金田たつえ『能登の火祭り』

御陣乗太鼓にのせて気風のよい女心が躍るシングル73弾は…
能登の火祭り燃えて…

 7月20日リリースの同曲はシングル第73弾、5年間の民謡時代を含めデビュー38年目、『花街の母』から 34年目の作品。
「勇壮な曲です。祭り太鼓にのせて情熱をぶつけています。老若男女、理屈抜き、雨が降ろうが槍が降ろうが楽しんで唄っていただきたく存じます」
 前作『お母さん』が痴呆症の母を介護する歌で、社会的反響が大きく2年間にわたってプロモーションをしてきた。“母”と言えば 70年代末の大ヒット曲『花街の母』。“花街”は「かがい」と読むが、同曲の余りの大ヒットでいつしか「はなまち」になってしまった。
「当時、NHKの番組に出ましたらアナウンサーが高橋圭三さんで“これは『はなまち』とは読みません。私は『かがいの母』と紹介させていただきます”とおっしゃって、とても困ったことがあります」
 今では懐かしいエピソード。新曲は威勢のよい艶歌で、金田さんの“艶歌”経歴も面白い。
「カラオケブームに先駆けて昭和53年に不倫演歌『人妻』を唄いました。今はその程度の艶歌はなんでもありませんが、自分でもドキドキしながら唄ったものです。 B面をカラオケにしたのも業界初だったと思います。昭和58年には『しのび恋』もヒットしました。即売コーナーで“これは私達二人の歌です”と囁かれたカップルがいまして“あぁ、ほんとうにこういう不倫はあるんだ”と思いましたの」
 ベテラン歌手の貴重な話…。話題を新曲に戻すと美人のマネージャーがこう言った。
「6月下旬に能登にいってプロモーションの仕掛けに動いてきます。能登には火祭りが 27つもあるんです。夏から秋にかけて能登は火祭り一色…」
 マネージャー、実は娘さん。親子で遠慮なく戦略談義を交わすとか。今度は“母娘もの”ヒットを期待です。


●金田さんは講演活動も活発。北海道・石狩川流域在住時の洪水体験、『花街の母』」キャンペーン中に宮城沖地震に遭ったこと、関西大地震では家屋半壊体験などから災害テーマの講演が多いとか。また最近は子育て、母がらみのテーマが増えて来たと言う。●またこれまでに市町村の歌をたくさん唄ってきて、今は合併による閉村式などに呼ばれることも多いとか。

『能登の火祭り』
05年7月20日発売
作詞:横山賢一
作曲:花笠薫
編曲:佐伯亮

金田たつえ『浪花なさけ橋』

14年振りの浪花演歌は、浪花節がポイント

 『ど阿呆浪速華』から14年ぶりのコテコテ浪花演歌。まずは本人のメッセージから…。
「北海道出身の私が大阪在住となって、37年になろうとしています。歌手も当初は 5年頑張れたらいいなぁと思っていたのにアッという間に民謡40 年、『花街の母』から35周年です。歌手は死ぬまでヒット曲への挑戦です。地味でもいいから人の心に残るいい歌を唄い続けたく思っています。新曲は久しぶりに浪花演歌です。関西弁はまだ身に付いていませんが、浪花節や河内音頭は約 33年間習っていまして、この新曲ではそれら成果が自然に出せたかなぁと思っています。来年の 35周年に向って、この新曲で盛り上げたく思っています」
 そして歌唱説明…
「メロディー通りに唄っても面白くありませんから、大阪の匂いを出すべく“浪花節”っぽく唄っています。あぁああん〜という浪花節ならではの唸りがちりばめられています。ほどほどに唸っていますが、ここを強調して唄えばもっとコテコテになりましょう。どうぞお好みで楽しみつつ唄っていただきたく思っています」
 冒頭に科白入り。ちょっと気の強い浪花女房が出奔した夫を想う内容。全コーラスに出てくるのは堂島川、天満橋、中之島、水晶橋、お初天神、曽根崎新地、大江橋、澪標(みおつくし)、土佐堀橋、淀屋橋。関西のカラオケファンには“待っていました”の楽曲でしょう。金田はさらに自らの歌唱をこう説明です。
「私は当初、民謡で育ちました。そして浪花節と河内音頭を勉強。でもこれら芸は師匠の厳しい流儀があります。これらから得たものを歌謡曲に私流にミックスして仕上げていますが、興味を持たれた方は、それぞれの道に精進していただけたらうれしく思います」
 むろんキャンペーンは浪花中心。地元で足と汗の地道な展開を繰り返して、まずは関西地区ヒットから全国へ…。歌唱ポイント イントロが流れてきたら気分は浪花節です。金田たつえの節回しに付いて行けなくなったら浪花節を思い出せば、難なくクリアーできるでしょう。唄う前にあんあんあぁん〜と一節うなってから挑戦がいいかも…。

●豆知識:多くの歌手が『無法松の一生〜度胸千両入り』をカヴァーしているが、これを最初に唄ったのが金田たつえ。古賀政男への懇願が叶って『無法松の一生』レコーディングの際に古賀先生が村田英雄の『度胸千両』を“アンコ”に入れてみましょうとアドバイス。同曲は昭和 52年にリリースされた。

『浪花なさけ橋』
06年2月22日発売
作詞:一ツ橋雪
作曲:池田八声
編曲:佐伯 亮


金田たつえ『囲炉裏』

2006年9月号「ソングブック」掲載

♪昔 囲炉裏の回りに 人が居た現代日本が失った数々がここに…“ぬくもり縁歌”の誕生です!!

「おぉ、やったね!」
 金田たつえが75作目の新曲で、会心のテーマに出会った。
♪昔 囲炉裏の回りに 人が居た〜 懐かしき囲炉裏端の情景が、そのあたたかい声質、歌唱からワッと拡がってくる。
 …囲炉裏で燃える薪の炎に頬を染めた大家族。祖父母が昔ばなしを語り、母が熾き火でじっくりと煮炊きをする。父が酒を呑みつつ自然相手の農耕の厳しさや季節折々の風習・行事の手筈を仲間達と語り合っていた。子供達はそんな囲炉裏端から少年に、大人へと育って行ったもの。
 同曲を耳にすると、誰もが子供時分のそんな田舎の情景を思い出すに違いない。金田たつえに、まずはテーマについて語ってもらった。
「恋だ・愛だ!ではなく家族の絆の大切さや、人間らしさ…。そうした歌が欲しいとずっと思っていました。3年前に母の介護をテーマにした『お母さん』を発売。重いテーマでしたが、今も歌い続けて大きな反響をいただいています。さらに人の絆にテーマを求めていて“囲炉裏”に出会ったんです」
 新曲を聴けば、前作『浪花なさけ節』で発揮のちょっと泥臭い浪花節歌唱、声をここでも発揮。それが煤で黒光りした梁や自在鉤のような骨太い安心感、懐かしさを生んでいる。
「最初はコブシのないフォークソング的な歌でした。私にとっては珍しい曲調ですからそれも面白い。“唄入れ”直前までそう思っていたんです。でも、どうもしっくりこない。試みに私らしく♪えぇえぇんええぇ〜とコブシを回してみたら、ワッと懐かしい味わいが漂い出したんです」
 今、私たちが囲炉裏体験するのは、集客施設として旅館や飲食店が設けた囲炉裏だったり、別荘やリタイア後の田舎暮らしで作られた囲炉裏かも知れない。もしフォーク調歌唱で唄われていたら、そんな現代リゾート風囲炉裏が浮かんできたように思う。しかし金田たつえの声・歌唱はかつての生活に密着した本物の囲炉裏を描き出して、それは熾き火のようにポカポカと温かい。金田自身の囲炉裏体験を訊いてみた。
「私は北海道出身で実家はストーブでしたが、江差の祖父母の家に囲炉裏がありました。今は囲炉裏端にあったものが何も残っていないんですね。見渡せば新建材。見つめるのは全国画一のテレビやゲーム映像。大家族の団欒もなく核家族化がすすんでいる。いや、厳しい経済環境で一人暮しの方も多いはず。ですからこの歌は一過性のヒットより、人々の心の中にいつまでも留まって、折々に思い出し、心を癒し、暖めてくれる…そんな息の長い歌になって欲しいのです」
 懐かしき田舎の囲炉裏を歌った同曲には、限りないメッセージ性が充ちている。今や“囲炉裏端”も“井戸端”も死語。せめて金田たつえの『囲炉裏』を聴いて唄って、少しはゆっくりと生きる心の余裕とあたたかい心を取り戻してみましょう…。

『囲炉裏』
06年8月23日発売
作詞:高橋直人
作曲:山本 優
編曲:南郷達也

キャプション●私は自分の持ち味で浪曲っぽく、民謡っぽく唄っていますが、皆様はそれぞれのご家族を思ってお好きな歌唱で唄っていただきたい。この曲はテクニックより「心」を癒し、優しくなるための楽曲なのですから…。 (by金田たつえ)




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