(資料編

『伊豆大島方言集』 柳田国男編[ 全国方言資料集成」 国書刊行会/1,800円
 2003年3月2日、高田馬場ビッグボックス広場の古本市で発見。古本価格は1,000円。これは昭和17年に中央公論社から刊行された同題本を原本とし、新たに昭和52年に組み直され刊行されたもの。形容詞、動詞、副詞、間投詞、天象・地勢、動植物、農耕・山仕事、開運・漁業、労働、食・衣・住、村・家、批判・人体、児童語及び出産・葬送、神祠・妖魔、物の量・状態、成句・辞令・造語、音韻の変化…以上17章に分類されている。


『南海タイムズ 縮刷版 1〜2』 
南海タイムズ社1981年刊/各刊9800円
 早稲田・穴八幡の青空古本市(例年10月に開催)で、ビニールテープで括られたB5版ダンボール函入り『南海タイムズ縮刷版』2冊を目にした時、思わず「ウワ・ワッ」と驚いてしまった。2冊で6千円。大島ではなく、八丈島のコミュニティ・ペーパーだから買わなくてもいいかぁ…と思って、他の本を物色しつつも他の誰かに買われやしないかとドキドキしている自分に気付いて、これは買うっきゃないと購入。えぇ、このチャンス逃がせば探しても買えないだろう出会いに違いなく、夢のような買物だった。
 さて(1)は昭和6年(1931)の創刊号から昭和13年(1938)までの縮刷。(2)は昭和14年(1939)から昭和25年(1950)までの縮刷。創刊者は幕末の偉人・小栗上野介の孫で詩人の小栗又一氏。氏による「発刊の辞」冒頭は …渺茫たる蒼海、その中に怒涛と闘ひつつ毅然として屹立すること幾千年ぞや、わが南海の島々よ!美しき伝説を抱くと同時に、過去の総て時代において、飢饉と生活の脅威によくぞ耐えてきた、雄々しくも絶海の孤島。眼をあげて観よ!若人達、昔を語る古老の方々、そして静かに黙想して見て下さい。わが伊豆七島、小笠原諸島は先祖の時代から閑却され過ぎてはいなかったらうか?そのため消極的な生活になり、心まで萎微してはしまはなかったらうか?…と、島への情熱溢れんばかりのメッセージ。読めば、昭和初期の八丈島へタイムスリップです。そして同誌に匹敵する伊豆大島のコミュニティーペパーは「島の新聞」。
★『島の新聞』については、「大島歴史探偵団」をご覧下さい。

『伊豆大島 旧六ヶ村誌』
大島町史編さん委員会/大島町
 平成8年3月発行で、平成13年5月に役場で購入した。『大島町史・通史編と自然編』が9000円で、同書併せて消費税込みで10400円。引き算が出来ぬゆえ同書が幾らだかわからん。ほんとにバカだねぇ〜。
 さて同書は大正4年刊行の「波浮港村誌」、大正14年刊行の「野増村誌」、同年刊行「岡田村史」、昭和4年刊行の「差木地村の概況」、昭和13年刊行の「泉津村郷土誌」、昭和18年の「元村沿革略史」を、大島町史叢書としてまとめたもの。本文321頁の半分が膨大な「波浮港村誌」で占められいる。大島各村の由来、歴史、風俗、習慣、産業などを知るにこれ以上の資料はないだろう。同書、並びに通史編、自然編を手にする人は僅かな方だろうから、今後、同書から「大島歴史探偵団」コーナーで面白そうな記述を紹介して行こうと思っています。


『伊豆大島 懐かしの写真集』 同刊行会編集・発行/平成5年
 A4版本文64頁に「風景」「風俗」「交通」「観光」「出来事」に分けられ文字通り“懐かしい写真”が満載。町の広報誌等を通じて島民に懐かしい写真の提供を呼びかけて完成されたもので明治、大正、昭和初期の貴重な写真が集められている。未だ藁葺屋根だった岡田村。木の桟橋と艀で沖合いの定期船に乗下船した様子。畜産(牛)や薪出し、荷揚げなどの労働風景。三原山の滑走台、もく星号墜落現場写真、湯場や各茶屋風景…。活字資料で想像していた当時の様子が、これら写真からイキイキと動き出します。


『三宅島百話』 池田信道著/「島の新聞社」昭和48年12月刊
 フと入った高田馬場の古本屋の百円コーナーにこの本があったんです。発行時に三宅村教育課長だった氏による地史、噴火や流刑の歴史、文化財、伝説、慣習・奇習、名所旧跡巡り、民謡、民謡、教育、宗教、名物の起り、島ことばと俚諺、地名、味覚、野鳥…の各章。全230頁の充実の島誌です。

『大島漫画行』池田永一治他5名/掲載誌、発行所不明/1933年頃(昭和8年)
 何年前の事だろう、どこで入手したか定かじゃないが…(裏表紙に元町の「港ずし」のゴム印があるから、同店で入手したのかもしれない)不思議な小冊子に出会った。タイトルは「大島漫画行」。大島町史によると1933年頃と記されていて、発行所も掲載所在も不明。手作りの復刻小冊子で、6人の漫画家(池田永一治、水島爾保布、前川千帆、池部均、服部亮英、細木原青起)による紀行文とカットで構成されている。
 大正、昭和初期を代表する漫画集団が、霊岸島から菊丸に乗船し大島へ旅立ち、
元村・柳川館に投宿。まずは当時の名物・牛乳風呂に入り、アンコの乳しぼりを見て、湯場(天然サウナ)に入る。次ぎに三原山登山から浮波に下山し港屋着。芸者を揚げてのドンチャン騒ぎ。翌朝は波浮から鶴丸に乗って野増で下船し元町の宿まで徒歩。出船まで宿に女学校出の美人アンコ「阿部虎のおしゅんちゃん」を呼んで、全員でスケッチ…という内容。
 表3に当時の広告も載っていて、元町の5旅館、波浮の7旅館が列挙され一泊1円50銭〜3円50銭とある。当時の風俗は今はもうないが、元町には今も「阿部虎」があり、炭火串焼き「駅」のおじい様が経営していたのが柳川館である。

※炭火串焼き「駅」リンク記念として『大島漫画行』を追加です。

※池田永一治氏のご子息より、コピー請求のご依頼があった。

『伊豆諸島民族考』坂口一雄著/未来社/定価1800円
 ニュー・フォークロア双書。三部構成。一部では明治、大正の少年時代の思い出をまじえた波浮の生活誌。伊豆大島産牛史、伊豆諸島と水の生活、伊豆諸島に展開する死霊祭紀による祖霊化の諸相とその司祭者、大島節覚書が収められ、第二部では民俗学の立場から各誌紙に発表された原稿が、第三部で新島のヤカミ衆、カメコギなどの調査が発表されている。著者は大島生まれで新島、大島元町小学校他で教鞭をとりつつ『大島図誌』を著した山口貞夫、柳田国男に師事して島の民族学を追求。巻末に「柳田先生とのゆかり」が掲載されている。1980年刊。

第五版『わたしたちの大島』 大島町教育委員会発行
 大島の小学校3年・4年生の社会科副読本として編集されたもので、初版は昭和51年。歴史、自然、産業全般に亘る移り変わりが分かりやすく要約されている。大島入門書。


『八丈島流人帳』今川徳三著/毎日新聞社/定価980円
全22章、江戸時代史の側面を垣間見せる手法で各章それぞれに流人物語風に綴られている。越後騒動の主役あり、天一坊事件あり、大奥女中江島事件ありと江戸犯科帳の趣。八丈島の流人資料には「流人明細帳」(都公文書館蔵)、第一書房「八丈島流人銘々伝」が有名で、これは未読。昭和53年刊で、古本市で買ったが定価より高かった。
 平成7年の朝日新聞に元神津島小学校の校長で横浜在住の
鈴木光志氏の紹介が載っていて、伊豆諸島関係の古文書・書籍約二千冊蔵書しているとあり、なんとも羨ましい限り…。古書・文献には手が出る身分でもなし、ま、手頃で安価な本の紹介を続けましょうか…。1978年刊。
※2001年7月27日、鈴木光志氏の米国在住のお嬢様よりメールをいただき、お父様が4年前に亡くなり、その膨大な蔵書は神津島教育委員会によって保存されている旨をお知らせいただきました。横浜から神津島へ大きなトラック2台〜船による書籍移管で、今後、資料館として管理されことになっていると言います。また氏の編・著作「神津島図の流人」「神津島のことば」「神津島の民族」「神津島の文献・雑録」「同:続」などは、都立中央図書館に所蔵されています。未調査ですが氏が生前に執筆発表していた批評社刊「歴史民族学」も図書館にあるでしょうし、今後ぜひ閲覧したく思っています。それら遺作のレポート、また膨大な蔵書について今後もメール交換がありそうですし、これはぜひ特別コーナーを設けたほうがいいかなぁ、と思っていますが…。

『八丈流人犯科帳』今川徳三著/毎日新聞社/定価980円
 前記『八丈島流人帳』の翌年発行の続編で同装丁の色違い。前書が自宅に、当書が大島ロッジの本棚にあって、思わず同じ本が2冊ある、と思ってしまった。前書を1000円で、当書を300円で早稲田の古本街で入手したらしい。改めて読めば、同書は前書を補うように八丈島が女護ガ島と呼ばれた伝説、為朝伝説から宇喜多秀家の流刑、佐藤源六「八丈島之記」、津村淙庵「譚海」、近藤富蔵「八丈実記」とていねいな文献紹介から始まり、江戸幕府の「お定書百ヵ条」より「流刑二十八の大罪」の説明、御用船の船牢の説明があってから、ほぼ全流人記録が次々に紹介されている。事件の小説的記述に文献記述を交えての紹介で、読み進めば何やら池波正太郎「鬼平犯科帳」のその後(火盗改方に捕まった後の…)を読んでいる気分になって来る。同書は江戸犯科帳でもあります。

『八丈島誌』 八丈町役場/八丈島誌編纂委員会/定価3000円
 昭和48年初版、昭和58年三版 平成5年改訂増補発行と積み重ねられて来たこともあってか、とても読みやすくまとめられている。伊豆七島のなかで大島に次ぐ面積と人口で、同誌をひもといていると大島の歴史理解も深まります。巻末に収められた「八丈島歴史年表」も詳しい記載で、これまた便利。全848頁。早稲田の古本屋街で2000円で購入。


『柳田國男集』(第一巻)/筑摩書房/昭和50年第15版発行
 「島の人生」に伊豆諸島関係では「八丈島流人帳」と、詳細な記録「青ヶ島還住記」が収められているが、「伊豆大島の話」はたったの2頁。ケース函付きだが古本で250円で購入。


『驚異の明日葉』後藤迅幟博士著/ハート出版/定価750円
 高価な古書がなくても、伊豆諸島暮しをするならこの本は欠かせない。植物性有機ゲルマニウムや数々の成分をバランスよく含み癌、高血圧、糖尿病、リウマチも治す明日葉について詳しく紹介されている。「明日葉でこんなに健康になった」の体験談を読めば、ガツガツと腹いっぱい明日葉を食べたくなって来る。平成2年刊。

『空港写真で見る伊豆七島の海釣り(上)』/日本テレビ刊/定価3800円
 これが何故お薦めかってつぅーと、磯釣りポイントの他に島一周の極めて精度の高い航空大写 真がいい資料なのであります。昭和60年4月刊だから、いまから16年前の大島の様子が手にとるように分って、あぁ。わがあロッジは荒れた畑だったんだなぁ、なんてことまで分るのです。

『聞き書き 東京の食事』編集「日本の食生活全集・東京」編集委員会/(社)農山漁村文化協会
 昭和63年刊で、近所の図書館で借り「島<伊豆大島>の食」のみコピー所有。語るは明治42年に岡田村生まれの時徳つよさん。四季の食生活、基本食の加工と料理、季節素材の利用法、伝承される味覚の構成で30頁にわたって紹介されている。これでわが女房は島の祖母を持った気持ちで、島料理にチャレンジしてくれる。

『東京の民族8(伊豆編)』東京都教育委員会・発行
 東京の民族全8巻のうち、第8巻が大島町、利島村、新島本村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ヶ島村編で、大島町の部分84頁をコピー所有。元町編が明治34年生まれの柳瀬 治さん、泉津が明治27年生まれの福井亀之助さん、明治29年生まれの太田秀吉さん、差木地が明治26年生まれの向山兵太郎さん、波浮港が明治30年生まれの佐藤ますさん他が語っている。それぞれ衣食住、生産、運輸・交易、社会生活、信仰、人の一生、年中行事にわたっての詳しい調査が紹介されている。江戸後期から明治、大正時代の島の暮しがよくわかって、週末暮し人は心して伝統を崇めぬばなるまいと思っている。ヒイミサマ、ミハラサン、ショウロウサマ等の信仰はじめ、泉津秋の浜捕鯨会社、馬力屋などがあったと貴重な資料です。

『藤田観光のあゆみ』藤田観光/1995刊
 藤田観光のルーツはじめ、昭和23年からの写真入り年表が大島の歴史もわかる資料になっている。部分コピーを所有。ちなみに大島小湧園開業は昭和33年10月。また創業者・藤田伝三郎については「藤田伝三郎の雄渾なる生涯」(砂川幸雄著)、「藤田翁言行緑」(岩下清周著)が都中央図書館にある。同図書館の蔵書はインターネットで検索でき、伊豆大島で60件の資料蔵書がある。

『東海汽船80年のあゆみ』/東海汽船1970(昭和45年)刊
 これは面白い。迷わずほぼ全頁をコーピー所有。要約したので「東海汽船の歴史を勉強」を参照して下さい。

『大島の郷土料理』大島郷土料理を考える会/1996.12/定価300円
 全24頁カラー版。野草から魚介類まで大島ならではの25種の食材、60料理の郷土料理レシピが、写真付きで紹介されている。我が家はキッチンの抽斗にあって、女房が参考にしている。

『大島の薬用植物』石原筍編 大島町シルバー人材センター監修/隅田川文庫/1991年/定価1,500円
 著者は島で校長職を最後に、長く教職を務めた方で、20年以上も島の植物を勉強された方。漢方、民間薬として昔から使用されてきた109種の薬草が写真、図解、解説で紹介されている。同書に目を通していると、島の野草はすべて薬草ではないか、と思えて来る。だが薬草で本格治療するなら医師や薬剤師に相談で、植物知識として愛読させていただいている。

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