藤あや子 『無情の酒』
●「ソングブック」掲載●

マイナーな情念演歌に本格初挑戦!その声その歌唱…多彩で聴き応え充分
たっぷりと酔わせてくれます。大きなヒットで、秋から 20周年に突入
作詞・作曲、絵画、陶芸、書…のマルチ・クリエイター。
「素」の姿は思考も行動もスピーディ。今をヴィヴィッドに生きて…。


骨太の多彩な声質と歌唱…。
ギター演歌ヴァージョンでは“泣いて”います


 心地よく響く中低音。スカッとする高音域の伸び、コブシとビブラート。テレビで観る“お色気”も忘れる骨太で多彩な声質と歌唱。 2曲目に同曲「ギター演歌ヴァージョン」を収録。こちらは情感脈打つ“泣き”の歌唱。溜め息が迫ってくるようで“ファンにはたまらない”仕上がり。同時に喉の多彩さを再認識させます。核心に迫るべく、いきなり「ギター演歌ヴァージョン」から訊いてみた。
「あれはスタジオ・ライヴです。スタジオのミュージシャンと同時録音。失敗できない緊張感と失敗したらそれも歌の味…の思い切り。ミュージシャンと私のせめぎあいです」
 その頼もしき声質を褒めると…
「出身が民謡です。当初はソプラノのきれいな声でしたが、民謡は高い声“甲”が勝負。甲の声を出すべく練習で喉を潰しました。病院に行けば“唄っちゃダメ、喋っちゃダメ”。民謡の先輩方は“さぁ、今こそ唄って甲を出せぇ〜”と言う。そんなことで 3回は喉を潰しました。ですから今では並のことでは潰れぬ喉です」
 して、その中低音は…
「21歳から歌謡曲の練習を始めて、20代半ばに演歌歌手に転向です。高音はいくらでも出ましたが、今度は中低音が課題になってきました。最初はポップス系のヴォイス・トレーナー、次にオペラの先生について発声・呼吸を勉強。今の声、演歌歌唱を身に付けるのに約 20年かかりました。演歌歌手になって今年9月で丸19年。以後20周年に入ります」
 そして、まだまだ進化中。

歌謡浪曲、そしてマイナー演歌に本格挑戦。
喉も心も成熟の領域へ…。


「2年ほど前から二葉百合子先生にも教えていただいています。発声は出来ていますから“いきなり行きましょう”でレッスン開始。歌謡浪曲はドラマ仕立てですから感情の起伏を盛り込みながらの歌唱を勉強です」
 入門して即、平成17年に『港子守歌』カップリングに同題の歌謡浪曲を収録。作曲は小野彩(藤あや子の作家名)というから“多彩&多才。併せて心も成熟領域…。
「3年前に母を亡くしました。その前に父を亡くしたましたが、その時よりもっと悲しかった。母の大きな存在に気付いて“夜泣き”するほどで、二葉先生に母を求めたのかもしれません。でも私が頑張らなきゃどうするの…、そう思ったら歌に対する気持ちが一段と深くなりました」
 そんな藤あや子に新曲の歌唱組み立てを訊いてみた。
「私のこれまでの楽曲はメジャー系、ドラマチック系が多かったんです。昨年末のNHK紅白歌合戦で唄った『雪 深々』(平成 10年作)も16ビートでしたし…。そんなことで制作陣も私も、情念込めたマイナー演歌をずっと避け続けてきて、今回が初挑戦なんです。私の歌唱法は、まずイントロが聴こえた瞬間に何かが降りて来る…。その世界に入って、他に何も考えずに唄ってみます。それを聴き直して、ここはもっと引いて、溜めて、出して、優しく…など細かくチェックして、もう一度唄い直します。集中力が切れますから唄ってもせいぜいが 3回位ですね」

歌手の他に作詞・作曲、絵画、陶芸、
書…マルチ・クリエイター大活躍


 作詞作曲を始めてからは制作陣に参加。
「8年ほど前からオリジナルを創っていますから制作陣に参加しています。今回も1コーラス後にセリフが欲しくなってスタジオで作ったんです。水森先生がフと“辛口のお酒は熱燗で呑むんです”。それをいただいて、次にちょっと甘えたセリフを入れて2行が完成…」
 集中力、アイデア、そして切り替え。“素の藤あや子”は思考・行動がスピーディ。現代性時代性に富んでヴィヴィッドに生きている。
「作詞・作曲、絵画、陶芸、書、料理…なんでも一気集中…。その最中はやっている事が天性のように思っていますが、終ればパッと次に移ります。一方、人に強いられたり嫌なことは絶対にしたくない。一生は限られていますもの。その代わり、好きなことは積極的にね…」
 昨年5月には山梨県八ヶ岳にプライベートギャラリー「彩」をオープンした。自作品を展示し、オリジナル商品や手料理もある。ギャラリー建築に際しても、自ら模型を作って業者に発注。音楽の巾もまたマルチだ。
「最初が民謡の踊り、そして民謡から歌謡曲。山口百恵さん、井上陽水さん、中島みゆきさん、松山千春さんからベイ・シティ・ローラーズか、エアロスミスにはまって…。去年は詞曲に絵と文も書いて童謡アルバムも創りました。私の音楽世界は“幕の内弁当”です」
 しかし初の本格マイナー演歌『無情の酒』は聴き応え、唄い応え充分。この新路線のヒットで20周年へパワフルに突入しそうだ。

『無情の酒』
07年3月21日発売
作詞:三浦康照
作曲:水森英夫
年曲:前田俊明

(以下キャプション)●新曲は皆様に聴いて欲しい、唄って欲しい…の両方です。ギター演歌ヴァージョンは同時録音でカラオケはありませんが、どうぞ皆様好みの唄い方でどうぞ…。男性の皆さんには男性カラオケも用意されています。●ご自身も厨房に入ってコックをやることもある「 Gallery 彩」HPアドレスはhttp://gallery-aya.com/blog/ 昨年はここで野外コンサートも開催。「毎年やりたいと思っています」
(インタビュー感想)ちょっと書いたが、やはり「いい女」。だがそれはステージで意識的に見せる科の艶っぽさではなく、ナチュラルないい女。テレビであの科を見ると反射的に引いちゃうんだな。あれを止めたらもっとファン層が広がると思うのだが…。



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