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2005年
第12回三田文学新人賞

当選作(小説)
KASAGAMI
高木智視
当選作(小説)
雨にぬれても
村松真理

受賞のことば

高木智視

私は小説を書き初めて今年で14年になります。今回、三田文学新人賞というすばらしい賞をいただくことになり、これまでの努力が報われたという思いとともに、何かがが一区切りついたように感じています。私の書くような拙作を多数の応募作品の中から見つけだしていただいた加藤編集長をはじめ、選考委員の先生方にひたすら手を合わすばかりであります。また、このような私にずっとついてきてくれ、常に支え続けてくれた妻にも感謝してしきれない思いであります。この御恩には、今後、今以上に良い作品を書く努力を続けることで報いたいと考えています。バルカス・リョサは『若い小説家に宛てた手紙』の中で「創作とは多大な犠牲を強いるものであり、将来の保証は何もない」「書くという決意はいずれ束縛に、従属以外の何ものでもないものにかわるでしょう」とのべています。小説を書くという行為は確かにしんどいものだと思います。しかし、私は、今後も何年も修練を積んで、うち深く隠された小説の種子になるものを探り続け、死ぬまで書いていこうと思います。
[略歴]
たかぎ・ともみ。1967年生まれ。香川県出身。現在、和歌山県和歌山市在住。私立高校教員。

村松真理

このファンタジーを書きながら、しかし現実的な問題ばかりを考えていた。冷たい水がバケツごと降ってきたように、きちんと働いて生活しなくてはと思い、手の中を見れば使える道具の寡さに愕然とした。それから遅い職探しを始めた。逆を言えば、にもかかわらず書いていた。これはもう仕方ないとさっぱりと思った。仕方ないは諦めより覚悟だ。幸運にも仕事が決まったあとで、その仕方ない小説は私の現実に戻ってきた。
初めて人に「読んでもらう」ために小説の様なものを書いて、国語の先生の所に持って行ったのは15歳のときだった。持って行く所があってよかったと思う。その時から現在までただ一つ変わらないものは、今も「読んでもらう」ために書いているということだ。その他は何もかもほとんどが変わり、迷いは十倍に増え、自信は十分の一に減り、持ちものは意志だけになった。道に迷うだけなので、今は結果を視界に置くことはしないけれど、向かおうとする意志だけはつねに確認してありたいと思う。
再スタート地点にはようやくまっさらで固い土の地面だけがある。先ずはここに、15歳から私の書いたものを全部読んでくれている親友に、心からの感謝を記します。
[略歴]
むらまつ・まり。1979年生まれ。神奈川県出身。現在、神奈川県横須賀市在住。今春、慶應義塾大学大学院修士課程修了(国文学)。

選考委員

荻野アンナ、巽孝之、武藤康史、室井光広

選考座談会および予選通過作品は、「三田文学」No.81(2005年春季号)に掲載されています。

関連項目

新人賞原稿募集

新人賞作家一覧

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