『ツイスター』"Twister"(1996)

(96/07/07記) とにかく勢いのある映画です。オープニングのイントロダクションの部分はやや控 え目ですが、それ以降は、まさに『スピード』タッチ(!!)で話がどんどん展開して いきます。そして、それをつなぐために何度か出てくる空撮のシーン!! これは 絶対ヤン・デ・ボンがこういう風にゴジラを撮りたかったのでは!!と思えるショ ットで、それを考えると『ゴジラ』の監督の降板はとっても残念なことです。 あと、主人公の夫役のビルパクストンは『ストリートオブファイア』のバーテン、 『エイリアン2』の海兵隊員、『アポロ13』の宇宙飛行士などのちょっと目立つ 脇役的な役から、ついに主役クラスで出てきましたね。それにしてもこの役はとて もあっていると思いました。  また、主役のヘレンハントは役柄ゆえかちょっとサンドラブロックっぽいなと感 じました。ああいうキャラクターがヤンデボン好みなのかな?  そして『スピード』組から、二人、バスの乗客が結構いい役で出ていましたね。 前の役がどちらかと言うとトラブルメーカーだったのに対し、今度はその逆。こう いうのを観ると、何かいいなあと感じてしまいますね。 ・おまけ  私の中では「アトラクションムービー」(テーマパークのアトラクションのよう に、そこに居合わせた人全員がわ〜きゃ〜と言うスリルを同時に体験して楽しむ映 画)と分類される映画がまた出来ました。 『ジュラシックパーク』『ジュマンジ』なんかがこの類の映画で、こういう映画は 混んでる時に観るのが一番!! こういう同時体験を楽しむ映画は後味がとっても いいから、私は好きです。

『2ガンズ』"2 Guns"(2013)

(2013/11/13記) 『2ガンズ』を観ました。(2013/11/13 at機内上映) やっばりビルパクストンとフレッドウォードは最高だぜ。 それはさておきこれも上手い作品だったなあ。 ウェルメイドとはこのことだ。 以降ネタバレ いや、上手いドーナツのあるコーヒーショッブは予想着いたのだけれど、そこに実はもう ひとつちゃんとした伏線を仕掛けていて、それが何の説明もないんだけれど表情見て判る あたりは大好きだ。 あー、これは奴の仕業だなって。 そしてもちろん、信じられるのは誰かというところを常に上手く使いつつ、いや実は皆 自分の事しか考えていないというところから、クライマックスのあの状況に繋げるあたり とか、そこに至るまでの疑心暗鬼の引っ張り方とかホント見事だったな。 まさかの顔の広さも大好きだ。 そしてラスト。 悪い奴らはまだまだ置きみやげを残してくれてたあたりなんかも大好きだ。 うん。良いものを観れて良かったよ。

『月とキャベツ』(1996)

(98/08/13記)  『月とキャベツ』を観ました。(98/08/13 at パルコ調布キネマ) キャベツが、とてもおいしそうでした。  花火が、あの絵を紙飛行機にして飛ばすだろうなということは、何故かわ かっていました。  そして、理人が、花火がヒバナにいつでも会えるように、天体望遠鏡を買って きたのも。 最後、「奇跡」は起こったのだと、私は思います。

『椿三十郎』(1962)

(2006/07/17記) リメイクの話でやはり気になってしまって、『椿三十郎』を 引っ張りだして久々に観てしまいました。 (2006.7.17 at ビデオ) いやぁ、やはりわくわくするわな。 オープニングからエンディングまで良い意味でまさに教科書の ような作品。 改めて観ると、まぁいろいろとツッコミたくなる部分は数あれど、 むりやり頭の中で説明つけてしまうのもまた面白いし、次々と 出てくる問題に対して緩急取り混ぜて解決してしまうのもまた 見事。 さらにそこに伏線まで交えてしまうあたりうまいよなぁとホント 思わせる。 キャラクタの立て方もホントうまくて、さらには短くテンポよく。 娯楽作品としてここまでバランスの良いものはそうそうないと 思います。 で、これをそのままでリメイクという話となると、始まって すぐに「これは無理だ」ということにあらためて気づかされ ました。 これが作られた当時ではなく今となってはやや抵抗のある台詞 多し。 「おかめはちもく」やら「あばよ」やら。 これが古い作品であったり、もしくは舞台であれば、たぶん 観ている人は何の抵抗も無く受け入れられるとは思うのだけれど、 今の映画でこれらの台詞はちょっと難しい。 まぁ台詞を変えてしまえばいいのだけれど、良い言い回しが ちょっと思いつかないし、下手すると無理しているようにみえて しまうかもしれない。 時代設定や国(言語)などを置き換えてこの作品を作ってしまう のであれば、それらはクリアできると思うのだけれど、今回は それはなし。 あと、以前もたしか思ったと思うのだけれども、映画という よりは、舞台であれば、これをほぼそのまま再現しても抵抗も 無く面白いものになると思う。 黒澤作品全般に言えるのだけれど、基本的に台詞劇である ところが大いに関係している事なのだろうな。 それをさらに映画的なものを散りばめる事によって黒澤作品が 映画として成り立っているのであるのだけれど、その部分は 他の作品にたいしてちょっと弱い。 全編ほぼ引き絵で、細かいカット割りも少ないし、そういう 意味で舞台に置き換え可能なんですよね。 あとは全体的に台詞がくさい。(笑) 限りなく熱くストレートであるところが私が黒澤作品を好きな 理由でもあるのですが、これは言ってみれば黒澤さんがやるから こそ成り立つのであって、日本語でリメイクした場合ちょっと 耐えられないと思う。 (そして黒澤作品を受け付けない人が一番気にしているのが ここだと思う。) これも芝居的であって映画でこれをやられると辛いのよね。 ただ、面白い。 リメイクしたい。 となった場合、何が出来るかと考えてこの作品の持ち味の ひとつであるコメディ色を強化すれば、うまくすればほぼ オリジナル通りの脚本を別テイストで作る事は確かに可能では あるわな。 とはいってもハードルけっこう高いとは思うのだけれど。 監督としての森田芳光。 なんだかんだいってこの人の一番の持ち味は独特の臭さを持った リズムだと思います。はまるとうまいのよね。 ただ当たり外れの触れ幅が大きくて、同世代や下の世代と 比べるとやや干され気味だったのが最近調子を上げてきている。 ある意味危険な賭けの可能性もあるけれど、誰が出来るかという 中に入ってくる人の一人ではあると思う。 そしてキャスティング。 今回織田裕二を三十郎に持ってきた事で、うまくすれば大目付、 次席家老城代家老などの役回りを役所広司や渡辺謙、うまく すれば佐藤浩市くらいの世代にやらせる事も出来るのでは ないかな。 で、9人の若侍たちは舞台の方からでも20代の本当に将来有望 そうな若手を見つけ出して持ってくる事で将来にも映画のできる 俳優さんを育てる事も出来ないかななんて思ってもみたりします。 ホント、この後『用心棒』やその先まで考えるのならこの機会に 役者さん育てようよ。 と思った場合、役所広司から織田裕二くらいまでを上の方に 集めておくのは良い事だと思うのだけれど。(ってまだ織田裕二 しかキャスティング分かっていないのだけれど。) 織田裕二世代(リアルにもうすぐ四十郎付近)で映画で主役 張れる人っていないからな。 以上、やや強引かもしれないけれど、こんな事を考えてました。 (なかば妄想だと思われそうだが。) そうそう久々に観た室戸半兵衛の登場シーン。阿部寛そっくり でした。 これは決まりかな?(殺陣もこの世代ではピカイチだし。) ・・・何かほとんどリメイクの話になっていますが、 オリジナルの事を書き出すとほぼ全編に渡って仔細に話が 出てきてしまうので、わざと避けています。 本編より長い感想というのも何だしね。 これがまた教科書と言われる所以でもあるわな。 (以降2018/01/01追記) (2017/12/31 at NHK-BS 録画) やはりこれをどうしたらリメイクしようと考えるかねえという意味でそれに挑戦した ことはある意味凄いと思う。 と書くとリメイクの方の感想になってしまうが、これ以外の回答って想像できない。 ひたすら三船三十郎を堪能できる至福の時間。

『椿三十郎』(2007)

(2007/12/02,12/08記) 森田芳光によるリメイク版『椿三十郎』を観ました。 (2007/12/01 at TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン7) 黒澤明によるオリジナルを観たのは、既に何十回の領域に入っている だろうなぁ。 一時期に集中して何度も観ているようなことは無いけれど、『用心棒』 などとはうって変わっての力の抜けた軽快なテンポの作品は大好きな 黒澤作品の中でも常に上位にいる作品でした。 その作品のリメイク、黒澤作品の正規リメイクとしては、私にとって は『ラストマンスタンディング』以来の作品となるこの作品に対して 森田芳光がどうアプローチするのか? 本当に楽しみにしていました。 (以降ネタバレあり) ううむ。今回は悪い方の森田が出てしまったという感じか。 オリジナル脚本を使うという選択肢は間違っていなかったと思うが、 技巧というかアイデアに走ったのが裏目に出てしまったような気がし ました。 アイデアのひとつひとつは良かったと思う。 しかしながら、オリジナルとは違うテイストを出そうとした部分が、 この作品の持ち味である軽快さをことごとく潰してしまっている感が ある。 というよりは、オリジナルの持つリズムを身体が覚えていてそれに対 する違和感が作品を鑑賞する妨げになってしまった部分もあるのか。 映画も芝居と同じで、同じシナリオを使ってのリメイクというのは私 は何度でもあって良いと思う。むしろもっとあるべきだとも思う。 安易な続編を作って物語を壊してしまうよりはよっぽど良い。 ただまぁ実際には映画そのものがそれなりの資金が必要なものである からそう安易に出来ないのが実情だと思っている…。 と、この話を始めるとまた長くなるは本筋から外れるわになってしま うのでおいといて…。 まぁ結果論になってしまうが、今回はちょっと力入り過ぎだったのが 一番まずかったかな。特にこの作品の持ち味はその軽快さにあるのに、 音楽にしても演出にしても、それを殺してしまっている感が強い。 キャスティングにしても、観るまでは割と良いかなと思っていたが、 そのキャストを使った意味が薄れてしまうような演出になってしまっ ている。 一番気になったのは若侍たち。 オリジナルの加山雄三や田中邦衛などが決してうまいとはいえないが、 使う言葉に対しての意味はまだ咀嚼しているように思う。 奥方様と千鳥も、オリジナルのその部分を残したのかという感じで、 それが中村玉緒と鈴木杏には合っていなかったような気がする。 大目付たちも、ちと演技過剰気味。 三十郎の織田裕二は、オリジナルから離れた殺陣は非常に良かったも のの、それ以外の部分がオリジナルと同じであるが故に三船敏郎の影 がどうしても見えてしまうのがマイナスになってしまった。 何せあの三船敏郎のしかも当て書きキャラクタ。これはちょっと分が 悪かったか。 その中で、力が抜けていて唯一良い感じだったのが豊川悦司。 仲代室戸とは良い意味でキャラが被らなかったのも逆に良かったか。 これらすべて、もう少し力が抜けて作られていれば良い作品になって いたと思えるのがとても残念。 まぁプロデューサーが昔の角川春樹ではなく、今の角川春樹であると いう時点でそれは難しいのかなぁ。 あと、実際に観るまですっかり失念していたが、今回オリジナルに対 して一番不利に働いたのは色がついている事と、(THX認定スクリー ンでみたせいもあって特に)すべてがはっきり映りすぎてしまう事。 一度に目に入る情報量が圧倒的に違うので、それだけで実はリズムが 違う。 軽快感を出すためにはより軽いシンプルな映像の方が良い。 そういう意味でモノクロオリジナルで軽快な『椿三十郎』に対するリ メイクとして、特に説明過多な演出アプローチは実は向かない。 黒澤の看板を背負っているだけで重くなっているのに、気負いすぎて、 しかもという状態で結果を残すのはちょっとハードルが高すぎたよう に思う。 などといろいろ書いてはいるがそれでも楽しめたし、良かったところ もあった。 少し前にも触れたがオリジナルとは異なっている殺陣全般。 戦術的に正しい方法をきれいに実践していたし、ここを小気味よく丹 念に見せたのも正解。唯一ラストの駄目押しに関してはやり過ぎだと 思ったがそれ以外は良かった。ここは前述の情報量の多さがまた良い 方に作用していた。 そして、これはオリジナルと同じ構図だ!と思える部分。 思わず(本来ならそういうシーンでないのに)うるっときてしまいま した。 相反することに思えるかもしれないが、このふたつのブレンド具合で もっと面白いものになり得たのにというのがみえるのがとても残念だ。 ただ、このチャレンジは評価に値すると思う。 テレビドラマだったが、少し前に放映されたリメイク版『天国と地獄』 は本当にひどかった。小手先だけで何とかしようとしているのが見え見 えで、さらにオリジナルへの愛情は欠片も観る事が出来なかった。 こんな演出をした監督は二度と監督などしてほしくないと心の底から強 く願った。 そういうものと比較してしまうのは何だが、黒澤三船に真っ向勝負を挑 んだキャストスタッフは凄いと思う。 できれば、納得がいくものが出来るまで、このキャストスタッフそのま まで何度でもチャレンジしてほしいくらいである。 それくらいアイデアはあると思えた。 まぁ芝居で言えば再演希望という奴ですな。 あと、最後に周りのお客さんたちの反応はけっこう良かった事を付け加 えておきます。 特に笑える部分は敏感に反応していたし、同じ列にいた子供の反応はな かでも特に良かった。その子がまた帰り際に「面白かったね」なんて感 じで親と話していたし。 鑑賞前にお年を召した方が、「中村珠緒と藤田まこと以外誰も知らない なぁ」などとその奥さんとパンフを見ながら話していたのも印象的でし た。 (以上2007/12/02記) (その2) 『椿三十郎』をまた観てきました。(2回目) (2007/12/08 at TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン7) 今回は同じ場所ながら仕事帰りに遅い夕食を取った後の、しかも午前零時 過ぎのレイトショー。 前回、軽快さが欲しいと感じた部分もあったが故に少し寝てしまうかもと 思いつつ鑑賞に望んだのですが、逆に今度のほうが一度もそういう感じを 受ける事無く鑑賞できました。 まるで、前回自分自身が書いた事がフィードバックされてコマ落としでも されたかのように早く感じた。 初回観たときは、はっきりいって気負いがありすぎたのかなぁ。 そういうものが無い状態で観たのと、2回目という事である程度映像の 情報予測ができていたからかもしれない。さらには、観たポジションが 前回劇場中程やや端寄りだったのに対し、後方中央、しかも日またぎレ イトだったので人が少なくリラックスしてスクリーン全体を見渡せる ところだったのかもしれないな。 ただし音響はここなのになぜかエコーかかりすぎで最悪でした。しかも 音楽や音の入れ方が少々過剰に思える部分が多かっただけに余計。 まぁそんな状態で観た事もあって(傷はあるにせよ)元々テンポ良い脚本 だし、初回鑑賞時の感想にも書いたようにキャストスタッフも良いものを 揃えているので楽しく観れました。 殺陣は元々良いと感じていたし、今回はその殺陣もじっくりと観る事が できたし。 織田裕二も前半やや三船椿を思わせるように感じる事はあったけれど ほどなく織田椿として咀嚼してるなと感じるようになりました。 ラストシーンも今度はあそこも抵抗無く観る事ができた。 期せずして修正された再演を見せられたかのよう。 オリジナルを意識しながらも、うまく咀嚼して作られた作品だなと感じま した。まぁオリジナル同様傷はあるけれどね。 ただまぁ音楽の入れ方だけはなんとかならないものかと。 まぁそんなわけで結果的に二度楽しむ事が出来ました。 (以上2007/12/08記)