石川さゆり「2006年全国ツアー」スタート!
艶熟のヒットメドレーと歌芝居「芝浜」26分。豊穣のステージに、充実感いっぱいです

「さゆり倶楽部」37号掲載

一部は多彩なヒットナンバー。アコースティック・コナーはさらに充実…

 1月31日、埼玉県「川口リリアホール」を皮切りに、石川さゆりの「2006年全国コンサートツアー」が始まりました。今年の目玉は歌芝居「芝浜〜落語より〜」なる情報がどこからか洩れて、初日への期待は高まるばかり…。
 さゆりさんは7年前、平成11年の新歌舞伎座4月公演で腹の底から野太い発声の“娘義太夫”で、大舞台「近松情話・夢の浮橋」へ誘ってくれました。平成 13年の明治座5月公演では、雨月物語から「千年の恋」のファンタスティックな舞台。そして2年前のコンサートツアーより「おさんと茂兵衛」を男女 4名の声色を使い分けた浪曲入り“歌芝居”を披露。従来からの和洋を問わぬ音楽面の幅広さに加え、日本の伝統芸へ次々挑戦で“石川さゆり芸ワールド”とも言える独自の世界を構築。そして今度は何ということでしょう、「落語」への挑戦です。
 さて、当日はオープニング演奏が終わると、ステージ中央に着物の両袂を華やかに広げて登場。すかさず会場から「さゆりッ」「待ってました」の掛け声。唄うは『滝の白糸』。2コーラス目にステージ前に歩み寄れば大拍手・大声援で早くの熱気爆発。会場をしっとりと和の雰囲気で落ち着かせたさゆりさんの最初のトークは…
「皆様こんにちは、石川さゆりです。年が開けて早くも1月末、今年のコンサートの初日です。心はワクワク、心臓はパックンパックンと緊張です。今年も楽しい試みを用意いたしましたので、最後までお楽しみ下さい」
 『人生情け舟』。♪渡る世間の 冷たさつらさ〜の中低音の太い響き。♪ノの字〜の可愛らしさ。サビの♪揺れてゆらゆら〜のノリの良さ。さゆり節は絶好調。ステージが暗転し、トランペットのイントロから軽快リズムで『能登半島』。
「『津軽海峡・冬景色』ヒットして『能登半島』『暖流』と旅情三部作のころから“さゆりちゃん”などの掛け声をいただくようになりました…」
 すかさず「きれいよ〜」の声。
「そう、そう言われるのが一番好きです(会場爆笑)。次に『鴎という名の酒場』を聴いて下さい。♪窓をあけたら海 北の海〜 とありますが、その頃に横綱“北の湖”とお話する機会がありまして、以来“北の湖”と唄いますと大銀杏を結った横綱のお顔が浮かんできて困ったことがありました。今日はいつもと編曲を変えてジャージーな感じで唄ってみようと思います」
“鴎という名の酒場”がNYにあるかのよう…。
「昨年からアコースティック・コーナーを設けていますが、今日はブラス・セクション中心で唄ってみました。次はギターとウッドベース中心で…」
『転がる石』。2コーラス目はさゆりさんの歌声とベースのセッション風。唄い終わってベーシストの“赤ちゃん誕生”を祝してから…
「実はウチの弟とこにも赤ちゃんが産まれまして、抱いていますと娘が“おばあちゃんになったみたい”ですって。失礼ですねぇ」
 そして『居酒屋「花いちもんめ」』。会場が口ずさむをみて…
「久し振りに聴いていただくだけではなく、皆様がマイクを持って唄いたくなる歌が出来ました。先日、街を歩いていましたら肩をポンポンと叩く方がいたんです。“さゆりさんですね、唄っていますよ『居酒屋「花いちもんめ」』…」と言われまして、とてもうれしかったです」
 ステージの照明が紅色に変わって『大阪つばめ』、ステージ中央で半身になって腕を組むポーズから始まってダイナミックに展開する『北の女房』。
「去年は近松情話のシリアスな歌芝居でしたが、今年は人情落語「芝浜」をお楽しみ下さい」
 お囃子でヒョイヒョイと早くも落語ノリの退場で1部は終了。

抱腹絶倒から、最後は素敵な人情に泣き笑い…。女将シリーズも聴く応え!!

 出囃子にのって羽織姿で登場のさゆりさんが高座に上がります。芝浜の魚河岸で仕入れた小魚を棒手振り(天秤棒を肩に魚を売る)商いの江戸っ子で呑兵衛の魚熊に、女房をなにわ女に仕立てて(グッドアイデアのさゆり版「芝浜」です)、まずは江戸弁と関西弁の夫婦喧嘩からスタート。“おちゃっぴい・さゆり”の面目躍如。百面相よろしく落語に熱が入ったところで羽織を脱げば、立ち膝から立ち上がっての熱演。よく観ればフェイスマイク装着。格子戸を出たり入ったり…。暗転後の「三年後の大晦日」で早替り。今度は細線の大きな格子柄。ピアノ伴奏でテーマ曲『落語長屋は花盛り』が披露され、再び高座へ。サゲは大好きな酒を女房にすすめられて口をつけようとするが…「また夢んなるといけねぇや」の途端落。
 さゆりさんがよく言う“性根の素直な”夫婦のあったかい人情に、観客はホロリと笑い泣きです。「芝浜」で有名なのは三代目桂三木助で、この噺で芸術祭奨励賞を受賞。三木助の呑兵衛亭主は魚勝こと勝五郎で、拾ったお金は四十二両。さゆりさんは魚熊で拾ったお金が五十両。古今亭志ん朝系の「芝浜」でした。
 高座をおりたさゆりさんはフェイスマイクの説明後にプレゼント・コーナー。昨日1月30日の誕生プレゼントを含めて長蛇の列…。これが済むとバンド紹介で「俺たちさゆり BANDMAN」演奏。
 さゆりさんは濃紺地に重厚な模様の着物に着替えて『酔って候』。会場から「いよっ、日本一」の掛け声は心の底からでしょう。
「21年前の『紫陽花ばなし』はテレビで唄う機会が少なかったので説明します。これはお店をたたんで、おなじみのお客さんにお別れをする話なんです。吉岡先生と“あの女性はその後どう過ごしているのでしょうか…”話し合っていたら“どうも男性とうまくいかずに、また港近くでお店をやっているらしい…”と。その歌を作って下さいとお願いして出来たのが『居酒屋「花いちもんめ」』です。今は男性との失敗から人の痛みもわかるいい女将さんになっている。 2曲を一人の女の物語として唄ってみます」
 波の音、鴎の鳴き声のSEから新バース入り『紫陽花ばなし』から、その後の物語入りで『居酒屋「花いちもんめ」』。ア・カペラから始まる新アレンジで、ジックリと聴かせてくれました。最後は『天城越え』。

<初日のマスコミ“囲み”取材より>
 今年は全国70会場、140回ステージの予定です。去年は浪曲入りでシリアスな心中ものでしたから、今年は笑いの中にあたたかい人情や夫婦愛を感じていただけたらなと思っています。立体落語で、どんな動きを入れるか…。今日が始まったばかりですから、これからが本当の挑戦です。この噺は多数名人の CDを聴かせていただきましたが、歌い手・石川ならではの新しい形の「芝浜」が出来たらいいなぁと思いました。なにわ弁は米朝事務所の方にご指導いただきました。
 年明けから落語のお稽古の日々でしたから、最近では普段も熊さんみたいな話し方になって困っています。今日は初日、これから磨いて行きます。今後も日本の芸のさまざまに挑戦して行きたく思っています。
 今年は年女です。12年に1度のことですから素晴らし年、いい年にしたく思っています。そして来年が 35周年です。そのためにもいい弾みをつける年になればと思っています。
 ええっ、私が熊さんと女房のどっちのタイプですかって…。そうですねぇ、私はしっかり女房より、おっちょこちょいの熊さんタイプかもしれません。(笑い)。




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