チェウニ『最愛のひと』
作詞:夏海裕子 作曲:綱倉一也 編曲:宮崎慎二 (テイチクE)
J−POP以外の音楽が「演歌」に括られ、歌謡曲もここに押し込まれてヒットチャートが発表されるようになったのは、いつからだろうか? そんな“演歌”低迷が叫ばれる最中に、氷川きよしが彗星のごとく現れ、埋没しかけていた歌謡曲からチェウニが現れて“演歌チャート”がちょっと元気になった。歌謡曲に“活”を注入しているチェウニを筆頭とする韓国系シンガーたち。若者たちの音楽でもC−POPなるコリアン・ポップスのムーブメントが興っている。日本の歌謡曲に元気を生む最強旗手、チェウニが期待の第4弾シングル『最愛のひと』をリリース。彼女の魅力を探りつつ、さぁ、歌謡曲もっと盛り上がれ!と応援インタビューです。
歌謡シーンに活況を生むチェウニ期待の第4弾シングル
注目アルバム『シルエット』からまた新たなヒット曲!
プロフィール/本名:鄭在恩(チョン・ジェウン)●生年月日:1964年8月25日 ●出身地:ソウル特別市 ●出身校:ソウル芸術専門大学卒業 ★韓国の大歌手“季美子”を母に持つ恵まれた資質を発揮し、8歳から活躍。ソウル芸術専門大学でさらに音楽の才能を磨いた後、親の七光りを嫌って来日。平成11年9月『トーキョー・トワイライト』で日本デビュー。『Tokyoに雪が降る』『星空のトーキョー』と連続ヒット。歌謡シーンにムーブメントを興している。
平成11年9月のデビュー・シングル『トーキョー・トワイライト』、翌年12月の第2弾『トーキョー・ムーンライトセレナーデ』、昨年6月の第3弾『星空のトーキョー』と連続スマッシュ・ヒットで、常に演歌チャート上位を飾っているチェウニさん。
この数年、そのシングルを聴き、そのチャートを見て、またNHK「歌謡コンサート」などのテレビ出演を観るたびに「さぁ、歌謡曲よ甦れ、盛り上がれ!」と何度つぶやいたことだろう…。歌謡曲復活の旗手、憧れのチェウニさんへの質問は、そんな気持ちとは裏腹に…、
「38歳なんですよね」
が開口一番だったが、イヤな顔もせずにこう応えてくれた。
「えぇ、今年38歳になりました。8歳からずっと唄っていますが、自分が歌手だとは今も思っていないんです。勉強することが多くて“自信を持って、私は歌手です”と言えるように頑張ります」
ウワッ、その謙虚さに思わず椅子からズリ落ちた。これは以前、キム・ヨンジャさん取材の際にも驚かされた韓国系シンガーの謙虚な姿勢。頭が下がります。日本人が失った儒教的な教え(彼女はクリスチャンですが…)が身についているのですね。そう言うと、ちょっと照れた表情は“少年”のような初々しさ…。
そして韓国系シンガーに共通の唄の上手さも言えば、これも謙虚な応え。
「いえ、私たちには今の若い日本人歌手のファルセットの上手さ、演歌のコブシにはとても敵いません。私、最初のキャンペーンで『港町十三番地』を唄うことになったのですが、すごく下手でした。日韓歌手の歌唱の違いを敢えて言えば、韓国は自分を前面に出して唄うのが上手く、日本の歌手は自分を抑えて唄うのが上手です。で、韓国系歌手の唄が上手はワケは…」 ここでグッと身を乗り出せば…
「上手な人が日本に来て歌っているから」
と、軽くいなされてしまった。さて一般論はここで切り上げ、チェウニさんのヒット分析。いじわるく、まずはご自身で分析していただいた。
「日本には若い人と年配者が聴く音楽はあるけれども、30〜40代に聴く音楽が少なく、この層が私の歌を聴いてくれています。また演歌はイヤだけれど…と言うちょっとオシャレなオバ様方も選んでくれています。メロディー、詞がいい。そして私の声は癒しの声なんですって…」 この立派な分析に、マネージャーがこう解説してくれた。
「アルバム封入のアンケート・ハガキを、丹念に読んでしっかり把握しています」
チェウニさんは続ける。
「最初の頃のファン層は90%が女性。今は男女比が4:6。年齢層も30代が次第に多くなっています。なぜか学校の先生のファンが多いんです。先生、みんな疲れていて、癒し求めている」(笑い)
ここで突っ込んでみる。
「それらハガキのなかにテレサ・テンの名が入っていませんか?」
「かなり入っている。ケイ・ウンスク(桂銀淑)さんの名も…。でも私はテレサ・テンさんにもケイ・ウンスクさんにも似ていないんです」
チェウニさんの人気の秘密がこの辺にもありそうですが、それはさておき、次に3月21日発売の新曲『最愛のひと』について…
「アルバム『シルエット』収録曲ですが有線リクエストにチャートインするなど、ファンからの要望でシングル・ヴァージョンでカットです。カップリングは新曲の『真冬のイルミネーション』です」
『最愛のひと』を聴き込みつつ、改めて彼女の魅力を探ってみると…
まず、その声質と抑え気味歌唱に特徴あり、と思った。声はテレサ・テン似でもなく、ケイ・ウンスクほどのハスキーでもなく、むしろ伸びやかな声でピュアな叙情を生んでいる。また抑え気味の歌唱が、この声質に似合ってリリシズムを強調している。違和感のない正確な日本語。言葉の一語づつに多彩な歌唱を展開しつつフレーズを形成し、この連なりで全体が構成されている。特徴的なのは語尾の繊細なビブラート。この歌唱を視覚的に言えば、新緑の木を描くのに、木の葉一枚の風に揺れる様のクローズアップ映像から一本の木を描くような手法に似て、それがまた、女ごころの繊細な揺れを描くにぴったり。きっと、そんな歌唱と柔らかいハスキーが聴く者を「癒し」へ誘うのでしょう。
また他の人気歌手を彷彿させるさまざまな要素をちょっとづつ、たくさん有しているのも人気吸引力になっている…。
「言葉の正確さは、ディレクターに厳しくチェックされ続けています。感情を抑える歌唱は、子供だった頃から父にこう言われ続けて来ました。“チェウニの声は悲しさを帯びているから、言葉をキチンと唄えば、それだけで充分に感情が伝わる”と。ですから言葉の持つ意味を正しく理解し、言葉を語る気持ちで唄えば、それ以上は不必要だと思っています」
そして、もうひとつ…彼女の少年のような瑞々しいほどの感性(それが表情に現れている)にも好感が集まっているようにも思われる。インタビュー開口一番の「38歳ですって?」と思わず尋ねずにはいられぬほどの汚れなきピュアさ…。
「もっとキレイな心でいたい」
スタッフが裏話を披露してくれた。
「私たちも年齢を忘れて、つい子供扱いをして反省します。いたずらを探す少年にも似たキラキラとした眼で、1時間もジッとしていられないんですよぅ」
で、ライヴ・ステージになると、この少年のいたずら心で、トークが面白く盛り上がるとか。秋からは待望のコンサート・ツアーを開始。またトーキョーをテーマにしたカヴァー・アルバムも予定。
「8歳から唄って来て、何もわからずに売れた時期もあったけれど、今は自分が選んだ道を歩んでいますから…幸せです」
このピュアなリリシズムに、「色艶」が前面に出て来る時期が来るに違いなく、楽しみはこれから本番…とさらに期待が高まって来た。 (文・スクワットやま)
スポーツ大好きのチェウニさんだが、ここ5ヶ月間、忙しくジョギングも出来なかったとか。「秋のコンサート・ツアーに備えて、また走り出します。その気になれば仕事先で泊まるホテル周辺の早朝ランだって出来ますから…」夢は?の質問に「ヒット枚数には関心はないの。20年、30年後に私の歌を唄って下さる方がいれば、それが一番の幸せ、夢です。私の歌で癒されたと聞けば、それも幸せです」
※なんとアタシのこの文を収めた頁に編集部が「もう一人、ブレイクの手応え!」として同じく韓国系歌手チャン・スーを囲み記事で加えていた。どこかで聞いた名だよなぁ〜と思って、同記事を読んでみると1995年に来日し、張銀淑で『無情(ゆめ)のかけら』でトーラスレコードから日本デビューとあった。あんれまぁ、と思ってプロダクション「アクションファイブミュージック」を検索したら、古いデータで所属・張銀淑とあった。えぇ、同社の河田社長に頼まれてタレント招聘申請書などよく書いてやっていたことがあって、それが彼女のことだったと思い出した。業界は狭いっす。で、河田社長は元気に頑張っているのだろうか?チャン・スーの現在の所属は(有)プロステージ。
チェウニ『とまどいルージュ』
作詞:夏海裕子 作曲:綱倉一也 編曲:宮崎慎二 (テイチクE)
チェウニ『ラブストーリーをもう一度』