●H15年(2003)古賀政男関連●
〜会報79号より〜

日生劇場コンサート 古賀政男生誕100年 古賀政男の不朽の名作を歌う 製作記者発表

子供の頃から憧れだった古賀メロディーを、念願の日生劇場で…!!

 7月7日、東京プリンスホテルで日生劇場(製作・松竹)の9月公演「五木ひろしライブコンサート」の製作記者発表が行なわれた。ステージには古賀先生の大遺影。まずは松竹叶齧ア取締役演劇本部長・大川武夫氏の挨拶…
「財団法人古賀政男音楽文化振興財団の山本理事長のご理解がありまして、古賀政男生誕100年記念の催しを持つことが出来ました。しかも五木さんのステージです。戦前・戦中を歩んで来た人々にとって古賀メロディーは今なお輝いています。素敵なステージになりましょう」
 そして同財団・山本丈晴理事長の挨拶…
「古賀政男は明治37年11月18>日生まれで、今が満99歳。来年の11月に100歳で、古賀政男生誕100年諸展開の先鞭をつける公演です」
 五木さんは…
「古賀政男先生は歌謡曲・演歌の父として時代を作られた。古賀メロディーから多くの作詞家、歌手も生まれた。私も“五木ひろし”後、歌手として憧れのステータスだった古賀メロディー・アルバム(注 1974年“S49”7月1日リリース『古賀政男作品集“影を慕いて”』)を創らせていただき、そのご褒美としてメーカーの壁を超えて『浜昼顔』(同年6月18日リリース)をいただいた。それが縁で実現した企画。感無量です」
 ここで司会者より、もうひとつ五木さんからメッセージがございます…
「5月に三宅島復興応援歌『望郷の詩』を発売しました。避難生活を余儀なくされる島民約千名を日生劇場にご招待したく思っています」
 話は再び、古賀メロディーについて…
「…と言えば、ギターでありマンドリンであり大正琴です。アコースティックサウンドでじっくり聴いていただけるコンサートにします。先生が作られた明治大学マンドリンクラブの現役・OBの方々にも大勢出演していただきます。第二部は五木ひろしヒット曲構成で、トータルで五木世界になります。僕は来年が歌手生活40周年で、そこへ向けたステージになっています」
 古賀メロディーの想い出は?と質問され…
「私は今55歳。もう少し下の年代までが古賀メロディーに育まれた世代で、古賀メロディーが弾きたくてギターを手にした層なんです。悲しい歌、青春の歌、勇気を与えてくれる歌…みぃ〜んな古賀メロディーでした。また『影を慕いて』は歌手の教材楽曲ですし、海外コンサートで日本の歌と言えば、まず同曲です。ギター1本、フルオーケストラでも合う凄い楽曲です」
 古賀先生の想い出は…
「初めてお宅に伺った時、お庭にベンツのリムジンとスポーツタイプの車が2台あって“あぁ、いつかは僕も…”と夢を膨らませたものです(笑い)。昭和48年、『夜空』でレコード大賞の表彰状を下さった時に「おめでとう」とおっしゃって眼をうるませていらっしゃった。先生の優しさに感動したのを今でも覚えています」
 ここで唄と演奏の披露。
『酒は涙か溜息か』『浜昼顔』から、マンドリン演奏を加えて『丘を越えて』。
「日生劇場では明大マンドリンクラブの現役、OBを含め数十名の大演奏になります」と説明。
 日生劇場については…
「越路吹雪さんがずっとなさっていた劇場で、憧れのステージでした。ここ東京プリンスのクリスマス・ディナーショーを二人の日替わりで永年やって来ましたから、いつかは僕も日生劇場と思っていて、ご縁がなくて諦めていたんです。しかも古賀メロディーを歌う企画で、古賀先生からまたご褒美をいただいた。“五木君、思い切り唄いなさい”と先生がおっしゃっているような気がします」
 器楽演奏については…
「ギターから始めて、ステージでは22種の一人演奏もしたことがあります。楽器は僕の趣味であり、ショーアップの方法でもあります。今回はマンドリンにも挑戦し、明大マンドリンクラブの一員になれるよう練習します。爽やかで、哀愁があって、心が洗われる音色です」
 最後に、こう締め括った。
「古賀メロディーは、継承すべき貴重な楽曲群ですから、しっかり唄い、一人でも多くの方に堪能していただけるよう頑張ります」

記者発表では『酒は涙か溜息か』『浜昼顔』そして『丘を越えて』を披露…
昭和49年、アルバム『古賀政男作品集“影を慕いて”』リリース。この録音に古賀先生は立ち会って下さった。そのご褒美で『浜昼顔』をいただき、50万枚の大ヒットに…




五木ひろし〜永遠の古賀メロディーを歌う〜
9月3日発売!!

古賀政男生誕100年記念アルバム

日生劇場9月公演、古賀政男生誕100年の記念に。そして…改めて歌謡曲の原点を知るアルバムです。

曲目          作詞    編曲
1.酒は涙か溜息か   高橋菊太郎 前田俊明
2.青春日記      佐藤惚之助 木村好夫
3.誰か故郷を想わざる 西条八十  前田俊明
4.人生の並木道    佐藤惚太郎 木村好夫
5.愛の小窓      佐藤惚太郎 木村好夫
6.男の純情      佐藤惚太郎 木村好夫
7.目ン無い千鳥    サトウハチロウ 前田俊明
8.丘を越えて     島田好文  前田俊明
9.湯の町エレジー   野村俊夫  前田俊明
10.悲しい酒      石本美由紀 前田俊明
11.人生劇場      佐藤惚太郎 京 健輔
12.浜昼顔       寺山修司  竜崎孝路
13.無法松の一生〜度胸千両入り〜 吉野夫二郎 池多孝春
14.影を慕いて     古賀政男  京 健輔
CD:FKCX‐5007 CT:FKTX−5007 ¥3,000(税込)


昭和初期の古賀メロディーと美しい日本語…歌謡曲の原点が五木さんの珠玉ヴォーカル14曲から鮮やかに甦り、魅了します。

 約5千曲に及ぶと言われる"古賀メロディー"です。その中から選曲された14曲が収められています。以下、ワンポイント・ガイドです…。
酒は涙か溜息か 1音づつ弾くようなギターの音色に、五木さんがヴァイブレーション効かせたヴォーカルでたっぷり泣かせてくれます。昭和6年発表作。七五調の2行詩という超短詞。
青春日記 昭和12年、藤山一郎唄の昭和12年作。19歳の淡い初恋の心情を、五木さんが切々に唄い、間奏に台詞入りでしみじみとさせます。
誰か故郷を想わざる 霧島昇唄で昭和15年作。大正琴のアップテンポな調べに乗せて明るく弾む歌唱。故郷ものの代表的楽曲です。
人生の並木道 ディック・ミネ唄で昭和12年作。スローテンプ、ジックリ歌唱で染み込みます。
愛の小窓 同じくディック・ミネ唄で昭和11年作。五木さんの音域の広さが心地よいです。
男の純情 藤山一郎唄の昭和11年作。これぞ古賀メロディー。大きなメロディーのうねりを五木さんが楽しんで唄っています。
目ン無い千鳥 霧島昇・ミスコロムビア唄で昭和15年作。アップテンプのギターサウンドに五木さんも弾んでいます。
丘を越えて 藤山一郎唄で昭和6年作。マンドリンの大演奏。跳び跳ねる軽快サウンドで、五木さんも疾走歌唱です。
湯の町エレジー 近江俊郎唄の昭和23年作。郷愁充ちるメロディーで、鄙びた旅館の窓辺で五木さんがギター弾きながら唄っている絵が浮かんで来ます。
悲しい酒 北見沢惇唄で昭和35年作ですが、41年の美空ひばり唄で大ヒット。今年、ひばりさんの15回忌で、多くの歌手が同曲を唄っていますが、やはり五木さんです。まさに珠玉の歌唱。
人生劇場 楠木繁夫唄で昭和13年作。昭和33年の村田英雄唄で大ヒット。五木さんの男気いっぱいの中低音が魅力です。
浜昼顔 古賀先生は五木さんの歌唱に「節のやわらかい感情を実によくとらえて唄ってくれた。若いのに本当にいいアーティストです」と…。
無法松の一生〜度胸千両入り〜 無法松の一生は、昭和33年の村田英雄デビュー曲。五木さんが同曲を唄う時は、太鼓暴れ打ちも披露です。
影を慕いて 藤山一郎唄で昭和7年に大ヒット。五木さんのライヴ音源を収録です。

写真説明:6月23日:明大マンドリンクラブ員と共に『丘を越えて』を収録




古賀政男生誕100年
五木ひろし 日生劇場ライブコンサート〜古賀政男の不朽の名作を歌う〜

●2003年9月3日〜23日

第1部:五木ひろしが綴る古賀メロディー
第2部:五木ひろしヒットアルバム


 五木さんが子供の頃から親しみ、憧れていた古賀メロディー、そして念願の日生劇場のロング・コンサートが9月3日〜23日、全32ステージが行なわれました。同コンサート、同劇場への五木さんの思いは他頁に詳しく紹介ですので、ここでは簡単なライブレポートです。
 同劇場は、五木さんが中学卒業と同時に京都の関西音楽学院に入学した昭和38年に竣工の日本生命日比谷ビル内。玄関ホールから劇場へのアプローチも素敵ですが、劇場内に入って思わず「ウワァ〜」と感嘆です。劇場内は壁も天井もすべて曲線で、壁面はガラスタイルのモザイク仕上げ。特に天井はアントニ・ガウディを思わす曲線で、色付き石膏に2万枚のアコヤ貝が張られ、他の劇場にはない幻想的な雰囲気です。
 第1部「五木ひろしが綴る古賀メロディー」はステージに古賀先生の遺影、そして森光子さんナレーションによる古賀先生が晩年に書かれた詩の朗読とプロフィールが紹介されて開演。オープニング『影を慕いて』から『酒は泪か溜息か』へ。五木さんのギターと歌声によって、昭和初期の古賀メロディーが会場の隅々まで響き渡り、鮮やかに蘇ります。続いて同じく藤山一郎さんが唄った昭和11、12年作『青春日記』と『男の純情』。
 ここで再びナレーションが古賀政男の音楽について紹介し、コーナーは「詩人との出会い」へ。佐藤惣之助作詞『人生の並木道』『愛の小窓』、五木さんはハンドマイクでステージを左右に歩きながら野村俊夫作詞『湯の町エレジー』、サトウハチロウ作詞『目ン無い千鳥』を熱唱。今度は「歌手との出会い」コーナーで大正琴演奏が加わって村田英雄唄『人生劇場』、美空ひばり唄『悲しい酒』。古賀先生と五木さんのツーショット写真が映し出された前で、五木さんはマンドリンを弾きながら『浜昼顔』。エンディングは古賀先生が亡くなる2日前に記した憂いの文章を紹介するも"でも、こんなに楽しい作品もあるじゃないですか"と明大マンドリン倶楽部も加わって軽快な大演奏『丘を越えて』でした。
 昭和建築の日生劇場、昭和歌謡の父・古賀メロディー、そして古賀メロディーに溢れんばかりの敬愛充ちた五木さんの歌声。古賀政男生誕100年諸展開の先鞭をつけた忘れ得ぬ貴重なステージでした。
 第2部は、ガラリッと変わって華麗にショーアップされた五木さんのヒット曲集ステージ。ここでは五木さんが新たな歌謡曲創りに挑戦し、次々に生み出して来たヒット楽曲22曲を披露。昭和初期からの歌謡曲継承と、明日の新しい歌創りへの挑戦。五木さんならではの両使命を物語る価値あるステージでした。

昭和48年、『夜空』レコード大賞で賞状を授与して下さった古賀先生。そして昭和49年、アルバム『古賀政男集』制作のご褒美にいただいたシングル『浜昼顔』。古賀先生の思い出を胸に…唄うステージ。

明大マンドリン倶楽部の皆様と『丘を越えて』

トレモロ…が楽しい、とマンドリンもマスターです

昭和の良き時代のコンサートホールに、アコースティックの古賀メロディーがマッチして、それはステキな雰囲気でした第2部は華麗なヒット曲ステージ

※なお、五木さんは日生劇場・初日前の9月1日に古賀政男先生のお墓参りをしています。お墓は杉並区永福の築地本願寺和田掘廟所。五木さんは墓前で長い間、合掌されていて『夜空』レコード大賞・賞状授与して下さった日のこと、『浜昼顔』レコーディングの思い出などを去来させつつ、感謝とご冥福を祈り、日生劇場開演のご報告、歌謡曲継承の決意を誓っていたのでしょう。
注:古賀政男 明治37年(1904)11月18日、福岡県生まれ 昭和53年(1978)7月25日没。享年73歳。戒名は大響院釋正楽。没後、国民栄誉賞受賞。なお同廟所には同じく日本歌謡曲の礎を築いた服部良一先生のお墓もあり、五木さんはご冥福をお祈りしていました。



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