渥美二郎
(日本コロムビア)
移籍第1弾『男の航路』(11月21日発売)
授かった命を限りなくマ燃やせ…と入魂の男歌です!


 繊細な表現力で女心の機微を歌い、数々の大ヒット実績を重ねてきた渥美さん。
コロムビア移籍第1弾シングルは、そんな従来イメージ一変の強力インパクト男歌。
明日を信じる力と、困難に奮い立つ勇気が湧いて来る…人生応援歌でもあります。
 そんな不屈の歌を語る渥美さんは、あくまでも穏やかで謙虚。
そう、声高に叫ぶのは何時だって自信のない若者たちで、
本当の闘いを経た男は物静かなんだ…と改めて教えられた。
この新曲を機に渥美さんへの新たな期待が一気に高まりそうです。

〜ソングブック12月号掲載より〜

 移籍第1弾シングル『男の旅路』。作詩・作曲は千寿二郎。渥美さんのペンネーム。太鼓が響き、怒涛を乗り切るかのような力強いイントロ。腰にグッとパワーを溜め込んで、船底に響き轟けとばかりの歌い出し…。
♪命授かる この身の重さ
 何を不足の 男の航路…
 中低音のまろやかで張りのある声が、生命力に満ち、キラキラと輝いています。授かった命を一生懸命に生き、輝く明日を信じて走り続けよう!と歌う意欲いっぱいの人生応援歌。今までは、その繊細な表現で女心の機微を歌って、数々の大ヒット実績を重ねて来た渥美二郎さんだが、聴いていて元気が湧いて来る…心機一転の血湧き肉踊る逞しき男歌。画期的意欲作ですね、と言ったら…
「いや、そんな意識もなく自然に出来た曲です。ずっと女歌を唄って来ましたから、そろそろ男歌も唄ってみたいなぁと思って。作ってみたら、こんな歌が生まれたって感じかなぁ。ちょうど、その頃に移籍が決まりまして、コロムビアのディレクターさんも開口一番に“第1弾は男歌で行きましょうよ”と。まさに出会い頭で両者の考えがピッタリ合ってのリリースです」
 気負いを感じさせない淡々とした説明ですが、デビュー3作目の『夢追い酒』182万枚大ヒット以来、渥美二郎=女歌のイメージが定着していて、今回の移籍第1弾はそのイメージを打破するかのような強力インパクト楽曲。
 いきおい新たな旅立ちに際し、意気盛んに熱く語っていただけると思っていたが、渥美さんは相変わらず静かで穏やか、加えて謙虚…。
「そもそも千住で流しをやっていた8年間は男歌中心でしたから、根本的に男歌が好きなのです。デビュー後も『昭和時次郎』などポツポツと男歌をリリースしていましたし…」
 そこで男気いっぱいの詩について伺ってみると。
「これも持論なのですが、人生は帆かけ船みたいなもので、一生懸命に帆を上げる努力をしていれば、いつかはいい風が必ず吹いて順風漫帆の時を何度か迎えられると思うのです。この時に帆を上げる努力を怠っていれば、いい風が来ても素通りしちゃうワケですから、どんな時にでも諦めずに帆を上げる努力をしていたい…。そんな思いを詞に託してみました」
 渥美さんの人生を振り返れば、16歳から8年に及んだ“流し”の下積み生活があり、デビューと同時の大ヒットで走り出したスター街道があり、平成1年の突然の末期ガン宣告に胃と脾臓の摘出手術があって、見事に克服された今がある。逆風、追い風の繰り返し。
「えぇ、37歳で生きることを一度諦めて、それから早12年ですよ」
 渥美さんの人生には、どんなに苦しくとも明日を信じ、諦めずに努力を続けることの大切さとその結果が形になっている。手術後の熱心な体力、筋力トレーニングは余りに有名で、病魔を克服しての諸活動と“今”がある。ここからも伺える通り、物静かな渥美さんの胸奥には、不屈の闘志が燃えたぎっているに違いない…。
♪浮くも沈むも 運命の海は
 力いっぱい 帆を上げりゃ
 明日の光が 命を照らす…
 不屈魂から生まれた詞。ヒーローを見上げるように、次ぎの応えを期待して見つめれば…。
「…ここまで書いたら、もう次は書けませんよネ」
 とまたまた謙虚。だが、ここまでメッセージ色濃い楽曲をリリースした後は、逃げてはいけません。何故って…多くの中高年層が不況の波を浴び闘っている今、同曲はそんな人々を奮い立たせるパワーに満ちて、渥美さんと共に明日を信じて走り出そうと思い立つ方々も多いはず。そう言ったら…
「癌で胃を取った渥美二郎がここまで頑張っているんだ、よし、俺も頑張ろう…と思ってくれたる人がいたら、本当に嬉しいですよね」
 そうです・そうですとも。走り続けていただかなければ困るのです。この移籍第1弾のヒット、そして更なる新曲へと期待が高まります。
「今、49歳。『男の航路』と共に50代に突入です。これからは1曲1曲を大事に、魂を入れた歌を残して行かなければいけませんね」
 と、やっと小さなガッツポーズをして下さった。このどうしようもない不況下、人生を諦め投げ出そうとする中高年層も多い。絶望を超えて闘い抜いた渥美さんへの期待は、この新曲をもって一気に高まるに違いない。
「本当にそう感じて下さる?嬉しいねぇ」
 と差し出された手を握れば、筋トレ結果だろう骨太、力満ちた握力にビックリさせられた。そう、だまされてはいけないのです。その華奢な外見、控え目で静かな語り口の裏には、病魔に打ち勝った並じゃない不屈の魂と、鍛え上げられた強靭な肉体が秘められているのです。
 作曲について伺ってみると…
「自分の詞にこんなことを言うのも変ですが、いい詞が出来ればメロディーは自然に湧いて来ます」
 カップリングの『望郷歌』は坂口照幸作詩で、渥美さんの作曲。これまた新たな世界で、故郷の山河へ人生を重ねてジックリ、しみじみと聴かせてくれる感動曲です。そして肝心の歌唱についても…
「それでも両曲共に、かなり抑えて歌っています。と言いますのは、僕は感情をこねくり回すような感情過多なヴォーカルはいけないと思っていますから。歌い手の最大の役目は、詞を心地好い発声と声をもって明瞭に届けることだと思います。ですから感情過多の歌唱で、こう聴いて欲しいなどと強要し、聴く方の自由な感性を邪魔してはいけません。曲調にあった歌い方で淡々と心地好く届ければ、十人十色の感受性で聴いていただけると思っています…」
 アッとここで気付いた。声高に叫ぶのはいつだって自信のない若者たちで、本当の闘いを経た男は、いつだって物静かだったと。渥美さんの抑えた歌唱、てらいのない静かな語りと姿勢の裏にある、したたかな熱き魂がジワーッと伝わってくる移籍第1弾『男の航路』です。新たな世界を拓いた渥美二郎がここにいます。明日を信じて一生懸命に生きる勇気とその素晴らしさに胸が揺さぶられます。ぜひ聴いて下さい。

<以下はキャプション・コピー>
●11月20日、中野サンプラザで行われたデビュー25周年ファイナル・リサイタルでは、マンドリン、ギター、津軽三味線、ピアノ、ドラムと楽器演奏も披露。「ギターは小学生の頃から弾いていましたから、弦楽器ならスムーズに弾けるます。楽器を弾いている時は唄っているとは別の楽しさがあって、弾いている自分の楽しさがお客様にも伝わって行くと思っています」 皆様、渥美さんの中野サンプラザのステージご覧になりましたか。素敵でしたよ。
●この10月初旬に、15年間連れ添った愛犬「タロウ」を亡くした。腕の中で最後を看取ったと言います。お子様なしの生活で、夫妻で我が子のように可愛がって来ただけに「恥ずかしいけれど、涙が止まらなかったよ」と渥美さん。現在はプードルとチワワの2匹がご夫妻を慰めている。
●49歳…とはちょっと信じ難い、そのシェイプアップされたボディーと、未だ青年のようなフェイス。子供の頃から剣道や柔道が好きで、その後の胃の摘出でさらに増した節制した生活とトレーニングの賜物でしょうか。女性ファンは彼から若さ維持の秘訣を探るがいい…。
<データ>『男の航路』作詩・作曲:千寿二郎 編曲:兼子かおる カップリング『望郷歌』作詩:坂口照幸 作曲:千寿二郎 編曲:兼子かおる



渥美二郎 『夢落葉』
30周年記念第3弾。女歌も太くまろやかや中低音が響きます

「ソングブック」06年11月号掲載

 30周年記念の第3弾が『夢落葉』。第1弾がちょっとハードな男歌『慟哭のエレジー』、第2弾が弦哲也メロディーの女歌『哀愁』。
「30周年でシングルが約30曲。少ない方です。だから30周年は賑やかに3タイトルで、その〆が里村先生作詞の『夢落葉』です」
 哀切なメロディーにバラライカ・フィーチャーのイントロ。唄い出しの2行頭が♪この命〜と♪この心〜。キャッチーなメロディーと詞が印象的。“歌い手は詞のメッセンジャー”を信条に感情過多の歌唱を嫌う渥美二郎だが、珍しく胸揺さぶるビブラートで情感たっぷりではないか…。
「里村さんが渾身の集中でお書き下さった。素晴らしい詞はメロディーを喚起しますからスッと作曲できました。楽曲への思い入れが深くて、ちょっと感情が入り過ぎたかなぁ。長音符も多いし…」
 思い入れが深くても渥美二郎の歌唱は、ファルセットなどの“擬似女性歌唱”にならないのが特徴。耳に心地よく響くのは、あくまでも男の中低音。カチっと芯がありながらまろやかな艶に充ちている。
「いい詞は朗読だけでも涙が出てきます。だから詞が明瞭に伝わるようてらわずに唄えばいい。それを皆様それぞれの解釈で聴き、唄っていただけたら…と思っています」
 作曲家・千寿二郎こと渥美二郎に、作曲の秘訣を伺った。
「ワンコーラスくらいの詞を頭に入れて旅に出ます。言葉をつぶやきながらメロディーが浮かんでくるのを待つ。僕はマイナーのしんみりと琴線に触れる曲が好き。この歌は最初の♪この命 あなたにあげて〜にそんなメロディーが浮かんできた。家に戻ってギターで仕上げて、イントロや間奏などのアレンジ構想も練って編曲家と打ち合わせ。スタジオで音が仕上がっていく瞬間は、なんともうれしいものです」
 ギターをはじめピアノ、三味線、フルートなど器楽演奏も得意な彼は編曲アイデアも豊富。そして唄入れして楽曲に命が宿る。
「無から有の瞬間ですね。そうして産まれた歌が、何年か後に旅先で誰かに唄われているのを知った時もたまらなくうれしい」
 30年を振り返ってもらった。
「僕たちは『夢追い酒』などミリオンセラーが出た時代を知っていて、ヒット曲は誰もが唄えたんです。コンサートに行きますと、そんな若き日にヒット曲を共有した皆様方が待っていて下さる。 8年間の“流し”を含めて38年、大病克服から17年。歌い続けられていることに感謝しています」
 この新曲も、何年か後に誰かが唄っているに違いない…。

●30周年ツアーファイナルが11月1日の中野サンプラザホール。モーツアルト生誕250年で『トルコ行進曲』をピアノ演奏など多彩なステージを展開で楽しそうです。

『夢落葉』
06年10月18日発売
作詞:里村龍一
作曲:千寿二郎
編曲:石倉重信




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