●ガーデニング編●

週末通いのガーデニングは重労働が待っている。
2、3週ご無沙汰すれば、雑草の庭へ見事に逆戻り。
所詮、週末暮しは地に足ついた暮しではなく、
いっそこのまま藪にするか、コンクリで固めるかと思うものの、それも出来ず。
今日も飽きずに草むしり…。


遊び呆けた4年後、にわかに庭作りに目覚めた。
これはもう永遠のテーマ…

 大島ロッジが出来て4年ほどは遊び呆けていた。で、歳なんだろうか、パタッと趣旨替えで家具作り、庭仕事になった。家具は必要な物が出来てしまえば終わりだったが、庭仕事は年々繰り返す永久のテーマ。
 まず最初にやったのは、庭を平らにすること。夜コッソリと海岸から石を運んでは、石積みと土盛りを黙々と続け、最後は埒があかないと悟って業者から大栗(島の赤石)と土を買って平らにした。次は芝植え。冬でも青々…のコピーに釣られて通販で洋芝の種を買った。これはダンボールん中に棉状のもんが入っていて、これを庭に敷きつめる。次に同梱包されていた粘り気ある液体を撒いて風に飛ばぬよう接着?やがて棉ん中に混ぜ込まれていた種が発芽。けっこう雑草交じりながら平らな地に芝が青々と繁った。そんなある日、ガーデニングのベテラン姉御が遊びに来、庭談義に酔いつぶれて先に床に就いたアタシは、夢うつつに「よし、やるゾ」の威勢良い掛け声を聞いたような気がした。
 翌朝、起きると庭端グルリと芝が剥がされ、耕されていた。
 「いい、ここにいろいろと植えるのヨ、わかった」
 まさに青天の霹靂で、共に街育ちの妻とアッシは途方に暮れた。初めて園芸本を読み漁り、未知の世界への突入にちと興奮した。で、最初に試みたのが初心者らしく美しい草花。まずはオレンジ色のカルフォルニアポピーが見事に一面咲き誇って暫し悦に浸っていたが所詮は1、2年草。では花木がいいとハイビスカスに挑戦した。2年間挑戦したがとうとう冬を越せなかった。ここで流行りのハーブに目覚めてローズマリー、タイム、オレガノ、フェンネル、ナスタチウム、チコリ、マリーゴールド、ミント、チェリーセイジ、月桂樹と植え出した。そしてキッチンガーデンのコーナー。うん、今やっと庭らしくなって来たかな…。


週末田舎暮しのガーデニングは、雑草取りが重労働。
島に来れば過酷な庭仕事が待っている…。

 ガーデニングは手入れが命。もうゴルフだテニスだと言ってはいられない。ここで文章を綴る手間を省いて、大人の音楽を表明したアオシスレコード(ビクター)の小生筆の週刊誌記事広告コピーを以下に引用。公私混同だが、まぁ、いいか。
 タイトルは「週末の田舎暮らしは重労働のガーデニングを終え、ワイン片手の夜がいい」 
…週末の山荘暮らしはガーデニングが大変だ。1週間分の仕事を一気にやらなくてはならないから。いずれにしてもまずは雑草取り。これが重労働このうえもない。しゃがみ込んで 1本また一本。気が付くと額の汗がツツッーと流れ、無心になっている。山が夕陽に染まる頃、隣りの山荘夫妻がワイン片手にやって来る。賑やかなガーデニング談義と夕餉。薪ストーブに火が入ったのを契機にテーブルからストーブ前のソファーに移動。火を見つめつつ、全員の口数が少なくなったところでaosis recordsの一枚をステレオにセットする。山荘の素敵な夜は、これからが本番…
 広告はここに同レーベルのお薦めアルバムが紹介。このコピーで、ワイン片手でやって来る夫妻のモデルは斜め前の山荘夫妻で、10年前には庭師が手がけた美しい芝の庭を誇っていたが、今では藪だか庭だか分らぬ荒れようで、生い茂った草木を掻き分けなくては玄関にも辿り着けない体タラクである。これじゃ、来ても楽しくあるめぇ〜に。




島は庭作り達人がいっぱい。庭を覗いていると…
ヘルマン・ヘッセおじさん、メイ・サートンおばさんが出て来そう


  2000年春、東京は神宮外苑の絵画館前で開催の「第一回ガーデニングショー」を大久保通りから曙橋、四谷三丁目、信濃町を経るウォーキングで観に行った。入場料ナント1,800円。それでも会場は大混雑で、いやはや大変な盛り上がり。人を掻き分け掻き分け、多彩な庭々を写真に収めて来た。これらを参考にいつかは狭いながらも素敵な庭をと思うのだが、これがなかなか果たせない。というのも島に行けば、雑草取りだけで精一杯だからだ。
 大島滞在中は時として車でブラブラと知らぬ路地に迷い込んだりしての庭ウォッチングをする。ガーデニングブームの影響か昔からそうなのか、素適な庭が実に多い。どの家も冬のナライ(強い西風)の防風施策のためか重厚な垣根で囲まれていてリゾートっぽい解放感はないものの、垣根越しに覗く庭は「すげぇ〜」「きれ〜い」の連発。知らぬ家の庭に無断で入れないから車を止めて覗いたりしていると「庭仕事の愉しみ」のヘルマン・ヘッセおじさんや、「夢見つつ深く植えよ」のメイ・サートンおばさんが出て来るよう。
 で、改めて思うのは週末通いのガーデニングは限りなく空しいと。ときに2週間、3週間あけての島行きとなると、思わず「アチャァ〜」の無残な庭に変貌している。きれいに刈り込んでおいた芝に、雑草が膝まで伸びている。花壇コーナーも雑草に被われている。3日間滞在なら、帰る直前まで手入れに明け暮れる。もういっそうのこと庭全体をコンクリで固めちゃおうかしら、除草剤を撒いちゃおうかしらと思うけれど、それも出来ず。だからといって何もしなければ藪と化すのは自明。無駄だとわかっていながら、また最初の一歩からやり直しである。空しいったらありゃしない。だから週末ロッジの庭は、雑草を見ればオーナーの姿が一目瞭然だ。
「あぁ、相変わらず手入なしの藪のまま。飲んでばっかりだからなぁ」
「いつもきれいにしているのに荒れている。仕事が忙しくて来れぬか、はたまた病気かしら」
「お、見事に手入れがされている。帰ったばっかりだな。ここは奥さんもマメだしなぁ」
 と庭が語っているのありんす。



島のガーデニングから見えて来たものは、
週末大島暮しは、所詮たわむれに過ぎぬ生活だってこと…

 島のガーデニングは、東京でも常に続行中。特に春先は都会のマンションンの猫の額ほどのベランダに、足も踏み場もないほどに大島行きの草木が、鉢やプランタにいっぱいだ。改めて思えば、島の庭の草木のほとんどが、この狭いベランダを経て移植されたものばかり。今やこんもりと繁った立派なローズマリーも夏を彩るムクゲもベランダで挿木から育て、マリーゴールドやルッコラ、イタリアンパセリは種から苗に育ち、ジャスミン、グミ、月桂樹、クチナシ、レモン、ブーゲンビリア、フェンネル、サルスベリ、野ボタンは鉢植えを買ってほどよく育ってからの移植。
 自宅だから毎日の手入れで、それこそ愛しむように育てられてからの大島移植。その意味では島の庭の草木は、都心マンションの猫の額ほどのベランダが‘母’なのであります。
 でひとたび島に移植されれば、今度は日々愛でられることもなく、アメーバーのごとく逞しい雑草、昆虫、厳しい自然と闘いながら自分の力で逞しく生き抜いて行かなければならない。それで育たねば縁がなかったとばかりに諦められて、より逞しい品種に替えられる。一方その逆もあって、島を訪れた客が「んまぁ、これ、キレイねぇ〜、おいしそうねぇ〜」と鉢に移して、東京に持って帰ることもままあって、週末田舎暮しで育てられる草木は、稀有な宿命を持っている。
 で、どう考えようが週末暮し(時に月に一度暮し)のガーデニングには無理があり、歪みがある。所詮、地に足つけた暮しとはほど遠く、たわむれの暮しに過ぎない。ガーデニングは自然が相手だから、そんな無理を重ねた庭がきれいになるワケもなく、自然が無理な生き方に警告を発しているような気がして、ガ・ガ・ガ〜ンなのだ。
 こんな時には、隠居するにはまだ早いものの、せめて月の半分は島で暮せたらいいなぁ〜、と思ったりするんですがね。




2001年春のガーデニング計画…盛り沢山だが、まままらず。

 ちなみに2002年春のガーデニング計画を紹介すれば…。まず昨年移植した玄関階段両脇のジャスミンは通常種が赤い蕾の鈴なりで成功し、片側のマダカスカル・ジャスミンは枯れていた。ここには真冬の都内ウォーキング途中の骨董屋で見つけた絵入りの珍しいサウスカロライナ州のナンバープレイトを入手し、調べてみたら州花のイエロージャスミンと州鳥カロライナミソサザイの絵で、これまた園芸店でこの苗を見つけて2苗購入しており、ナンバープレイトを飾り付け、本物イエロージャスミンを玄関手すりに絡み着く成長を果たしたい。(秋の台風の、これはきっと塩害なんだろう、共に見るも無残な姿になったが、枯れちゃぁ〜いないから、また復活するか…) 同じく玄関両脇に移植しておいたローズマリーは、紫の可憐な花をビッシリ着けて階段上から滝が落ちるように、それは見事に繁っていた。共に成長すれば、玄関に入る時にローズマリー、ジャスミンの香りに包まれることになるが、はたして上手く行くでしょうか…。
 さて庭の方は、小さなラベンダーの2苗が開花中。枯れて諦めていた
プラムに元気な新芽が吹き出しており、隣りに新たに購入したネクタリンの苗を植える予定で、庭で果実収穫の夢が膨らみます。チコリも健在、誰かが結婚式かの引き出物としてもらって来て勝手に植えていった杉の苗も腰の高さまで伸びていた。香り高いタイムも元気、オレガノ、フェンネルも大繁殖。庭角で藪のように大成長したローズマリーには、紫の花がいっぱい咲いていた。グミも新芽が吹き出し、クチナシも大成長。ズラッと並べたムクゲにも新芽が出ている。自宅で挿し木から越冬した9本のムクゲをさらに追加する予定で、ムクゲの垣根が出来たら夏が華やかになる。これはハイビスカス越冬に失敗して、代替の夏木花として植えているもの。
 
デージーの黄色の花が咲いていたが、紫と赤(チェリー)セイジは未だ枯れ木のまま。自宅のチェリーセイジはすでに開花していて、ちょっと心配。さっそく剪定してやった。道路脇から庭に移植した月桂樹もしっかり根付き、花が咲かぬまま屋根まで伸びたブーゲンビリアも新芽を吹き出し、一方レモン、サルスベリ、野ボタン、梅花ウツギ、紫式部は枯れたか、はたまたこれから新芽かと…心配です。5、6年前に植えたカルフォルニア・ポピーが自然繁殖で残っていて、あちらこちらでこんもり繁っている。キッチンコーナーではイタリアンパセリが1株元気で、ニラは相変わらず繁っていた。ま、ざっとこんな感じだろうか…。
 この他に一度失敗している
クレマチスだが、今度は寒さに強いモンタナ種の苗を購入。ゼラニウム3種(3色)苗も購入で5月の連休に移植予定。他に東京自宅でバジル、ナスタチウム、マリーゴールド、セージ、サルビア、トマトの桃太郎、チャイブの種を蒔いており、苗まで育てば大島移植予定。
 へぇ、今年の春は何かと忙しく、桜も散った4月上旬に今年のガーデニング計画でごわす。


※2002年10月7日の前線通過の際の竜巻が近くの万立荘を襲った。4日後に島に渡ったアタシは、自分のロッジ周辺の草木壊滅の凄まじい光景を眼にしてあ然とした。庭の草花はむろん、周囲の山や林の木々すべてが枯れ葉の異景。庭の片隅で先月まで青々と見事に繁っていたジャスミンの無残さよ。周囲の惨状を素人なりに観察すれば、これは強風ばかりではなく、竜巻は塩害を運んで来ての被害のようでありました。しばし愕然としていたが、万立荘の大被害を見れば、我がロッジは危機一髪で難を避けたに過ぎず、当日、もしロッジにいたら、きっと恐怖体験だったろうな〜、と思った次第。へぇ、庭作り、一からやり直しでございました。



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