前川清『ひまわり』
作詞・曲:福山雅治/編曲:井上鑑 C/W『雨を聴きながら』作詞・曲:福山雅治/編曲:吉川忠英
〜6月17日付け:オリコン総合チャート13位〜

福山雅治プロデュース、テイチクEへの移籍第1弾シングルはノンテンションの癒し系楽曲で、発売と同時に爆発的ヒット!

 山本譲二さん、石川さゆりさんがテイチクEに移籍してスマッシュ・ヒットを連発していて、かつて同じPC社にいた前川清さんが、ちょっと寄り道をしてからテイチクEへ。
「二人ともヒットを出されて“あぁ、いいレコード会社なんだなぁ”と羨ましく見ていたんですよぉ」
 その前川清さんの、移籍第1弾の凄いこと・凄いこと…。福山雅治プロデュース『ひまわり』は6月5日リリースですが4日付けオリコン・ディリーチャート13位インで9位、7位、7位…と続き、週間初チャートが総合13位。FM局からも盛んに皿まわしされるなど、発売と同時に大ブレイク。その特徴は大泉逸郎さん、氷川きよし君の大ヒットが演歌層中心で動いたのに比し、『ひまわり』は福山ファンも加えた世代縦断型の新たなヒットで、これは極めてエポック・メーキングなこと。音楽シーンが俄然おもしろくなって来ました。
 この日の前川さんのファッションは写真の通りで、これが氏の自然体。で、改めてこう思うのです。“あぁ、やっと前川さんが自然体で唄い出したなぁ”と。
「そう、そのような気がしますね。これを機に僕の唄い方がちょっと変わって行くのかなぁとも思っています。福山“先生”もよくやって下さった。僕もよくやった」(笑)
 超ベテランが、今までの歌唱をガラリと変えるには想像を絶する勇気と大変さがあったに違いない。
「福山“先生”には声の色、声質イメージがちゃんと出来ていて“その声じゃない、その声も違う”を繰り返されて、もう途中でワケが分からなくなりました。声のニュアンスと言うのは言葉で言い表せないから…」
 限りなくトライを繰り返しつつ、イメージに少しづつ近づける作業があったと言います。そして基本ヴォーカリズムは、抑えた歌唱。
「力まず…、これが大変でした。出したいところを出さずに唄う。これ、かなり腹筋も使うし、息漏れして息が続かない。結局、今まで前川清の“そこがいい”と言われて来たすべてが消された感じで、終わってみれば“本当にコレでいいのぉ〜”という消化不良と不安が残って、でも聴いてみると、いいんですねぇ」(爆笑)。
 今まではサウンドに対峙するように唄って来て、今回はサウンドとアンサンブルするように唄っている、と言います。
「最初は聴いていて盛り上りがないなぁと思っていたのですが、あぁ、これはこれで盛り上りもあって、力んで唄うより逆に詞が出て来る不思議さよ。えぇ、自分の唄は月に数回聴けばいいのですが、今回は毎日聴いていても飽きないんです。今まで何であんなにシャカリキにギンギンに僕は唄っていたんだろう」(爆笑)
 そして、こう加えます。
「僕の従来からのファンが聴いても違和感のない詞です。加えてメロディーが実にいい。一度聴いたら記憶に残る親しみ易さがある。妙に心地好く、落ち着けて、その中に寂しさや温かさも含まれている気がする」
 ちなみにカップリングの『雨を聴きながら』は、福山雅治のアルバム『ON AND ON』収録曲で、福山“先生”と前川さんの歌唱を聴き比べる楽しさがあります。そして、せっかく得た新たな世界、味わいは一シングルに終わらせて欲しくない。
「…というご意見が多ければ(爆笑)、ライブハウス活動など2本立て活動と参りましょうかねぇ。その時はこの普段着そのままでステージに立ったほうがいいのかなぁ」
 自然体の歌唱を得て、インタビューの応えにも力味はない。
「歌唱も楽曲もなにかとガンジガラメの歌謡曲・演歌ですが、これを機にちょっと自由になってやれ!と思っています」
 だが、どんなに歌唱法を変えても、そこにあるのは前川さんの声に他ならず、その声に温かい人柄が出ていて、周囲を癒してくれます。そのナチュラルさで唄った『ひまわり』で、ますます魅力のパワーアップ。テイチク女性スタッフも“サインして下さ〜い”で、若い女性、福山ファン、従来ファン…と世代を縦断する大きな人気、存在にますますなって行く予感。そして新たな音楽の誕生。それは、きっと人生を楽しむことを知った方々が求める歌なのかも…。
 今、J−POPと歌謡曲・演歌の枠が溶解し始めて、新たな音楽シーンに移行しつつあるなぁと思わす凄い作品です。  (文:スクワットやま)

7月1日にアルバム2タイトル発売決定!通常のオリジナル・アルバム『前川清全曲集 ひまわり』と、今までのポップス系楽曲を揃えた注目選曲で『前川清コレクション 雪列車〜ひまわり』。ご期待下さい。公演予定は7月明治座、8月御園座で共に梅沢武生劇団、梅沢富美男、前川清さん出演で、お芝居も前川さんの自然体が生む“笑い”が何とも言えず“いい〜んです”。


前川清『せめて今夜だけは』
福山雅治プロデュース『ひまわり』から5年…。
新曲には不思議な出逢いが秘められて、前川清の名曲がまたひとつ誕生した。


団塊世代と九州フォークの人脈…。こころ優しい前川清の世界が
またひとつ広がって、新たな展開が生まれそうな予感がする。


それはすでに福岡で知られた名曲…
今、前川節で甦る

 新曲『せめて今夜だけは』の“作詞・伊勢正三”のクレジットを見て、反射的に5年前のテイチク移籍第1弾、福山雅治プロデュース『ひまわり』を思い出した。あの美しい井上鑑のキーボード・リフも甦る。同曲は演歌絶不調の最中にJ−POPの中でデイリーチャート上位を維持して総合初チャート 13位。腰を抜かさんばかりに驚かされたものだった。
 前川清と福山雅治は故郷・長崎つながりだった。そして新曲の作詞家としてクレジットされた伊勢正三は大分出身。この新曲は団塊世代の九州フォーク人脈から生まれたものか…。『せめて今夜だけは』を聴きながら、頭の中でさらに推測が飛び交った。「かぐや姫」の『神田川』ジャケット写真を撮ったのは田村仁で、彼は吉田拓郎をはじめとするニューミュージック系アーティストを撮っていて、昨年9月の「吉田拓郎+かぐや姫再結成 inつま恋」でもオフィシャル・カメラマンとして活躍。また梅沢富美男の写真集「夢芝居」も撮っていて、前川清は梅沢富美男と劇場公演やコンサートをレギュラー展開中。
 ちなみに伊勢正三の4月3日のブログを拝見すれば、こんな文章(概要)が載っていた。
…ライヴが一息ついて釣りの一人旅に出た。川に入ろうとした時に携帯に前川清さんからの着信があった。カメラマンのタムジン(田村仁)の取り持ちで話したことがあるいい人で、「イセヤン」と呼んでくれて嬉しかった…。
 再び新曲に耳を傾けてみる。3連符。唄い出し2行が高音域メロディーのサビ。それから4小節毎に中低音メロディー、中高音メロディー、高音域メロディー、そして再びサビフレーズというユニークな構成。その詞は伊勢正三の世界とは違って、いかにも前川清の世界。歌唱も長音符の語尾を母音化してうならせる“前川節”。たくさんの(?)を抱いたまま前川清に会った。
「福岡では、頭のサビがコマーシャルソングで流れたことがあって有名な曲なんです。友人がこの歌を唄っていた有井かずゆきさんを知っていて逢わせてくれた。でも彼は僕のファンだとおっしゃるもののシャイで眼も合わせてくれない。そんなことが2度ほど続いて、今度は彼のスナックに行ってみようということになったんです。風邪をひいたとかでマスクをしていて向こう端とこっち端の遠い会話でしたが“これを前川さんに唄って欲しかった”と言うんです。シャイな彼に友人が“俺も唄うからお前も唄え”と誘った。歌がいい。その唄い方もブルージーな味わいで感動しました。その後、彼が亡くなったことを知らされた…」
 気になって“有井かずゆき”を調べれば、博多で音楽活動を展開。魅力ある人柄でタモリさんらとも交流があった名の知れた存在。
「彼の意志を継いで唄ってみようと楽曲のことを調べれば、伊勢正三は補作のようなかかわり方で、この歌の誕生経緯はよく知らないと言う。僕もその辺の事情を知らぬまま唄っています。でも唄えば誰もがこの歌は僕の歌だったのでは…と思っている方が多い。それほど僕に合ったメロディーラインなんです。でも僕が耳にした有井さんの節まわしは全然違っていて…」
 なんとも不思議な“いわれ”を有した新曲である。聴いて良しカラオケ良し。唄うならフォークロック調で唄うも、前川節で唄うも良し…。
「僕の歌を唄われる方は、だいたい僕流に唄う方が多い。真似がし易いのだろうし、そう唄えばウケるのでしょうね。でも僕とは違った唄い方をされると、あぁ、それもいいなぁと思わず聴き込んでしまいます。この歌は三連でノリ易い。しかも『そして神戸』の♪神戸 泣いてどうなるのか〜 と同じく頭サビ。唄って気持よい楽曲です」

団塊世代の歌手ならではの歌を模索中で、
今後に新たな展開も期待か…


 梅沢武生劇団との公演、また梅沢富美男とのジョイント・コンサートを活発に展開の前川清に最近のお客様動向を訊いてみた。
「最近は僕と同じ団塊世代の夫婦連れが多くなってきた。今までは奥様だけでしたが、ご主人が会社勤めをリタイアされてご夫妻で会場にいらっしゃっている。オバさん主導型から流れが変わりつつありますね」
 前川清も昭和23年生まれの団塊世代。「いつまでもキャバレー時代の男と女の歌を唄っていていいものかと考えてしまいます。最近はコブクロやスガシカオの歌を聴けば“いいなぁ〜”と思うし、同じ世代だと例えば伊勢正三は都会ではなく、田舎の川の流れや風を感じつつ釣りをしていて、大人のいい時間の過ごし方を知っている。そんな方々が創る音楽も素晴らしい。僕も新しい歌を探って行きたいと思っています」
 テレビで拝見する前川清はいつもスーツ姿でかしこまった歌唱だが、インタビューは写真の通りの不精ヒゲもお似合いなラフファッション。
「今、60歳を目前にしてもっと自然体で大人のいい歌、いい生き方を反映した楽曲を唄って行きたいなぁと思っています」
 この3月から自身の事務所を設立。これから今までになかった前川清が動き出しそうな気がして今後に注目です。

『せめて今夜だけは』
07年1月1日発売
作詞:伊勢正三
作曲:脇山和夫
編曲:萩田光雄

主なスケジュール●4月まで各地で「梅沢武生劇団・梅沢富美男・前川清」特別公演を各地で展開。●6月からが「前川清・梅沢富美男ジョイントコンサート」で 5日:ミューズ(所沢市民文化センター)、21日:八王子会館、26日:花巻温泉・ホテル千秋閣、29 日:川口総合文化センター。●7月19日は神戸国際会館で「前川清・香西かおりジョイントコンサート」


メモ:5月13日G 1ヴィクトリアマイルで愛馬コイウタの祝勝会を行った。G1制覇は初。馬主歴約30年で50〜60頭を所有してきた。社台ファームの吉田社長と共同馬主で優勝賞金のうち3600万円を獲得。


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