Le Monde の経済記事を精読          


フランスの代表的日刊紙 Le Monde は、格調の高さと分析の深さで主に知識層に読まれています。2022年の全国紙・有料発行部数ランキングを見ると Le Figaro を抑えて1位です。

APEF青山フランス語プロフェショナルコースに入試無しの短期集中講座 (Zoom) があり、特に興味深い経済関係の記事を選んで精読しています。次回は2024年2月より。

 教材の紹介

過去の教材例:

 フランス原発の将来 (2017年8月)
 ドルの覇権に異議申立て (2019年3月)

神戸のアミティエ外国語教室でも、月一回のペースで精読授業を担当しています:

 「ル・モンド入門レッスン」(Zoom)

APEF青山の短期集中講座は隔週4回、一回2時間で4〜5ページの教材を扱いますが、「ル・モンド入門レッスン」は月1回、2時間で最大2ページの教材です。たとえ隔週でも、毎回4〜5ページの教材を準備するのはしんどいとお感じの向きは、「ル・モンド入門レッスン」を検討なさっては如何でしょうか。

尚、APEF青山フランス語プロフェショナルコースの本科・基礎科でも、半年の間に2回 同じアプローチの授業があります。

 
フランス語を耳で聞いて訳す際にも、

そもそもセンテンスの趣旨が取れなければ訳しようがない
逆に、趣旨が明確に掴めれば分り易い日本語にできる

という考え方にたって、記事の内容をできるだけ具体的に理解するための授業です。

上の「そもそも...、逆に...」は自明の理ですが、実際には多くの文脈において

 industriel を産業的、social を社会的、santé を健康

などと訳したのでは、趣旨を誤ります。詳しくは私のHPの項目をご参照下さい:

 「industriel, social, santé, numérisation

センテンスのレベルでも、既知の単語が並んでいると何となく分った気になり、具体的に何を言いたいのか把握しないまま訳してしまうことがあります。このような場合、往々にして訳文はメモしきれた単語の訳語を組み合わせただけになり、聞き手の頭にすんなり入るものとは言いがたいでしょう。

例えば最近扱った教材に、こんな一節がありました:

Sur Internet aussi, les Français s’en donnent à coeur joie : l’an dernier, ils ont dépensé 129 milliards d’euros, soit 15% de plus qu’en 2020.
        (ネット通販、動画配信サービスなどの消費額)
Et nos sociétés ultraconnectées ne sont pas sans incidence sur le changement climatique :
le numérique est responsable de 3,5% des émissions mondiales de gaz à effet de serre.

le numérique を「デジタル技術」と解すると余りに多くのものが含まれて、それを原因とする温室効果ガスも 3.5% では済まなくなります。従って le numérique はインターネット利用を指していることになります。

更に別の記事にこんな一文がありました:
TF1, M6 の合併話 p.3、第二パラグラフ) 

  La télé est en voie de numérisation.

フランスでも、15年以上前に地上波デジタル放送が始まっています。従って、この文が「テレビはデジタル化の途上にある」を意味していることはあり得ないのです。上にあるように le numérique がインターネット利用を指す例を考慮すると、正しくは次のように訳すべきと思われます:

 「ネット接続可能なテレビが普及しつつある」


そこで授業では記事を少しずつ口頭で訳してもらい、表面的な訳に感じられる場合は具体的な意味を考えるよう促す... という形で、趣旨を明確に理解するお手伝いをします。必要に応じて、フランスの社会的文脈や経済の基本用語の解説もします。

但しこうした授業を何回やっても、注意を要すべき単語や表現を全てカバーすることは到底できません。むしろ、様々なテキストにあたった時に、趣旨が明確に掴めているのかどうか、自分で判断できるようになるためのヒントを提供する場と考えています。

注:分野別の専門用語は、当てるべき訳語が文脈に大きく依存するため、クライアントから来た依頼の内容に合わせて、自分で収集・整理・蓄積して行くしかありません。従って授業では扱いませんが、整理・蓄積のためのアイデアを「テーマの理解に役立つ単語帳作成法」に、またそのアイデアに沿って作成した自家製単語帳の一部を「自家製単語帳を順次公開」に、掲載してあります。