月刊「カラオケファン」連載 〜11月号(9月21日発売号)〜
40周年の軌跡と円熟の展開
五木ひろし 俺の山河は…。(最終回)

文:スクワットやま  Squat Yama
第24回 55歳コンサートと40周年メッセージ

[取材日記] 平成14年5月21日の潟tァイブズエンタテインメントげ」記者発表会からほぼ 1年後、平成15年3月14日、五木は横浜アリーナで「55才ハッピーバースデーコンサート“ともだち”」を開催した。
 熱気か人いきれか、モワッと霞がかかるその巨大な箱型空間に1万2千名を収容。一部は五木の 55歳バースデーを“ともだち”が祝福する構成。実行委員長・堀内孝雄に中澤裕子と加藤紀子が加わった司会進行で、まずはモーニング娘。ハロープロジェクトの総勢 21名が次々と登場。各界からお祝いに駆けつけたゲストは総勢約50名。
 二部が、五木の55年間の半生を振り返りつつのワンマンショー。タキシードの五木は、スクリーンに映し出される子供時代の写真から思い出を語りつつ唄い出した。若き母の写真に、その苦労を思い出して『ヨイトマケの唄』、入院した母の見舞いに輪ゴムを弾きながら唄った『リンゴ追分』。西新宿のクラブ「ボンゴ」でのギター弾き語り時代を思い出しつつ、当時よく唄ったという『たそがれの銀座』『ラブユー東京』『コモエスタ赤坂』など。オーケストラ指揮をするのは、同じく「ボンゴ」でピアノ演奏をしていたボブ佐久間。二人は下積み時代の“まかない飯”の思い出を語り合い、そして『よこはま・たそがれ』からヒットナンバーへ。最後曲は自らの人生を振り返りつつ『山河』。一部出演の“ともだち”全員が五木に薔薇を一本ずつプレゼント。深紅の薔薇を抱いた五木は、静かに 55歳宣言とも言えるメッセージを語り出した…。
「今まで55歳の誕生日を大きな目標にしてきました。そして55歳からの5年間は、僕の最後の大勝負の期間だと思います。これからの5年間を悔いなく歩めたら、僕は多分、思い残すことはないだろうと思います。歌を唄う道をひたすら歩んできたのが私に人生です。これからも精一杯がんばって唄って行きます」
 また終演後の“囲み取材”では、こうコメントしていた。
「観てくださる方々に“50代っていいなぁ〜”と思ってもらえたら…、今日はそんな意味もこめたステージです」
 さらにその翌年、平成16年9月29日には東京プリンスホテル「鳳凰の間」で「五木ひろし芸能生活 40周年&芸術選奨受賞を祝う会」が盛大華麗に行われた。歌手仲間、俳優、タレント、作家、そして多数マスコミ、音楽事業関係者約 600名がお祝いに駆けつけた。ここでは開演前にマスコミ取材が行われ、五木はこうコメントした。
「デビューから40年。その間に大勢の方々と出会い、素敵な関係が生まれました。改めて人と人との出会いのありがたさをヒシと感じています。また 40年を振り返りますと“あぁ、ずっと闘ってきたなぁ〜”という気持ちがあります。真剣に闘ってきたからこそ素晴らしい方々との出会いがあったのだと思っています。また“五木ひろし”になるまでの辛い6年間があったからこそ、今の僕がいると思います。母は弱音を吐かない強い人でした。僕も母の強い精神を受け継いだのでしょう。今、僕の一番下の長女は間もなく 10歳です。僕が50周年を迎えると20歳の成人になります。それまでは頑張って行きたいと思っています」
 当日の司会進行・徳光和夫も開宴の挨拶にこう言ったものだ。
「今日は40周年を祝うのではなく、50周年に向けた旅立ちを祝す会にしようではありませんか…」
 今、57歳。五木ひろしになって今年が35年目。芸能生活50周年まであと9年。3年前に自らのレコード会社、ファイブズEを立ち上げてからの彼のレコード制作、そのプロモーション、そして公演、コンサート、イベントともにそばで見ていても息苦しいまでに果敢な挑戦を展開している。
♪ふと想う 悔いひとつなく
 悦びの山を 築けたろうか〜
 今、彼はまさに『山河』のフレーズ通り、五木ひろしという巨大な山河構築のフィニッシュワークに入っているような気がしてならない。そこに“守り”は微塵もなく“挑戦”一途。いったいどこまで昇り詰めようというのだろうか。
 当連載のサブタイトルに“円熟の展開”と記したが、正しくは“飽くなき挑戦の展開”がふさわしかったのかもしれない。とまれ設立のレコード会社はまだ数年の若さ。いずれはここに多くの有望な歌手たちが集い、強力な会社とすべく、五木はこれからも闘い続けるのだろう。
 だが連載24回目の最後を、こんな言葉で締めくくりたい…。
 山河の峰が天空にそびえるほど、麓も大きく広がろう。そんな草原のサンデッキで、のどかにくつろぎ唄う五木ひろしの歌も聴いてみたいと思うのは筆者だけではあるまい。(完)

「俺の山河は…。」参考資料 当連載は約10年間にわたって自ら取材・編集してきたファン倶楽部会報「 HIROSHI」(24頁・季刊発行)の他に、以下の資料を参考にさせていただきました。
「五木ひろしブックガイド」を兼ねて紹介…。●五木ひろし書籍「涙と笑顔」(五木ひろし著・講談社・昭和 50年刊)「五木ひろし賛歌」和田稔著・フェニックス出版・昭和57年刊「心の旅立ち」(五木ひろし著・敬文堂・昭和 59年刊)「ふたりの影法師」(五木ひろし著・マガジンハウス・平成3年刊)「渾身の愛」(五木ひろし著・主婦と生活社・平成 3年刊)「ファイティングポーズの想い」(五木ひろし著・NHK出版・平成16年刊)●その他:明治座、御園座、新歌舞伎座の五木ひろし公演パンフ/コンサート・パンフ/デイリースポーツ連載「ふりむけば日本海、そして今」(来年 2月まで連載予定)

<キャプション>▲「55才ハッピーバースデーコンサートin横浜アリーナ」▲「五木ひろし芸能生活 40周年&芸術選奨受賞を祝う会」(写真提供は五木倶楽部)



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