当選作(小説) 
                  シャンペイン・キャデラック | 
                  岡風ウ一 | 
                 
              
             
             
            
             
            岡風ウ一 
             
            中学生の頃に物語らしきものをいくつか書いていた。毎夜ルーズリーフに書き込まれたそれは、翌日の授業中の教師の目を盗んでクラス中に回された。友人のいたずら描きや感想でまっ黒にうまったその紙を、不安と緊張、そして喜びを交えながらぼくは受け取っていた。勉強やクラブもそっちのけで、その夜に書く文章のことだけを考えていた気がする。 
            銀行を退行し「さて、どうしたものかな」とぼんやり考えているうちに、ふと文字を書き始めたのは、忘れていたその頃の衝動を偶然見つけたからなのかも知れない。小説を書くに至るにはさらにいくつかのきっかけが必要だった。自分一人ではその衝動を把握することなどできなかったと思う。 
            根性なしの自分に小説を書きあげることができたのは、周りにいてくれる友人、編集部の方々、そして今もなお迷惑をかけ続けている両親と弟のおかげです。今の気持ちを忘れることなく、これからも自分のペースで文章を書いていきたいと思います。ほんとうにありがとうございました。 
            
              
                
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                  [略歴] 
                  おかざき・りょういち。1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。東京三菱銀行退行。 | 
                 
              
             
             
            
             
            荻野アンナ、巽孝之、武藤康史、室井光広 
             
            ※選考座談会および最終候補作(大島ゆい「植木鉢」、小尾慶一「スクリーンの向こう側へ」、中里友香「貴方綴り」)、また予選通過作品は「三田文学」No.77(2004年春季号)に掲載されています。 
             
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