Books2(第2書庫)

「あなたにここにいて欲しい」(1984)

  by 新井素子 (2012/12/13記) 「あなたにここにいて欲しい」(1984)を読了。 少なくとも10年以上ぶりの再読だな。 昔は何度も何度も読み返していたものだが。 その久々の再会でまず思ったのはこの作品の構成の特殊なところに改めて気づいたことかな。 物語が始まってから数回の場面展開を経てクライマックスが始まる。 この時点で話全体の1/3いくかいかないかのところ。 それからひたすらキャラクターたちの回想や独白。 そして状況が進展して後は後日談。 けして短いわけでもないのにこの構成で、しかも飽きさせない。 これぞ新井素子の絶頂期の真骨頂。 そしてある意味集大成。 以降の作品のうちの何割かはこの作品の変形だなんて暴言はいても良いくらい。 それほどまでに愛おしい。 当時はイメージアルバム的なものも買ったなあとかいろいろ思い出のある作品の一つだが、久々に、これを 若さの勢いだからこその作品でもあることが判るくらいの年齢になったのだなと改めて思った次第。

「機龍警察 暗黒市場」(2012)

  by 月村了衛 (2013/01/02記) シリーズ前作が2012年日本SF大賞を受賞した「機龍警察 暗黒市場」(2012)を読了。 シリーズ3作目となる本作は、1作目の日本人の元傭兵、2作めのアイルランドの元テロリストに続き、 ロシア人の元警官であるユーリが主役とも言える内容。 それぞれの過去を映しつつ描かれているという状況は前作と変わらず、まぁついでに言ってしまえば基本的な ラインは前作をほぼ踏襲している。 但し、とは言ってもいろいろずらしてきたりとかそれぞれらしさを出してみたりとかでなかなかに面白い。 ロシアの警官、もしくは国家というものに対して我々が抱いているイメージと個人としての葛藤をうまく描いて いると思う。 しかも前作と同様に物語の半分は過去の出来事のようなものだからな。 で、まぁ日本が舞台であるがゆえにそれ以上に腐っているのが…というのもちゃんと忘れちゃいない。 むしろ今作と前作で描かれているのは滅び行く旧態然としたものだからな。 そういったクライムものには定番のガジェット山ほどぶち込んで、今回は前回以上に「龍機兵」はアイコンに 近いものと化している。クライマックスはもちろん押さえてはいるが。 (とここまで書いておいてなんだが一応ネタバレ防衛ラインを個々に敷いておく。) で、具体的な内容に関して少し書かせてもらうと、彼の最初のあれは文字通り濡れ衣だったのだろうな。 翌日見つかったというのは本当で、それを彼は感謝の念半分と妬ましさ眩しさ半分であのような策を取った のだろうな。 そうでもなければ再びチケットを送りつけるようなことはしなかったはず。 ユーリ以上にゾロトフにとっては意味のある品だったのだと思う。 まぁ、彼がその後歩んだ人生を考えればそれ以前に自明の理か。 あおういう部分があって、あえてそれを最後まで明確に提示しないところも好きだ。 バララーエフとダムチェンコがあまりにもあっさり吐露してくるのはびっくりしたが、それで以降の流れに変な 淀みが無くなったのも確かだ。ここは好みの分かれるところだが個人的にはバランス能力の良さを感じた。 彼らに関しては、特に前作があったのでいつ出てくるのかと待ち遠しかったよ。(笑) そこらへんも含めてね。>バランスの良さ さてまぁ、私の常としてどうしても診てしまう映像化に関しての観点でみてみると、特にドラマ色の強い本作は 実写で観てみたいなぁと思ってしまう。 これ、国籍を変えるとだいぶ面白みが薄れてしまうのでだとするとロシア人(もしくは西欧人)大挙出演と なってしまうのだがそういう意味ではNHKあたりが海外の放送局と共同制作か何かで作ってくれると 面白いのだがなぁ。 かといって自分の国を貶めるようなものは国営放送では作らないだろうからううむ。 となるとアニメ化かぁ。それなら作品的には問題ないものが出来る可能性が高くなるのだが、予算面と 一般的な最終評価が全然変わってくるだろうから…ということになりそうだ。 逆に職人的な部分である意味レベルの高い今こそなのだけれどううむ

「ココロコネクト ニセランダム」(2011)

  by 庵田定夏 (2012/12/31記) 「ココロコネクト ニセランダム」(2011)を読了。 太一達も2年生になり文研部にも1年生が二人入部した。 ここで新たなる現象がまた5人を襲うことになるが…。 1年生目線がメインになっているせいもあって太一達5人がかなり持ち上げられているところがこの作品に 乗れるか否かの分かれ目になっているように思う。 私はと言えばドン引きしていたのだが…。 まあたまたまこの作品を読んでいた喫茶店で近場に座っていた20代前半、まだ就職して数年くらいの 子達の会話を聞いていたらああこういうのもありなのかなと思えてきた。 世界が狭くて、その世界が全てと言うことになれば主観的無双は容易なのだと。 それにしても稲葉ん…。

「ココロコネクト ミチランダム」(2011)

  by 庵田定夏 (2012/12/08記) 「ココロコネクト ミチランダム」(2011)を読了。 ココロコネクトシリーズの4作め。テレビアニメは3作めまでがテレビ放映され、このミチランダムは今のところイベント 上映の後、パッケージのみとなるのかな? で、そのアニメのテレビ放映最終回でも、原作の3巻目のラストでも意味ありげな形で終わった続きとなっています。 で、まあ読み終えて最初に思ったのが「ここまでちゃんとテレビ放映でやってればまた違ったかもしれないなあということ。 それは何故かと言えば5人5様に強くなった事を自覚できたところまで描けていることと、特に2人ほど壊れているのを ある意味堪能できるというところか。 いや、特には一人か。(笑) 単なるでれキャラに成り下がった稲葉ん。(笑) それはさておき今回の題材はまた面白かったな。 人の考えの断片が何の脈略もなく流れ込んでくる「感情伝導」 言ってみれば前後がまったく判らないまま目の前にいきなり突き出される呟きだ。 ある意味何とタイムリーな。 そういった聞きたくもない、いや厳密に言えばもしかしたらとても重要な事と錯覚してしまうということをいい加減皆 気づき始めている時期(本書は2011年2月初版)にある意味それを話の上のトリックとして使ってしまっている ところにとてもうまさを感じる。 正直そちらに気を取られすぎていてもっとシンプルで簡単な事が目の前にぶら下がっていることになかなか気づか なかった。 そりゃそうだよ。こんな状況の連続なんかやってられない。 怖くも逃げ出したくもなるさ。 そうやって劇中キャラクターも読者も見事に欺いた上で彼ら彼女たちが取った行動が…まあある意味慣れきったこの 状況に対し初心にかえるというところにまたキレイさを感じた。 やはり視野狭窄したこの年代の話というのは面白いな。 さてこれ以降はすべてデレばんなんだよなあ。(笑)

「AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜」(2008)

  by 田中ロミオ (2012/12/02記) 「AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜」(2008)を読了。 「人類は衰退しました」で興味を持った田中ロミオの作品として、さらには映画化もされるということで読んでみた。 物語冒頭の主人公とヒロインの関係が「中二病でも恋がしたい!」に近いというのも気になった。 さて、すげえ!これこそラノベ、学園ラブコメだぜって終わり方を見せてもらえるとは思わなかったよ。 導入、やけに詳細な説明があるなと思ったものの気にするなと書いてあったから単に設定好きなのかなと思いきや、 最後にそれを生かしやがった。 そして、佐藤良子。「中二病…」の六花みたいに決してへたれることなく最後まで任務を遂行しようとする様は見事。 そんな良子を途中へたれつつもフォローし続ける一郎もまた良いキャラクターだったな。 このふたりでひっかき回しまくって最後あそこまで持っていったのは良かったな。 そうかあ、これを劇場アニメ化するのか。 面白そうだな

「ココロコネクト クリップタイム」(2011)

  by 庵田定夏 (2012/12/01記) 「ココロコネクト クリップタイム」(2011)を読了。 ココロコネクトシリーズ初の短編集。 ヒトランダム本編中でも語られた文研部の文化祭エピソード「スクープ写真の正しい使い方」。 そのヒトランダム直後のエピソード「桐山唯の初体験」。 続いてがキズランダム直後のエピソード「稲葉姫子の孤軍奮闘」。 そして最後がミチランダム後のエピソードである「ペンタゴン++」。 最初は本編でもよくある太一主観の話であるものの、2本目3本目はタイトルにある通り桐山唯と稲葉姫子にほぼ 絞ったエピソード。 全体としてのために動かされることはあっても一人だけを掘り下げることは今まであまりなかったと思うんだよな。 そういう意味でこのシリーズとしては新鮮。 ぎこちなさも残る。 けど、本編と違って現象が起こらないこういうエピソードもこのシリーズとしては良いんじゃないかと思う。 なあんて思いながら最後のエピソードで2年生になり後輩になるかもしれないふたりの話の最後で次の現象が 起こりそうな空気が漂ってきてエンド。 これってある意味〈ふうせんかずら〉が読者と同じようにこれらの話を眺めていたとも解釈できる導入なんだよなあ。 ある意味うまいな。 まあミチランダムを読む前にフライングして読んでしまったのでその後の破壊力溢れるデレばんを期待しながらミチ ランダムは読めそうだ。 あそこまでデレるか?(笑)

「ふたりの距離の概算」(2010)

  by 米田穂信 (2012/11/29記) 「ふたりの距離の概算」(2010)を読了。 前作までが「ああ、これがやりたくてテレビアニメにしたんだ」と思えたこのシリーズ。 ならば本作は?という問いを思いつくまもなく「ああ、これはひとつの映画として観てみたい。」と素直に思った。 その形態はアニメだろうが実写だろうが構わない。 もしこれがそんな感じで映画になったのを観た人が「今まで何があったんだろう」と思ったときに原作読むも良しアニメ 観るのも良しなんて感じがとても幸せだなあと思えるそんな作品。 タイトルからして考える二人の距離。 里志と摩耶花の関係はこの作品でようやく摩耶花の願いが叶ったことを知る。 そして奉太郎とえるは?というと大日向曰わく、の通りなのだろうな。

「ココロコネクト カコランダム」(2010)

  by 庵田定夏 (2012/11/27記) 「ココロコネクト カコランダム」(2010)を読了。 前2作までは少なからずぎこちないところがあったように思えたのだけれど、本作はそれがなくなったな。 既にテレビアニメで観て内容は知っているし、さらにはほぼ忠実に作られていただけあって、原作を読んでの大きな 驚きはないのだけれど。 それでも素直に面白かったな。 キャラは固まっているし、さらには今回で太一以外の全員が一番最初の立ち位置から明らかに良いところに落ち 着いたので気持ちよいというのもあるのだろうな。 最後に伊織が不穏な言葉を残して終わるのだけれど、その結果として当然だと思うし、それよりも残りは太一だけだ。 当然だな。 頑張れ太一!

「人類は衰退しました7」(2012)

  by 田中ロミオ (2012/11/24記) 「人類は衰退しました7」(2012)を読了。 「妖精さんたちの、ちいさながっこう」 衰退し始めて数世紀、最後の学舎の卒業生であるわたしの下に持ち込まれた新たなクレーム、いや要望は「子供 たちに未来を」。 子供たちに対する教育の依頼でした。 そして始まったわたしを始めとする教師たちと3人の子供たちとの闘いの日々。 ということで、これに「増えすぎた妖精さんたちの捕獲作戦」も加わって変わらない混沌の日々は続いていきます。 いつもとは少し違う立ち位置のわたしちゃんでしたが自分を取り戻してからの通常営業っぷりが良かったな。 いや、本来人見知りなので終始一貫わたしちゃんではあるのだが。 AとBはやはりそうなったか。Y歓喜。(笑) 「人類流の、さえたやりかた」 いつもと違うタイトルの付け方に実は最初からヒントが隠されていました。 知覚する側の属するカテゴリーの違いで認識に相違が生じるという話の私の初体験は手塚治虫の「火の鳥」だったな。 あれほどの目から鱗の発想はその後もそうそう出会っていないが、そうか、彼らにとってはあそこらへんに妖精を感じる のか。 しかしまさか、ヒトモニュメント計画が実際に完成するとはねえ。 何かぴおんちゃんたちとキャラ被ってる気がしないでもないが良かったな。 さて、まだまだ先は長そうだ。

「遠まわりする雛」(2007)

  by 米澤穂信 (2012/11/24記) 「遠まわりする雛」(2007)を読了。 米澤穂信の「古典部」シリーズ4冊目にして初の短編集。 書き下ろしの一編を含む計七編の短編が収められている。 推理小説、ミステリーといえば話に関わる襞まで楽しめる長編の方が好みではあるがアイデアが光る様を楽しむ 短編というものもこれが特にシリーズものとなるとその成りが故に結構面白いものがある。 作家の向き不向きなんてことも含めると長い話になるのでここでな止めておくが何作かの長編を経て血肉を得た 古典部の面々を巡る短編は十分に面白かった。 そして、その中でもこの短編集のタイトルにもなっている「遠回りする雛」。 小説でこそ楽しめる部分の多いこの古典部シリーズをわざわざテレビアニメ化する理由があったとしたら、まさにこの話を 観たかったんじゃないか。それに尽きてしまうかもしれない。 まさにこれらの物語の果て、いや実際にはまだあと2年分残っているようだが、そこにこれがあるのであれば観てみたいよ。 奉太郎がオチる瞬間。だものな。 この短編集を締めるこの書き下ろし作品は私に取って出色の作品であった。 もちろんそこに至るまでの4人がいろいろ重い至ることになる様々な出来事も良いが、これは特別だな。

「クドリャフカの順番「十文字」事件」(2005)

  by 米澤穂信 (2012/11/22記) 「クドリャフカの順番「十文字」事件」(2005)を読了。 これに関しては年代的改変(漫研のコスプレの中身)が多少加わったくらいでほぼそのままアニメ化したんだな。 原作の内容故というのもあるが前2作と比べてだいぶ親和性も良かったみたいだ。 話としてもこれはうまいなと思った。 奉太郎があそこまで動くというのはまさに本人も周りも予想しておらず、実は姉だけが彼を一番よく知ってるという 構図なんだよな。 今回の結果として周りといろいろ関わりを持つようになってしまった古典部メンバーだが、巡り巡って何かありそうな 予感がするのはきのせいか。

「新約とある魔術の禁書目録(インデックス)5」(2012)

  by 鎌池和馬 (2012/11/20記) 「新約とある魔術の禁書目録(インデックス)5」(2012)を読了。 学園都市すべての学校が参加する大覇星祭があったのでいずれはあるだろうと思っていた文化祭、一端覽祭の 準備が始まった。 バゲージシティでの死闘の果てに気を失った上条当麻が目を覚ましたのはその真っ只中で、いきなり出くわした 吹寄に連行され何事もなかったかのような日常が始まったのだが…。 さあて久々の学園都市。変わらぬ面々の変わらぬ日常の中、唐突に語られる右手の真実。 そして「神に愛された少女」と彼女を巡る争奪戦の行方は? となるかと思ったらそれどころじゃすまない、一歩間違えたら人類終了のお知らせになりそうな状態で次回へ続くだと! しかもまさかのフレンダ復活やらラストオーダーとフレメアの迷子コンビの邂逅、これは以前のインデックスとラスト オーダーの時みたいだったな、とかあれ?まだ生きていたのかマリアンとかレィヴィニアバードウェイやらオッレルスやら まあ久々のオールスター状態。これ次回終わるのか? 垣根提督まで出てきたぞ。 ただでさえ大きな話の上にキャラがまた多いから大変なことになりそうだな。

「愚者のエンドロール」(2002)

  by 米澤穂信 (2012/11/19記) 「愚者のエンドロール」(2002)を読了。 これもまあアニメの方は良くアニメ化したなあという感じだな。 高校生そのもののふてぶてしいモノローグをベースに映像化するのに若干ナローにして、さらに尺に収めるための 時間軸の改変や説得力弱いところの補強などしてうまくまとめてあった。 でもまあそれでもこれは小説でこそ生きるエピソードであったな。 明らかな映像パートがあるにも関わらずそれを見せないことで成り立っている曖昧さな部分を映像化せざるを得ない ところがハンディキャップになってしまうこともあるんだな。 逆に映像で語っていることを説明せざるを得ないノベライズというパターンもかわいそうと言えばかわいそうなのだが。 さてその本編だが着眼点はいろいろくすぐられるものがあるものの、千反田えるに対する奉太郎の感情が明らかに 恐怖感の方が優先されていてそこが好みが別れるところだろうな。 アニメの千反田えるに馴れてしまったというのもあるかもしれない。 たしかに奉太郎にとってはある意味姉以上に怖い存在なのだろうが、けど怖いわ。 ある意味える以上に口喧しい摩耶花のほうが昔から知っているということと弱い部分も知ってるというところで安心 できるが。 まあそういった部分を隠さず生々しく描いていることがこの作品の魅力なのだろうな。

「憑物語」(2012)

  by 西尾維新 (2012/11/18記) 「憑物語」(2012)を読了。 化物語シリーズファイナルシーズン三部作の1作目である本作。 阿良々木暦と縁のある怪異だけを一人、また一人と引き離していく忍野扇の次なる目標は余接。 というわけで限りなく続けられる無駄話から舞台が揃ったところで一瞬にして終わることの多いこのシリーズですが、 たぶん最強の敵となりそうな正弦登場でどう動くかと思ってみたら…。 とてもらしいことを正弦はしてきました。 時間軸上では少し先になるが貝木も同じような目にあってしまったし、もしかしたらメメを誘い出すのか伊豆湖の 縁者を削っていくのが目的なんじゃないかとも思える。 まあ、何はともあれ暦は決断しなければならない。

「氷菓」(2001)

  by 米澤穂信 (2012/11/04記) 「氷菓」(2001)を読了。 ああ、これは間違いなく小説であることに喜びを感じる小説だ。 それで何となく理解した。 テレビアニメの「氷菓」がアニメーションであることにこだわっていた理由を。 まったく同じものでは無いどころか全く異質なもの。けと同じ魂を持ったものを作ろうとしたのだな。 西尾維新とシャフトが化物語で取ったのと同じことをここでやろうとしていたのだな。 それほどまでに刺激的であったのか。 これを先に読んでいたら何故これをアニメ化するのかと思っていたことだろう。そしてそれを言えるのはアニメを先に 見たからかもしれない。これは矛盾? まったく別物と思いつつもその声は彼ら彼女らで再生され、その姿もまた然りなのだがダイジェストとか改変とか そういう話ではなく別物。別の世界に生きているものだ。 ホントこれだから京アニは油断ならないのだ。 とアニメに絡めた話はこれくらいにして、奉太郎にしても里志やえる、摩耶花にしても実に血肉の通った人間に 描かれている。奉太郎の見た理解できない他人しかし理解してみたい他人として、それは自分自身も含めて 存在している。 故に魅力的なのだろうな。 さてさて物語はまだ始まったばかり。 果たして彼ら彼女らに待ち受ける未来は何か。

「新約とある魔術の禁書目録(インデックス)4」(2012)

  by 鎌池和馬 (2012/10/18記) 「新約とある魔術の禁書目録(インデックス)4」(2012)を読了。 魔術側ではない反学園都市組織をひとつにまとめたものが学園都市の超能力者を凌駕する人材発掘の為に 始めたトーナメント。そこには利害の一致するグレムリンからも警護目的で能力者が派遣されていた。 そのトーナメントの参加者が見たものは。 という形でトーナメントの裏側で上条当麻たち対グレムリンという状況になるかと思いきやろくに試合もないうちに 学園都市は木原一族を投入して続行不可能な状態に。 グレムリン対木原一族といういつもと違う異種格闘技が展開されたり、どちらでもないものがそれなりに存在感を 示したり挙げ句の果てに実はやりたかったのが復讐劇だったという盛り沢山な内容は相変わらず。 今回は新約になって初めての上条当麻たちではなく単独パターンだったりさらにその当人もほとんどが両者の恐れる アイコンとしてだけの登場だったり(まあ最終的に出てきたが)、どちらにも属するものが出てきたり、復讐劇以前に 両者が求めていたものは漠然として何かだったのだがその何かが生まれる前に当麻がそこに存在することで潰して しまったり、第二位だったものがまた徐々にその形を取り戻し始めていたり、「とある…」の最終巻の伏線がようやく 動き出し始めたりとまあ上げ始めるときりがない。 相変わらずのサービス精神旺盛なところに脱帽です。

「ヴァンパイア」(2012)

  by 岩井俊二 (2012/10/16記) 「ヴァンパイア」(2012)岩井俊二を読了。 岩井俊二の小説としては「ウォーレスの人魚」とか好きだったのだけれど、本作のタイトルから同じような匂いを 感じたので久々に読んでみたくなったのが、読むに至った経緯。 最近日本で公開された映画との関係とか予備知識は一切入手しなかった。 さて、実際に読んでみると「おお、さらにこじらせてるな。」という感じの前半から同族嫌悪を経てふいに光を 見いだしてという構成自体は好きなのだが、彼がふと彼女を殺したくないという思いに至った部分が弱かったかな。 これが映像であれば何かしらもう少し共感できるヒントがあったのかも知れないが。 まああと、これはしょうがないのかもしれないが、彼女たちとの置かれた状況のバリエーションが、実際に調べてみたら 引っかかってくるような類型的なものばかりに見えてしまったのが残念だった。 これは言ってみれば手垢の付いた分野であるのでしょうがないといえばしょうがないのだけれど。 ラスト、クライマックスな部分はさすがに映像が頭の中に入ってきたな。 そのための仕掛けだったのねというところがいかにも岩井俊二らしい好きな一面である。 さて、そのうち気が向いたら映画のほう見てみるかな。 その関係性は今も調べてはいない。

「人類は衰退しました3」(2008)

  by 田中ロミオ (2012/10/15記) 「妖精さんたちのおさとがえり」が収録された3巻を読了。 アニメの方を観ているおかげで、ぴおんもおやげも声固定です。 実にジャストフィット。 妖精さんたちがお里帰りしてしまうと実にシビアな話になってしまったのですが復活と共にファンタジーに。 さらには夢とロマン溢れる話になりました。 そうだよね。外は寒いよね。

「人類は衰退しました5」(2010)

  by 田中ロミオ (2012/10/09記) 「人類は衰退しました5」(2010) 田中ロミオを読了。 「妖精さんの、ひみつのおちゃかい」 テレビアニメ版ではラストエピソードとなったこの作品はやはり特別感傷的でした。 そしてそのアニメ版ではハテナ?な部分、なんで原作の肝を落としちゃったんだろう。もしかして私見落としていたのか? そこは残念だよなあ。 逆に原作はそこが腑に落ちたので良かったです。 「妖精さんの、いちにちいちじかん」 うん、途中から何となく分かったけれどカオスだな。 ぷよぷよはそのままだがテトリスはなかなか分からなかったです。 ポリゴンテクスチャの重いところとかまあそうですよね。 これをアニメ化しなかったのはタイミング的にネタがあれと被るからかと一瞬思ったのだけれど、それよりもまず全体 構成としてこれを外したんだろうな。 やはりリアル妖精さんはそうなるのか。

「人類は衰退しました4」(2008)

  by 田中ロミオ (2012/10/08記) 「人類は衰退しました4」(2008)を読了。 「妖精さんの、ひみつのこうじょう」 アニメ化された1話目がこのエピソードだった訳だけれど改めてこう接してみると良くできてたんだなと思った。 原作自体も面白いのだけれど、それに台詞やシチュエーションを足し引きすることなく見事なメリハリを付けたな。 特に大殊勲なのが中原麻衣でうわやっぱりプロはすげえなと思った。 これを1stエピソードに持ってきたことも正解だわ。 話戻って原作に関して言えば、これはわたしちゃんの属性でもあるのだけれどニュアンスで伝えるのが本当にうまいな。 明確にこれと書いてないものや人でもそれが何なのかとても判りやすい。 けど明言しないどころかその後のフォローもしない。 けど判りやすいんだよなあ。 プロセスチキン恐るべし。 「妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ」 これもアニメ化された方共々好きなエピソードではあるのだけれど、こちらはやはり原作の方が良いかな。 アニメで唐突に思えた部分は原作ではちゃんと前振りしてあるしその結果として提示されるので結果思考での滞りが ない。やあ良いわあ。

「人類は衰退しました2」(2007)

  by 田中ロミオ (2012/10/03記) 「妖精さんたちのじゃくにくきょうしょく」「妖精さんたちのじかんかつようじゅつ」の2編が収録された2巻を読了。 「妖精さんたちのじゃくにくきょうしょく」 すげえ。2巻にして妖精さんたちの真実が描かれていたのね。 いや実際には相対的な印象の違いだけなのだろうけれどまさかこんな妖精さんが見られるとは。 そして弱肉強食の過程がとある手塚作品を思い出させられたりとかあったのですが、まあそれよりもアルジヤーノンに 花束をがわたしちゃんで再現されるとは思いもよりませんでした。 [Fin] 「妖精さんたちのじかんかつようじゅつ」 こちらはアニメでもなかなか面白かった回。 いろいろといじっていたのね。細かいところを。 この原作は概ねわたしちゃんの時間軸どおりなのだけれどこちらのほうが迷子感があって良いかな。 あれだけの人工を短期間にあそこまで集めたのかと思いきやそこは原作のほうがうまく処理していたのね。そういう 目で見ると時間活用術というサブタイも納得だ。

「人類は衰退しました6」(2011)

  by 田中ロミオ (2012/09/30記) 「妖精さんたち、すかいはい」「妖精さんたちのさぶかる」の2編が収録された6巻を読了。 「妖精さんたち、すかいはい」 正直に言ってううむ今一つかもと冒頭で一瞬でも考えた私がバカでした。 鳥人間コンテスト、出場者側かと思いきやその浪漫だけで裏付けのない理論に突き動かされた出場者たちの 安全に関する総責任を押し付けられたわたしちゃんが取った手段は妖精さんのオーバーテクノロジーを使いまくって 危機を脱出するというもの。 初めて見る妖精さんたちの真の実力はやはり凄かった。 まさに歯車になって働くことを具現化するとは。(笑) これは漫画とかアニメ的な表現がとても映えるのでぜひ見てみたいところです。 「ようせいさんたちのほんき」という奴を(宇宙の海まで行くなよ。(笑)) 冒頭のアイスの作り方がそこまで飛んでいくとはねえ。 「妖精さんたちのさぶかる」 アニメ化されたエピソードの中でも屈指の出来だったこの「さぶかる」にこんなにも早く出会えるとは思いもせなかったが ゆえ〜 いや、アニメ化されたものは見事にほぼそのままでした。 何も引かない何も足さないとはまさにこのこと。 いやこの作品の何が好きかって同人いや同類誌の栄枯盛衰を見事にそのまんま描いたということ。 どんなものでもくっつける貪欲さとか…あとは自重しよう。 そして漫画の方法論と面白さと人気の話とかその結末を皮肉るわけでもなくそのまんま。 そして失われた話であるが故の誤謬が混じっていたりはするのだがそれもまたおかしと。 6巻、当たり巻ですね。

「ココロコネクトキズランダム」(2010)

  by 庵田定夏 (2012/09/26記) 「ココロコネクト キズランダム」(2010)を読了。 まさに、ここからが面白くなるんだとばかりに火が点いたな。 既にテレビアニメの方は観ていたので大筋は知っていたがまさにその通りという感じで。 強いて言えば序盤は視覚聴覚像で表現してくるアニメのほうがすとんと入ってくるが中盤の説明的部分においては 原作が強くて、後半は。 やはり原作の方が良いかな。 匙加減と言ってしまえばそれまでだがより稲葉んに寄り添っていけるという意味で。 しかしながら「きゃあ〜キスしちゃったあ」の件の破壊力は声優の勝利だな。 みゆきち恐るべし。 まあ、もう既にヒトランダムで少しなれてきたし、それでいて5人の関係を一気に縮めるという意味でこのキズランダムは 良かったんじゃないかな。 ほんと影の首謀者は5人のうちの誰かだと思ってしまうよ。

「ココロコネクトヒトランダム」(2010)

  by 庵田定夏 (2012/09/22記) 「ココロコネクト ヒトランダム」(2010)を読了。 テレビアニメの方を観てからの感想になります。 まず、その比較からしてしまうとアニメの方が導入がうまいなと思った一方でこの原作の方は特にこの「ヒトランダム」と いう現象そのもののせいでややとっちらかった印象を受けました。 アニメは逆に声と映像が一瞬で入ってくるしさらにはやはりプロだけあって声優さんは上手いわ。 ところが、途中から状況が逆転する。 アニメのほうが太一無双な部分ばかりが強調されてしまい、太一自身の弱点に対する描写が薄くなったり、さらには 稲葉の体調不良がどれほど重いものであったかも軽く見えてしまいその後の展開に疑問符だったのがどちらもちゃんと 書き込まれている。 もちろん太一無双や稲葉の体調不良はどちらもやや唐突に感じはしたのですがそれでもそのフォローの有無は大きい。 そうやってある部分を越えてからは原作のほうが面白かったな。 ちゃんと後の伏線になる設定も判りやすく置いてくれてるしそれが嫌じゃない。 アニメという形の血肉を得た上での原作という好条件ではあれど前半の停滞感が嘘のような後半の疾走ぶりは 心地良かった。 しかしまあ本当に愛されているよなあ〉稲葉ん 他の4人も愛すべきキャラクターだけれど次作の彼女も知っている分にやにやものでした。

「小説 魔法少女まどか☆マギカ」(2012)

  by 一肇 (2012/09/15記) 「魔法少女まどか☆マギカ」のノベライズ版である「小説 魔法少女まどか☆マギカ」を読了。 原作となるテレビアニメ版と同じ12章という構成立てをでありながらその原作とは違い基本的に主人公鹿目まどかの 視点をメインに描く事で、既に物語を知っている人でも楽しめる、否むしろ知っている人だからこそ楽しめる作品に 仕上がっていました。 原作だと、いくつかのシーンは主人公まどかが知り得ない話の展開、進行があるところをどうクリアするか。そういった ところも「ああ、こうきたか」という感じで楽しめたし、まどか視点であるが故に本来のこの作品のテイストには合わない 児童小説のような書体でこのような物語を味わえるというある意味原作さながらのミスマッチも味わえます。 原作は30分ものTVアニメ12話というフォーマットをフルに生かした作品であったものを、違う塊となる「小説」という 形態でどのように表現するかというところでこのやり方は予想していなかったな。 もうココらへんはアイデアの勝利だな。 そして原作とは違った明確なテーマとして、原作最終話タイトルである「わたしの、最高の友達」をうまく昇華させていた のも面白かった。 そうか、これでまどかとほむらの結びつきがより一層強くなるのか、とかいろいろ。 正直、前後編となる劇場版も、今回冒頭に書いているように違うフォーマットに置き換えることによる幾つかの効果的 な事象の変化をどう処理するのかが気になっているのですが、なんだこんな手があったんじゃん。 結果として多少物語の展開も変わっているのですが、逆に原作よりうまくつながっている部分もあるし、原作では途中 空気と言われ続けたまどかが、本作では見事に最初から最後まで主役として成り立っていたりもして変えた甲斐も あったというもの。 果たして劇場版はここまでのうまい手を用意できるのでしょうか。 劇場版はこちらを原作にしてもありだと思う。 基本、台詞は全く同じだし強いて言えば微妙にシチュエーションが違うくらいで原作同様ドキドキさせたり展開が判って いるからこそ涙腺を刺激するものも多々ある。 ああ、何か自分が求めているものが全てあるじゃないですか。良かった。 これは劇場版観た後にもう一回読まねばなるまいな。

「機龍警察自爆条項」(2011)

  by 月村了衛 (2012/08/30記) 「機龍警察 自爆条項」(2011 月村了衛)を読了。 龍機兵と呼ばれるパワードスーツ的なものの存在する近未来。 その龍機兵を使用した重大案件が発生し始めた日本において沖津は警察組織内に特捜部特捜部と呼ばれる 対龍機兵専門の重大案件対応組織を立ち上げた。 各所の精鋭や部外から集めたその部署はそのやり方や組織の在り方から警察内部や他省庁から忌み嫌われ ながらも事件解決のために奔走し続ける。 という前作を受けての2作目。 その前作を読んでいたからという理由で手を付けたのだが読み始めるとあっと言う間に引き込まれた。 正直に言って何となく全体像を覚えているだけだったのだが説明済みな部分は省かれスムーズに話が進むことと、 前作同様冒頭から派手な案件でいきなり引っ張ってくるあたりの構成巧者なところが心地良い。 そして今回のメインは3人の龍機兵乗りの中の一人、元IRFのテロリストであるライザ。 彼女の回想を交えながら元居た組織が日本で仕掛けてきた案件に対処することとなる。五分の一くらいは舞台が ダブリン(だったかな?)だったりする。 ということで、警察小説でありSFでもありテロリストの半生的な話でもあり一方でテロリストに家族を殺されたライザの 機龍の技術主任である緑の話でありと言った感じでいろいろな要素がごった煮になって物語は突き進んでいく。 警察側は所轄や警備局、外務省や経産省や検事局、果ては外事まで交えての駆け引きを行いながら捜査を 進める一方で、敵方も敵方同士で思惑や駆け引きがあり、ひたすら腹の探り合いも続く。 直接のネタに触れずに話すとこんな感じかな。 まあほんとに良く出来てます。 面白かった。

「人類は衰退しました」(2007)

  by 田中ロミオ (2012/08/15記) アニメ版が気に入ったので早速借りてきてそして読了。 「妖精さんたちの、ちきゅう」 1話めということになるのかな。 学舎を卒業したわたしが故郷の祖父の元で国際調停官として妖精さんと 初接触する話。 「妖精さんたちの、あけぼの」 そして懲りずに探求を続ける日々。 基本的に妖精さんは妖精さんだなあという感じでアニメを観て受けた 印象とほぼ同じ。わたしちゃんはまだ初々しいけど後々出てくるで あろう部分の素養はちゃんと出てる。 おじいさんも助手さんもたぶんそのままなのだろうな。 逆に言うと最初からかっちりキャラ立ちしていたということか。 まあいずれにせよ主役の座を妖精さん達に明け渡し隠居生活に入った 人類と、もはやその人類には理解不能なほど発達し、結果として人類と 同じような進化は起こり得ない妖精さん達の掛け合い漫才は、とても 面白かったり、します? ですよねえ。 ってな感じでした。ここらへんは9話10話くらいでくるのかな。

「這いよれ!ニャル子さん9」(2012)

  by 逢空万太 (2012/07/08記) とうとう最新刊に追いついた。 しかしまあ見事に中途半端にアニメとネタが被っているという感じである意味当然この 原作の方が面白く調理してると来てる…。 少なくともアニメ2期があってもこのネタは使えないな。残念。 内容としては基本BTTFでそこにいろいろ忘れ去られたどうでもいい伏線とかライダーネタ、 そして今回はAGEネタや中の人ネタが多かったかな。 私としては中の人ネタの薄いところしか拾えなくて、せいぜいジャッジメントですのやマンダリン オレンジ、ちっちゃくないよとかラムレーズンバウムくらいでした。 ただ、例えば同じネタの使い方でももったいぶらずにさらっと流すところがいいんだな。原作の 方が。 しかしイス香再登場で勝手にフラグが立つとはなあ。これアニメのほうの〆ネタだったらどんなに 良かったことか。 派手なバトルやら盛り沢山だったのに。 そんなアニメも終わってしまったが、原作のほうはまだまだ続くので楽しみにしていよう。

「這いよれ!ニャル子さん8」(2011)

  by 逢空万太 (2012/06/06記) 8巻を読了。 敵はソレスタルじゃないビーイングな謎のテロ組織。 宇宙ネットワーク障害を引き起こし、ハチワンじゃないダイバーを誘拐同然に連れ去った先に あったものは…。 まあオチから何から相変わらずでした。 時節柄まどかネタは言葉の端々にあるわ(というほどでもないか)そして当然ながら座薬頭の あのネタもいろいろとあるわけです。 それでも映像的にはしっかりクトゥルフで、ご一行様のえげつなさもいわずもがな。 まあ徐々に株が上がるハス太くんだったり相対して小物臭がひどくなっていくけどそれでも チートなニャル子なのでした。 やはりクラフトの無いラブコメよりこちらのほうがいいや。(笑)

「這いよれ!ニャル子さん7」(2011)

  by 逢空万太 (2012/06/05記) 7巻は短編集。 今までのエピソードの最中だったり直後だったりに起こったまったく関係ないいつもの 調子ということで、タイミング柄9Bなんていうキャラの出ているアニメ見ていたり、その 中でもニャル子は真尋さんと声が似ている青い子が好きだったりいつも以上に そんなんばっかしです。律儀な邪神さんたちもいろいろ出てきますし。 まあそんな中で実は暮井珠子やシャンタッ君にまでフラグが立っていたという事実。 一番仲が良い余市以外すべてじゃないか。 なんてテンプレな。 などという突っ込みまで期待しているのだろうな。 それはさておき、やはりこの作品は邪神軍の話に相応しく短編のほうが合っているな。 テンポが良いし何よりも下らないダジャレがオチでもダメージが少ない。否さくっと読める。 しかしまあでれまくってるなあ〉真尋

「這いよれ!ニャル子さん6」(2010)

  by 逢空万太 (2012/05/30記) 6巻を読了。 まあ、特に何事も無い日常を…という感じではなかったが例によってどうでもいいような事を 思わぬ伏線回収から混乱したり解決したり、まあ秩序がないのが秩序な邪心たちという ことで真尋もかなりSAN値が下がってます。ニャル子に対して真面目な話をしてしまうくらいに。 だがそんなニャル子に火に油を注ぐようなことをしたのは今回は炎の属性の人たちでした。 いや、人じゃないし。

「這いよれ!ニャル子さん5」(2010)

  by 逢空万太 (2012/05/29記) 5巻を読了。 微妙にテレビアニメと被ってそうなタイミングだったのでまずはこちらを先に。 家族団らんがけっこう長いなと思いつつ読んでいたら、図書館戦争から神様の メモ帳を経て、まさかの今まで読んだ中で一番ヤバいネタへ。 これ、そのまま映像化したらいいわけできないぞ。見てみたい気はするが。 謝るだけですまないなきっと。 とはいいつつも今回もクトゥルフネタ満載…とはいいつつ重複も出てきたし大丈夫なのか? というところで次巻へ!

「這いよれ!ニャル子さん4」(2010)

  by 逢空万太 (2012/05/11記) 4巻を読了。 しまった。アニメ追い越してしまったぞ。 というか、今週やった回と来週の回だな。〉4巻 しかし今度は2巻が結構改変されていたのに対してほぼ原作通りなんだな。〉アニメ版の この4巻相当話 まあまだ油断はできないが。 しかしまあここまでそのなままだとハス太も真尋母も声が脳内変換。 もちろん既にニャル子もクー子も真尋も声は固定されているので問題ない。 個人的には後付け設定がいろいろなところで昇華してクトゥルフしていたのは良かったな。 ただ、もう真尋はダメだな。 完全にデレるようになってしまって、まるでラノベの主人公だ。(笑) 頑張れ真尋!もう手遅れだとは思うけれど。

「這いよれ!ニャル子さん3」(2009)

  by 逢空万太 (2012/05/11記) 3巻を読了。 いつにも増してカオスです。 これ以上のカオスはある意味想像できないほどに。 といってもまだ2巻と3巻しか読んでいないのだけれど。 ああこの巻はアニメ化されたらカオスだろうなあ。真尋的にはSAN値だだ下がりだろうなあ。 既にいろいろ下がっていたのにあんなことやこんなことに。 そしてきっとあの人やこの人にそういう配役が来たのはきっとあんなことやこんなことをさせたい のだろうなあなんてことを妄想しながら突っ走っていました。 世界の狭さと、時流に乗った鮮度の良いネタ。 これにつきますね。

「這いよれ!ニャル子さん2」(2009)

  by 逢空万太 (2012/05/07記) 何故か2巻から手を着ける事になったがようやく読了。 読み始めの動機は言うまでもなく現在放映中のアニメがきっかけだったのだが、まず序文の ラノベらしからぬ雰囲気に興味を引かれ、さて1章冒頭が …ネタだった。冒頭一文めから。(笑) しかもくだらない。(笑) それがもう延々と続くのである。そりゃあSAN値も下がるわ。 しかも1巻で何があったか知らないが主人公真尋は既に相当SAN値削られているぞ。 いろいろその前提は既におかしい。 そうやって、ネタなのかストーリー展開上必要なのかそうでないのか見極めながら読み進んで いく訳である。 なかなか進まないわ。 けどそういった緊張感と対峙しながら進んでいく様は、まるでクトゥルフ体系の代物に接して いる時と同様で、そういう意味では正しいのだと思う。 けど、原作者にTwitterで怒られてもおかしくないわな。 そして、アニメ化の処理っぷりもなかなか見事だということを実感。 ネタの取捨選択した上に実は結構改変してる。ニャル夫兄さんもある意味扱いは同じだが シチュエーションが微妙に違う。 幻夢郷の神々もアニメでは皆殺しにはなっていないのか?(記憶が曖昧)とかそもそも幻夢郷に 行ってないし〉アニメ それでいて兄さんの扱いは同じだからな。 まあどちらもまだ断片的にしか情報持ってないしこれからだな。

「這いよれ!ニャル子さん」(2009)

  by 逢空万太 (2012/06/07記) ようやく1巻を読了。 やはり心の底から外道だな。〉ニャルラトホテプ しかしまあ改めて読むと1巻と2巻はラブ(クラフト)コメ的に正統派だな。 これが3巻になるとカオスが最高潮になり、そこからしばらく低調で、けどその間に 蒔いた種が8巻でようやく花開いたてと言ったところか。 まあなんと言っても徹頭徹尾外道じゃないとな、ニャル子。 それでこそ完全にアウトなパロディも浮かばれるというものだ。

「新約とある魔術の禁書目録(インデックス)3」(2011)

  by 鎌池和馬 (2012/06/02記) ようやく最新刊まであと一つ。 という訳で「新訳とある…」の3巻を読了。 3人の主役たちと美琴、ミサカワースト、そして前回敵ポジションだった黒夜海鳥が「とある…SP」で ほぼメインだったレイヴィニアから新たなる敵グレムリンの手がかりを掴んだとの情報を元に、ハワイへと 向かう。 一方同日同地で失踪するアメリカ大統領ロベルト・カッツェ。 さて、以前のイギリス編でも国を挙げての大エンターテイメントを描ききっていたこのシリーズだが、 今回は西の端とはいえアメリカが舞台。冒頭からハリウッド大作並みの派手なバトル目白押し。 主役が3人揃い踏みな上にことバトルのとなるとチートキャラな御坂美琴が事実上二人と一方通行 由来の力を持ち前作で主人公たちを苦しめた黒夜海鳥がこれまたチートなレイヴィニアと組んでる ところに、ハリウッドじゃお約束な戦う大統領も加わりな訳だからまあ面白い。 米海兵隊vs元米海兵隊がメインの傭兵とグレムリンが雇った魔術師たちの混成軍とかまあいろいろ。 それよりも久々に美琴が活躍してたのが嬉しかったかな。 それも一方通行との初コンビ。 おかげで対通常兵器のバトルがあっさりし過ぎになってしまうくらいだ。 さらには、冒頭から視点が防犯カメラやら携帯カメラまでほとんどカメラ越しのシチュエーション。 また目先を変えたのかと思いきや、それ自体が二重三重の伏線だったりなんてなかなかやるな。 しかしこの結果また科学と科学の戦いの最中グレムリンがからんでだからまた楽しみだな。

「とある魔術の禁書目録(インデックス)SP」(2011)

  by 鎌池和馬 (2012/05/14記) 中編、短編合わせて四編が掲載されたこの作品を読了。 「ステイル=マグヌス」 4編中一番長い話。 上条当麻のパートはコミック進行で、メインは14歳のヘビースモーカーな魔術師ステイル=マグヌス。 学園都市が舞台なので当然のように小萌先生とは絡むし、インデックスを巻き込むことは避ける。 否、上条当麻の能力を頼ることを避けているのか。 けれども結局は少なからず関わっていたことを知り…といういつもながらの展開だけれど、対峙する 魔術師たちをあえて火を操る同系にしたり敵味方の関係を主観的にコロコロ逆転させたりとか かなりノッていたんじゃないかな。 「マーク=スペース」 「ステイル=マグヌス」で登場した魔術結社の一魔術師マーク=スペースによる、同じく前述の作品で ヒロインポジションであったパトリシア=バードウェイの救出劇。 コメディパートとシリアスアクションパートのバランスの良さは4編中一番良かったかも。 スピンオフのスピンオフなので世界設定と何人かのキャラ以外は縛りなし。公式同人と言っても良い くらいのポジションでこちらもノビノビしてたな。 「上条当麻」 ようやくの主人公登場だが今のところ本編とはあまり関わらないようなエピソード。 悪者を作らないというところにいつもよりバランスがおかれていたと思うのは気のせいか。 しかしまさかうちゅうじんまで登場するとはね。 「初春飾利」 短い話ながら、いや、短いからこそメインキャラクターの魅力満載の作品となっていた。涙腺直撃。 人間挟んでのドラッグシュートはさすがに無理だとは思うのだけれど、学園都市製の素材だったら なんでもありだからなあ。 最後、影で見守る二人がまた泣かせる。 レールガン2期があれば是非やってもらいたいところだ。

「新約とある魔術の禁書目録2」(2011)

  by 鎌池和馬 (2012/02/26記) 「新約とある魔術の禁書目録」の2巻を読了。 今回は今までの状況説明とこれからについてという感じでした。 上条ハーレムも健在なことが確認されたと思ったら、とんでもないものまで惹きつけてきたか。さすが上条さん! にしても今までに対してあまりにもあっさりと三人が普通に邂逅することとなったな。さらには周辺のすれ 違いな人達まで片っ端から。 ローラスチュワートとルーン使いの魔術師、あとは拷問道具のコスプレイヤーくらいじゃないか>今回出て こなかったのは。 ん、風斬氷華はアレだよなぁ。霞ヶ丘の制服着た胸の大きな… そして、今までと違い物分りの良くなっているようなインデックスと、ようやくまともに共同戦線張ることに なれるようになった美琴にも驚きだ。新約となって世界の仕組みが変わったということかな。 まぁ役者も揃い新たなる目的も見えてきた所で次巻から本番ということなのか。

「鬼物語」(2011)

  by 西尾維新 (2012/02/17記) 西尾維新の「鬼物語」をようやく読了。 たしか「偽物語」のあとがきか何かだっったかな。「偽物語」が言ってみれば「化物語」の後日談として きちんと成立していたので当時これで終わりだと思っていたのに、あと「猫の話」と「八九寺真宵と四百 年前の武士の物語」(だったかな?)を思いついたので書きたいと語ってので、前者はともかく後者は いったいどんな話かとずっと思っていたのですが、そうか、こういう話だったのかと。 今回も見事に策略にはまってしまいました。 (一応以降は本当にネタバレするので) 完全に油断していたよ。もしかしたらと途中少しは思いついていたのだけれど、そこに来るのはあくまで 忍ちゃんの話だと思っていた。けど、そもそも最初から「八九寺真宵と…」と語っているんだよね。 そうでなければならなかったはずなのに、そこに思い至らなかった。 だからねぇ、その予測はしていなかったので最後の方はもう涙なしでは先に進めなかったです。 今までの流れがこうだったからきっとこうなるだろうというところをちょっと外されて、そう来たかと 思ったら「えっ」だったので。 「噛みまみた」を聞けるかなと思っていたのに(涙) しかしまぁ最初の眷属に関しては見事にブラフだったなぁ。 故に今の暦との関係も納得できたのだけれど、まさかそのブラフで拍子抜けしたところにこんな事を されるとはねぇ。 そしてもうひとつのブラフが、思えば『傷物語』の宣伝に終止する忍野忍だった。 そこを足場にいろいろなメタが入ってきて、今回の忍ちゃんはメタ担当だったな。 メタで思い出したが扇ちゃんはなんとなくこれで何なのかが分かってきたのかなという感じか。 こうやってひとつづつ物語を閉じていくためのメタな何か…な気がする。 風呂敷畳みのための…ううむなんと言っていいのやら。 まぁ、なにはともあれ閉じられた物語のことを少しだけ思いながら今後は「偽物語」を観ることになる でしょう。 1週早く読んでいたらもっとやばかったかもしれない。

「新約とある魔術の禁書目録」(2011)

  by 鎌池和馬 (2012/02/13記) 北の海に沈んだ上条当麻のいない第三次世界大戦後の世界。 一方通行と浜面仕上は各々が手に入れた切り札を使って学園都市の闇の解体を上層部に要求し、要求通りの 彼らは平和な日常を手に入れていた。 今回は魔術のない学園都市サイドの話。 今までの上位能力者とはまた違うタイプの相手との戦いということでああその手もあったなということに 今更ながら気づきました。 過去のあれがようやくここに繋がったりとか、けれども本当にフレメアは他に何も無いのかとか、新訳は 能力者の下剋上となるのかとかあれど、前話のあれが結局今回は出ず終いだったのが気になる。 まあそれ以前にインデックスも美琴もほぼ出ていないに等しかったのだけれどね。 まだまだ先は長そうだ。 そして鎌池和馬も西尾維新も仕事し過ぎだ。全然追いつけないじゃないか。(笑)

「とある魔術の禁書目録22」(2010)

  by 鎌池和馬 (2012/01/14記) 長かったロシア編もこれで終了。 さらに長かった神の右席編としてもこれで終了し、次巻より新訳となる。 この巻でも冒頭に戦況報告があり、各陣営の状況が思い出しやすい配慮がされている。 とは言っても前巻で彼らそれぞれの目標は明らかになっていたし。 その三者の戦いの果てに、イギリス編で得たものが再び出てきた時にはさすがにうるっと来た。 今まで出てきた様々なキャラクターはどうしたんだと思ったら良いところで出てきやがった。 巻を追うごとに上手くなっていく原作者もここまで来たかという感じで、まあここまで巻数が あるとそんなところまで考えてしまうわな。 というわけで仕上げの22巻楽しかったぜ。 美琴の本領発揮もアクセラレータの覚醒も浜面の成長も、そして上条当麻の覚醒も。 そして影の薄いヒロイン…

「とらドラ4!」(2007)

  by 竹宮ゆゆこ (2012/01/12記) ようやく借りられた4巻、夏休みの別荘編を読了。 アニメでこのエピソードを観たとき思ったのが「亜美がひたすら可哀想」だということ。 ある意味終始蚊帳の外みたいな感じだったからな。 もしくは空回り。 けどこちらでは少しは報われたんじゃないかな。 報われたと言える結果ではなかったかもしれないが。 あと大河、ここで気づいていたんだな。 結構重要な所だと思ったけどアニメでもあったっけ。 と、まあ本シリーズ中一番のハーレム展開の4巻でした。 この巻も筆が乗ってたなあ。

「とらドラ10!」(2009)

  by 竹宮ゆゆこ (2012/01/08記) 手に手を取ってその場から逃げ去った竜児と大河。そして。 アニメのほうでは今一つ判りづらく感じた「何故唐突に泰子を罠にはめるに至ったか」と 「何故大河を家に戻したのか」に関して何を竜児が想い考えたのかはこれでようやく正し く理解ができた。 すべてがそこから始まったけれど自分たちは同じことをしてはいけない。自分たちも同じ 思いをしたくはないしもしそんな時があれば言い訳できなくなるよ。 っとまあだいたいこんなかんじかな。(だいぶ足りない気もするがきっときのせいだ。) そして。 私はこの終わり方の方が好きだ。 二人だけに取って見ればアニメのほうもありなのだろうけれど先に上げた事を望んでいた のだとしたら卒業まで帰って来れない大河という図式はハッピーエンドではない。 また大河にしても竜児にしても自分たちのなにがいけなくてこんな遠回りになったのかは 身にしみているだろう。 だからそのスキルを身に付けたからこの結末にたどり着けたのだと思えばこれはありだし 実乃梨や亜美たちも報われるだろう。 けどまあ大枠は表現媒体の違いということでいいとも思う。 どちらも好きだ。それにかわりはない。

「とらドラ9!」(2008)

  by 竹宮ゆゆこ (2012/01/08記) 3年での志望別クラス分けの為の進路希望票とバレンタインの話。 というよりは、結局のところ大河の件が大きすぎて自分が見たこと聞いたことを無意識に 封印してしまったか〉竜児 そしてその道さえ選ぶことができない竜児。自分の無力さや「いい子」の根元を思い出し 思い知らされる。 皆が皆さらに傷つきお互いの関係に八方ふさがりになってしまった中で最後の爆弾が爆発 する。 その時。 もうここまで来ると力業だったアニメに対してより悩み傷つき、そして決断する。ようやく。 いつ心を決めたのかのタイミングが小説とアニメでは違っていたように思う。 小説の方は素直に繋がったりしない。すべてが見えてもそれでも悩み苦しみ道を間違える。 子供なのだ。 そしてそれに本当に気づいた時にようやく道が見えてくる。 それでも素直に心が決まらない。 私はこちらの方が好きだな。 というわけで次巻最終巻!

「とらドラ8!」(2008)

  by 竹宮ゆゆこ (2012/01/08記) そしていよいよの修学旅行編。 電車の中でなんて読んでいなくて良かったよ。さすがにボロボロ泣き出す訳にはいか ないからな。(笑) 男どもが女子の部屋に行く件がアニメでは今ひとつぼんやりしていたのだが、ああ こういう流れだったのね。 小説のほうはいろいろ考えが逡巡する過程があるからあそこで竜児が話してしまう のは繋がるけれど、ということなのかな。 アニメとは違う結末を迎えるみたいだから今の時点では何も言えないな。 さて三人の本当の気持ちをある意味すべて聞いてしまった竜児。 どうする?

「とらドラ7!」(2008)

  by 竹宮ゆゆこ (2012/01/07記) 亜美、実乃梨、大河。 三者三様に自分の想いに振り回され気づかされることになるクリスマスパーティー編。 そして当の竜児もようやく意を決する事になる。 もう一つ一つが心に刺さる。 三者三様にこれでもかとばかりに負のスパイラルに陥っていく様が。 誰に思いを寄せても痛いよ。

「とらドラ2!」(2006)

  by 竹宮ゆゆこ (2012/01/07記) ようやく借りられた2巻を読了。 1話完結でも綺麗にまとまっていた1巻に新たな要素として第三のヒロイン亜美を 登場させることで話を活性化させ、さらには後の種の一つとなる生徒会長が絡む 短編「幸せの手乗りタイガー」まで掲載されたキーとなる巻でした。 まあそういう先々のことを考えなくても、亜美登場プラス校外清掃編は十分に 筆が乗っている。 もはやこいつらが勝手に動いていると言っても良いくらい。 主人公周辺の腕白なキャラクターはもちろんのこと、一見周りから見ると地味な 主人公にしても家事のこととなると我を失うからな。 そんな登場人物に振り回され仮面を脱ぎ捨てた腹黒娘亜美はアニメではやや弱く 見えた「何故高須に惚れたのか」がはっきり判るのが嬉しい。 「女性作家だから」というステレオタイプな思考に当てはめてしまいたくなる ほど彼女たちは言動と思考の不一致による泥沼に陥っていく。 古典的なラブコメディの仮面を被って。 さてさて、これで飛ばしたのは4巻だけだ。 借りられる前に10巻まで読み終わってしまいそうな気がするが。(笑)

「とらドラ6!」(2007)

  by 竹宮ゆゆこ (2012/01/06記) アニメでは今まで自分達が見てきたものがいったい何だったのかを思い知らされる こととなった生徒会総選挙編であるこの6巻。 この原作ではそのアニメ以上に各々一人一人が苦しみ労り傷つき傷つけあっていく。 そしてあの爆発は原作通りだったんだね。 あとは交通整理さえうまくやれば良かったんだ。 まあそれができる人がそういないのが今だしそれがちゃんとできるのが凄いのだ けれど。 にしても、北村が大河の告白を断ったのは大河が誰を思っているかをちゃんと 分かっていたからだったのか。(本人の意識下では) まあそうやって冷静に見られている分もう大河に脈はないのだけれど。 一方で北村の会長への思いは盲目的な信頼の上に成り立っているというところで 恋愛というよりは友情要素のほうが多いのだろうな。 振られたことより裏切られたことの方が強い気がする。 けど、そういう信頼関係の上に成り立っている二人というものに嫉妬する大河と いう図式か。 自分が得ることの出来ない相互関係をみせつけてきたものが急に興味を失ったか のようにぽいと捨てられた日にはそりゃ大河も怒るわ。 けどさあて今まではまだ言い訳が立っていた大河と竜児の協力関係という図式が これで完全に破れた。 そしてこれからはなんとなく挙動のおかしくなっていた人間が「諦めたはず なのに」火を注がれてしまった。 物語はまだまだ大きく動く。

「とらドラ5!」(2007)

  by 竹宮ゆゆこ (2012/01/06記) 諸事情により、というかたまたま借りられなかっただけだが「とらドラ!」の4巻を 飛ばし5巻を読了。 アニメでいえば後半怒涛の展開となる前哨戦である文化祭編。 前半ややグダグダしてるのだけれど、それでも挙動がおかしくなり始めたみのりんや 変わろうとし始めている亜美、変わらない振りをしている大河など絶対に4巻で何か あったな。(笑) 父親との一件に関しては結構時間をかけて描いてもいる。ただここはもう少し 上手さが欲しかったかな。 逆にここらへんは全体的にうまくまとめたアニメのほうに上手さを感じた。 こちらで良いのはとにかく5人共心の書き込みが多いところか。 そして5人の仲間意識がそれなりに出てきたところか。 第三者の目で見ると絶対に夏休みに何かあったなと周りが疑うレベル。 あとここらへんから独身(30)の扱いがより酷くなってきたのかな? 赤い糸はあれ演技だったのか。アニメのほうはどう見ても素で反応しているように しか見えなかった。 さあてここから本番スタートだぞ。 楽しみだ。

「とらドラ3!」(2006)

  by 竹宮ゆゆこ (2011/12/30記) 諸事情により、というかたまたま借りられなかっただけだが「とらドラ!」の2巻を 飛ばし3巻を読了。 2巻で登場した転校生亜美との一件が終わったのも束の間、その厚い仮面を脱ぎ捨て 解放された亜美に逆襲を食らう大河と竜児。 それが最終的にはプールでの直接対決になるのであった。 というわけで基本ラインはアニメと同じ。あんなシーンやこんなシーン、ほぼその ままである。 が、竜児や大河、亜美や実乃梨の感情や本心の漏れは表現に使える時間軸の違いから 圧倒的に原作のほうが多い。 届いていればこんなにならなかったのにと第三者の目で見ればいろいろと出てくる。 もう大河は、いや竜児も、この頃からジレンマに陥りまくってたのを自覚していた のね。亜美や実乃梨も。 一方で読者にも意図的に隠されたところもあってそのひっかかりが先へ先へと 進ませる。 まだまだこんなもんじゃない先の展開をしらなくても十分にキャッチーなまま次巻 亜美の家の別荘編へと続く。

「とらドラ!」(2006)

  by 竹宮ゆゆこ (2011/12/29記) 「とらドラ!」の原作1巻を読了。 まずはアニメと絡めての話をちらと。 改めて原作ものに対する脚本(というよりはシリーズ構成か)のうまさを感じた。 こういう手もたしかにありだな。 原作のこの1巻はそれだけでもちゃんと完結できるほどの内容ではあるのだけれど アニメのほうはそこをゴールとはせずに後半の盛り上げのためにバサバサ切り まくってる。 そしてそれを感じさせない本としての上手さ。 いやたしかに凄いわ〉マリー これならある意味別作品として楽しめるかも。 で、原作。 そうだよな。実はお互いかなり意識してというこちらの展開の方が好きだ。 そう、これなら例え1巻だけで完結してしまっても後は妄想できる。 たぶんこれならグダグダかも知れないしまた劇的な展開かもしれないがあんたら やっぱりベターハーフだよ、と思えるもの。 そしてそういった部分を抽出してわざと本人達には意図的に語らせないことで 先に繋いでいったのがアニメ。 なんというか竜虎並び立つと言う感じで並び立ってるわ。 さて、まずは始まりの1巻ということで。

「とある魔術の禁書目録21」(2010)

  by 鎌池和馬 (2011/12/25記) けっこうな間が開いてしまったが、ようやく21巻目を借りることができて読了。 さすがにここまでのキャラクタが各個別々の目的で動きまわっている状況で あったからか冒頭は戦況報告でした。 これは助かる。 おかげで状況は明瞭。 さらに加わり続けたキャラクターたちが後から後から出てきてフィアンマと 彼が召喚した大天使との戦いに赴く。 にしてもさすがに大天使は強い。 入れ替わり立ち替わり自由意志でもしくは状況が呼び込んだ形で加わっていく。 もちろん状況は悪い方にも転ぶ。 我が身の保身の為の捨て身の手段が彼らを立ち止まらせ、戦力を裂いていく。 そんな中ようやくたどり着いたたどり着かれた目指す場所を見つけた彼ら達の 戦いは如何に。 次回こそロシア編終了か。

「恋物語」(2011)

  by 西尾維新 (2011/12/21記) 「化物語」シリーズセカンドシーズン最終話、「恋物語」を読了。 出版順番的には「鬼物語」を飛ばして読むこととなったが、そこまでしても 「囮物語」の続きを読みたかった。 そんなノリで読み始めたのだけれどその期待に違わぬ面白さでした。(当社比) (以降、ホントにネタバレあり) 最初の頁を開いて、その一文字目を読むまでもなく思ったのは 「しまった!騙された!」 で、読み終えて最後に思ったのが 「ふ、騙されたぜ。」 でした。 うん、そんなに素直に話を進める著者じゃないから考えていなかったわけでは ないのだけれど、 けど実際にやられるとね。 しかも、貝木の一人称とは。 けど、それもあるところで何故この作品のタイトルが「恋物語」なのかと何故 イラストが戦場ヶ原 ひたぎなのかに気づいて、正直やられたと思った。 うん、シリーズのある時点でそうじゃないかと思ったことはあったさ。 「偽物語」時点ではそんなことも なかったけれど、「花物語」あたりの貝木を見るとさすがにね。 けど、それでもあの「囮物語」の状況から脱せられるとは思っていなかった。 何せその方法を語られるのがあまりに早すぎたし、そもそもこのシリーズの 読者は貝木がうまくやった 事例を2つしか知らない。 しかもそのうちのひとつは実はそうではなかったことが途中で分かり、さら には結局…。 しかしまぁ今までの話をうまくまとめたなという点では相変わらずの上手さ。 悪趣味なところも相変わらずでそれがこの「恋物語」のすべてでもあった。 そう、タイトルが「恋物語」だぜ。なんて悪趣味な…。(笑) そして、なんて…。 本当に自分の作ったキャラクターに愛着があるんだなと思った。 他の作品の噂を聞く限り決してそうではないと思っていたのだけれど、この シリーズは特別? それとも。 何かねぇ、何故戦場ヶ原ひたぎが貝木泥舟を心底嫌っているのかを分かった ような気がした。 そして、最初は何故か理由がわからなかった「何故戦場ヶ原ひたぎが貝木 泥舟に助けを求めに 行ったかも、最初はまったく理解できなかったが…。 ホントうまくまとめたと思うよ。 もう千石撫子はダメだと思ったけれど、まさか、しかも…だからな。 で、今まであからさまだった自称忍野メメの姪だか甥だかの扇の正体とメメ 自身の行方、そして 臥煙伊豆湖の正体の他に、今回新たに加わった阿良々木暦の父親の正体。 残された大きな謎はそれくらいかな。 まぁ、まずは千石撫子の帰還と貝木泥舟の名誉の回復に喜ぶこととしよう。 しかしホントに騙されたぜ。

「華竜の宮」(2010)

  by 上田早夕里 (2011/12/14記) 「華竜の宮」(2010)by上田早夕里を読了。 本年の日本SF大賞受賞作であるということと下馬評含めて選者満場一致で 選ばれた作品という話を聞いて読むに至った次第。 故にまったくの前情報無しで読み始めたのだが、そのせいもあってどこが 最終目標地点であるか分からないままこの情報の荒波の中で「分からない」 という状況を楽しませてもらった。 最初の60頁くらいなんてスーツ姿のおっさんしか出ていないに等しいような 状況だったのでこのままだったらどうしようかと思ったよ。 で、そのことに少しだけ関係があるのだが、この物語世界における登場 人物は皆何らかのパートナーを伴うと言う形を取っている。 そのパートナーとの有り様が実に多彩でそれだけに注目してみても十分に 楽しめそう。 しかも総じて人間よりもその人間に付く非人間的存在のほうがよほど人間 的だったりする。  特に、事実上この物語の語り部に近い存在たるマキのほうがその主たる  青澄よりよほど人間的に思えることが良くあったりもする。 あと、作劇上絶対に純粋な悪という人間を作らない。 これは青澄の外交官としての信条が語り部マキに作用しているということ なのだろうな。 ポリティカルアクションでもあり実はかなり壮大なハードSFでもある本作は 非常に楽しめた。 よくもまぁこんな多様な要素をごった煮にしてひとつの形にしたものだと思う。 それがコレを描くための結果論だったとしてもその多岐に渡る要素一つ一つ とっても楽しめることと思う。 こういったものに対してひとつの道筋が見えた瞬間の喜び、そして長い道中を 共に過ごした登場人物たちとの別れ。 今はその余韻に浸っているところである。

「銀婚式物語」(2011)

  by 新井素子 (2011/10/30記) 沢口靖子主演でドラマ化もされた「結婚物語」「新婚物語」の続編。 あれから25年。 クシャミと共に起きた陽子さんは銀婚式を迎えたその日に正彦さんとの食事の約束をしていた。 いつもと変わらない日常の中のひとコマひとコマからその25年間を回想する陽子さんという形式で綴られたその後の 出来事と銀婚式となるその日の出来事。 ああ、やはり続編キャラクターだとより昔と変わらないなあという感じを受けるなぁ。 ましてや他作品よりも事故投影度の高いこの作品。 如何に変わっていなかったかということを感じさせてくれた作品となっていました。 一方で、前作執筆当初から明らかに変わってしまっている執筆ペースと形態に関して、その間に何が起こっていたかと いうのもよくわかる作品となっていました。 元々が本人の一部が作品となっていた人であるからこれは当然といえば当然のことなのかな。 ましてや私個人にとっても初めての同年代の作家さんです。 同じように年を重ねて来たのでひとつひとつの話がとても良く分かります。 まあ一方で立場的にもご本人の性格的にも浮き世離れした部分もある人なので羨ましいと思う部分も多々あり。 中でも蔵書の為の家を建てる件はもううらやましい限りです。 本の物理的な重さと空間占有率というものを身に染みて感じてる身としては蔵書の為に造る家と蔵書のための家を 造ることの違いはもう何というか羨ましい。 そして、当然ながら描かれるペットロスや身内の死、老いていく自らについてなど何度通勤途中で読むんじゃなかったと 思ったことか。 さて、シリーズ次作は金婚式物語と言うことで気長に待つとするかな。

「007 白紙委任状」"Carte Blanche"(2011)

  by Jeffery Deaver (2011/10/28記) 今回といい前回といい作者が作者だけにもはやアンソロジーと化してきたなあと思いながら読み始めたのだが、特に この作品はその傾向が強かった。 何せMやマネーペニーだけならともかく、ルネ・マティス、フェリックス・ライター、メアリー・グットナイト、ビル・タナーやメイに 至るまで総出演。 (ブースロイド少佐やQ課はメンバー一新されているが。) さらにメアリー・グッドナイトには「グッドモーニング、グッドナイト」があったりフェリックスは手足を失いそうになったりまあいろ いろ過去に何かあったようなことが。 そして、さらにはポンドの両親の死や叔母との関係やらまで突っ込んでいる。 しかしながら、今回のボンドは過去のシリーズがまったく存在せずサブキャラ含めて現在にシフトさせゼロから始まった もの。所属もMI6ではなく別組織。 基本的なキャラクターの性格や立場はオリジナルにほぼ等しいがそれを現在にそのまま当てはめている。 ダニエル・クレイグ版ポンドと立場的に近いといえば近いが設定に接点はないし仮にもあちらはカジノロワイヤルが 存在する世界だし。 さて、内容はといえばリサイクル業界や世界に蔓延する飢餓の状況の事細かな分析で読者を引き込んでいくあたりは フォロワーとしては嬉しい限り。食を初めとするこだわり多い描写に関しては言わんもがや。 それに、クライマックス以降の度重なるどんでん返しが入る。 ここまでの大掛かりな展開は今まではなかったかな。せいぜい最後に意外な裏切り者がいるくらいで実は追いかけて いたものが盛大なブラフというのは無かったように思う。 その中に細かな個人間の権謀術数が繰り広げられる文字通りのスパイゲーム。 ここらへんが好みの別れるところであろう。 どちらかといえば蘊蓄をやりすぎるのがフレミングで人間関係はここまで複雑にしなかったからなあ確か。 まあそんな複雑ではないか。 同じようなポジションで微妙に違う立場に似たような人間を配置して結果的にはそれらを陰と陽に分けてしまった あたりがジェフリーディーバーのこだわりだったのかもしれないのだが…と言った感じか。 さて話は続く要素を盛り込んでの幕切れとなる。 続けば嬉しいけれど続けてくれるのか?

「囮物語」(2011)

  by 西尾維新 (2011/10/24記) 冒頭数ページ。 「ああ、今までの流れからしての予想通り撫子一人称の物語だったなぁ。」 「しかしこれは何か新井素子調な西尾維新で、まぁどちらも言葉遊び好きだからある意味違和感がない。」 なぁんて呑気な事を考えながら読んでいたのだけれど。 「このシリーズでアニメ化の影響を一番受けたのは撫子だったんだなぁ。これ100%花澤香菜ボイスで脳内再生可能 な物語だなぁ」 なんて思いながら読んでいたのだけれど。 これ、シリーズ最終回に向けてのマッチポンプな話じゃないか。 正直「偽物語」以降のこのシリーズは「化物語」の後日談に過ぎなかったのが、この作品を以って初めて次のシリーズと いう形になった。 言葉遊びに徹したこのシリーズとしての当然の帰結として「千石撫子はラスボス」となった。文字通り。 しかもこんな形でかよ。 本作発売当初から実はある程度は聞こえていたのだけれど、たしかにこれはないよ。こんなのってないよ。 そりゃラスボスだとは言われていたけれど本当の意味でラスボスになってしまうとは。 (まぁ実はここ数作を影で操っている人間が他にいるには居るのだけれど、形の上ではラスボスだ。) これ、ぜひ映像で観てみたいなぁ。 てっきり毒気が抜けていたと思っていたすべてのキャラクターがこれで活性化しだすのは間違いない。 間違いなく最終回に向けてのマッチポンプな話。 しかも最終作と言われている「恋物語」の間に「鬼物語」が挟まれていたから油断していたが、時系列的には最終回 直前な物語。 あ、最終作と云いつつ、作者自身も第二シーズンとか言ってるからとりあえずは第二シーズンの最終作ね。 さあて、この形の上では勝ちの見えない本妻との対決の行方は如何に。

「GOSICKsIV -ゴシックエス・冬のサクリファイス-」(2011)

  by 桜庭一樹 (2011/09/08記) GOSICKシリーズ最後の短編集 大戦の戦火の匂いつつあるクリスマス休暇の前日、聖マルグリット学園はリヴィングチェス大会を行っていた。 そんな束の間の一日の出来事と言う形でまとめられた物語。 そして語られるのは本編中で存在は示されていたものの今までは語られなかった物語。 それは、グレヴィールの頭が尖り、巻かれていったり、彼の部下であるイアンとエヴァンが何故手をつなぎ続けているかで あったり。 あるいはブロワ侯爵とブライアンロスコーの因縁。 ゴシック最後の謎が証されていく。 相も変わらず脳天気な周囲と未来が見えているヴィクトリカのコントラストが哀しい。 もう二度と会う機会がないかもしれないという状況と学生たちと村を挙げての脳天気なコスプレ祭との対比がまたね。 そしてエピローグの一つ前の章ではヴィクトリカが戯れに指しているチェスの駒から観た永遠の地獄がキャラの形を持って 唐突に描かれていく。 脳天気な彼らもまた駒の一部として。 そして物語は最終章へと続く。

「とある魔術の禁書目録2」(2004)

  by 鎌池和馬 (2011/08/05記) 長い間借りられなかった2巻をようやく借りることが出来、読了。 長いこと止めていた人がいたのだろうな。ただこれでこのシリーズの利用者が増えるのでしょう。 私みたいにしびれ切らして先の巻借りるような人ばかりではなかっただろうから。 閑話休題 新人作家によるシリーズものの2巻というのは往々にしてシリーズの核心に関わるような伏線がされているが特に多い と思うのだがこの作品もご多分に漏れずいくつかあるのだろうな。 姫神の存在もそうだし、今年が上条当麻で2年前がステイル、3年前はアウレオルスだとしてでは去年はというところ がいまだに出てこない。右腕を切り落とされた時にでてきたものも何かしら意味がありそうだ。 視点を変えてこの作品単品に限っていえば、やはり初期は今と比べるとやはり荒削りだ。 説教がまだ未完成かなというかんじ。 アウレイオルス=ダミーとか各種のトラップの多彩さも気に入っている。 まあ強いていえば御坂美琴出番なしが残念だったくらいか。

「とある魔術の禁書目録20」(2010)

  by 鎌池和馬 (2011/08/03記) 役者は揃い、いよいよロシアが学園都市に宣戦を布告した。 揃いも揃った今までの登場人物が各々の目的のために動き出す。 さすがに21冊もかけて地ならしされた物語だけあって誰かと誰かを合わせるだけでひとエピソード作れるわ新しいキャラ も出せるわでまあ話は事欠かないなあ。 噂には聞いていた番外個体もようやく登場。 おお、そうきたか。 そして対戦相手がインフレ起こしてる上条当麻は過去の対戦相手には無双だな。 などといった感じで役者がすべて現地に向かったところで今回は終了。 今回も楽しませていただきました。

「とある魔術の禁書目録19」(2009)

  by 鎌池和馬 (2011/08/03記) 奪われた禁書目録を追ってロシアへと向かう上条当麻。 …はひとまずおいといて… 一方で学園都市の統括理事会によって作られた暗部組織の学園都市への反抗→別組織による粛正という図式は その後も続いていた。さらに以前の抗争で意識不明の重体に陥った恩人の復讐のために外部からも傭兵が侵入する という状況の中、自らの守りたいもののために行動するアクセラレータや浜面仕上。 ということで15巻での暗部組織間の抗争劇のその後の話なのだが、二人の主人公が同じ時間軸の中で交互に活躍 する様を実に分かりやすく且つスリリングに描いている。 話のスイッチのさせ方とか割と状況の寸止めが多いにも関わらずスムーズなんだよな。ここらへんがとてもうまい。 ただでさえ、既にかなりのキャラクターが存在しているこのシリーズで混乱せず各キャラクターを読者に把握させることに 成功し続けているのもこういう部分の描写のうまさがあるのだろう。 まあ悪ぶっているけど誰がみても正義感で動いているようにしか見えないアクセラレータに対しての周りのツッコミが甘い のが気になってきているという側面があるが、その原動力がひとりの女の子という図式に対してはロリコンという形で周り から突っ込まれているので、これ以上やると本人逆ギレしかねないからなあ。 というわけで学園都市、科学サイドも通常営業でした。 そして、三人の主人公達が各々の守りたい人の為にロシアへむかうという状況で次巻へ。

「GOSICKVIII -ゴシック・神々の黄昏- (下)」(2011)

  by 桜庭一樹 (2011/07/30記) GOSICKシリーズの最終章、神々の黄昏の下巻を読了。 アニメではそれまでにも増してのスピード展開にやや戸惑いを覚えた感があったが、このエピソードは、原作ではその 展開さえも違うものになっていた。 アニメの方はたぶん大枠だけ聴いた上で再構成したような感じだったのかな。 ムチャなドラマチック展開など起こさず一歩一歩着実に足を進めていく。 その上、こんなものまで用意していたとはな。 そうだよな。 久城とヴィクトリカはこうでないとな。

「GOSICKVIII -ゴシック・神々の黄昏- (上)」(2011)

  by 桜庭一樹 (2011/07/29記) GOSICKシリーズの最終章、神々の黄昏の上巻を読了。 ミステリー要素が元々強かったこのシリーズだが、本作に置いてはもう一本の骨である架空大河ドラマがメインの話と なっている。 いよいよ戦争が本格的なものとなり、それぞれの国に引き離されることとなる久城とヴィクトリカ、そしてアヴリル。 彼と彼女たちのその後が丹念に語られていく様はとても哀しい。

「花物語」(2011)

  by 西尾維新     (2011/07/28記) 「化物語」シリーズも新章に入って第三弾。 今回は神原駿河の物語。しかも前回は阿良々木さん視点に戻っていたので油断していたところでまさか神原 駿河によって語られる物語とは思ってもいなかった。 最初、これを語っているのはだかわからなかった。もしかしたらガハラさんが語ってるのかと思ったよ。 その、このシリーズの中で一回も語られることの無かった神原駿河視点により語られる神原駿河の物語は今 までの彼女からは想像も付かなかった、否、彼女が垣間見せていたその本質的なところから十分想像できても 良かった物語でした。 生真面目な彼女による先輩たちとの別れ、否卒業のために必要な物語。 阿良々木戦場が原両人からはもちろんのこと、するがデビルと副題が示すとおり彼女がかつて関わったレイニー デビルという怪異や、そしてバスケットボールプレイヤーを引退せざるを得なかった状況などその後の彼女に関わる 答えもすべて用意されていた。 しかしまあ、ここまで一気に読ませられてしまうとはな。語り部が違うとここまで違うとは予想外だった。 阿良々木さんは彼女にとっては上条当麻のような存在だったんだなと思わせるシーンもあった。 そして今回も一番いいところで出てきて、彼女にとって理想の阿良々木暦として去っていった。 まだ語りたいことはあるが今はもう少しとっておこう。 ただひとつだけ。 もしアニメ化する場合にはきっと太陽光線や赤い本達が大活躍することになるであろう。きっと。

「とある魔術の禁書目録17」「…18」 (2009)

  by 鎌池和馬     (2011/07/17記) ユーロトンネルが破壊され重要な流通経路のひとつが絶たれた英国が、その調査のために10万3千冊にも及ぶ 歩く魔道書図書館インデックスとその保護者たる上条当麻を招集する。 2人の向かった英国で起こったこととは。 まぁこの作品で映画化するんならこの英国王室編だな。 それほどまでにいつにもましてドラマチックでスケールの大きなシーンもある。 13巻で出てきた後方のアックアあたりから始まった本格的な力のインフレが留まることを知らず、それこそ第2第3 の主役たるアクセラレータや浜面仕上などとはあきらかに異質な世界に上条当麻は入り込んでしまっているな。 さらに、さすがにここまで来ると説教よりも肉体言語の世界になっているのでそういう部分でも手放しで楽しめる。 そして、ここまでの話になっていれば、堕天使エロメイドだろうが大精霊チラメイドだろうが、この際許せる。 いや許してもいいのではないのだろうか。 20冊かけて届いたひとつの到達点。 13巻くらいでいよいよ「次こそ戦争か?」と思ってから既に7巻費やしているが未だに始まっていないという点も あ、これならそれでもいいなとも思わせてもらった。 さて、この引きだからな。今度こそ。

「とある魔術の禁書目録SS2」 (2008)

  by 鎌池和馬     (2011/07/17記) SS=ショート・ストーリーズとしては2冊目となるこの作品。 1冊目のSSとはまた違う構成やボリウムで、本当に数ページの短編が多くを占めていた。 さらには本編以前の話もあり、かといって雑誌掲載のみで未文庫のものを系統立てて集めてるわけでもないな… と思っていたら最後にまとめてきたか。 毎度のことながらホント書くことが好きなんだな。 しかしまぁ最後の最後に3人ほど株の瀑上げが来るとは思わなかった。 (もちろんそれ以外にも何人も株が上がった人間はいるけれど特に最後の3人) 特に御坂父。直前にこいつ最低かもと思わせておいてそう来たか。 いやホントカッコイイよ。 ってかこの3人絶対にクライマックスで出てくるだろう。ってか途中で使わずに最後の良いところで出てきて欲しいな。 SS甘く見てたよ。

「とある魔術の禁書目録16」(2008)

  by 鎌池和馬     (2011/07/16記) 今回はどちらかといえば14巻の続き。 13巻の最後にヴェントを救出して去った傭兵にして聖人「後方のアックア」が上条当麻抹殺を学園都市とイギリス 清教に宣言。 それに対し上条の護衛に向かったのはイギリス清教の保護を受けている天草式十字凄教の面々。 さらに直接上条のボディガードに付いたのは14巻で共に行動した五和で…。 ということで冒頭あるところまではいつものハーレムラブコメであるものの、対上条当麻という意味で魔術サイドとしては たぶん過去最強の敵であるアックアに対して、上条当麻と天草式は本当に立ち向かえるのか? というわけで、今回は半分以上バトル展開の学園都市における魔術サイドの話。 あわや御坂美琴も参戦かと思いきやそれは叶わず未だ本格的な彼女の魔術との交差はおあずけ。 しかしまぁ今度こそはたぶん打つ手ないかと思われたところで、そういうところに話を持っていったかというところは好き だな。 これでようやく神裂火織の大きな枷が外れたな…と思ったところでとうとうやっちゃったか。(笑) たまには真面目展開で終わってもいいのになぁというここらへんにたいしてだけはちと不満があるものの、さあてとう とう最後の神の右席、右方のフィアンマ登場で引き。 もう何かノリに乗ってるね。ホント、戦争は始まりそうで始まらないのになんでこんな面白いんだろう。

「とある魔術の禁書目録15」(2008)

  by 鎌池和馬     (2011/07/15記) いよいよ全面戦争かと思いきや、今回上条当麻はお休みで、SSで登場した浜面仕上ともはや第2の主役ポジション の座を確保しているアクセラレータ。 と言いたいところだが、それよりもアヴィニヨンにかりだされたアンチスキルのいない学園都市というタイミングを好機として 学園都市の暗部を請け負っていた幾つもの集団が自分達をそこに押し留める枷から逃れるために抗争を始める、と いうまだ戦争の前段の話。 とはいっても、今回は一部例外を除いて科学サイドの話。 言ってみれば超能力対決一部魔術一部肉体言語のみといったところか。 まあこれだけの新キャラ登場させながら混乱無く話を進められる手腕は見事。 しかも一部を除けばろくに説明もないまま舞台から消えていくキャラばかりだからな。 筆が乗ってるというのはこういう事をいうのだろうな。 まず何はともあれこれだけ増えたキャラクタたちをどう裁いていくかが楽しみです。

「とある魔術の禁書目録14」(2007)

  by 鎌池和馬     (2011/07/14記) とうとうというかようやくアニメ化されていない領域に到着。 ここからは未知の話である。 (今まではアニメを観た後の読了だったので) さて、実際読んでみて何故アニメ化2期がこの前で終わったかが分かったような気がする。 この巻からが本番だからだわ。 実はまだ戦争が始まる以前の話である。 にも関わらずそう言えるのは上条当麻の危機意識が完全にシフトチェンジしているから。 今回パートナーとなる五和とのコンビネーションアクションはどのパートもなかなかのものだし、土御門も本気モード。 対するテッラもまた演出的に派手な能力だからな。 そこにさらに決して味方ではない学園都市サイドが本気出して絡んでくる。 魔術と科学の本格的な交差。 さあて今までは長くても2巻またぎだった話がこれからはそうはいかなくなりそうだ。

「GOSICKVII -ゴシック・薔薇色の人生-」(2011)

  by 桜庭一樹     (2011/07/07記) ながらく中断していたGOSICKの続編がアニメ化を気に復活。 そのアニメでも描かれていたココ王妃殺人事件の謎を追う本作だが、こうやって読んでみるとやはりアニメの方は今まで 以上にダイジェストだったのが改めてわかった。 話短くするためにいろいろ変えすぎ端折りすぎだ。 この話はゆっくり見たかったなあ。 2クールで全部収めようとするのがやはりちよっと無茶だったな。(途中までは上手くやってたけれど。) というわけで、逆にいえば原作のほうはしっかり余韻を楽しめました。 混沌の欠片集めもセシル先生とのコンビネーションを楽しめたし、ジンジャーパイとコルデリアの件も物語にふさわしい エピソードだったしね。 さて、後は短編集一冊と前後編に分かれた最終話、神々の黄昏。 どういう結末を用意してくれるのか。

「とある魔術の禁書目録SS」(2007)

  by 鎌池和馬     (2011/07/06記) アニメの2期の最後のパートがこのSS。 前話を終えてのとある1日に起こった出来事をグランドホテル形式でまとめた一作。 戦争が避けられない状況を前にしての何のことはないバカ騒ぎと、そこから漏れ伝わる決意といったところか。 アニメ化されてないエピソードが一編だけあるのだけれど、これは3期のOPエピソードとして残したのだろうな。 さて、こういう短編形式だとそんなにくどくならずにテンポいいんだよな。 まあ短編とは言っても1エピソードではあれどある意味オチがないこう言うことがありましたよだけで終わっているものも あるしやはりグランドホテル形式のほうがしっくりくるか。 さて、開戦前の束の間は終わりアニメ化されているのもここまで。 次巻からはそういった前情報無しで臨めるぞというわけで、楽しみです。

「とある魔術の禁書目録13」(2007)

  by 鎌池和馬     (2011/07/05記) アニメだと2期のクライマックスである「前方のヴェント」編。 前巻にてイントロダクションは終わっているので、全編ほぼバトルという構成。 基本ラインは上条当麻対魔術側、一方通行対科学側という構成ながらお互いの利害関係も絡むとそう単純でも なく、ここらへんにさらに御坂美琴や禁書目録が美味しいところで絡んでくるという展開。 上条勢力が見事に適材適所な戦い方をするのでそこらへんは見ていてとても気持ちがいい。 前巻ラブコメパートとの対比が効いてるんだよな。 まあアニメはこれをほとんど説明せずに映像だけ作りましたという感じでそれがもったいなかった。 2期はSS(次巻)までやらずにこれをきっちりやればまた評価違ってたのにねえ。 さあて、これでローマ正教対学園都市は公に敵対関係となったのでこれからどう動くかだな。 と、その前にSS。

「とある魔術の禁書目録12」(2007)

  by 鎌池和馬     (2011/07/04記) アニメ2期「アドリア海の女王」編の次はいよいよ本格的に科学と魔術が交差し始める「前方のヴェント」編のための インターミッションと見るか大覇星祭の罰ゲーム回収のためのラブコメ回と見るか。 まあキャラクター愛に溢れた回であることは確かだな。 アニメの方はまたほぼ忠実に作られてたなあ。さすがに細かいところはいろいろとあるが。 ただ、本来の上条当麻のキャラクターを今までちゃんと表現できてなかった分のツケを払わされてはいた気がする。 原作の方が落差のあるキャラクターなのにそこをちゃんとやってこなかったツケと言えばいいのか。 それはさておき王道的なインターミッションをちゃんとこなしているというところかな。 そしてこれから起こることの予兆を振りまいて終わりという。 さあて次巻からが本番だな。 と思ったらまたさらにその次は仕込み巻だったりするのだが。

「とある魔術の禁書目録11」(2006)

  by 鎌池和馬     (2011/07/04記) アニメ2期「大覇星祭」編の次は「アドリア海の女王」編。 今回はほぼ全編イタリアロケ敢行(実写であれば)。 ということで魔術サイドの物語。 大覇星祭最終日のナンバーズで神の御恵みまで拒絶する幻想殺しの右手を持つ男上条当麻がまさかのイタリア5泊 6日の旅に当たる。 同居人禁書目録と向かった先には法の書事件で出会った修道女オルソラと天草式十字凄教の面々。そしてその際 渡り合ったアニェーゼとその部隊の面々だった。 で、この原作を読んで、アニメ版のこの話、いつも以上にダイジェスト色が強かったんだなと言うことがわかった。 たしかに良いところはそのままピックアップしてあったところが多かったがそれでもねえ。 で、この作品、イタリアパートの描写からロケして来たんだなあという匂いが色濃く残っているのだが、なぜかこれ読んで 80年代の少女マンガを思い出したよ。 あの頃余白や巻末によくロケ日記とかあったよなあ。 漫画家なら「こんな感じ〜」と絵で描いて説明するのを文章で思い切り表現している。 なあんか懐かしくてねえ。 そういう意味でも楽しませていただきました。

「とある魔術の禁書目録9」「…10」(2006)

  by 鎌池和馬     (2011/07/03記) アニメ2期「レムナント」編の次である「大覇星祭」編は9巻と10巻の2巻にまたぐ長編。 今回は科学サイドの本拠地学園都市内部で起こる魔術サイドの物語。 しかしながら今回魔術側の話にもかかわらずインデックスはにぎやかしというかお色気要員で影が薄く、出番だけで 言えば御坂美琴のほうが目立ってる? というかヒロイン増量中と言った方が良い回だな。 話としては学園都市内の学校が年に一回一斉に合同で行う学校対抗の体育祭の期間中に魔術側がその学内で 行う聖装スタブソードの受け渡しを阻止すること。 ただしインデックスはたぶん今回限りの足かせにより参加できずさらには上条当麻の足かせ要員となっているため 簡単に物事が進まない。 まあここが一番ひっかかっている部分なのだけれど、後は基本的に学園ものプラスアクション(?)として筆が乗り まくってます。 こういうのは見てて楽しい。 しかし語るに落ちるほど上条当麻の心情を他のキャラクターが語り出すという部分も目立ってきたかも。 うん、どれだけ作者がキャラクターを愛しているかは分かるんだが、そこの分水嶺を越えるか越えないかはもう個人の 好みの世界だ。 まあここまで原作がやっているのでアニメの方はそれの映像化に専念していたというのが実態か。 脳内で必要なシーン引っ張ってきて再構成すればアニメも楽しめるんだがという感じか。 まあそんな感じでアニメ以上に楽しめる原作であることは間違いないな。

「とある魔術の禁書目録8」(2006)

  by 鎌池和馬     (2011/07/02記) アニメでは2期、「法の書」編の次に来る「レムナント」編。 今回は科学サイド、今回の主役は白井黒子。 お姉さまこと御坂美琴を日夜ストーキングする変態テレポーターがその本領を発揮する一編。 当然御坂や初春飾利などが出てくる他に一方通行打ち止めコンビや御坂妹、黄泉川などなど科学サイドの面々が 集合。 一番出番が少ないのは2番目に出番が少ない上条当麻の頭をかじる為だけに存在する禁書目録。 かじられる方は二番目においしい一瞬だけかっさらっていきます。いや4番目だな。 一番はやはり黒子で2番目は御坂美琴、そして一方通行、上条当麻の順番だな。 というわけでクライマックスシーンなどの一部を除いてアニメはほぼ原作に近い形で作られていました。 いや、クライマックスも場所は同じなんだけれどシチュエーションは違う。 ダイジェスト化するために省いた結果だろうが何だかねえ。 今回は特に出てくるキャラそれぞれがある意味啖呵切ります。一部モノローグではあるけれど。 そこが停滞の原因なのだけれど、そういったその場その場の心情をあとがたりや後付けするではなく、その場で処理 したいのだろうな。 ある意味不良ものの王道とも言える展開。 (その啖呵の多さ)故により厚い本である前作がさくっと読めたのに対して結構時間がかかってしまった。 前作はアニェーゼもそんなに語りはしなかったものな。ミスリードさせるため以外には。 けどまあ、御坂美琴の無敵っぷりと白井黒子と結標淡希による同種の能力者対決、そして試運転をはじめとする 新生アクセラレーターの立ち位置とあくまでも主役だという態度を取る上条当麻に科学話になると極端に影が薄く なるインデックスといういつもの面々を楽しむことができます。 ある意味期待を裏切らない一作ではあったかな。 初春も黒かったし。

「とある魔術の禁書目録7」(2005)

  by 鎌池和馬     (2011/07/01記) アニメでは2期の2話から始まる「法の書」編。オルソラと天草式十字凄教、そしてローマ正教も本格的に登場し、 舞台も学園都市の外。 今回は魔術サイドのエピソードにかりだされる上条当麻という図式。 そして誰にも邪魔されることなく正ヒロインしてるインデックスを観るのも久しぶりだ。 さて、これを読むとかなり原作に沿ったアニメ化がされてたんだなということが良く分かる。 シーンシーンが結構忠実に作られてるのも良く分かった。 ただまあ詰め込みすぎというかダイジェスト過ぎなのがやはり無理してる部分なのかなあ。 さすがに読んでてアニメの時のようなテンポの悪さは感じないな。 ただ、そこは捨ててもいいんじゃないかというところが残っていたり、これやったほうが上条当麻らしいだろうというところが 削られたりしていて、結果的にもっと人間臭い上条当麻が筋を追うだけの存在になっているのが残念だ。 というか原作のほうが当然一貫した上条当麻らしい。 内輪ギャグより自爆ギャグという奴だ。 アニメで残ってるのは無理矢理感があるところなんだよなあ。 けどまあ、本エピソードで言えば一番の見所は三者三様の見得切りシーンなのでそれがどちらでも観れたのは良かった。

「傾物語」(2010)

  by 西尾維新     (2011/06/30記) 「猫物語(白)」に続く「化物語」シリーズの一編。 (以降ネタバレあり) その前作で少しだけ出てきた情景から始まるこの物語は、その状況で語られた八九寺真宵の物語と思いきや、 ほぼ阿良々木暦と忍野忍の物語だった。 しかも、さすが吸血鬼様メインであるが故にくだらない所から物凄くスケールの大きな話に。 さらには今までとは比べものにならないくらいの最強な対戦相手。 けど、けれど、まごうことなき八九寺真宵の物語なんだよなあ。 あの時点でそれだけはあるだろうと予測できたものが思わぬタイミングで見られることとなる。 そうか。良かった。 けどどちらも正解なんだよなというところに落ち着かせた。 まあ前半ちょっとだけダレてはしまったけれどもうそれだけで良い感じだ。 ひたすらデレる忍と、彼女が見れただけでこの話を読んだ価値はあったよ。 あとそうそう、西尾維新のこの時間解釈も好きだよ。 ある意味ハインラインに近いし。

「とある魔術の禁書目録6」(2005)

  by 鎌池和馬 (2011/06/11記) 「とある魔術の禁書目録」シリーズ6作目は、九月一日学園都市に侵入したイギリス清教の魔術師シェリークロムウェ ルと彼女が操るゴーレム=エリス、そして霧ヶ丘女学院の風斬氷華のエピソード。 6作目にしてようやく夏休みの呪縛から逃れた話であり、アニメ化1期のクライマックスとなる話、そしてシリーズで初めて (というかようやく)科学と魔術が交錯した話であったりする。 アニメ版とは特に戦闘シーンになってから違うことが多くなったような気がする。 ただしうろ覚え。 黒子や美琴はあまり積極的な活躍はしない。 その代わりアンチスキルがけっこーかっこいいんだよな。 まあ多少の突っ込みどころはあれど、ゴーレムと風斬の対比とかわりと基本に忠実に作られた作品なんだよな。 思わずほろっとしてしまったところもある。 しかしまあ返す返すもアニメ版はダイジェストになってしまってる部分がもったいないよなあ。まともに作ったらここらへんな んかいつ観れるか分からないから痛し痒しと言うところだが。

「とある魔術の禁書目録5」(2005)

  by 鎌池和馬 (2011/06/11記) 「とある魔術の禁書目録」シリーズ5作目は、夏休み最後の日八月三十一日の学園都市を舞台にしたグランドホテ ル形式の一編。 早い話が魔術と交わる幻想殺し(イマジンブレーカー)や科学と交わる一方通行(アクセラレータ)などの1日を描いた 短編集だが、ところどころ相互乗り入れしたりしなかったり。 なので「グランドホテル」形式。 時間軸で一本にせずにエピソード毎に一本にまとめたのは発表形態もあるのだろうがまあ何よりも読み手に取って優し い。 時系列での再編集はふた周りめからでも十分楽しめる。 できれば、それをアニメ化の際にしてもらえると面白かったのだが、あろうことかエピソードはバラバラに、さらに闇坂編に 至っては2期に飛ばされていたりもする。 …だったはず〉アニメ版 各話の感想について言えばどのエピソードもほろっとさせられてしまうところがあったり上条当麻について言えばドラゴンブ レス以降、一方通行について言えばシスターズ編以降がついて回っている作品である。 まあさらにはほかのキャラクタも今までのエピソードの延長線上にしっかり存在している。 まあそんなの当たり前だろうと思うがその自己主張が強いと思っていただければよいと思う。 さて、今回の話はそういうものである以上、以降の話に繋がる出来事やキャラクタも多い。 3巻シスターズ編で登場したアクセラレータはこの巻以降メインキャラクタに昇格し、同巻には登場しなかったものの作 用の結果として打ち止め(ラストオーダー)が登場し彼女もメインヒロインのひとりとなる。 またこれで消えると思われた海原光貴(偽)は、同じく1巻だけで消えると思われていた土御門が4巻で再登場するが ごとく出番を与えられることとなる。 御坂美琴と、さらにはこの時点までまだ出番の少ない白井黒子に至ってはその後スピンオフコミックとして、8月31日 以前にかなりの活躍をしていたと言う事態となっている。 唯一闇坂逢魔だけはこういう世界から外れたようだが彼の場合はもう自主的にこの世界には関わってこないと思う。 しかし上条勢力の一人ではあるのだろう。 さあて本編にはほぼ触れずにここまで書いたぞ。 そうそう、今回は冥土返しの世話にはならなかったな〉上条当麻

「涼宮ハルヒの暴走」(2004)

  by 谷川流 (2011/06/09記) 「エンドレスエイト」 実に見事な原作もののアニメ化な脚本だったな。 原作をほぼそのままの言い回しでピックアップしてアニメ化してることが良く分かる。 それでいて多少意味は変わっていたりもするのだな。 時間という枠に収めるために。 この原作はアニメよりもむしろ文学的で…というかSF小説的でという言い方の方が良いのかな…という感じだったりする。 あと、アニメのほうがより「…消失」の為に作られているのをひしひしと感じさせてくれる。 そりゃそうだろう。長門だってうんざりするさ。 一方で原作のほうも長門が魔女化するに足る扱いを受けてはいる。 キョンの長門に対する扱いが軽いというか適当すぎる部分があるんだよな。 おまけ扱い的なぞんざいさ。アニメにはこの作品においてはそれがない。 まあキョンが長門を気遣ってやれるようになるのは「…消失」以降である。 それほどまでに原作キョンはハルヒラブだったりするのである。(もちろんいっさいそれらしい表現は意図的に避けている) 「射手座の日」 原作小説においては「涼宮ハルヒの消失」の一つ前のエピソードということになる。 そして、このエピソードの最後の行においてこれが語られたのが「…消失」を体験した後だということがわかる。 かといって表向きは予兆などないのだけれど。 さらにむしろそれを緩和する要因(読書以外の事に長門が興味を持つ、イコールストレスの緩和)を得たようにさえみえ てしまうのだが、実際にはゲームを通じて「観察する以外の選択肢」にめざめてしまったのかもしれないな。 あと、この作品でのトピックは「一見普段と変わらないが怒りに満ちている長門」が初お目見えしているというところか。 アニメにおいても見せ場である「許可を」は原作でも一番の見せ場である。 まあ二番めはコンビ研に誘われた長門がキョンに対して見せる表情で、三番目がハルヒのドロップキックか。 どれも映像化される際には観たいところであり、無論それらはすべてアニメ化の際の見せ場となっていることは言うまでも ない。 「雪山症候群」 これは未映像化な作品。 時系列的に言えば「涼宮ハルヒの消失」の後に「ひとめぼれラバー」が来て、その次の作品に当たるのだが、「消失」後 の方向性がはっきり示されてる作品である。 まあ何せキョンの長門に対する態度が変わったことにハルヒが気づくくらいだからなあ。 一方で夏休みの「孤島症候群」の冬休み版という面もタイトルからしてあからさまではある。 けどそこには当然罠があって…というのが正統派な楽しみ方だ。 で、映像化された際のお楽しみは間違いなくあそこだろうな。どのような形にするのか、誰得な部分もしっかり映像化す るのかがニヤニヤしどころでしょう。 【以降2013/02/20追記】 「涼宮ハルヒの暴走」(2004)を久々に読了。 前作「涼宮ハルヒの消失」に至ることになる2つのエピソード、「エンドレスエイト」 「射手座の日」と同じく消失事件後の初の中編エピソード、「雪山症候群」が掲載されて いるのだが、その「…消失」との関連性を毎回思い起こされているな。 変わりつつある長門有紀とその後の長門有紀というところで。 そう言えば映画版消失でのユキの話は雪山症候群で触れられてた話だったんだな。 前も同じこと書いていたかもしれないが。 映画化の際に唯一目立った原作改変箇所だったので気にはなっていたのだ。

「とある魔術の禁書目録4」(2004)

  by 鎌池和馬 (2011/06/05記) 「とある魔術の禁書目録」シリーズ4作目は、御使堕し(エンゼルフォール)編。 この作品に関わらず、そう例えば(うろ覚えだが)「バスタード!」などでも、天使がらみになるとひたすら冗談としか思え ないくらい状況になるんだよな。 それをこういう形(天使の精神が下界に堕ちてきて全人類の精神と外見が玉突きシャッフルされることで術者の精神が その天使の器に入れ替わる)なんて展開に持っていくことでエロゲイベント一歩手前なシチュエーションを作り出したの は見事。 けど、そんなイベントさえも上条当麻の右手、幻想殺し(イマジンブレーカー)はブレイクし、さらにはその本物の天使でさ えその右手には自分の存在を抹殺されてしまうという理由で触れることさえできないというチートっぷり。 さらにはここで早々に親友である土御門が実は魔術とも科学とも絡む多角スパイであることを白状され、神にもっとも 近い聖者な神裂ねーちんは天使と戦う。 本作にはこのシリーズにおける魔術師の定義、基本的にはほとんどの魔術師が自身のあまりにもの弱さのため護身とし て持っている跳び道具であり、しかもその弱者っぷりが故にプロとしての精神は備えてはおらず、故にそのほとんどが赤ん 坊に拳銃状態というその後にも関わることが出てきたりもする。 まあ故にたぶんどんどん長くなるであろう上条さんの説教タイムには何事もせず付き合ってしまう輩が多いのであろうなあ。 もっともこの説明アニメ版ではなかったような気が。 と、まあ実際簡単に説明するだけでも大変な設定の塊ながらもその部分まで含めて読ませてしまう上手さをこのシリー ズは持っている。 さらにはそういった部分をうまく伏線を使う方法として、そう例えば後付け伏線の処理もしくは昇華のさせ方のうまい谷 川流などは多分に才能的なものなのであろうが、この作者鎌池和馬の場合は最終稿を編集に渡す頃には次の次の 長編の初稿が出来ていてその担当と打ち合わせてるというそのハイペースっぷりからきてるのだろうな。 話がやや逸れた。 まあ一方で相変わらず突っ込みどころは多い。 ただまあそれもひしひしと伝わる作者の作品愛と勢いが何とかしてくれる。 しかしこんな西尾維新の化物語以上に映像化しづらい作品をアニメ化したのは無謀だと思う反面こうやって読者がふ れる機会を与えているというのは、原作者や出版業界には良いと思う反面、アニメにとっては…何かパッケージも売れ てるみたいだからどっちにとってもいい話なのだな。結果として。

「涼宮ハルヒの陰謀」(2005)

  by 谷川流 (2011/06/02記) 一口に言ってしまえば、伏線張りまくるだけの話と言えなくもないのだが、それだけで一本の長編として成り立たせてし まうところが見事だと思う。 さらにそのために後日ちゃんと伏線回収する話は作られなくても問題ないように出来ているし。(それが何なのかを予測 するための最低限の説明はされているし。) と、油断しているとしっかりタイトルどおり陰謀は進行しているという。 まあホント話作りうまいよなあ。 【以降2013/03/05追記】 「涼宮ハルヒの陰謀」(2005)を久々に読了。 雪山の事件から帰還したキョンは今まで未来に預けていた「事後処理」を早々に 済ます事にした。 と、この長編の中でわざわざこれを序章にしたことに何の意味があったのか。 それに気づいた時にはすべてが明かされた後であった。 たぶん意図してやっているのだろうなあ。 その一つ一つはまだ見ぬ未来への伏線であったり過去からの伏線回収であったりもする のだが、実はそれこそが大いなる叙述トリック。 実は何故ハルヒが普段と違うようにみえるとキョンが感じたのかを話の中心に持ってこない ためのトリックだったりしたのでした。 そしてそれは、そのハルヒ自身が言ってみれば「その事がメインの話じゃないんだからね」と 言い訳しているかのよう。 そして語り部たるキョンも十二分に照れ隠しな叙述をする奴なのでますます判りづらいと きている。 私は最初、あれ?ハルヒの誕生日2月なのか?と完全に勘違いしてしまったからな。 いや実はもしかしたらそうなのかもしれないが今のところ推測でしかない。 そして一方でここのところマスコットでしかない未来人朝比奈みくるの活躍回としても すっかり機能しているのでした。 というか初見ではそれしか考えられなかった。 けど今回はしっかりハルヒの意志を受け取れたような気がした。 くっそう、初見じゃないのにすっかり騙されたぜ。

「涼宮ハルヒの分裂」(2007)

  by 谷川流 (2011/05/31記) 「涼宮ハルヒの驚愕」へと続くこの作品を久々に読み直しました。 改めて読んでも、え?ここで終わっちゃうのという感じだな。 ネタ振りは一応終わっていて、後は解決編という形だったのは本当だったのは驚愕を読んで分かったし、故に驚愕はハ イペースで読み終えることができたのだけれど、ホントこの作品で終了にならなくてよかったよ。 で、まあこの作品の評価は続編である驚愕を読んで初めて成立するのでこれ以上は語れない。 ただトータルで読んだ後にはそういうことだったのか!と言う感じです。私は好きだ。 【以降2013/03/08追記】 「涼宮ハルヒの分裂」(2007)を読了。 私が初めてこれを読んだのはたしか2009年頃だったからそれほどではなかったのだが、 刊行時に読んだ人はこれから丸々5年も続きを待たされるとは思っていなかっただろうなあ。 とりあえず種蒔きまでしたところで終わってるわけだから。 それはそれとして次巻である「…驚愕」を読んだ後こうやって読み直してみると結構 整理して書かれていたんだな。 これが何に繋がるのかが割とすんなり思い出される。 いやまあ読み直しも累計2回目からだからなのか今回はシリーズの最初から読み直して いるからなのか。 あと、初見時には…おっとこれは驚愕の感想の方に書いた方が良さそうだな。

「GOSICKsIII -ゴシックエス・秋の花のおもいで -」(2007)

  by 桜庭一樹 (2011/05/30記) ゴシックシリーズ、オールドマスカレード号事件を終え学園へと戻ったヴィクトリカは体調を崩し、その彼女を見舞った久 条に花とそれにまつわる物語を要求する。 いつもとは違う視点で、今回は語られる物語とそこから隠された真実をヴィクトリカが導き出すという形態となっている。 新たなる嵐の前の静けさ、つかの間の安らぎと言ったところか。 この作品で、ようやくブロワ侯爵がヴィクトリカを以て何をしようとしていたかしているかが提示された。 アニメのほうではこの話すっとばしたので別のタイミングでたぶん出すのだろうな。 今回はいつもと違い落としどころがわからないまま進むものの、終わってみればすっきりな話ばかりで良かった。 しかしながらエーデルワイスのエピソード、これは私もわかったぞなんて油断していたら最後の最後にやられた。 しかもヒント出されまくりだったのに見事にミスリードされてしまった…。 油断ならないな。 さて、原作はここからつい先日発行されたばかりの新刊まで飛ぶこととなる。 描かれる物語は提示されているがはたしてどのような展開となるか。 楽しみだ。

「涼宮ハルヒの憤慨」(2006)

  by 谷川流 (2011/05/28記) 「編集長★一直線」 改めて読むと、朝比奈さんと長門の書いたものは将来的な伏線となって出てきそうな気がした。 願わくばハルヒや鶴屋さんの書いたものも読みたかったところだが、それをあえて想像の翼に任せてしまうほうが小説とし ては正解だと私も思う。 しかしまあ元々メタなこのシリーズにさらにキョン一人称の小説を載せるというメタ展開。 こういうのは好きだな。 「ワンダリングシャドウ」 後書きにもある通り彷徨う影…で今度も殺人ブルドーザーなのだけれど…というか、ここまで「ミステリックサイン」に近い 作品であることにもしかしたら何か意味があるのかな。 依頼から始まる物語だったり相手が外宇宙からの飛来体だったり古泉長門活躍回だったり共通点は多い。 偶然が続きすぎる→新たなる未知の意図的な干渉という図式ではあるのだろうが。 【以降2013/03/06追記】 「涼宮ハルヒの憤慨」(2006)を久々に読了。 時期的には2月後半から3月上旬くらい。 そう、ちょうど今頃のエピソード2編を収録したのが本作。 「編集長☆一直線」は学園ものということでやはり出てきた敵対する組織としての 生徒会と生徒会長が文芸部室を賭けての文集作成という形で絡んでくるが。 恋愛小説をSFやミステリーとして誤魔化してしまうあたりとか、過去の作品から無理矢理 伏線を引っ張り出してしまう技術とか、なんだかんだ言っても谷川流の面目躍如な作品 だったりします。 鶴屋さんとか黄緑さんとかサブポジションが少しづつ輪郭をなしていくあたりも好きだったり します。 ミヨキチに対して嫉妬するハルヒがなんとも言えません。 もう一編の「ワンダリングシャドウ」は、もう一つの殺人プルドーザーとも言えるエピソード。 (基本的にはカマドウマの時と変わらない) 1年前の「誰も寄せ付けなかった」ハルヒがここまで変わったということなのだけれどそれで いて相変わらずなんだよなあ。 いや、こういう状況だと以前ならかなりの照れ隠し状態に陥ってしまっていたのが今回は まったくそんな感じはなかったぞ。 なんて思っていたらば次回以降にそのフーダニットが出てくるのはいつもどおりか。 阪中さん、消失アニメにも出ていたはずなんだがもう一回見直してみるかな。

「GOSICK VI -ゴシック・仮面舞踏会の夜-」(2006)

  by 桜庭一樹 (2011/05/27記) ゴシックシリーズ、前作で危機一髪難を逃れた久城とヴィクトリカを学園へと運ぶ列車オールドマスカレード号に乗り合わ せた乗客たちと共に巻き込まれた殺人事件。 その真相は? というわけで奇しくも先週アニメで放映されていたエピソードがまさにこれであったというタイミングでの読了。 そのアニメ版はさすがに長編を1話に押し込んだだけあってその結末に至るまでが結構変わっていた。 そりゃあキャラデザインも変わるわなというほどに。 まあアニメの話はこれくらいにして、今回のキャラクタはもう少し見ていたかったな。 けっこう面白いキャラばかりだったのにわりとあっさり終わらせてしまったのはさすがにちと残念だった。 ただまあ、それはそれとしてとうとうヴィクトリカもおおっぴらにデレるようになったな。 いや、デレることができるようになったな。 さて、これで駒はそろったな。

「GOSICK V -ゴシック・ベルゼブブの頭蓋-」(2005)

  by 桜庭一樹 (2011/05/26記) ゴシックシリーズ、束の間の憩いであった夏休みが終わるとまもなく父の手により連れ去られたヴィクトリカ。そこはベルゼ ブブの頭蓋と呼ばれる修道院であった。 そこで行われるファンタスマゴリアという祭の招待状を手に入れた久城は。 これも既にアニメ化されたエピソードであるのでそれを絡めて書くと、まあアニメのほうはやはりダイジェストで、出てこない キャラクタはもちろんの事いろいろいじられてはいる。 ただ一方で原作のほうも未消化なままの部分もあったのでどちらもそれなりにといったところか。 にしても、コルデリア登場シーンはやはり文章のほうがいいな。 あと、「孤児」の子がイラストと違っていたな。アニメの方が個性的だ。 フェル姉妹の扱いがアニメの方はややぞんざいだったがさすがに原作では最初からけっこう重要な役回りだったのね。 そしてこの話は続編として次に続く。

「GOSICKsII -ゴシックエス・夏から遠ざかる列車-」(2006)

  by 桜庭一樹 (2011/05/26記) ゴシックシリーズ、錬金術師リヴァイアサンのエピソードを終え大きな嵐の予兆が提示された中過ごした久城とヴィクトリ カの欧州の長くそして最初で最後であろう夏休みの日々を描いた短編集。 アニメ化の際にはこの中の幾つかのエピソードの一部を使用していた。 まあ正直見たかったものもあるがこれはしょうがない。 嵐の予兆をひしひしと感じているヴィクトリカにとっては変わらぬ久城や彼を取り巻く人々がおおいに救いになっているの だろうな。 とるに足りない混沌の欠片と戯れながら。

「涼宮ハルヒの驚愕」(2011)

  by 谷川流 (2011/05/25記) 昨日無事入手することが出来た「涼宮ハルヒの驚愕」(前後編)を読了。 リアルタイムで待ち続けていた人達にとっては、本当におまちどおさまだったのだろうな。 シリーズ初めての続編ものでまさかの長期中断。 まぁ私もずっと再開を待ち望んでいる作品が他にもいくつかあるけれど、事実上作家活動をやめているに等しかったり、 ある時期から書く勢いが急激に落ちて著者本人にとっての旬のその作品の書き時を過ぎてしまったりとかで、ある意味 諦めているものも多い。 この作品も、まさにそんな中にハマってしまったのかなと正直思っていた。 特にこの作品を続編とする作品にちょっと勢いがないかなと思えてしまった部分もあったから。 けれどもここにこうやって完成した作品を観ることが出来た。まずはそれを喜びたい。 ましてや… おっと、こここから先はネタバレになるな。 ここから先は、この作品を楽しみにしている人は読まないことを推奨します。 できれば楽しみを奪いたくないので。 ましてや、今までの停滞が嘘のような、今まで通りの作品を見せてもらったので。 元々過去作品からの伏線の使い方のうまさは際立っていたけれど、それふが相変わらずの冴え渡りぶり。 おお、そう来たかと言わんばかりの。 そして、見せ方のうまさも見せてもらった。 朝倉登場のシーンなんてすげえうまいよな。 しかも見事に映像で見てみたいシーンになってる。 え?と驚かされるだけではなくそのシチュエーションに到るまで、ああ、待っててよかったな、読むことができてよかったなと 思えたよ。 一部ではもう予想されていた谷口の恋人話とかも、まぁ予想通りだったもののこういう見せ方で来たかという感じだし、 まぁ何よりも、この話どう回収するんだと思っていた話そのものを、正直、「…消失」以上に仕上げてくるとは思っていな かった。 そうだよなぁ。 メインヒロインがどちからと言えば脇に回ってしまっている作品がシリーズ代表作だなんて、やっぱりおかしいよな。 「…消失」以降の作品は、もうアニメ化はしなくてもいいんじゃないかと思っていたが、これは見たいよ。 【2013/03/14追記】 「涼宮ハルヒの驚愕」(2011)を読了。 シリーズ全部を最初からここまで一息(というにはちょっと時間がかかったが)で読んだのは 今回が初めてかな。 そしてトータルでは初見、「…分裂」を読み直してもう一度、に続く3回目となる。まあ他も 「…消失」以前のものを除いてはプラス1回くらいしか読んでいないのだが。 元々特定の作品以外はあまり読み返しはしないのだがどうやらこのシリーズはようやく 「特定の作品」になってくれたようだ。 閑話休題。 こうやって続けて読んでもブランクが何か影響しているように見えない連続した作品になって いるのはやはり凄いな。 てっきりもう先は読めないとばかり思っていたのだから。〉「…分裂」の続き それが変わらずの形でちゃんと結末つけてくれたのは嬉しい。 しかしやはりハルヒという存在のムチャクチャさ加減あってのこのシリーズだなと改めて感じた。 そして、今度は長門以上に万能なヤスミをどう使うか使わないかが肝になりそうな事が 出てきそうだ。 さらに今回張られた伏線、いや前振りをどう回収してくれるか楽しみです。

「GOSICK IV -ゴシック・愚者を代弁せよ-」(2005)

  by 桜庭一樹 (2011/05/24記) ゴシックシリーズ、錬金術師リヴァイアサンと学園内に古くからある時計塔の謎に関わるエピソード。 まず、アニメとの関係を示すと、やはりダイジェストだったり構成上話の前後を入れ替えたりした関係で変わってしまって いる部分は仕方ないとは言え残念だよなあ。 あと、ブライアン・ロスコーの設定というか性格がちと違う。 どちらも今のところ破綻していないのであとあとに関わってきそうだな。 ダイジェストながら見所はきっちり収めているのも相変わらずだが、話が進むにつれてやや違う世界に進んでいる気はする。 まあ原作の方がより深く彫り込まれているしその分設定も一貫していて好きだ。 さらに、しっかり少年少女向けノベルとしても一貫しているところも好きであったりする。 まあこれは懐かしさから来る好きも含まれているのであろうが。 謎解きはあくまでも副次的なもので変わらず物語を描いている。 ここらへんの割り切りは最初から好きだったところで、アニメでも最初の切り口はそこを通してくれていたことがとても良か ったと思う。 にしても、歴史と歴史をつなぎ合わせてひとつの物語が紡がれていく様を見るのはとても楽しい。

「涼宮ハルヒの溜息」(2003)

  by 谷川流 (2011/05/14記) 「涼宮ハルヒ」シリーズの長編2作目。まぁシリーズ化となってから初めての長編というわけだ。 そして、2006年のシリーズアニメ化の際には本作品はアニメ化されなかったものの、「劇場版 涼宮ハルヒの消失」の ために必要なエピソードを追加した2009年版においてアニメ化されたエピソードである。 何故アニメ化されなかったのかといえば、たぶんこのエピソードとある意味被るエピソードのほうをむしろ積極的にアニメ 化したかったからなのだろうなぁと思う。 そちらは小説としては今ひとつであったものの、アニメ化する際に膨らませられる部分があり、かつ実際アニメ化した際に はそれが非常に成功していた。 まぁ気持ちはわかるんだけれど…。 というグダグダな話をまずしたくなってしまうこの「涼宮ハルヒの溜息」。 シリーズ化ということで1作目、本来であればひとつの小説として完結している作品においては語る必要の無かった部 分にたいしての説明が色々と多い。 例えば、宇宙人、未来人、超能力者の互いの関係であったりとか1作目のラストシーンの続きであったりとか。 というわけで2作目としてはバランスが良いのであるが、これを時系列に並び替えてしまうと「あれ?」なんでこれが今さ ら出てくるんだろう感が出てくるかな。 そういう意味でもアニメ化はしづらかったのかもしれない。(邪推) で、話し戻ってそういう部分があるためにこの作品はそれなりのボリウムとなってはいるが、それ以外の部分は実に魅力 的でSFしているし、涼宮ハルヒしている。 なんたってミクルの目や他から繰り出されるものの数々や本来ならこの作品で出オチ終了となってもおかしくない立場な がらその後の作品にもちょくちょく顔を出すことになるシャミセンやらもう涼宮ハルヒなら心の底から喜びそうなもの満載で ある。 半ば異世界となっていた文化祭直前なんてのもきっと、後で聞いたら悔しがるんだろうなぁ。 まぁ、そんなこんなで楽しい一編、無事アニメ化もされてよかったよ。 【以降2013/01/23追記】 久々に「涼宮ハルヒの溜息」(2003)を読了。 スニーカー文庫大賞受賞作のシリーズ1作目である「涼宮ハルヒの憂鬱」を刊行の後、 何編かの短編は発表されたが長編としては以降初めてとなる本作。 改めて読むと1作目の影響というか匂いが結構色濃く残されていたんだなと思った。 当たり前と言えばそうなのだけれど初見以外は刊行順に読んだことはあまりなかった のである意味新鮮に感じてしまった。 まあ変わるのは良くも悪くも長編3作目となる「涼宮ハルヒの消失」からだからな。 そういう意味で貴重な作品かもしれない。 戻って本劇中で作られている自主制作映画の出来映えの話だがアニメで描かれた 自主制作映画臭溢れるノスタルジーな感じまで行けたのかなあ…というのが本作での 印象だったのだが、後日このエピソード00が原作でも出てきて…ってこれアニメ化の話 絡みで書かれたのかどうか1回確認した方が良さそうだな。

「涼宮ハルヒの退屈」(2004)

  by 谷川流 (2011/05/11記) 「涼宮ハルヒの退屈」 このエピソードが時系列的に「涼宮ハルヒの憂鬱」の次ということを考えるとそれだけでニヤニヤできる。 お互いの関係も初々しいというか、例えば古泉に電話がかかってきたと同時にリアクションする朝比奈さんと長門が、各 々の立場で動いてるところとか、お互いの協力関係の取り方とかね。 もちろんホーミングモードとかハルヒの元気っぷりやらツンデレっぷりとかね。 「七夕ラプソディ」 改めて読んでみると、アニメ版の脚本はホントうまく出来てたんだなと言うことが判る。 実は原作をかなり削ってるんだけど良いところ万遍なく残してさらにアレンジしダイジェスト感を与えずに一つのエピソード にしている。 そして、このエピソードがアニメ化された目的が「…消失」のためということで的が絞られた内容になっている。 とは言ってもやはり好きなのは原作のほうだな。 アニメのサクサク感も好きだが、原作語り部のキョンの言葉選びはやはり良いわ。 「ミステリックサイン」 殺人ブルドーザーな回。 コンピ研部長の部屋転じての閉鎖空間の足場が地味にアニメとは違っていたりとか。 変な生き物が途中出てきてカマドウマを回復させたりとか古泉がふもっふとかセカンドレイドとかは当然言わないどころか、 長門がシールドを張ることもなく古泉の赤玉一発であっさり終了。 その代わり被害者は8人ばかりいてうち3人を救出するためには新幹線で遠出しなければならないという。 それはさておき地味にSFしてるあたりが好きな作品である。 「孤島症候群」 これもアニメ化されたものとは結構違うんだよなあ。 黒子の毛や謎の美女だけならいざ知らず、妹は鞄の中に隠れて密航を企んだだけでついては来ず毎晩酒盛りでその 初日にどうやらハルヒとキョンは記憶から抹消したいようなことをしたらしいし、古泉は田丸さんの部屋に一目散に走ら ず、朝比奈さんは兄弟喧嘩もせず、などなど。 それらの中でも特筆すべきは台風でずぶ濡れの中洞穴で二人きりイベントとハルヒがその直前に観た謎の人影も無し。 それでいてどちらも面白いだなんて、よいことじゃないか。 【以降2013/01/30追記】 久々の読み直しということで「涼宮ハルヒの退屈」(2004)を読了。 スニーカー大賞を取った「涼宮ハルヒの憂鬱」の本誌掲載前に掲載された表題作から、 後々のキーとなる「笹の葉ラプソディ」、さながら「殺人ブルドーザー」な「ミステリック サイン」、そして本短編集の書き下ろしとなるミステリー仕立ての「孤島症候群」と、 バラエティに富んだ作品集となっています。 さらにはよくよく見てみると、「…退屈」はハルヒ、「笹の葉…」はみくる陣営、「ミステリック …」は長門陣営、「孤島…」は古泉陣営がそれぞれ能動的に動いているというバランス の良さ。 あと面白いのは、アニメ化に当たって本編で一番キーとなる「笹の葉…」を除いた形で 1期の作品がチョイスされていること。 まあこれは1期のキーエピソードが「…憂鬱」であったため、いつアニメ化できるかわから ない後々のエピソードのキーとなる「笹の葉…」は今回は外しておいた方が良いという 判断だったのでしょうが。 さて、次はいよいよ「涼宮ハルヒの消失」。 この前映画も見直したばかりだしどういう景色が見えてくるのか楽しみです。

「涼宮ハルヒの動揺」(2005)

  by 谷川流 (2011/05/09記) 「ライブアライブ」 実際の音とビジュアルという部分におけるインパクトはさすがにアニメーションのほうが本領を発揮している本作であるが、 この原作は原作でアニメでは表現の難しいもしくは分かりづらい部分においてよりSF的な要素、現実的な要素を作 中に振りまいている。 そして、まぁこれはすっかり忘れていたのだろうが、「…消失」への前振り(まぁ発表時系列的には後振り)が少しだけ 混じっていたんだということに今回気づいた。 これもアニメではたしか表現されていなかったとおもう。何故それらをしなかったのかは分からないが、たぶんそれよりも表 現したいことに対して気が散ると判断したのであろう。 「朝比奈ミクルの冒険 Episode00」 けっこう忠実にアニメ化されている本エピソードであるが、実は小説の方が長い。というかアニメではちょこちょこと端折っ ている。けっこうこっちのほうが面白いなというところもあるのだけれど、それはそれ。まぁ小説のように本編中に入る商店 街のCM省けばもう少し入ったかもしれないが、そこはそこでアニメ化のほうでぜひ残しておきたかった部分であろうからし ょうがないといえばしょうがない。何せ「…溜息」はアニメ化エピソードに出来る予定はなかったのだから。 以上がアニメ化済のエピソードで、以下がアニメ化未、つまり「涼宮ハルヒの消失」以降のエピソードである。 「ヒトメボレLOVER」 原作小説としては「涼宮ハルヒの消失」の直後、1週間も経たない時期のエピソードである。 そして、もしアニメの2期があるとすればこの作品はそのオープニングエピソードにふさわしい話である。 かの事件が終わり、元の生活を取り戻した彼らの属性を再認識するにふさわしい一編。 それにしても、この作品における長門の最後の一言がこれほど涙腺を刺激するものであったとはすっかり忘れていたよ。 「猫はどこに行った?」 本来は「涼宮ハルヒの暴走」に収録されている「雪山症候群」の中で語られるのみであった推理劇「猫はどこに行った?」。 推理劇という意味では「孤島症候群」に続くものでありながら、その存在意義としては「朝比奈ミクルの冒険Episode00」 というポジション。 故に新鮮味を欠くなぁという部分で初見の際にはあまり面白みを感じなかったものの今回読みなおしてみて意外と面 白かったと感じた次第。 それは何故だろうと問われれば、初見時にはそのトリックにのみ気を取られていたのだけれど、今回はそのトリックよりこの エピソード内で起こったことそのものが主眼になったからかな。 何せ、「…消失」から怒涛の展開真っ最中のエピソードである。 前後に関連のない話であるはずがない。 うん、やはりハルヒが無意識下で引っ張ってきたキャラクターたちは皆一筋縄ではいかない人たちばかりである。 「朝比奈みくるの憂鬱」 「…分裂」「…驚愕」へと繋がる序章のひとつ。 今までは表立って見えていなかった「ある組織にとってのあるべき未来」の争奪戦が本作や「雪山症候群」などで徐々 に明らかになっていく。 一方でキョンに対するハルヒの信頼度がだいぶ上がってきたのが分かるのがニヤニヤものの一編で、いろいろあっても最 後それがあることで読み手も救われるんだよね。 謎が増えるだけ増えて解答のないままなのだけど、ハルヒのあれが見れることで、「まあ今日のところはこれでいいか」み たいな。 こういうことをきちんとしてくれるところが好きだ。 【以降2013/03/04追記】 「涼宮ハルヒの動揺」(2005)を久々に読了。 「ライブアライブ」「朝比奈ミクルの冒険Episode00」「ヒトメボレLOVER」「猫はどこに 行った?」「朝比奈みくるの憂鬱」ということで文化祭エピソードとその中での劇中劇、 「消失」直後の長門がらみのエピソードに雪山山荘エピソード内で描かれなかったこれも 言ってみれば劇中劇のエピソードを経て最後が次なる展開への序章。 小ネタを集めたといってしまえばそうなのだがどれも面白い。 3期のOPエピソードとして今まで思っていたよりふさわしい感じだったな〉ヒトメボレLOVER そして一見長門や朝比奈さんがらみのものが多いなというかんじだけれど、その実ハルヒが デレデレでキョンも同じくなんだよなあということを改めて示される短編集なのでした。

「とある魔術の禁書目録3」(2004)

  by 鎌池和馬 (2011/04/14記) 2巻が借りられないうちに何故か先に3巻が借りられてしまったので、3巻を先に読了。 話としても2巻自体が割と独立しているし、たぶん問題ないと思う。 で、この3巻はアニメ化されている中では個人的に一番好きな「妹達(シスターズ)編」にあたる。 そのアニメ化の際にも思っていた「少々無理があるんじゃないか」と思えた部分はやはり無理があったものの、その紙面 の多くを割かれているキャラクタの心理描写がアニメよりも話を面白くしている。 そして意外にも説教臭さは感じない。 各キャラクタをある意味愛してるんだろうなあ。 であるが故に殺されるシスターズには固有名詞を与えず、10032号は生かされたのだと思う。 で、まあ正直に言えば上条vs一通はちと盛り上がりにかけるかなあと思う。 あくまでも美琴に手を出させないことにこだわった結果の風車な部分をあともう少しドラマチックにできてればなあ。 そういう荒削りなところが魅力でもあり弱点でもある。 悩ましいところです。

「GOSICKV -ゴシック・青い薔薇の下で-」(2004)

  by 桜庭一樹 http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2011/03/gosick-2004by.html (2011/03/09記) 「GOSICK V -ゴシック・青い薔薇の下で-」を読了。 これでテレビ放映中のアニメを追い越すことができた。(一時的にということになりそうだが) ということで以降両者交えてのネタバレあり。 設定としてはようやくの安楽椅子探偵。 前話の結果で足止めが厳しくなった上に久城の巻き込まれる事件の現場が遠く離れたからな。 話としては、特にこの作品としての定型も出来つつあることもあり、スムーズかつシンプル。 読後感としては長編というよりは長編と中編の間くらいか。 段々久城へのデレが多くなってる。 ということは近々揺り返しも来そうだな。 これはもう八方塞がりかという状態からの脱出がちと苦しくも思える(犯人が潔すぎる)のでこれをアニメはどう処理 するかだな。

「とある魔術の禁書目録(インデックス)」(2004)

  by 鎌池和馬 http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2011/03/2004-by.html (2011/03/05記) 今さらながら、というかようやくというか、「とある魔術の禁書目録(インデックス)」を読了。 興味がありながらも今まで手を付けていなかったのは…正直TVアニメの出来に対してあまり良いと思えていなかった からでした。 けれども、こうやって機会を得て読んでみると十分面白い。 言葉、文章に対するロマンティスティックな部分はアニメのそれを凌駕しているし、というかまぁある意味当然なのかも しれないが、アニメの方はダイジェスト過ぎ。 本来1クールでこの1巻分の話にしても良いくらいの密度だ。 というか、それくらい、この1冊には思いが詰まっている。 それは、この作品に対する作者の愛情だな。 如何にこの作品を愛しているかを書き綴った作者からのラブレター。 それがこの作品を形成しているという循環構造。…まぁ別の言い方を思いつく人もいるかも知れないが、この作品に それを当てはめたくないと今の私は思う。 これなら、執筆ペースが早いという話もよく分かるわ。 ついこの間読んだ別作品の別の作者も同様に執筆ペースが早く、かつ作品に対する愛情に満ちていた。ふたりとも 幸せだよね。 さあて、ここまで愛情あふれるシリーズの1作目を従えての2作目、これが肝心なのであるけれど、予約がいっぱいで しばらく待ちということになるのが少々残念ではある。 その日を楽しみにすることにしよう。

「GOSICK II -ゴシック・その罪は名もなき-」(2004)

  by 桜庭一樹 http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2011/03/gosick-ii-2004-by.html (2011/03/04記) 「GOSICK II -ゴシック・その罪は名もなき-」を読了。 ちょうどテレビアニメで放映されたばかりの「灰色狼の村」編にあたる長編。 (以降、アニメも含めたネタバレあり) で、さっそくアニメの話をするのもアレだが、3話かけたとはいえ実際にはかなりのダイジェスト版だったことが分かった。 いや、見てる時点で唐突な部分が多いなぁとは思っていたのだけれど、どちらかというと原作の見せ場部分を映像化 してみました感が今まで以上に濃いなと感じた。 説明も無しにセイルーン話をしたり、ミルドレッドもあれれという感じだったし、アンブローズにしても…ってほぼすべての 登場人物にそれが当てはまってしまうかも。 まぁそれでも観ていて五里霧中に迷い込むことは無かったし、まぁ成立していたといえば成立していたので、そこら あたりはうまいというべきなのかな。 ただ、物足りないし、わからない部分もある。 そこらへんは原作読むしか無いという。どこまで意図的なのかは分からないが、私はまさにその術中にハマったのだとも 言えるのか。 アニメ観た後でも十分原作楽しめるからな。 で、その原作の話。 やはり、というべきか長編一作目よりこなれてきたな。 何といえば良いのかこの作品としての落とし所が分かって来たというべきか。 それとも、徐々にこの話全体を取り巻く謎が見え始めてきたからなのか。 グレヴィールも「あ、やはりツンデレは兄妹ともどもなのだな。」とか、久城とヴィクトリカの関係とかコルデリアギャロがどう 関わってきそうかとかまぁいろいろと。 さて、次巻はTVアニメを見終わる前に借りられそうなので、そこらへんの印象がどう変わっていくかも含めて楽しみです。

「猫物語[白]」(2010)

  by 西尾維新 http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2011/02/blog-post.html (2011/02/28記) 「猫物語[黒]」に続く化物語シリーズの[白]をようやく借りることが出来ました。 (以降ネタバレあり) [黒]においてブラック羽川を切って解放されたはずなのに、今度はつばさタイガー? ということよりもまず、冒頭で阿良々木暦視点ではない物語が始まることが伝えられる。 さらにその阿良々木さんがまた何かに巻き込まれているらしい。 しかし一方で語り部である羽川翼にも…。 というメインストリームの中に、阿良々木くんが不在であるが故に見せる彼女たちの別の顔だったり、果たして[黒]に よる解決は羽川翼にとっての本質的な問題の解であったのか?とかを、いつものような言葉遊びの中突き進んでいく。 そうだよな。 こうなるべきであったんだよな。 切り離されたブラック羽川やさらに練度を増して作り上げられた怪異、苛虎との関係は、化物語の第一章において 戦場ヶ原ひたぎと彼女からおもし蟹によって切り離された思いと本質的に同じであったという。 それを描くことで、当初これで終わりだと語られていたこの化物語が新たな始まりを迎えるという構図にしてしまうあたり とか、さらに本編中に不在な阿良々木くん及び語られなかった幾つかの章の存在が、別の物語の存在を指し示して いたりとか、ある意味化物語の余韻で描かれていた今までが一変して新たな物語の開始ということで、ああようやく 帰ってきたんだなという感じでした。 てっきり単なる猫物語[黒]の続編だと思っていたらまさかこんな隠し玉用意していたとは。 この今回語られなかった同じ時系列のもう一つの物語が、今のところの最新作、傾物語かな。 あちらはまた総力戦だからな。きっとブラックも苛虎も登場するであろうし、ひたぎ翼のダブルヒロインの登場しないで あろう物語。 楽しみだ。

「GOSICK -ゴシック-」(2003)

  by 桜庭一樹 http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2011/02/gosick-2003by.html (2011/02/27記) 先日読んだシリーズの短編第一作の「GOSICKs -ゴシックエス・春来たる死神-」に引き続き、長編第一作 「GOSICK -ゴシック-」を読了。 既にアニメのほうは読んでいたので大筋は知った上で読んだのだけれど…、逆にアニメのほうはそういう形で改変した のね。 過去部分をmonologueとしてその最初から最後までを現在と並行して描かれていました。 当然、そのmonologueと現在とでは人物の一致を意図的に避ける形で。 それでいて、けっこう分かりやすい形でネタばらしをしていっているという感じかな。 アニメを見て短編だけ読んだ時点で、物語のエッセンスとしてトリックを置こうとしているのかなと思っていたのだけれど、 これ、どちらかと言えば読者年齢を考慮してのトリック難易度のような気がしてきました。ミスリードを誘うということを あまりせずに、答えを提示する直前にヒントをわりと分かりやすく出してくるアタリ。 (まぁこれは既に大筋知っている上で読んでいるからかもしれないが。) 分かりやすいといえばヴィクトリカのデレも分かりやすいわな。アヴリルのそれもまた。 そのアブリルもまたアニメ化する上で改変せざるを得なかった…というよりは改変してでも隠しておいたほうが良いと 思ったのだろうな。 映像が出てきた時点で出落ちになってしまうから。 というわけで、既に読んだ短編のほうが時系列的には前なのでこれをどうするかというのがアニメ化でのポイントだった ように思う。 まぁアニメ化と言えばもっと早い時間帯(低い対象年齢)でも良いように作られた話ではあるわな。(ってまぁけっこう えぐい描写も出てくるのでそうでもないか…逆にそういう部分はアニメのほうはごまかしているないやしかし…) で、アニメ化云々を置いといて、まずこの本だけ読んで見る限りでは、私個人の趣味とは少し外れているかな。むしろ 短編のほうが好みだったかも。 まぁただし、発表順序からすると短編2作目以降はこの長編より後に書かれたっぽいし、シリーズ作品として定着する までにはまだ紆余曲折もあったのかもしれないので、あと数作読んでからの判断かな。 長編2作目は近いうちに借りられそうだし、まずはそれを楽しみにしよう。

「GOSICK s -ゴシックエス・春来たる死神-」(2005)

  by 桜庭一樹 http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2011/02/gosick-s-2005-by.html (2011/02/12記) TVアニメとして現在テレビ東京の深夜枠で放映されている「GOSICK -ゴシック-」を観て興味を抱き、さっそく 図書館に予約をしたその原作の時系列で第一作にあたる本短篇集を読了。 短篇集とはいっても連作短編ではあるし、どちからと言えば短期間の連載、集中連載と言ったほうが話が早いのか。 一作目と二作目以降とでは連載誌が違ったりもするのだが、まぁそのへんの説明は省く。 単純に言ってしまえば一作目は連載の為の誌内コンペティションの一編として書かれたもので、その選からは漏れたが 好評だったので別の誌面にて連載されたようだ。 それと前後して長編も発表されたが結果として文庫は長編4編が先に刊行されたのち、ようやく本作の発行に 至った…のかな。 この一冊とそのあとがき、そしてTVアニメとして放映されている内容プラスアルファというカオスの欠片を再構成した 結論は以上である。 まだカオスのままのような気がするのは、能力的な問題である。 さて、戯言はそれくらいにしてTVアニメも交えた感想など。 以降一部ネタバレは含むがミステリーとしてのネタバレは行っていないのでその点は安心して欲しい。たぶん。 まず、メディアの違い…というよりは発表形態の違い故に行ったのであろうが、TVアニメはこの原作を一部前後 入れ替えて再構成している。 一番大きな違いはヴィクトリカと久城の出会いのきっかけとなる事件が違うことであるが、それはこの原作の刊行順と TVアニメのシリーズ構成を意識してのことと思われる。 目にする順番が変わればまた違った見方をするかもしれないが、このことにさほど違和感は感じなかった。 構成順としては原作のほうが正しいが、最初の数話で判断されて淘汰されていく傾向の強い昨今のTVアニメの 状況からしてみれば賢明な改変といえると思う。 また、これはこの話を語る人間の違い、原作者とTVアニメのシリーズ構成者の嗜好の違い…なのかなかもしれないが、 原作はオーソドックスなミステリーとしての構成を取っているのに対し、TVアニメの方は個々の謎解きそのものよりも ヴィクトリカや久城の物語のほうに重きを置いているように思った。 …のが1話目だったのだが、2話目以降になるとTVアニメと同様物語の方に重きが置かれていた。 ここらへんも本作の発表の経緯から来る改変なのかと思う。 いずれにせよ元々後者のほうが好きな私としては結果として良かった。 あと、まだ長編を読んでみないと断言はできないが謎解きそのものは今のところ割と定番なものが多く、その代わり それらを引っ張ることなく小気味良いテンポで解決していくところはとてもウマさを感じる。 TVアニメ版はそれをさらにテンポよく(引っ張ることなく)提示しているあたり、この作品の魅力を私と同じ部分で 感じているのではないかなと思った。 などなどTVアニメのほうに良いところを色々感じていたりもするのだが、TVアニメのほうが説明不足な部分が多いと いうのも事実である。 あんなところやこんなところ。TVアニメでも尺を変えずに絵で表現できるのになんでこう変えちゃったんだろうなという ところはある。 たぶんテンポを考えてのことなのかなぁとも思っているのだけれど、ここらへんは痛し痒しといったところなのか。 まぁ、何はともあれ気に入ったので引き続きこのシリーズは読んでいこうと思う。 テンポの良さから物足りなさを感じる人もいるかもしれないがそのテンポが繰り出すレパートリーの豊富さはこの 作品の魅力の一つである。 そして、謎解きのためではなく物語を楽しむための物語は私の好物でもあるから。

「猫物語(黒)」(2010)

  by 西尾維新 http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2010/12/2010-by.html (2010/12/10記) 「化物語」から派生した本来語られるはずのなかった物語「猫物語(黒)」を読了。 本編でも軽く触れられた、ゴールデンウィークの悪夢の九日間について語られた物語。 正直にいって本編が終わってから語られた前日談や後日談はある意味力の抜けた物語であったのだが、アニメ化と いう形で語られた本編はやはりそれらを通じて終わった物語、言わば寝た子を起こすほどの出来事であったらしく、 パワーアップしているように思った。 良い意味での化学反応がそこにあった。というか、それが今作品だった。 (以降ネタバレあり) いや、冒頭から本書中盤180頁オーバーに至るまで話が1cmも進んでいないことといい、作中で本作品の刊行が 遅れた理由やアニメ化、今までの作品とで明かされた秘密や新たに出てきた矛盾点に対する軽いジャブ、そして それらに混じって語られる赤毛のアンに関する備考や妹に対する変態行為など、見事なまでに「化物語」の 西尾維新であった。 途中何度Twitterでツッコミたくなったことやら。 そして、この作品の本編、本題が始まることで、なぜ一度封印した語る気のなかった話を語り始めたのが分かった。 アニメ化されたそれからイメージされた羽川翼にはこの話で語られるような黒さが微塵も見られなかったからだ。 いやむしろアレが語られたからこそ成り立つ叙述トリックと言ってもいい。 羽川翼はあんなもんじゃないって言いたかったのかもしれない。 しかも言いたかったのは羽川翼本人かも。 そこまでの瞬発力をこの作品から感じた。 故にかまあ勢いの良いこと! あれ?という間に終わっている。 しかもさらに同じような分量の今度こそは未知の物語まで既に発行されていたりする。 終わったと思っていた物語はまた目覚めてしまったようだ。

「ゾーイの物語 老人と宇宙4」"Zoe' Tale"(2008)

  by John Scalzi http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2010/10/zoe-tale-2008-by-john-scalzi.html (2010/10/30記) 「老人と宇宙」シリーズの最新刊である「ゾーイの物語 老人と宇宙4」を読了。 「最後の星戦 老人と宇宙3」の中で描くことができなかった部分を彼らの娘であるゾーイ視点で描いた物語。 既に「…3」のほうは殆ど忘れてしまっていたものの、読むうちにいろいろと思い出したわ。 そして、ある意味スピンアウトであると軽く考えていたら、これが事の外面白かった。 これならヒューゴー賞候補になってもかしくないわ。 この手のものは個人的には「クラッシャージョウ外伝 ドルロイの嵐」と「ダーティペアの大乱戦」以来かな。 同じ物語でも(あたりまえだが)見事にゾーイ視点、ゾーイ思考で違うタッチになってるんだよなぁ。 ある意味ジュブナイル。 それでいてしっかりカエルの子はカエルであるというところが最後の星戦でのアレ(つまり今回の話)に辿りつくという。 何かこの人は本当に器用だな。寡作であることがもったいない。 さらにどうやらアメリカSFファンタジー作家協会の会長にもなったみたいだから、ますます著作活動なんて…と思ったら また器用な新作(小説のリメイク小説)なんてものを書いているのか。 日本SF作家クラブ会長もこの際(「もいちどあなたにあいたいな」の呪縛は解けたと思うので)も少し活動して ほしいなと思ったのはまた別の話。

「パターン・レコグニション」"Pattern Recognition"(2003)

  by WILLIAM GIBSON http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2010/10/pattern-recognition2003-by-william.html (2010/10/07記) ようやく、「パターン・レコグニション」を読了。 基本的には今までと変わらないギブソンらしい世界。 しかしながらそこに描かれているのは近未来ではなく、追いついてしまった今。 処女長編「ニューロマンサー」を描いた時から、もしかしたら狙っていたのだろうか? しかしまあ、この作品のなんともフォトジェニックなこと! 愛らしいヨーロッパ映画のための脚本の原作小説として作ったと言われたら信じるぞ。 というか、何この私の趣味どストライクなは! それこそ岩井俊二的な映画作家が脂乗り切ってる時に映像化してもらいたいクラスの溺愛必須なこの作品には 本当にビックリしたわ。 それこそ主人公の名前を前出の処女長編の主人公と同じであることさえ些細なことになるくらいに!

「フューチャーマチック」"ALL TOMORROW'S PARTIES"(1999)

  by William Gibson http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2010/10/all-tomo-rrows-parties1999by-william.html (2010/10/04記) 「フューチャーマチック」を読了。 「ヴァーチャルライト」「あいどる」と続いた三部作の完結編はその前二作品の主人公二人を主人公とした上に、 今まで以上の多人数視点で始まり、それらが一つに収束していくという形であった。 こうして改めて三作みてみると、基本ラインはニューロマンサーな三部作とほぼ同じではあるな。 ただ少しだけ、未来から現在に近くなっただけで。 いや、近未来が少しだけ近づいた分予測に対する補正が入り、現実的になったというのが正しいのか。 まあ次なる三部作はSFではない時間設定みたいだからなあ。 タイトルは原題のほうがしっくりくるな。 彼ら彼女らは個別ながら皆そのために動いていたのだから。 その皆が阻止した未来が何なのかというのがマクガフィンだったのは良かったな。 何を見せ何を見せないという匙加減の上手さはこんなところにもでてるなと思う。 さて、この三部作のビジュアルイメージって一番近いのがスワロウテイルなんだよなあ。割とそのままだけれど。 そういう意味で岩井俊二が撮ったらこんな感じじゃないのかというイメージで読んでました。

「あいどる」"IDORU"(1996)

  by William Gibson http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2010/10/idoru1996by-william-gibson.html (2010/10/01記) 続いて、こちらも久々に「あいどる」を読了。 橋上三部作の二作目 舞台を東京に移しながらも、あるものを手にしたが故に追われる事となった女の子と、トラブルを抱える男の2つの 物語が交互に語られながら、一つの話に結実していくさまは前作と同じ。 ただし、舞台が東京である事とある意味今だからこそより親しめる内容が多いことから、こちらのほうがヴァーチャル ライトより親しみが持てる。 ただ、後半の疾走感はヴァーチャル…のほうが好きかな。あいどるのほうはちょっとあっさりし過ぎ。 しかしまあ、ここまでヴィジュアルがかっちりしてる話なのに、古さを感じないこと! やってる事自体は、ホント手垢が着いてることなのに…というかそれが故か。 逆に下手に映像化するとその罠にハマりそうだ。 さて、ようやくあいどる読み終えたのでフューチャーマチックに手をつけられる。 2つのパーティーの後を飾る"ALL TOMORROW`S PARTIES" 楽しみです。

「ヴァーチャル・ライト」"VERTUAL LIGHT"(1993)

  by William Gibson http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2010/09/vertual-light1993by-william-gibson.html (2010/09/28記) 実に久々に、「ヴァーチャル・ライト」を読了。 橋上三部作(というよりはトマソン三部作の方がしっくりくる)の三冊目を借りてきたのは良いものの、前二作ともすっかり 忘れてしまったので引っ張り出したという感じだが。 さて、まあ読み進めるに連れて思い出していったものの、けっこう忘れてるな。 冒頭数章がクライマックスの仕掛けに繋がっていくくだりなどはすっかり忘れていたわ。 おかげですっかり楽しめた。 アイフォンなんてものが出てきていたのも忘れてた。 もっとも、iではなく、たぶんeyeとかなのだろうけれど。 極近未来な設定なのでたとえばVLグラスなんかは、ARの延長線上の話とかを組み合わせればかなり現実的な話。 ところにより現実が追い抜いているものがあってもおかしくない。 ただ幸いな事にゴールデンゲートブリッジも東京も無事であることと、やはり9・11はこの手の小説に触れる上での 時間軸の変節点になっていることを再認識した。 実際後で読む予定の次の三部作はよりSF色はなくなっていると聞いている。 読むのが楽しみである。 で、本編に関してだが、宗教的なアイコンが物語のある部分を占めているためか、ニューロマンサー三部作と比べても かなりディックな香りが強い。 かといって模倣ではなくギブスンのカラーを保っている。 この立ち位置が好きなんだよなあ。 というわけで「あいどる」へと続く

「・・・・・絶句」(1983)

  by 新井素子 http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2010/09/1983-by.html (2010/09/18記) ハヤカワJA文庫から新たな書き下ろし短編2編(上下各巻に一つづつ)が追加されての刊行となった「・・・・・絶句」 上下巻を読了。 今読んでみるともの凄く気恥ずかしかったりする部分もある。それは「若さ」からくる部分。 たぶん10年以上ぶりに読んだ自分の記憶以上に若さを感じたと思う。 しかし今回はそれよりも、みずみずしさとエネルギーに満ち溢れた作品である事を強く感じた。 なんなんだこのポテンシャルの高さは! 当時は同年代であったが故に気づかなかったのであろうが、今の自分の年だったら当時でも眩しくて仕方がないと 感じたんじゃないかと思う。 そりゃ当時の20代の女の子視点ということでの視野の限界とかも無いことはない。(それが前述の若さ) けど、それを補って有り余る程の力と彼女自身の資質が漲っている。 ホントこんなにエネルギーに満ちた作品にはたぶん他に出会ったことがないわ。 この作品に出会えていて良かった。 まあ、おかげでどんな人気作家だろうが、手抜きが目立つ人達には無茶苦茶辛辣になってしまったが、というのは 余談だけどね。 そうそう、一方でこの作品を再読したことで自分が何故例えば「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズやグレンラガンに無条件に 惹かれたのかがやっと判ったよ。 どちらも私からしてみるとこの作品をベースにして観ていたのだな。 無論手垢のついたネタやらなので実際に元ネタなんじゃないかとか意識されてるんじゃないかとは言わない。 ただ、創作のベースになっているところは同じだろうな。 新井素子も谷川流も相当な本好きだったはずだ(確か) そういうベースが話の大ネタになっている。 グレンラガンと関係で言えば話の膨らませ方とその最後の部分での理屈を超えた徹底した前向き感。 それがエネルギーの奔流となり…な部分がどちらも好きだ。 さて話を戻そう。 今回付いた短編二編だが、言ってみればボーナストラックみたいなものでした。 やはり新井素子は短編よりもう少し長いもののほうがというのと、逆に別の作品としてではなく本編の一部としてで あればもっと受け入れやすかったかなと思う。立ち位置の微妙さが少し残念でした。

「機龍警察」(2010)

  by 月村了衛 http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2010/09/2010by.html (2010/09/11記) 「機龍警察」を読了。 近未来。 機甲兵装と呼ばれる軍用人型有人兵器による犯罪対策として、ある事件をきっかけに警察法を修正してまで 警視庁の一部署として創設された特捜部SIPD。 ここには、伝説の部隊の生き残り、警察に裏切られた元刑事、組織を裏切った元テロリストという三様の出自を 持つ3人の傭兵が雇われており、さらに彼らには出自不明の次次世代機甲兵装「龍機兵」が与えられていて…。 この設定に加えて、階級組織である警察の詳細な描写と実際の戦闘における血生臭さが、何故か「真ゲッター ロボ」を思い出させてくれた。 ある意味手垢の付いたジャンルながら、例えば3人の出自の違いから来る専門分野の違いやら、さらにはそこに 配属であるが故に他の警察官から疎まれる彼ら以外の特捜部の面々などのキャラの立て方が結構面白い。 難があるとすれば、冒頭から話に入り込めるようになるまでの説明描写がややくどいのと、話そのものがこれからと いう所、連ドラの1話目でしかないと言ったところか。 で、ある意味同じような立ち位置である「フルメタル・パニック!」と比べてしまうことになるのだが、今回のこの作品の ほうが警察描写の精緻にこだわるあまり、話のテンポがなかなか作り出せずに苦労しているし、読み手に負担を かけてしまっている。 まあそこらへんが割り切れていない辺りがこの作品の味なのであろうが、今後話が進むに従い解消させられていく のであろう。 この作品だけでは評価が難しいかな。 今後どうなるか、期待していよう。

「逆想コンチェルト 奏の1」(2010)

  by 森山由海他 http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2010/09/to-be-or-not-to-be1942.html (2010/08/23記) 2点のイラストを提示された作家がそれを元に短編を書き、それに対してイラストレーターがもう一点のイラストを 添えることで雑誌に掲載。 この手法でSFジャパンと問題小説の2誌をまたいで連載されていたのがこの逆想コンチェルト。 奏の1の各作品の感想など。 神林長平。 ストレートで来たなあ。 山田正紀。はまた「らしい」一編。こういうところが好きなのだ。そして田中啓文は初体験だがある意味イメージ 通りの一品。この俗っぽさが好きな人は好きなのだろうなぁ 久美沙織。読むのは小説コバルト以来…と思ったが考えてみたらSFバカ本もあったような… それはさておきまた とてもらしいといえばらしい作品 …ってさっきから同じような感想ばかりだw 林譲治。文章初見。 話そのものは面白いのだけれど、そこに至るところが大雑把なのは残念。 梶尾真治。さすが短編の名手。うまいとしか言いようが無い。 新井素子。久々に黒い新井素子を見たなぁ。というよりは星新一テイストがかなり入っている。 図子慧。いきなりの見知った風景からずれた未来へ。効率良くインパクトのある描写で一気に読ませてしまう あたりが良いなあ。 篠田真由美。そう来たか。オーソドックスなのに新鮮に感じる。 菊池秀行。考えてみれば今までこのパターンがなかったのが不思議。まあこの人らしい話だわな。 浅暮三文。冒頭三行で何を物語るか提示してしまうところは見事。さらにオチまでも提示していたことに 気づかされるラストにまた感嘆。 飯野文彦。意外なことにイラストレーターに対する挑戦状的な構図を取ったのは一人だけでした。 BOX IN BOXの構造をとったのも飯野文彦だけでした。 で、余談にはなりますが、短編の感想とtwitterは結構相性が良いかもしれない。(今回の各人への感想は すべてtwitter用に整形したものをベースに使用しています。) まぁそんな感じで楽しめたので、奏の2も楽しみです。

「フルメタル・バニック! ずっとスタンド・バイ・ミー下」(2010)

  by 賀東招二 http://productionnoteofkanames.blogspot.com/2010/08/2010by.html (2010/08/22記) 本シリーズの最終話最終巻。 これで物語は終わりである。 まあ若干の紆余曲折はあれど、物語の始まりから決まっていたかのような終わり方ですぱっと始まりすぱっと終わった のは、やはりこの作品の魅力を最後まで損なわなかったという意味で、とても良かった。 この物語における肝の部分は既に前の話で済ましていて、あとはこの上下巻でどう決着をつけるかだけに終始して いた分、読みやすく、心地も良かった。 (メリダ島での)オチの付け方も良かったな。こういうのは好きだ。 いや、かなめがそれを選ぶのは判っているのだけれど、その結果としてのご褒美として最後の(学校での)オチに 通じるあたり良いよなぁ。 結局語られずじまいだった宗介の幼少時の飛行機事故は必然ではなく偶然であったというところも、世界を 閉じなかったという意味でありかなと思う。 (そこに関して一切振れられていないあたりも…まぁもしかしたら忘れられているか意図して誤摩化している だけかもしれないが。) さて、アニメのほうはまだ話が動き出す前だし、実写の方もこれでとんでもな終わり方をする訳にも行かない話と なったしで、どちらもこれからが楽しみだな。 今時希少なコンテンツ、正しく使って欲しいものです。 (あ、できればアニメのほうは今の京都アニメーションにはやらせないで欲しい。今の(作品に対する)姿勢で この作品の続きを作ろうとしたら死人が出そうだ。)

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