石原詢子『あまやどり』

癒し系楽曲のナチュラル・ヴォーカル。
純粋で爽やかな恋心…また新たな世界…新曲『あまやどり』


 ゆったりしたテンポに流れるようなメロディー。コブシなし、ビブラートなし。素直で限りなく自然な歌唱。風がそよぐように唄っている。チラシコピーに
「聴いて、歌って、癒されて…究極の“癒し演歌”の誕生です」
 とあるが、作詞・作曲は永井龍雲、編曲は矢野立美で、“脱演歌”と言っていいでしょう。
♪俺が俺がと 世知辛い
 世間に背を 向けた人〜
 そんな優しくマイペースの男性に“あまやどり”と唄っている。ここにあるのはノンテンションの寛ぎ、安らぎ。特別にキャッチーなフレーズがあるワケでもなく、でも不思議に心が和みます。
「永井さんから何曲かいただきましたが、声を出してみたら“この曲がいい”とスタッフ全員が一致したんです。その歌唱も楽曲が自然に求めてきたもの。石原詢子が“またちょっと変わったな、今までになかった世界を歌っているな”と思っていただけたら幸いです」
 前々作『紅い月』では五木ひろし作曲・プロデュースで情念演歌に挑戦した。前作『おもいでの雨』では得意のメジャー演歌に戻り、そして新曲でまた新たな世界…。
「思い切らないとなかなか新しい世界が拡がりません。試行錯誤から新たな可能性探しをしているのかもしれません」
 デビューから17年目。彼女を支えるファン層は、演歌中心層より一回り若い人々が中心。
「40代男性層が増えて来たし、女性層も増えて今は男女比半々」
 彼女のこうしたチャレンジを歓迎する年代でもあろう。また石原詢子も新たな世界探りを楽しんでいるよう。
「ここ3曲それぞれ違う楽曲で、その反応も違いますから、ここから何かが見えてくるような気がしています。『紅い月』は今でも動いてロングセラー化しているし、『おもいでの雨』は私のフィールドで動きが読める。そしてこの新曲はどんな反応か楽しみです」
 耳に心地よく残る曲は、聴いているうちにフと口をついて出てくる。
「そうしたら、しっかりカラオケしたくなってくるかも…」
 微笑んだ眼に自信がのぞいた。そこでカラオケ・アドバイス…
「言葉を大切に、そして♪あなたの心に あまやどり〜のフレーズをしっかりていねいに唄って下さい」

●8月下旬から1日2会場の東北ツアー。その後は中国地区のツアーなどステージ活動も活発。「各会場で即売・握手を積極的にやっています。どの会場もお客様がいっぱいで、元気と意欲をいただいています」

『あまやどり』
05年8月24日発売
作詞・作曲:永井龍雲
編曲:矢野立美

石原詢子『ふたり川』

十八番!軽快テンポのメジャー演歌に戻って…パッと咲いた“詢子節”
芸巾を増やし、さぁ、大飛翔を…


 前作『あまやどり』が永井龍雲楽曲。風が吹きぬけるような爽やかな歌唱を披露。その前年には五木ひろしプロデュース『紅い月』で艶歌に挑戦。そうした新たな挑戦を繰り広げて、新曲は十八番のメジャー楽曲に回帰。
「メジャー演歌は3年目の『ふたり傘』以来です。無理なく気持ちよく唄える曲です」
 石原詢子のメジャー曲を振り返れば…
「平成11年、川中美幸さん『二輪草』大ヒットによる“幸せ演歌”ブームで、私の『みれん酒』も売れた。そうした動きのなかで NHK「お江戸でござる」テーマソングになった『きずな酒』と『ふたり傘』も売れたと思っています」
 以上を踏まえて新曲『ふたり川』を聴いてみる。透明感と伸びのある声。とりわけ長音符の伸びの気持ち良いことよ。リズムにのってイヤ味にならないサラッとしたコブシもまわっている。
「私が唄って気持ちがいい、聴いて下さる方も気持ちがいい。それが私のメジャー曲。張る、まわす…この辺は意識せずとも詩吟で培った喉が出ていると思います。そして今回の私のテーマは“低音域も気持ち良く”です」
 詩吟揖水流家元の長女で、12歳で師範代に。詩吟は高音域の張りが聴かせどころで、低音域はほとんどない。そこで中低音をいかに魅力的に…が彼女のテーマ。とは言え歌手生活 18年目。その喉はしたたかに鍛えられている。得意のメジャー演歌の難しさもしかと認識。
「テンポにノッて、ただ気持ちよく唄えばいいというものではありません。言葉一つひとつをいかに表現するか。テンポと言葉表現のせめぎあいが最大の難しさです」
 言葉の表現にこだわればテンポに追われる。軽快に唄えば言葉の表現がおろそかになる。一方、カップリング『散るは涙か花びらか』はじっくりと喉遣いを発揮のマイナー調。硬質で凛とした彼女の声が、哀しみを帯びて多彩な表現で楽しませてくれる。
『紅い月』で見せた“艶”もあり、石原詢子の可能性は限りなく幅広い。
「再来年が20周年。まだまだこれからです。やがては酸いも甘いも噛み締めた…そんな歌も唄って行きます…」

 歌唱アドバイスは…メジャー曲は耳に残る一箇所ができたら成功。サビの2 行を徹底練習して下さい…。

●5月23〜29日新宿「スペース109」で劇団シニアグラフィティ旗揚げ公演。演目は「昭和歌謡シアター終着駅」。奥村チヨ『終着駅』が流行っていた昭和 40年代。歌手を目指した女性がいて、彼女の娘が母の若かった時代へトリップ。昭和と平成歌謡が時空を越える母と娘の二役。共演は高山厳、ハロープロジェクトのアイドル他。問合せはオデッセー

『ふたり川』
06年4月26日発売
作詞:麻ことみ
作曲:岡千秋
編曲:南郷達也



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