月刊「カラオケファン」連載 〜6月号(4月21日発売号)〜
40周年の軌跡と円熟の展開
五木ひろし 俺の山河は…。

文:スクワットやま Squat Yama
第19回 ファイティング・スピリッツの秘密
 

[取材日記] …今春、五木に“新社会人への応援メッセージ”のコメントをもらう仕事があった。彼はデビュー当時の思い出から語り出した。
「僕は福井・美浜を後にしたのは中学卒業と同時だった。京都の関西音楽院で 1年間学び、上原げんと門下生になるべく上京したのが16歳。その直後に第15回コロムビア全国歌謡コンクールに優勝し、昭和 40年に松山まさる『新宿駅から』でデビュー。チャンスは早かったが、そこからが試練の始まりだった」
 五木の社会人デビューは、少年時代だったのだ。彼はこう続けた…。
「歌手の夢を追う・追わずに関係なく、高校生のころから人生の闘いは始まっていると思うんです。将来のこと、友情や恋に悩みだすのもこの年代だからね。僕は他の人よりいち早く社会人になって、世間の厳しさをイヤというほど知らされる…」
 その意では、新社会人への応援メッセージを語るに、五木こそ適任なのかも知れない。彼はどんなアドバイスをくれるのだろうか…。
「夢や理想があれば、必ず直面する壁が現れる。悩みも生まれる。僕が言いたいのは、そんな時は決して逃げてはいけないってこと。逃げても、それはいつか必ず立ちふさがってきますから。そんな時は素直に壁にぶつかって行って欲しいんです。勝ち負けを焦る必要はありません。要はいかに一生懸命に闘ったかなんです。そう、負けたっていいんです。若いうちなら何度も打たれ、倒れてもいいんです。逃げたり、諦めたりしなければ、その負けた悔しさが、いつかは強靭なバネになり、夢や目標を達成できるパワーになる。そしてチャンスは、必ず巡って来る。ひとたび壁を克服した歓びを味わうと、今度は逆に新たな挑戦が楽しくなってきます」
 そして、こう締めた。
「僕の拳を固めた歌唱ポーズを真似する方も多いようですが、これは僕の闘う姿勢の象徴なんです。僕は五木ひろしになっても、常に何かと闘い続けています。それでもなかなかうまく行かないことが多い。それが人生ですよ。新社会人の皆様、夢や目標を諦めずにがんばって下さい」

[五木のファイティング語録] そんな五木には、闘う勇気、真剣に生きる勇気を与えてくれる言葉が多い。それらを幾つか紹介してみよう。まずはラジオの新曲キャンペーンで…
「僕はいつだって目標を掲げて有言実行でステップアップしてきました。いま演歌状況がどんなに悪くても、新曲を出せば決まって大ヒットが目標です。諦めるもんですか。3度目のレコード大賞を狙って、納得するまで頑張りますよ。頑張るから、また次も見えて来るんです」
 彼は己に厳しい。20数種の楽器演奏もマスターし、ステージで“ひとり演奏会”も披露する。並大抵の努力では出来るワケもない。ファンクラブの集いでは…
「僕は飽きっぽい。だから次々に新たなことに挑戦するんだと思います。大川橋蔵さんはカレーライスが気に入ると一ヶ月はずっとソレでいいそうです。だから“銭形平次”を 18年も続けられたんだと思います。僕はいつだって、次は今までにやっていなかったことを、と新たなチャレンジがしたくなる。これはもう性格なんでしょうね」
 コンサート・ツアー初日の取材で…
「いつも崖っぷちの闘いがあった。それを逆に意欲に変えてきた。自分には平坦な道は似合わないんです。立ちはだかる壁があるほどファイトがわいてくるんです」
 講演会では…
「若いころは自分が頑張れば、それで結果がついて来ると思っていましたが、結婚し、子供が生まれ、歳を重ねるに従って人はひとりでは生きてはいけない。人の支え、縁や出会いによって人生は拓けて行くんだと思うようになってきた。そう思うと感謝の心で一生懸命に唄うという姿勢が生まれてきます。その気持ちがあれが、どんなに疲れていても“あぁ、疲れた”という不満顔は出ません。一生懸命に唄えば、お客様からのパワーももらえる。キャッチボールですね。これも僕のパワーの源です」
 これはコンサートのMCで…
「20代後半か30代最初のころから、人生経験を積み重ねた50代が最も輝く年代だと思ってきました。そう思うからなんでしょう、仕事環境も次第に整ってきた。同時にこの仕事をしていると、昔はとうに隠居だろう 60歳以降の方々が、本当の仕事はこれからだと燃えている。互いに刺激しあってこっちも燃えてきますね。僕の歌を聴いて下さる皆様がいる限り、僕は唄い続け、闘い続け、大ヒットを目指して行くんだと思います」
 ステージ・トークでは…
「今日も3時間、40曲を唄います。僕は楽器演奏も唄うことも大好きです。好きだから40年やって来れたんですね。フ・フ・フッ、まだまだやりたい。やり足りないんです」
 五木は昨年夏、芸能生活40周年の最中に「五木ひろし ファイティングポーズの想い」と題した自著を出版した。戦後の昭和歌謡史のなかで自分がどう生き、どう闘って来たかを主テーマに書かれた内容だが、本を読まずとも以上のような日々のコメントから、彼のファイティング・スピリッツがうかがえる。
 一昨年がラッキーナンバーが重なった55歳の展開、翌年が芸能生活40周年の大展開。“あぁ、そんなに頑張って燃え尽き症候群にならなきゃいいが…”と心配したものだが、とんでもない。今年は五木ひろし『よこはま・たそがれ』から 35年目。ダブル五木楽曲『ふりむけば日本海』で大ヒットを目指す!燃えに燃えて、ますます意気軒昂。
 五木のファンには、黄金の五木節もさることながら、彼のそんなファイティング・スピリッツに魅せられている方も多いようだ。
ITSUKI NOW  プロ野球が開幕した。今年は球界再編やIT企業の進出で再び面白くなってきた。さて、五木ひろしが唄う読売巨人軍・新応援歌『ファインプレーを君と一緒に〜 GO!GO!ジャイアンツ』をご存知だろうか?すでに巨人主催ゲームの試合合間などでマスコットガール“チームジャビッツ21 ”のお嬢さん方のはち切れそうなダンスと共に威勢良く球場に流れているこの曲は、3月23日にバップレコードより発売中。
 これは同球団創立70年を記念して歌詞を一般公募。これを熱烈巨人ファンの船村徹が作曲。さて、誰に唄ってもらおうと言う段階で船村が五木を指名した。一方、話題の楽天イーグルス応援歌は仲良し「つんく♂」楽曲で唄うはモーニング娘。これは面白いとノッた五木は、徳光和夫の熱烈応援コールをフィーチャー。聴けば立ち上がって拳をふりあげたくなってくるノリノリの応援歌を完成。またカップリング『男ごころのどまん中』も巨人ファン感涙必至作。

メイン写真 五木ひろし熱唱はごぞんじ!このファイティングポーズ
サブ写真 バップ発売の読売巨人軍・新応援歌ジャケット

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