『用心棒』(1961)

(2018/08/12記) 『用心棒』(1961)を鑑賞。 (2018/08/12 at NHK-BS録画) 久々に観てみると結構雑なところもあるんだよな。 見せるシチュエーションまで作ったところで投げっぱなしで次の話に移ったりとか。 ただ一つ一つのシチュエーションに魅せられるのでそのまま勢いで観てしまう。 キャラクターの立たせ方も上手いよなあ。 それだけで絵の持ちが違う。 話の展開としては無難に一進一退といったところ。 それが崩れるのが卯之助が清兵衛達に裏をかかれて目の色が変わったシーン。 ここで今まで冷静だった筈の三十郎まで徐々に崩れ始める。 ここからが黒澤明の真骨頂。 この予定調和に進みそうに見える話が一気に崩壊。キャラクター達が暴れ始め、手綱が 効かなくなる。 堪能させていただきました。

『要塞警察』"Assault on Precinct 13"(1976)

(2017/10/04記) (2017/10/03 at イマジカBS 録画) 45分以上かけての舞台作りを終えての攻防戦。 その本編始まってからの敵方の心理描写は一切なし。 そもそもアイスクリームバス襲撃の過程も最初意味わからなかったし。 とはいえ舞台作りは見事だったな。 そこに集まる人びとを出来る限り知らないもの同士にしたり、たよりになりそうな 人間を偶発的な要素込みで出来る限り排除してしまったりなど色々。 一番死と遠い存在に見えた彼女をあっさり殺したことで物語の緊張感が一気に上がると 共に、それから先に起こることに対する免罪符も作ってしまうとか、 アイスクリーム屋の銃の役立て方とか一つ一つのカットのその後の役立て方の 一つ一つに痺れます。 それはミスディレクションだったりフラグだったりそう言うことを考え続けるだけで 至福の時間が続いていくのがこの作品の一番の魅力かな。 そもそも最初のシーンから、何でそんな狭い場所待ち伏せ受けるかなという ところから突っ込みが始められるぞ。 楽しいなあ。

『容疑者 室井慎次』(2005)

(2005/08/28記 at Production note of...) 『容疑者 室井慎次』を観ました。(2005.8.28 at HUMAXシネマズ池袋 シネマ1) 映画に思い入れのある素人が、機会を持って作る事が出来た場合、往々にして陥るのが 自分が過去に観た映画とそこから派生するイメージをパッチワークしてひとつの映画に してしまおうとするパターン。(シベ超とかSFとかね。) 今回はまさにそれを見せられてしまったのかなと思いました。 そこに演出家(=監督)がいれば『リターナー』のようにひとつの映画として成立する のだけれど、如何せんその場を仕切るのは素人。 想いは人一倍あるのだけれど・・・という評価に困る作品が、かくして生まれるのでした。 さらに、そこに「あなたたち、こんな事の為に今まで振り回されていたのよ」という 劇中登場人物たちとその作品を観ている人たちの両方に対するカタルシスを生ませるような シーンを用意したにも関わらず、そこに置くべき「可愛いけど心の無い女の子の笑み」は イメージとしてあるので置くことはできたものの、それをどう扱ったらいいのか判らず、 あげくの果てに劇中人物の台詞としてそれを置いてしまう事でお茶を濁さざるを得なかった という哀しさ。 もし、自分が演出したことが、その台詞に対するトリプルミーニングを狙っていたにしても そこに演出家がいないためダブルミーニングにさえもならず。 もしかしたら、この作品を想像した本人が観たかった事を作る為には演出家に頼んだほうが 良かったというのは判っていたのかもしれないけれど、それよりも自分のやったという 達成感を選んだのだろうなぁ。 そういう意味で言えば、真の意味でこの人は映画というものを馬鹿にしているのだろうなぁ。 そして、映画を好きな人たちすべてを。 (まぁ同じような事を『エヴァ』でやった庵野さんの事は「良くやった」と思ったけれど 今回はそう思えなかったのは、自分が馬鹿にされた対象だったからか。(^^))

『妖怪大戦争』(1968)

(2007/11/06記) 『妖怪大戦争』を観ました。 (2007/11/06 at スカイパーフェクTV! 日本映画専門チャンネル) 機会あってようやく観る事が出来ました。 いいよなぁ、やはりこの雰囲気。 妖怪たちもそのまんま被り物が多いし、ある意味投げやりというか ヨタ話的なこの作り。 血を吸われる部分を丹念に描かれるのは何故か男ばかりだったりとか 突っ込みどころも満載だし、こんなもの今作ったら気でも違ったのか と思われるだろうなぁ。 このランニングタイムの短さも潔くてよろし。 ホント、さすが大映だな。 しかし神木くんってどこに出ていたんだろう? 役者さんも知らない人ばかりだし、そもそも時代劇だったっけ? (と一応ボケてみる。(笑))

『汚れた血』"Mauvais Sang"(1986)

(95/11/08記 at Niftyserve FMOVIE 15番会議室)  何というか、疾走するドニ”アレックス”ラバンですよね。これに尽き ます。特にデヴィッドボーイの曲が流れるあのシーンと、クライマックスの 空港!!  そして、STBOに込められた矛盾する思いがとても痛かったです。 KANAME(CXE04355)

『黄泉がえり』(2002)

(2003/01/18記 at @nifty FMOVIE 2番会議室)  『黄泉がえり』を観ました。(2003/01/18 at 池袋HUMAXシネマズ4 シネマ3)  短編SFジュブナイルとバカネタショートショートの名手であり、 一方で「サラマンダーせん滅」のような長篇で日本SF大賞を取っ ていたりもする梶尾真治は、私の大好きな作家の一人なのですが、 意外なことにこれが初の映画化作品。 前述の「サラマンダー…」やデビュー作(だったかな?)の「美亜 に送る真珠」など映像化するととても面白い作品になりそうなもの が多いのにもったいないなぁと思っていた私としては、ようやくと いう感じでした。  で、そこにさらに、あの『月光の囁き』を映画化してしまった塩 田明彦が監督し、かの『金髪の草原』を脚本・監督として映画化し た犬童一心が脚本を書くという、なんという幸せな組み合わせ!!  とはいえ、ビッグバジェットの作品は両者とも初めてだし、それ が故のキャストもやや不安。 さらには、せっかく豪華なキャストなのに、その中に塩田繋がりの 宮崎あおい(『害虫』)や犬童繋がりの池脇千鶴(『大阪物語』 『金髪の草原』)がでていないのもちょっと寂しい。まぁ、繋がり でいえば、伊勢谷友介(『金髪の草原』)は出ているんですけれど ね。(^^) などと、この手の話は尽きないのですが、涙を飲んで、以降内容に 触れることにします。  最初はちょっととまどってしまいました。キャストの顔ばかりが 目についたし、語り口がややもたつき気味。 前者は、キャスト全員織田裕二映画を観ているかのようで、 後者は、端的に言ってしまえば、自主映画に近いタイプの作品にあ りがちな消化不良の一歩手前のもの。 う〜〜ん、期待しすぎたかと思ったその矢先、この原作が作りだし た状況が見事に転がり始めるんですよね。(ここらへんはある意味 原作も同じ。)そうするともう、シチュエーションをいろいろ作っ てコラージュしていけば、もういくらでも話が続きそうな、夢の時 間の始まり。ここで、冒頭に名をあげた3人、梶尾・塩田・犬童の 資質がコラボレーションされてみごとに生きてくるんですよね。 もう、こうなったら言葉も何もいらない。 そしてさらに、特に原作物の映画化には必要だと(私が勝手に思っ ているだけかもしれないが)思う、原作を消化咀嚼し昇華している 部分が出てくる。それも二重のトリックとして。 この時点で、そのトリックのために必要だった「最初のとまどい」 に目をつむることにしました。 で、さらにもうひとつクライマックスで、原作読者特典のトリック もお目見えし…。 いやぁ、本当に幸せな時間でした。 原作も後半一転して涙ぼろぼろ状態となるのですが、そういった事 も思いだしつつの鑑賞で、本篇の2/3以上涙流していたような気 がします。ここまで涙流したのは『LOVE LETTER』以来かもしれな い。(あの作品は初見の時、ファーストシーンから涙流しっぱなし でした。) 良く作った!と思える作品でした。 kaname(CXE04355)