弘田三枝子
弘田三枝子・これくしょんマイ・メモリィ
〜ミコより愛をこめてfrom MICO with Love
CD6枚セット+解説書(全140P)(日本コロムビア)
〜ソングブック12月号「おとな派歌謡曲」欄に掲載〜

 この夏、弘田三枝子のCD−BOXが発売と同時に話題を呼びましたが、
ここに来て年末年始商品として再びクローズアップされて来ました。
当欄趣旨は「良質な大人の歌謡曲を厳選して…」ですが、
このBOXに収められた全122曲は、文字通り“良質な大人の歌謡曲”の宝の山…。
弘田三枝子はデビュー曲『子供ぢゃないの』に代表される東芝時代(3年間)の
“60年代カヴァーポップス・クィーン”のイメージが濃厚ですが、
実際はコロムビア12年間在籍中の日本の歌謡曲黄金期の楽曲が主で、
これらが初めて集大成されて、再評価されることしきり。
今年、レコードデビュー40周年の彼女は、
このCD−BOXと共に再び活発な音楽活動展開で、脚光を浴びています。

カヴァーより日本の歌謡曲が輝いていた頃の楽曲中心で初CD化が79曲
 CD1枚づつ、いや全122曲の1曲づつを詳しく説明したいところですが、そんな誌面はなく、どうしたらいいものだろうと思っていたら、なんと同CD添付の140Pに及ぶ解説書が、実に良く出来ているのです。1曲毎に収録当時のエピソードを添えた解説文があって、これを記しているのが本誌「なつメロ専科」でお馴染みの合田道人さん。
「もう毎日のように電話がありまして、あの曲この曲の収録当時の質問責め。私もタイムスリップしたように、少女時代に戻りまして…」
 というワケで、1曲毎に解説文を読みながらの鑑賞は、購入された後の楽しみにとっておき、まずは同CD―BOXの概要を本人より説明してもらった。
「話題を呼んだ、ちあきなおみさんのBOX制作のディレクターさんが、次ぎはミコちゃんの番だね、と取り組んで下さった。レコードデビュー40周年ですから、その膨大な音源をどうまとめるか、まさに構成勝負のBOXですが、ここは熱心なディレクターさんにすべてをお任せした方がいいだろうと…」
 結果的に、マニアックな弘田三枝子ファンが、思いの丈をぶつけての熱気満ちた構成となって、これが評判に評判を呼んだ。スタッフもこう説明…。
「売らんかなの気持ちが一切なく、ミコちゃん大好きの愛情に溢れた選曲、構成です」
 具体的には、すでに何度もCD化され尽くした東芝時代の『子供ぢゃないの』に代表される一連のアメリカン・ポップスのカヴァー一辺倒ではなく、その後の日本の歌謡曲が燦然と輝いていたコロムビア時代の楽曲を中心にした構成。
「東芝の3年間は全カヴァー曲がチャート・トップ入りでしたから、今でも60年代ポップス・クィーン的イメージが濃いのですが、実は私の音楽活動はその後のコロムビア在籍12年間が最も充実していまして…」
 そう、日本の音楽がカヴァー時代を経て、オリジナルの歌謡曲を見事に華咲かせた黄金時代があって、そのド真中に弘田三枝子はいた…
「そんな貴重な時代の音源が、今回初めて集大成されて、何と初CD化が79曲もある画期的な内容です。私自身、“あら、こんな歌も唄っていたのかしら”と初めて聴くかのように忘れていた曲との再会がたくさんありました」
 今、J−POPと演歌の狭間に埋没してしまった「歌謡曲」ですが、ここには黄金の輝きを放っていたあの頃の楽曲がビッシリで、まさに宝箱…。
「私の全てが初めて集大成された感動のCD−BOX完成です」

原点を再確認させてくれる歌々。同世代の方々にもっと聴いて欲しい…
 6枚構成を簡単に紹介すると…最初の3枚が「シングルズ」でB面曲を含めた全67曲を収録。その次ぎの1枚が「ライヴ トラックス」と題された33年前のミコが米国修行後に披露した「R&B」ライヴ収録の10曲。その2年前の「ニューポート・ジャズ・フェス」出演後に披露したジャズや、ジャズ・ヴォーカリストとして活躍中だった15周年に披露した、ジャズ・アレンジによるヒット曲メドレーなどを収録。
 5枚目が東芝時代とは別アレンジのカヴァー集で、6枚目が「アラカルト」と題された『レオのうた』から『アスパラで生き抜こう』や『レナウンワンサカ娘』などアニメ主題歌やCMソングを収録。
 この6枚、全122曲を耳にしての全体的印象は…
「作詩家、作曲家、編曲家、さらにはディレクターを含めた音楽の玄人たちの“いい仕事”の結晶です」
 聴けば汲めども尽きぬ発見と感動の連続。
「20世紀の歌謡曲がここに凝縮されています。私自身、聴き返せば思わず“アッ”と声を上げるほどの驚きをもって、忘れていた自身の“原点”にも出会います。その一つは、楽曲に対して純粋で素直で、躊躇なくパーンと声を出している凄さ…。自分で言うのもおかしいのですが、涙が出るほどの感動を覚えます。聴いて、すごく新鮮だし、ショックも受けるし、勉強にもなります」
 去る10月16日、赤坂BLITZで「弘田三枝子デビュー40周年ライヴ」が行われたが…
「ライヴに当たっても、あの時代の歌に対する素直さ、疑うことなく全身をぶつけて唄うことによるスピリチュアな世界を、死ぬほど聴き取りました」
 かつて彼女の歌に胸をときめかせた覚えのある方々に、ぜひお薦めです。
「外資系レコード店が力を入れて売って下さっているせいか、目下は若い方々が飛びついて下さっています。店頭の試聴コーナーにCD6枚がディスプレイされたりして、うれしくて記念写真を撮って来ちゃいました(笑い)。でも、本当は同世代の皆様方にもっともっと聴いて欲しく思っています。きっと少年・青年だった時代が甦って来てホッとされると思います。J−POPには付いて行けず、だからと言って演歌でもなしと、音楽から遠ざかっていた方がいれば、なおさら聴いていただきたいの。あの頃の輝いていた日本の歌謡曲、輝いていた若き日々に再会する楽しさをぜひどうぞ」

ここから弘田三枝子の新たな旅立ちが始まりそうです。
 さて、レコード・デビュー40周年を集大成した同BOXをリリースした弘田三枝子さんは、ここで大きな節目をつけて、再び新たな羽ばたきを開始しようとしている…
「今、R&B、ジャズ、歌謡曲…何を唄っていても楽しく面白いのです。えぇ、厭きるほど唄って来た『人形の家』だって、イントロが流れるとワクワクしちゃうのです。これはきっと、BOXを聴き直した結果の、素直に躊躇なくの原点復活によるものかも…」
 新たな歌への意欲も湧いて来る。
「40年間、さまざまな歌にトライして来たエッセンスをいっぱい入れて、素敵なメロディー、詞、そしてハイクォリティーなサウンド。えぇ、これに躊躇なく声を出してのスピリチュアルなものが出せたらいいなぁ、と思っています」
 レコーディングへも溢れるような意欲がたぎっている。
「今の音の技術は昔と雲泥の差があります。昔は狙った声、音がなかなか再生出来ませんでしたが、今は何とクリアーなこと(笑い)。そう、レコーディングもライヴと同じで、うまく出来れば鳥肌が立つ興奮がありますから…」
 はやる気持ちを抑えて、まずはこのCD−BOXのプロモーションに全力投入の予定とか。皆様も文字通り「おとな派かようきょく」がギッシリ詰まった『弘田三枝子・これくしょん』をぜひどうぞ…。

『弘田三枝子・これくしょん マイ・メモリィ』〜ミコより愛をこめて MIKO with Love CD6枚セット+解説書(全140P)定価\13,650(税込)※全122曲収録(うち79曲初CD化)

●プロフィール1947年生まれ。8歳で米軍キャンプ・オーディション合格。13歳で東芝レコードより『子供ぢゃないの』でデビュー。以後『ヴァケーション』『私のベイビー』『砂に消えた涙』などカヴァーをヒット。1969年に『人形の家』ミリオンセラー、「ミコのカロリーブック」も大ベストセラー。

●CD−BOXのジャケット写真、及びアーティスト写真は29年前、1972年リリースのアルバム『The Wonderful World of MIEKO HIROTA』のもの。「30年経ちますと時代も一巡り、今、渋谷に行きますと同じメイクの子がいっぱい。ファッションもあの頃に似ていますし…」と弘田さん。若いアーティストたちの間でも、ミコ・メイク復活だそうです。

●今も毎日2時間のレッスンを欠かしません。そうした喉のシェイプアップで、50代にしてさらに音域が上に広がっているとか。ミコ旋風再び!の声が盛り上がっています。

●写真は10月16日、赤坂BLITZで行われた「レコードデビュー40周年記念ライヴコンサート」


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