定!C/W『大人たちのストリート』はアリス風楽曲で新橋駅前のスーツ姿の戦士を歌っている。●取材当日は北島音楽事務所から独立した山本譲二の東海ラジオにゲスト出演。「オヤジはきっと“譲二さんがいなくなって淋しくなったなぁ”と言われるのがイヤだと思うんです。その意でも頑張らなきゃいけません。むろん兄さんにも頑張っていただいて…」。オヤジ、そして兄さん思いの小金沢です。


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