細川たかし『あやいろ恋』

前作『城崎恋歌』作詞の長男・柚木由柚…第2弾。
艶歌への挑戦です。
スコ〜ンと天に抜けるハイト〜ンをもって
アジア進出の夢も膨らんでいます。


 細川親子が挑戦した艶歌、2月15日発売の『あやいろの恋』好調です。インタビューは新曲から「ジャパニーズ・シンガー」としてアジア進出への楽曲構想、民謡系新人歌手の育成へと限りなく続きます。今 55歳。歌手人生を集大成する夢実現のステージに入った細川たかしの熱きメッセージをどうぞ…

 昨年大晦日の紅白歌合戦がトップバッターで『北酒場』。インタビュー前日の「歌謡コンサート」 (2月7日)でも、あの天に突き抜けるようなハイト〜ンを遺憾なく発揮しつつグリグリとコブシをまわして『北緯五十度』と民謡『最上川舟唄』を披露。
 その上下白袴姿の、たのもしいことよ。聴いている者は、圧倒的に伸びる高音域と豊かな声量に、しばしこの世の憂さを忘れる。新曲の前に、まずはその発声・歌唱について訊かねばなるまい…。
「自動車整備工からバンドボーイ。 16歳でヘルスセンター(健康ランド)の歌の諸業務に就いた。みんな朝から凄い声で民謡を唄っていた。そこで、とことん喉を鍛えましたね。デビュー後に三橋美智也さんから“三橋流・名取り”をいただきました」
 戦後の昭和歌謡曲は、多くの人気歌手が独自の発声・歌唱法をもって、その座を不動にしていた。しかし今はそれで際立つ歌手が少ない。その意で細川たかしは燦然と輝いている。
「北島三郎さん、五木ひろしさんは喉の奥で(呑んで)まわす独自の歌唱法を確立されています。僕は弦哲也作品が多いけれど、同じく弦作品中心の水森かおりちゃんは情感重視の歌唱で…」
 発声の雄・細川たかしは主な男女歌手の発声・歌唱特性をそれは見事に分析・分類してくれたがここでは割愛…。しかし発声特性を持って旋風を巻き起こしている同じレコード会社の後輩・氷川きよしについて…
「水森英夫ちゃんが教えるのは、声を呑むな、喉の奥にカ〜ンと当てて前に出せってことだと思うんです。で、彼の弟子たち全員が同じような発声・歌唱をしているが、要はそこからなんです。その上で自分の味付けがいかに出来るかだと思います。自在にまわす、引っ張る、抑える。氷川君の今後にとても期待しています」
 さらに、ハイトーンについて…
「ファルセットで鍛えていると、それが次第に響き出して来ます。裏声とも地声とも違った独特の高音が出てきます。それには毎日お腹から唄う訓練、背筋・腹筋、さらに運動による肺活量アップも必要です」
 そう言えば細川のスキーは本格的。大回転スキー大会を主催するほどのスポーツマンでもある。熱弁は続く…
「僕が民謡を唄う時はかなり高い音を出していますが、土っぽい節まわしで東北民謡っぽさを出していますから、それほど高いキーだとは感じられない。そこが妙です」
 以上を踏まえて新曲『あやいろの恋』について。作詞は前作『城崎恋歌』でデビューした長男の柚木由柚(ゆずきゆゆ)の第2弾。
「息子は性格がとても優しい。花が好きです。そんな優しさが『城崎恋歌』にも、新曲にも出ています。弦先生も詞を生かすべくシンプルで、演歌っぽいメロディーで書いて下さった。ちょっと『さざんかの宿』風で覚え易く仕上がっています」
 得意の突き抜けるハイトーン発揮曲ではなく、抑えてしっとり唄いたい艶歌…。
「そう、僕も艶歌系の大きなヒットを求めて挑戦しています。中低音をしっかり唄って、高い音を張らずに抑えている。声量的にも7割くらいの声。ミソは抑えてはいるが、声が中に入らない。芯はあるが抑えた歌唱で唄っています」
 長男得意の艶歌で挑んだ新曲は、目下好調なスタート。この路線がしばらく続くのだろうか…。
「いや、書き始めたばかりですから分野を固めずに次々と違う作品に挑戦して欲しいと思っています。僕の得意の歌唱を生かすデッカイ男っぽい曲にもチャレンジして欲しい。織田信長、伊達政宗、武田信玄などの大スケールの戦国武将を描いた歌はどうだろうか。僕の大得意『熊祭(イヨマンテ)の夜』は今、アイヌの言葉が入っていてなかなかフルコーラスが唄えないんだ。だったら、あのスケール感のオリジナルが創れないだろうか。いや『望郷じょんから』をアジアン・テイストにしたような楽曲もいいかもしれない。これぞジャパニーズ・シンガーという楽曲をもって…」
 プロデューサーの顔になってきた。
「念願のアジア進出もそろそろじゃないかと思っているんです。僕は今、55 歳。あと5年で60歳です。ここらで歌手人生を集大成するように韓国、中国に活動の巾を広げてもみたいし…」
 さらに後継者育成も急務だと続けた。
「浪曲系の歌手は他にもいますが、僕のような民謡系の若手が今いないんです。すでに民謡に親しんでいて、これから歌謡曲・演歌に挑戦しようという意欲ある若者を内弟子にして、今からしっかり育てて行かなければ…と思っています」 溢れんばかりの細川たかしの情熱は、その天を突くハイト〜ンにも似て、とどまるところを知らない。

<歌唱アドバイス> 唄い出しはあまりガンガンと唄わず低い声から…。最初のフレーズの♪恋にいろ〜を上手にまわして下さい。♪こぉ〜いぃ〜のいぃろぉ〜(民謡風に)とまわせば、うまく聴こえます。最後のフレーズ♪思い浮かべてしまったの〜 この曲は女唄ですから男っぽく唄わない。ここでブレスして♪あやいろのひと〜 「ろ」が巻き舌にしないで、「ひ」を♪ひぃ〜と大きくしっかり気持ちよくまわして下さい。※細川たかし、熱唱しつつの直伝アドバイス。

<細川たかし内弟子募集>民謡で鍛えた喉をもって歌謡曲・演歌の一人者となった細川たかしが、自らの歌唱を受け継ぐ若い人材を大募集中。これはいわゆるオーディションではなく「内弟子」募集。応募条件は民謡経験者。応募詳細は今後明らかにされるだろうから、我こそ!と思われる方は細川たかし情報に注目です。

『あやいろの恋』
作詞:柚木由柚
作曲:弦 哲也
編曲:前田俊明



細川たかし 『オジロ鷲』
なぜか船村徹メロディーの細川節は優しさが溢れる。ヒット予感の期待作…

「ソングブック」06年11月号掲載

民謡で発揮の突き抜けるハイトーンとはまったく別…。
ここには彼のソフトな優しさも充ち、心あたたかくなります


 新曲は久々の船村徹メロディー。細川たかし・船村徹コンビ作を遡ってみれば 23年前の『矢切の渡し』大ヒットがある。翌年に『新宿情話』、20年前の『さだめ川』、そして 8年前の『いのち舟』。
 編曲は船村徹子息の蔦将包。太鼓で始まるイントロ。ストリングスから管楽器をフィーチャーして大スケールでダイナミックな展開。そのサウンド、メロディーに細川たかしが大船に乗った感じで気持ちよく唄っている。聴いていると一緒に口ずさみたくなってきてヒット予感がする。
「♪定置 刺し網 漁場の空で〜の出だしメロディーも凄くいいでしょ。ここは船村先生が相当こだわった…と伺っています。先生は僕のことをよく知っていて、ここで僕のあのトーンを、あそこでしっかりまわして(コブシを)、張って…と考えて下さっています」
 先生のレコーディング立ち会いはなかったが…「先生の曲にかけた熱い気持ちを伝えに奥様が息子の蔦さんと共にいらっしゃった。僕もイントロにトランペットを、また♪尾白鷲〜のメロディーを3連符にするなど積極参加させていただきました」
 楽しそうなレコーディングの雰囲気が伝わってきた。そう思わすには他にも理由があって、それは新曲の彼の声・歌唱に“ソフトな優しさ”が溢れているからだ。民謡で発揮のあの突き抜けるハイトーンは余りに完璧過ぎて鑑賞するばかりだが、ここには人柄の良さも前面に出て身近な感じがある。
「漁師歌だがヤン衆っぽくない詞です。妻を亡くし、子の成長を逞しい尾白鷲に託した家族のあたたかさが歌われている。ガンガンと攻める歌じゃなんです…」
 いつもならカーンと唄い出したいところも、力をフッと抜いてから唄い出す箇所がある。音色を微妙に変えて哀愁や優しさも表現。結果的に多彩なノド遣いとなって、言葉一つひとつが粒立ち、詞が胸に迫ってくる。そう言うと大ベテランがテレた…。
「僕はレコーディングが長いんですよ。ガーンと張る、抑える、コブシをまわしたりまわさなかったり、出したり引いたり…。 2時間半位はいろいろと唄っていますから」
 …と暗にディレクターをほめた。大ベテランながら謙虚さを失わない人格がポピュラリティー充ちた、ヒット性高い作品を誕生させたのかも…。
「ふふ・ふっ、ちょっと面白いこと(ヒット)になりそうでしょ。船村先生のメロディーは誰もがサッと覚えて簡単に唄えそうに思うんですよ。でも実際に唄ってみると難しい。加えて僕の歌唱細部の真似をし出すと、これがちょっとできない。そこがミソだね」
 インタビュー当日の夜、細川たかしは NHK「歌謡コンサート」で船村徹楽曲『新宿情話』を披露した。細川持ち前の“張る・まわす”に“しみじみ”が融合して「あぁ、やはり細川たかしの船村メロディーはいいなぁ」と再認識。
 そこにコロムビアから10月18日にアルバム『こころの唄・哀愁の船村メロディ』リリースの報が飛び込んできた。『オジロ鷲』でみせた細川たかしの優しさが、そこに満載されているような気がして楽しみになってきた。皆様もぜひアルバムをご期待下さい。
<オジロ鷲について…>「世界遺産になった北海道・知床に棲む天然記念物の鷲です。胴体だけで 90pで翼を広げたら2mを越えると聞いています。北から飛んできて日本で越冬しますが、秋になると登ってくる鮭を食うんです。上空から飛んできて強烈な爪でムンズと掴んでね…。飛んでいる姿は実に雄大。皆様も想像しながら唄って下さい」
<細川たかし・長山洋子〜ふたりの演歌・夢舞台!>について…「このジョイント・コンサートは 8月の明治座4日間からスタートして、年末のディナーショーまで続けます。一部はそれぞれの歌の世界を披露。洋子ちゃんはアイドル時代彷彿のピンクのドレスで『真っ赤な太陽』『ルジアナ・ママ』ほか自身のオリジナル曲を披露。僕は三橋美智也先生、春日八郎先輩、村田英雄先輩の歌と自分のオリジナル。二部は二人で三味線中心にたっぷりと民謡を披露。こういうジョイント・コンサートは初めてですが、二人の共通項に“民謡”があっての実現です」

『オジロ鷲』
06年9月20日発売
作詞:木下龍太郎
作曲:船村 徹
編曲:蔦 将包

アルバム『こころの唄・哀愁の船村メロディ』
06年10月18日発売
@オジロ鷲A別れの一本杉B新宿情話Cわすれ宿D矢切の渡しE北海道のど真ん中Fおんなの宿G柿の木坂の家Hおんな橋I那須の吊り橋Jさだめ川K流れ旅



細川たかし 『満点の船歌」
『イヨマンテの夜』〜『北海の満月』に継ぐハイ&ロングトーンオ系譜の新たな楽曲誕生
唄えばストレス100%解消

「ソングブック」掲載

中学の卒業アルバム寄せ書きに…「北海の心 満月の姿 演歌!!」
それから41年…念願の大沢メロディーで大熱唱


少年時代の夢が叶った真骨頂発揮作。細川楽曲の代表作になる予感いっぱい

 日本の歌謡史に金字塔のごとく輝く「ハイ&ロングトーン」楽曲の系譜がある。昭和24年、NHKラジオ「鐘の鳴る丘」劇中歌として発売された『熊祭(イヨマンテ)の夜』を伊藤久男が朗々と唄い上げ、戦後の NHK「のど自慢」の声量自慢の男たちの定番曲になった。それから16年後の昭和40年、松井由利夫作詞、大沢浄二作曲『北海の満月』が井沢八郎唄でリリース。冒頭の♪ア〜ア〜から思い切り高音で張る楽曲。
 昭和41年、このハイ&ロングトーン楽曲に魂を奪われた少年がいた。北海道は真狩中学在学の細川たかし。彼は中学の卒業アルバムの寄せ書きにこう綴った。
「北海の心 満月の姿 演歌!!」
 春、両親の反対を押しきって札幌へ出た彼の胸には歌手への夢が膨らんでいた。それから実に41年…。今、少年の頃の夢を叶えて満面の笑みの細川たかしがいた。
「念願の楽曲ついに誕生です。しかも『北海の満月』とまったく同じ先生方による作品です。大沢先生にしか作れぬメロディー。細川たかしならではが唄える歌です」
 この邂逅は、いかして生まれたのか…。
「昨年の秋、弦哲也先生の40周年記念コンサートに伺って、その打ち上げの席で大沢先生を紹介していただいたんです。中学の卒業アルバムのことを語って“僕は『北海の満月』のような歌をいつか自分の歌として思い切り唄うのが夢なんです。ぜひ書いていただけないでしょうか…”と。“あぁ、そう。本当に唄ってくれるなら”と快諾下さった」
 大沢浄二は大正14年生まれ。
「80代になられて、もう作詞活動はされていなかったと思いますが、じっくりと取り組んで下さいました。もちろんコンビを組んで下さるのは松井由利夫先生。唄い易く、覚え易く…と何度も打ち合わせをして入念に練って下さった」
『北海の満月』では頭にあった♪ア〜ア〜のロング&ハイトーンをコーダ(曲の終結部)に持ってきて、1番と2番の間にもうひとつの“掴み”で♪ヘッサオッホ〜と勇壮な男性コーラスを入れて船歌っぽさを強調。さまざまのアイデアを盛り込みながらも5分以内に収めるために、今度はエッセンスを凝縮するような作業があったと言う。

団塊世代の男性のど自慢たちが競って唄い出す予感がする…

 改めて聴いてみよう。トランペットをフィーチャーした壮大なイントロ。唄い出しの♪ドンと舳先で…から腰を溜めた細川たかし歌唱。
「演歌好きにはたまらない出だしです。井沢八郎さんの『男船』を彷彿させる大沢さんのメロディーです。こうした威勢のいい曲を作ろうとすると、誰もが大沢メロディーになっちゃいますから、まさに先生の独壇場です」
 高音域が大波のように揺れる長音符多用のメロディー。パワフルな細川歌唱に圧倒されて、これは発声からやり直さないと唄えないかなと尻込みすれば…
「なんの、なんの。やれコブシをまわせ、揺さぶれとかは一切不要。要は腹の底から素直の声をストレートに前に出しさえすればいいんです。さぁ、遠慮せずにどうぞ唄って下さい。唄えばストレス100%解消間違いなし。人前で歌えばあなたはスター。僕もテレビでそうやって唄いますから…」
 でもテレビで聴く細川たかしの歌唱はCDよりさらにパワフルに聴こえてくる。
「そう、僕だって気持よく唄いたいから、テレビなどのステージ出演では半音か1音高く唄っています。『望郷じょんがら』『北緯五十度』がそうですし…。皆様も思いっきり気持良く唄って下さい」
 前作『オジロ鷲』は、冬の知床を雄大に飛翔する大鷲を唄い、今度は根室と北方領土の海域を怒涛を突い疾走する北海の男船。
「いい流れでこの新曲につながっています。今は団塊世代が永年の会社勤めから解放されて、コンサート会場に多くお見えです。『イヨマンテの夜』や『北海の満月』で自慢の喉を発揮した男性方に思い切り唄って欲しく思っています」
 長山洋子と4月に大阪・新歌舞伎座公演、6月に東京・明治座公演、7月に名古屋・御園座公演。3劇場で計134ステージ。約20万人が二人の芝居と歌のステージを堪能する。各会場『満天の船歌』に酔いしれる光景が早くも目に浮かぶ。
「劇場の歌のステージが和の世界をアピールしたいと思っています。民謡、三味線、尺八、琴などの和楽器。僕も新曲ジャケットと同じく袴姿を強調です。日本文化を大事に伝えて行かなくてば…」
 また自らのハイ&ロングトーン歌唱、パワフルな民謡系歌唱を若手に継承・育成して行く計画も着々と進んでいる様子。その意でも意義ある新曲と言えそうだ。

『満天の船歌』
07年3月21日発売
作詞:松井由利夫
作曲:大沢浄二
編曲:南郷達也

●『北酒場』『矢切の渡し』『望郷じょんがら』…に加えた細川たかしの新たなヒット路線が出来そうです。●そこで次に欲しいのが艶歌系大ヒット。とは言え、すでに子息・柚木由柚作詞曲『紀埼恋歌』や『あやいろの恋』が根強いカラオケ・ナンバーに定着で、この路線の大ヒットも間近いような気がする。そう言うと「しっかり考えています」と力強く微笑んだ。充実の域に突入です。

メモ:「満天の船歌」で白袴、黒系共にトラの絵入り。寅年生まれから。

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