月刊「カラオケファン」連載
〜3月号(1月21日発売号)〜
40周年の軌跡と円熟の展開
五木ひろし 俺の山河は…。

文:スクワットやま Squat Yama
第16回 大賞、明治座、シドニー…豊穣の昭和59年

[取材日記] …芸能生活40周年は五木ひろしもスタッフも取材者も大忙しだった。特に平成 14年秋は記者会見も集中的に行なわれた。9月1日が明治座初日の会見。同12日がアルバム『おんなの絵本』発表会。 29日に東京プリンスホテルで約600名を招いた盛大な「芸能生活40周年+芸術選奨を祝う会」。
 筆者は某カラオケ誌の五木ひろし取材も担当しているから、限られた誌面内に全ニュースをどう収めたらよいかと苦労したほど。取材現場に行けば毎回大勢の取材陣で「先日はどうも。今回もよろしく…」と記者やカメラマンともすっかり顔なじみ…。
 また頻繁な記者会見だがそのつど発表ネタはひとつではなく、明治座初日会見では演目「雨あがる」の他に前日発売の著書「五木ひろしファイティングポーズの想い」の発表を兼ね、『おんなの絵本』発表会ではシングル『雪燃えて』のNHK金曜時代劇「最期の忠臣蔵」主題歌決定とニューアルバムの有線全曲放送が複数チャンネルで決定…も兼ねる多彩さだった。さらに普段ならこれらもそれぞれ記者発表だったろう 10月6日発売のユカリ&ひろしのデュエット『大阪ナイトスキャンダル』、五木ひろしプロデュース&作曲の石原詢子『紅い月』、城之内早苗『霧のかもめ唄』発売、さらには 10月27日発売のアルバム『哀愁の吉田メロディを歌う』もあっただろうが、これら記者発表は割愛された。
 今日も取材、明日は記者会見と走りまわりながら、あぁ、昭和59 年もそんな感じで忙しかったんだろうなぁ〜と思った。その年は五木ひろし芸能生活40周年の中でも際立つ“豊穣の年”だったのだから…。

[豊穣の昭和5年] …五木がシルクロードの旅から帰った翌年、昭和 59年の年譜を見てみれば1月にオーストラリア・コンサート、4 月リリース『長良川艶歌』がミリオンヒットして第15回日本歌謡大賞と2度目の日本レコード大賞受賞。そして明治座も初公演だった。
 五木はまずシドニー「オペラハウス」コンサートをこう振り返っている。
「その2年前の正月休みに僕はオーストラリアで遊んだんです。その時にシドニーの貝を模した純白のオペラハウスを見て“ここで歌えたら気持ちいいだろうなぁ”と呟いたんだ。同会場はミラノのオペラ座、ニューヨークのカーネギーホールと並ぶ“世界の3大殿堂”で、しかもオペラとクラシック専用ホール。そのステージに日本のポピュラー歌手の僕が立てるワケもなく、まぁ、夢を見るような呟きだったのですが、これが何故かシドニー観光局に伝わって…」
 折しも日豪交流に力を注いでいた同局はジャッパン・ウィークを企画し、その目玉に五木のオペラハウス・コンサートを決定した。とは言え…
「未だオーストラリアに日系人が少なかった時ですから、2千7百の客席が埋まるだろうか。その半分はきっと外人客で、果たして満足してもらえるのだろうか…」
 と五木は心配したが、蓋をあけてみれば超満員。音楽監督・指揮は服部克久で、オープニング『契り』からヤンヤの喝采。最後はスタンディング・オベーションの大絶賛。地元紙、シドニー・モーニング・ヘラルド紙は翌朝の一面で…
「イツキはもはや日本のエンターテイナーではない。世界に通じるエンターテイナーで、トム・ジョーンズを超えてシナトラに近づいているシンガーだ」。
 その結果、五木はシドニー市から外国人初の「名誉市民」をもらった。
 さてシドニーから帰国し、前作『細雪』に継ぐ“艶歌”『長良川艶歌』(作詞・石本美由/作曲・岡千秋)を4月にリリース。これは数ヵ月後にカップリングを東宝映画主題歌『おはん』に替えて再リリース。強力な両面で、『長良川艶歌』は約109万枚のミリオンヒットとなった。
 11月20日、日本武道館で開催の第15回日本歌謡大賞で念願の大賞を受賞し、年末の第 26回日本レコード大賞で2度目の大賞を受賞。五木に“艶歌シリーズ”というまた新たな路線が確立した。
「この年でもうひとつ忘れられないのが明治座の初公演です。これを機に僕は今までの恒例を打破する昼夜別の二本立てを企画した。一つは長谷川一夫先生演出でおなじみの“沓掛時次郎”。もう一つがオリジナル新作“投げ節新三捕物暦”。だが僕のスケジュールがビッシリでなかなか稽古に入れない。本格的に台詞覚えに入ったのが本番5日前。共演の皆様が仕上げの段階に入ったところにポ〜ンと入って、役にはまり込む集中力で、相手の台詞まで一気に覚え、共演者が目を白黒していたのを覚えています」
 五木は、ここでまたひとつ演技の間、呼吸を身に付けて、後にこの明治座公演が役者・五木の評価を一気に高めた、と言うから凄い。五木はまた同公演でチェロに加えてフルート、ピアノ、ギター、津軽三味線と多楽器演奏を初披露。この成功は翌年からの新橋演舞場へつながって、同劇場初の正月公演 10年連続の偉業に結びついて行く。
 まだある。この年はテレビドラマ「子連刑事」に主演。同年11月8日から開催の「第4回ツムラ・五木クラシックス女子プロ選手権」では日本人初の岡本綾子優勝で、大会会長の五木は岡本プロに毛皮コートと祝福のキスを贈っている。昭和 59年は、かくのごとく五木ひろしにとってエポックメーキングな年だった。芸能生活40 周年の大きな盛り上がりを経て向かえた平成17年…。また新たな五木ムーブメントが興きそうな気がしてならない…。

ITSUKI NOW 連載16回目の入稿は12月中旬。果たして年末のNHK「紅白歌合戦」はどうだったのだろうか。
 現時点でわかっている最新情報は第37回日本作詩大賞「テレビ東京特別賞」受賞と、第 46回日本レコード大賞で『おんなの絵本』ベストアルバム賞・受賞。そして12 月16日に東京国際フォーラム「スーパーライブコンサート2004〜FINAL〜」で主な諸活動を締めくくった後は、クリスマス・ディナーショーを残すのみ…。噂では、すでに来春リリースの新曲レコーディングに入った、と聞いているが未だ詳細は不明。
 さて、平成17年は五木ひろしになってから、つまり『よこはま・たそがれ』から 35周年。また昨年同様に多彩な展開が期待されるが、その内容詳細はこれから…。現在わかっているスケジュールは 1月から4月までコンサートツアー。4月19・20・22・23・24日が新宿コマ劇場、 6月3日〜27日の名古屋・御園座公演。五木はこう宣言している。「 35周年目にぜひ大ヒットを実現したい」

メイン写真キャプション 最初で最後の日本人歌手コンサートを行ったシドニー「オペラハウス」をバックにした五木(写真はファン倶楽部会報より)
サブ写真キャプション 写真は昨年秋の「芸能生活40周年&芸術選奨受賞を祝う会」の記者会見風景


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