『セッション』"Whiplash"(2014)

(2024/03/30記) (2024/03/30 Amazon prime) 正直、最後のシークエンスまではこの邦題より原題のままの方が良かったんじゃないかと 思っていたが、たしかにこの邦題はこの作品に対するひとつの解釈だ。 このミュージシャン同士の殴り合いとも受け取れるこの言葉を、別の形で 可視化したのがこの作品なのかなと思った。 故に本能的で暴力的で理解不能で感情的でという事なのかな。 教師であったものに裏切られ罵られた末に主導権を奪い相手を捩じ伏せる。 それってそういう事だよね。

『007/私を愛したスパイ』"The spy who loved me"(1977)

(2023/09/24記) (2023/09/24 グランドシネマサンシャイン シアター6) シリーズ60周年記念上映での鑑賞。 4Kレストア版。 初見はロードショー公開時。 映画館での鑑賞はそれ以来だから約45年ぶり。 ついでに言えば、初めて映画館で観た映画ではないが映画というものが好きになった きっかけの作品。 さてまずレストアっぷりだけれど、昨日観た女王陛下よりは全体のバランスは取れていた。 その代わりと言ってはなんだけれど息を呑むようなという感じのカットもなくというのは サイズ由来のゴニョゴニョな部分があるのかな。それ以前の話として、思い出補正に 敵うものはなかなかない。 とは言ってもエスプリのカーチェイス(される方)4連発は見応えあるし、初登場でのQと あの車のスケール感のおかしさから堪能したし。 ユアアイズオンリーにも出てきたゴーゴル将軍との会話で原潜ポチョムキンが消息を 絶ったとの台詞に対して、「sabotage?」と返す所や、ララのテーマ、ロレンス等の BGMの使い方、カイロのシーンは同時期のアレかなとか、果てはエスプリ上陸が アレだったり、そこに関してはそもそもリチャードキールの役名があれな上に最後には だからねえ。 そして007におけるパインウッドクライマックスなタンカー内の英米露の 共同戦線っぷりとかは、そう、これが私にとっての007のスタンダードなんだよなと 思い返したりとか。 記憶との対比で言えば、この作品に関しては観た回数よりもサントラ聴いた回数の方が 遥かに多くて、故にJames Bond'77には特に反応してしまう。 ああ、そういえば慰めの報酬はあのシーン思い出したよなあとか。 今回改めて思ったのは、本質的に怖いのはスペクターなどよりもこのストロンバーグの やっている事だし、前述のゴーゴル将軍がアマソワをボンドと組ませたのは、 少なからず彼女の恋人を誰が殺したかわかった上でやってるあたりとか、こういう見方は アレだけれど、前作でB級ホラーで名を馳せたクリストファーリーに引き続いて、 一時期ドイツ軍将校といえばだったクルトユルゲンスというのがまたね。 個人的に好きなのは、アバンで鹵獲された英原潜の艦長がなかなかに カッコ良いのだけれど、解放されてからの出番がと、対して米原潜の艦長はとか。 何はともあれ思い出の作品。45年ぶりの再会を楽しませていただきました。

『007/死ぬのは奴らだ』"Live and Let Die"(1973)

(2023/08/07記) (2023/08/07 2020Movie Plus放送版) ポールマッカートニー&ウィングスのメインタイトルはこのシリーズでも一二を争う くらい好きだったりする。 (もう一曲は「世界は2人のために」) 音楽という意味ではジョンバリーではない所もまた特徴的だし、さらにいえば舞台が アメリカという部分が私の好きな70年代前半の映画臭が強くなっていて好きなんだよなあ。 で、ロジャームーア初登場なのだけれど、今改めて見ると意外と脳内でコネリーと 置き換えてもほとんど違和感ないんだよなあ。 元々当て書きではないので当たり前といえば当たり前なのだけれど。 あと、ここまで好きだと言っておいて何だけれど、原作もっと面白いからとは 言いたくなる。 カジノロワイヤルもせっかく原作テイストに近いものが出来たのだから、今度は ちゃんと死ぬのは奴らだ作ってくれないかなあという身もふたもない事を書いておこう。 けど好きなのはホントだよ。

『007/黄金銃を持つ男』"The Man with the Golden Gun"(1974)

(2023/08/08記) (2023/08/08 2020Movie Plus放送版) アバンのメインタイトルの使い方好きなんだよなあ。 前作から1年後に公開されている本作の2つで今までのオマージュが多いなと思った。 メインタイトルなんてゴールドフィンガーを彷彿させるし。 音楽は再びジョン・バリーに。 道場シーンはジョージ・レーゼンビーで観たかったなあ。 それもそうだがこの1974年だからこそのカンフーファイトの数々。 原作の舞台は違っていたのだけれどこっちのほうがインパクト強くて誤解してしまう。 それで思い出したが、もしノータイムトゥダイの続きがあるとしたら原作な黄金銃に なるんだよなあ。はたして続けるのかリセットするのか。 まあ、かの作品のクライマックスはある意味この黄金銃オマージュにも見えるの だけれどね。

『007/ユア・アイズ・オンリー』"For Your Eyes Only"(1981)

(2023/08/08記) (2023/08/08 2020Movie Plus放送版) この作品、アバンからのメインタイトルを一時期死ぬほど観ていたのを久々に 思い出した。 一言一句がまるで聴き慣れた音楽みたいに甦る。 というくらいにロジャームーアのボンドでは一番好きな作品。(アバンだけなら 『私を愛したスパイ』がシリーズ全作品中1番好きなのだけれど) 作品全体の演出が80年代に突入。その上音楽もビルコンティだ。 それはコンソール類がキーボード主体になっていたりとかで言い方はあれだが 洗練され始めている。 長年続いているシリーズはこういうの観るのも面白いんだよなあ。 オクトパシーの頃とかになると、とそれはまた別の機会に。 アクションユニット上がりの監督作品ってホント楽しいよなあ。 そういえば全部見直した訳ではないのだが、ロジャームーアのボンドの名乗りは 毎回まずは女性相手だな。 コネリーの時はどうだったか。これもいずれ。 あ、これってNobody does it Betterだったのか。 ボンドがダメ押しでBetterしてる。 ボブスレーのシークエンスはやはり最高だ。 そこから休む間もなくアイスホッケーまで含めて。 敵味方の分け方やメリナの絡ませ方とかも好きだなとか。 トポルのプライベートアイはジョンバリーだったなとかはまた別の話。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』"No Time to Die"(2021)

(2021/10/01記) (2021/10/01 at 池袋グランドシネマサンシャイン シアター12 IMAX2D) これはまた詰め込めるもの詰め込めるだけ詰め込んだな。 最初のあそこでだいたい何となくは分かったが原作シリーズのあそこに繋げてくるとはね。 クレイグボンドでやりたい事ホントやってくれたなあ。 まあ深読みすればあれはアレだしアレもそうだよなあとか。 うう、色々と書きたい。 さて、クレイグボンドについて改めて。 前任者である意味行き詰まっていたこのシリーズを、当時の風潮とはいえリブートし、 それまでの映画がつけたイメージが故に出来なかった部分を見せてくれた一方で それまでの映画が与えていたイメージも上手く溶かし込んで、それこそ初期の 映画シリーズがやっていた原作をシャッフルしてミックスしてをさらに過去の 映画シリーズも巻き込んでのシャッフルミックスして作品にしてしまうという これ以上ない至福の時間を与えてくれました。 今回も、あ、こうなったらこうなるよねで何度ニヤニヤさせてもらった事か。 あれとあれを混ぜてアレっぽくしたりとか、けどアレ一回やったからまさか こういう形でくるとは思わなかったとかね。 けどそれは、しっかり拾うんだ。 そこを今回はそういう解釈に変更してこう見せたのねとか。 さて、こんな感じで普通の受け取り方出来ないので今回どうなるんだろうなあ。 そして。 以下、散文的に思いつくままに。 以下はネタバレという奴。 ボンドに苦痛を与えるのは原作の本質。 それに人間臭く対処する様が彼の魅力。 彼は不屈ではあるが何度も心折れる。 最も心折れたのはオリジナルではヴェスパーとトレーシー。 クレイグボンドでは以前のシリーズでは描かれる事の無かった前者をしっかり描き、 代わりにトレーシーは形を変えてマドレーヌとマチルドにしたのか。彼にとっては 死よりも辛い呪い。 Mr.ホワイトのポジションも見方によってはドラコと似たようなものだからな。 あそこまで直接的ではないし、そもそもドラコは商売敵ではあっても私怨はない。 まあそんなふうに思えるまでに配置されたのはサッチモのあの曲。 OPには思わずニヤリとさせられたがこんな仕掛けを用意していたとはねえ。 そして細かくは原作再読しないと明言出来ないがオリジナルの「二度死ぬ」と フレミング死後に続けられたシリーズ中の「赤い刺青の男」のエッセンスが色々と。 たしか毒やら細菌やらはこの2作品で扱われていたし、そもそも二度死ぬは オリジナルでは女王陛下に続く作品。今回のEDはこの2作品がらみのあそこら辺から 次作が始まるんじゃないかなと踏んでいる。 毒草庭園とミサイル発射口が合体していたのはまさに原作と映画の合体だったな。 庭園に従事していた作業者が映画で描かれた海女を何となく連想させるものだったり、 サフィンに対する態度が日本式だったりするなあと思っていたら畳が出てきた時には 少し笑った。 さらには日本式のお辞儀を通り越してボンドに土下座をさせるとはねえ。 と、ここらへんが原作を強く連想させるものとしてここからは映画シリーズ絡み。 アストンマーチンのマシンガン回転連写はやってくれたなという感じ。 他にも色々描きたいがここからはクレイグボンドとして。 ルネ・マティスやMがああなってしまった以上、特にボンドがここで退場かも しれないというタイミングであるが故にフェリックス・ライターの退場はここで 来たかという感じ。 原作や映画で描かれたアレはそういえば無かったが、そういや『消されたライセンス』の 発端は彼だったな。 CIA組はいずれもキャラクターの造形が見事。 アッシュのいかにもなアメリカ人っぷりは映画シリーズで描かれたアメリカ人達を 彷彿とさせる陽気で残忍さを兼ね備えていた。 まあそれよりもパロマだよなあ。 3週間!! 素晴らしかった。 対するMI6組。 Mをあそこまで追い詰めたのはブロフェルドだし結果として彼の思惑通りの結果に 陥ってしまった。 次回退場していてもおかしくない事をしているのだがどうなるか。 ビル・タナーはどこまでいっても彼だったな。 そういう意味ではマネーペニーにしてもQにしても同じか。 立場上二人ほどにはなれないのだけれど、あの職場では一番の友人なんだよなあ。 で、今回MI6組で一番活躍するのがノーミというか007。 その数字に過ぎないものが何を意味するかを見せてくれる最も頼りになる存在だった。 あと一歩の所で追い詰められずに取り逃がすことが多いのも前任者からの伝統か。 彼女のプロフェッショナルぶりが本来の007だった。 さてブロフェルド。 彼をあのポジションに置いた以上どうするのかと思ったがまさかねえ。 まあそれも今回が「女王陛下」ポジションと考えれば形はどうあれだったが、 彼どころかスペクターをこんなにもアッサリとというのは意外過ぎて見事としか 言いようがなかった。 獄中のトリックを結果的にあの外見に持っていくとかどれだけあの作品に愛が あるんだよ! その彼が使っていてその後サフィンについたあの男はもはや映画シリーズでは 伝統芸な便利な暗殺者。 実はその武器が彼自身を殺す鍵となるのも伝統芸なんだよなあ。分かってらっしゃる。 で、ようやくサフィン。 ボンドに自身を投影する悪役が3作連続となったのは逆にボンドという存在が そういう業を担っているからではあるけれど、三者三様であったのが最初から 仕組まれていたのだとしたらそれはそれで見事だったな。 直接的な復讐の対象がボンドではなかったが本来そうなってもおかしく ないんだよなボンドは。 復讐と善悪は一致しない。 さて続投のマドレーヌだ。 クレイグボンドの一番良かった事の一つが一つの連続した物語である上にボンドの 造形もその上に成り立っているという所で、このポジションの彼女が連続して 存在している上にまさかのアバンだったからなあ。 ここまで愛されるとはと思っていたらそのアバンにこんな仕掛けまで用意してくるとは 思っても見なかった。 別れのシーンのあのジェスチャーもこう繋がるとも思っちゃいなかった。 ちゃんと仕事続けていたんだ。 で、最後はボンドだ。 彼があの表情を見せるとは。 そこに尽きるかな。 だからこそのこの終わり方だが故に次をどうするかだな。 地獄はまだ彼を受け入れる準備は出来ていないとなるのかそれとも。 ======================================== (2022/05/29追記) (2022/05/29 at Amazon Prime Video) やはりジョン・バリーのメロディラインは最高だというワインディング・ロードがあって、 少ししてのヴェスパーのテーマなのかなと言うメロディが流れて、もうこれだけで幸せだ。 映画館で観て以来となるのだが細かいシーンの積み重ねの一つ一つが愛おしい。 ここからこう繋がっていたという積み重ねに冒頭から突入して再び作品世界へと。 そこかしこに見受けられる過去作品や原作の残滓も受けながら没頭させていただきました。 OHMSSもYOLTもちゃんと愛してくれている事が何よりも嬉しい。 さて、これでアマプラでクレイグボンドイッキ見が出来るんだなあ。 時間はいくらでもあるのだからといかない所がなかなか難しい所だが。

『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』(2019)

(2021/05/03記) (2021/05/03 at Amazon Prime Video) ラストワンシーンの圧倒的な情報量よ。 真相が分かってからの情報の積み重ねは見事だったけれど、最後のこの積み重ねを こう描いてくるとはね。 それこそテレビシリーズあってこそ使えるこの技をここまで見事に収められるとはね。 たしかに咲太は凄いよ。 ある意味タイムリープものという存在そのものが前提としなければできないとか、 絶対的に読者を信頼しなければできないだろうし、これはいつか原作読まないとな。 ーーー以降2023/07/16追記ーーー (2023/07/16 TOKYO MX初放送版) 以前アマプラで観ているので2回目の鑑賞。 そこに辿り着く為に通らなければならない未来が辛いけど、これはある意味咲太目線の 話なので、そこに辿り着くまでと考えるとショウコさんもっと何度も頑張ったのかも 知れないし、咲太自身が引っ張った、選んだ未来かも知れない。 なんてグルグル考える浸る作品だよなあ。 そこはそもそもこの症候群が何なのか次第が大きいのだけれど。

『007/サンダーボール作戦』"Thunderball"(1965)

(2020/11/03 at ムービープラス) 2020/11/03記 何をおいてもふんだんな海洋シーン。 作品としてはここまで必要無いのではと思うほど延々と続く水中アクションは この作品の魅力の一つ。 スペクター対米英という明確な緊急事態に手段を問わない007とか、対するラルゴも 作戦に影響することとなれば遠慮なく。 『ロシアより愛をこめて』『ゴールドフィンガー』という傑作2篇の次の作品という事で 少し取り上げられ方としては地味ではあるけれど、元々原作がある意味映画化前提の ノベライゼーションであったが故にプロットと映画との親和性は高く、同じくその経緯が 故権利上の理由で2度の映画化も基本プロットからの話の膨らませかたのバリエーションが けっこう違っているのも面白い。

『007/ドクター・ノオ』"Dr. No"(1962)

(2020/11/1 at ムービープラス) 2020/11/01記 原作で微に入り細に入り語られるガジェットの数々を何の説明も無しなポンと 提示してくる所などは今考えるとやはり原作ファンを意識した作りなんだよなあ。 ボンド初登場のシーンではバカラを行っていたり、原作での前の任務での失敗から 取り上げられるベレッタのくだりとかニヤニヤしてしまう。 で、その流れで次の作品が『ロシアより愛をこめて』と言うのがまたねえ。 そういえばデント教授の待ち伏せの合間にやっていたのはソリティアだよなあというのは 毎回初めて気づいたように感じてしまう。 今見るとカーチェイスのシーンってけっこう撮って出しにしか見えないのはここから どんどん気合が入ってきてしまうからなんだよなあ。 このシリーズ初映画から編集として関わっているピーターハント。 まあ、この作品の一番好きなのはノオ博士があまりにもあっさりと死んでさらには 物語もあっさり終わってしまうところかな。 急にハシゴ外された感。 その次は、服を着ているとそうでもないのに水着姿だとやたらガタイの良い ハニーチャイルライダーことアーシュラアンドレス。 クォレルはけっこうな存在感なんだけれど原作のあそこら辺が無かったのは残念。 パイプ内のシーン、思ったよりちゃんとやってるんだよなあ。 原作の方が切迫していてより痛々しいのだけれど流石に当時はそこまで できなかっだからなあ。 などなど、書き始めると色々出てくるな。

『セーラー服と機関銃』(1982)

(2018/08/14記) 『セーラー服と機関銃』(1982)を鑑賞。 (2018/08/14 at 日本映画専門チャンネル録画) 相米作品はホント面白いな。 見せ方繋ぎ方がなんとも言えない。 絵の中にぱっと目につくところを持ってきた後にそれを使って表現をするとか、 ところどころワンショットの長さで惹きつけるところとか。 そしてそこに赤川次郎のエゲツなさが加わる。 しかし改めて観るとロングショット多いなあ。その一つ一つがまたキラキラとしてる。 星貴志から泉への手紙にもあった彼女の世界の狭さと佐久間達大人との対比もまた面白い。 それでも泉は精一杯背伸びして何とか追いつこうとする。 それを暖かく見守る大人たちとの構図。 暖かくね。

『戦略大作戦』"Kelly's Heroes"(1970)

(2016/11/06記) 2016/11/5 at NHK-BS録画にて。 字幕で観たのは初めて?もしくは2回めくらい? 何度も観てるがテレビでばかりだったからな。(まあ今回もそうだが。) この話、プロットだけ聞いても上手いなと思う作品なのだが、久々に観てその 意外なほどのディテールの細かさに改めて惚れ直した。 そりゃあ戦車乗りなJKがカツサンド食べながら涙流すわ。(違う) オッドボールも活躍するし。(違う) 既にもう十分頭のおかしい状況に長いこと置かれて価値観がおかしくなっている上に、 その世界での各々の役割が当然になってるんだよな。 本来なら入り込めるはずもない最前線のさらにその先に進むためのみちのりが 既にザルになっているあたりもリアルだし。 あの場に立て籠っているといわれていた敵将校ってどうなったのか? ユニフォーム交換とか、何のために来たんだかわからなかったハックルゲームの 使いどころとか、畑の地雷元とか、トンネルを抜けた先とか、楽隊の参加とか、 一つ一つが好きでたまらない。 ああ、もちろんマカロニウェスタンなところも、タイガーの市街戦もね。 まあ何よりも一つ一つの事象のきっかけとなっているケリーが、その事後に 対して黙ってじっと見続けるシーンが何よりも好きなんだけれど。

『ゼイラム2』(1994)

(95/01/08記 at Niftyserve FMOVIE 3番会議室)  『ゼイラム2』は去年の暮れに観ました。もう終わってしまったのですか。 以前、WOWOWで前作をたまたま観て(森山祐子を)気に入ってしまい、こ の『2』もつい観に行ってしまいました。  で、全体的な感想ですが、前半は話を繋げるためにいろいろ苦労していて、 鉄兵がイリアをみつけるシーンぐらいまでは、今度はだめかな、なんて思って いました。  ところが、あの神社の待ち伏せシーンあたりからアクションシーンがどんど ん増えて、そこからはテンポよく『1』と同じくらいの調子でどんどん進み、 よかったです。  ただし最後の笑顔のアップは、このシーンだけ「イリア」ではなく、「森山 祐子」になっていたうえ、中途半端であったと感じたため、テンションが落ち てしまったように感じました。  と、ここまでは比較的猫をかぶった感想です。  そして、この作品を観に行った真の目的(!)「森山祐子」について  う〜ん、やはり森山祐子は色っぽくなって帰ってきましたね。前回やや慣れ ないといった感じが消え、前よりオ・ト・ナって感じ。 そのうえ、アクションンシーンでは何度も吹き飛ばされたり、「胸の谷間」カ ットも前回にも増して多かったり、・・・満足してしまいました。いいな、森 山祐子。  というわけで、今回はもりやまゆうこいのち〜のKANAME(CXE04355)でした。

『セイント』"The Saint"(1997)

(97/08/14記)  最初にこの映画の話を聞いた時に、あのロジャームーアの代表作で、それ がきっかけでジェームズボンド役にも決まったと言われているTVシリーズ、 『セイント』が頭に浮かんだのだけれど、「まさかな。」と思っていた。  ところが、フタを開けてみると、まさしく、あの『セイント』だった!  聖人の名を使い、世界中をまたにかけて活躍する正体不明の怪盗セイント。 私はもうその時点でこの映画が好きになっていた。  そして出来た映画は、 まさしく期待していた通りのもの。ヴァルキルマーがそれを見事に演じきっ ている。ワクワクするような展開、ロマンス、トリック、アクション。その どれもが「失われてしまった映画」、例えばある時期の007シリーズだっ たり、ジェームズコバーンの『電撃フリント』だったり、ロバートボーンの 『ナポレオンソロ』だったり、ディーンマーチンの『サイレンサー』だった り。今は無くなってしまったヒーローがヒーロー足りえる映画を見せてくれ た。私はそれがとても嬉しかった。  もちろん、設定に多少無理はあるかもしれない。けれども、これはぜひ、 シリーズ化してほしい。もちろん、次もヴァルキルマーでね。 あ、そうそう、最後にひとつだけ。 この映画のエンディングで、ヴァルキルマーがつけたラジオから、ニュース が流れてくるのですが、このキャスターの声、誰だか判ります?  そう、ロジャームーアなんですよ!

『世界中がアイラブユー』"Everyone says I Love You"(1996)

(97/12/07記)  『世界中がアイラブユー』を観ました。(97/12/06 at 恵比寿ガー デンシネマ1)  恵比寿での公開は19日までなので、滑り込みでしたがなんとか 観る事が出来ました。  まあ、恵比寿なんで午前中に整理券だけもらって夜観に行くと言 うパターン。おかげで今回は、映画館に一番に入れました。しかし、 さすがにもうすぐ終わりというだけあって客の入りは半分くらい。 (以降ネタバレあり)  そんな中で観たのですが・・・。 いやぁ、面白かった。ミュージカル仕立てとは聞いていたが、中身 は見事にウディアレン印。そしてウディアレンの世界って、実は、 見事にミュージカル的な世界だったことがわかって、それも面白か った。  どう観ても無理なウディアレン流の設定の中で、それを最大限活 かしてのミュージカル仕立てには、「あ、凄い。」としか言いよう がなかった。宝石屋や病院でのシーンなんかは特に。  そして、ティムロスの使い方も面白かった。あそこまで引っ張っ といてやりたかったのは活劇か?(笑)っていうのも良かったし、 唯一彼だけに画面中の主役の座を与えている(他の人達って、主人 公も含めて、見事に「画面の中に人がいっぱい」のシーンばっかり なんだよね。)のも、観ている観客をにやりと楽しませようとする 魂胆だったのだろうなあ。  そして、やはり一番のお気に入りは「チキータバナナの歌」だな なんて思っていた所で、あんな粋なエンディング! そうなること に対して完全に無防備な状態から「あらら、ゴールディホーンが・ ・・。」と言う展開には、もう、嬉しさひとしおでした。(^^)

『セシル・B ザ・シネマ・ウォーズ』"Cecil.B Demented"(2000)

(2001/05/21記 at @nifty FMOVIE 2番会議室)  『セシル・B ザ・シネマ・ウォーズ』を観ました。(2001/05/20 at シネ・ リーブル池袋2)  ここ最近観た予告の中で、最も「観たい!」と思ったのが、この『セシルB』。 そりゃぁ『猿の惑星』やら何やら、他にもいろいろあったけれど、この映画の 予告ほどの欲求はなかった。(次点はまったく別の観点で『メトロポリス』な のだが。(^^;) ただし、それは予告編としての素晴らしさではなく、自分の 感性との相性。なんってったって、ウェルメイドなジョンウォーターズだしね。 (^^) 安心して観に行く事が出来ました。 (以降、内容に触れます。)  残念ながら前作『I LOVEペッカー』は観ていないので、私にとっては 『シリアルママ』以来のジョンウォーターズ。 私なんかじゃ多くを語る事の出来ない人だけれど、その『シリアルママ』と同 様の丁寧でウェルメイドな、しかしどこまでが皮肉か本当か判らないような作 品を、ほぼ期待どおりみせてもらいました。 まぁ、そんな裏は考えず、ジョンウォーターズの作った世界に便乗しちゃうの が一番楽しめるか。(^^)  たまにかかる『栄光への脱出』のテーマとか、タイトルにもあるセシルBデ ミル、さらにはオットープレミンジャーやらサミュエルフラー、ペキンパやら ペドロアルモドヴァル、デビッドリンチなんかを思いだしながらというのも良 いし(けど、あざといのは『栄光への脱出』のテーマくらいか)、シネコンに スターウォーズとスタートレックしかかかっていなかったりとか、モール型の シネコンにかかるパッチアダムス完全版(ちゃんとフィルムを借りてる(笑)) やらをなんてベタだと思っていると、さらにはカンフー映画やポルノ映画館、 ドライブインシアターなどの観客を味方につけつつ、協会やファミリー映画と 戦っていく姿には、何やらお約束を通り越したものまで感じさせました。 ホント、逃げる彼らがカンフー映画のかかっている映画館を見つけた時の 「ヨシッ!」て感じは、やられたなぁと思いました。 しかし、親の説得に苦しむなよ>セシルB(笑) そして、こんな映画を楽しめない役者はやっぱりいないよなぁって感じで、 メラニーグリフィスもスティーブンドーフも、何か楽しそうでした。 何か、石井輝男とジョンウォーターズよ永遠なれ!っていうことで。(^^) kaname(CXE04355)

『ゼブラーマン』(2003)

(2004/02/19記 at @nifty FMOVIE 2番会議室)  『ゼブラーマン』を観ました。(2004/02/14 at ユナイテッドシネマ入間 スクリーン7) 我ながら不思議だなとあらためて思ったのですが三池監督の作品って『中国の 鳥人』以降一本も観ていない。(^^; 好きなタイプの作家だとは思っていたものの実に何年ぶりかの三池体験。 ただ、今回はそれよりも宮藤官九郎脚本のヒーローものという部分とそこに あてはまる主役が哀川翔という部分に惹かれたところが大きいかな。 (以降、内容に触れます。) さて、初日とはいうものの午前中の初回だけあってお客さんは150席超の 席のうち30席程度。 そして、なぜか初日のシネコンというのに、けっこうフィルムが傷んでる。 というよりは安くあげたんだろうなぁというタイプのフィルムのざらつき感。 脱力ヒーローものを鑑賞するにはある意味最高に近い環境であったかも。 なにかはまってしまいました。 しかし、この脱力感というかツボの押さえられ方ははまっていたなぁ。 視点も舞台もほぼ日常に近い部分から逸脱させずに進んでいくのも素敵。 防衛庁の銭湯型実験室(だったっけかな?)も、実は関西風の湯船が カランに囲まれているタイプだったりするところに妙にはまって しまったり、さらには継続実験中に頭洗うなよとかいう部分があったり。 冒頭のテレビヒーローと怪人の闘いもなかなか「なっちゃいな」くて 良かったな。 ホントまぁこうやってあげていくとほぼすべてあげてしまいたくなる くらい良いところを突いてました。キャラクタにしてもエピソードに しても。 あ、別のツボにはまったのはやはりゼブラナース。 凄かった。(笑) などと心地よい時間を過ごしているうちに話はだんだん佳境に入り、 脱力もしていられない事態になってくる。 この後半も、ある意味セオリー通りではあるものの、匙加減がまた 好みでして。(^^) こういうので熱くなるのって好きだな。 この際、『ゴジラ』も書いてくれないものかなぁと思ってしまいました。 監督はアレックスコックスか三池さんで。 あと、そういえば、後半のくだりって『中国の鳥人』じゃないですか。 これもまた意識してのクドカン脚本だったのかなぁ。 kaname(CXE04355)

『007/カジノロワイヤル』"Casino Royale"(1967)

1.映画を観る前に

(94/10/10記 at Niftyserve FMOVIE 3番会議室)  「007/カジノロワイヤル」"CASINO ROYALE"が渋谷シードホールで10月 15日から1か月間上映されると知りました。あの映画は何度も観てるしLDも持 ってるけど、また観に行きます。私はあの映画が大好きであるとともに、とて も憎んでもいます。  あの映画の存在を憎んでいる(というより悔しがっている)理由は、原作であ る"Casino Royale"という小説が、イアンフレミングの書いた007シリーズ の第一作であるとともに、とても素晴らしく(同シリーズの中で一番面白いと 思っています)とても映像的な小説であるため、ぜひ映画化して欲しいと思っ ているのに対し、そのタイトルで全く別の内容の作品として完成してしまって おり、しかもその完成度が別の意味で高過ぎるため、このタイトルでの原作の 再(?)映画化はまず無理であろうし、映画化権を持っている映画会社も、まず 権利を手放すようなことはしないであろうからです。これが、007シリーズの ファンとしてはとても悔しい。  ところがその一方で、私はピーターセラーズがとても好きです。そしてこの 映画は、見れば分かると思いますが、ピーターセラーズの映画だと思います。 あの、全体を包む雰囲気といい、この映画のどこかにブレークエドワーズが携 わっているんじゃないかと思えるほど、ピーターセラーズのカラーが出ていま す。  そのうえ、バートバカラックの音楽のいいこと!確か主題歌のWA Look of Love"はアカデミー主題歌賞にノミネートされたか賞をとったかどちらかだっ たと思います。本編でも流れるその曲は、私の一番気に入っているシーン、ピ ーターセラーズが水槽の前をスローモーションで歩く所から始まる一連のシー ンで流れます。これは感動物です。  加えて、監督が5人いたり、キャストがものすごかったりします。ピーター セラーズの他に、デヴィッドニブン、オーソンウエルズ、ウッディアレン、ウ ィリアムホールデン、果てはジョンヒューストンまで出てきます。これは凄い と思います。  というわけで、「007/カジノロワイヤル」は私にとってお勧めの映画で すが...、この文章を読んでどんな映画か分かる人はいまい。そのことについ ては観てのお楽しみ。ヒントは少し当時の世相が出てるということぐらいかな。 最後に、この映画はとても癖があるため人によっては「こんなもの勧めやがっ て!」と鑑賞後思われる方がおられると思います。いや、多分そういう人の方 が多いと思います。ですので、だまされたと思って観て下さい。だまされたと 思えば、少しは気が楽になるかもしれません。 注)この時は映画館で観れるのが嬉しくて嬉しくて、結構熱くなってました。 (^^;

2.『カジノロワイヤル』再び

(94/10/23記 at Niftyserve FMOVIE 3番会議室)  Fさん、おっしゃる通りです。少々私もはしゃぎすぎて、この間 のMESはあまり人が観たくなる内容ではなかったかもしれません。けれど も、この映画はとても思い入れが強かったもので...。  なにはともあれ、私も10月22日にやっと『007/カジノロワイヤル 』を観に行く事ができました。待ち時間に、映画館の中からあの軽快なメロ ディが流れてきた時、もう嬉しくて嬉しくて...。  それから、パンフレットはレコードのジャケット風でした。お値段は1, 000円。(引き続き『ナイトメア..』を観に行ったのですが、映画館の 前で並んでいる時、少し恥ずかしかった。)  客層は私(28才)が一番年上だったんじゃないかな、といった感じ。少 し意外でした。人数は20−30人ぐらい。  そして映画が始まり...、やはり映画館で観れるのはいいなあ。おかげ で今まで気が付かなかった細かい芸がいっぱいありました。(例えば... やはりここはご自分で観てもらいましょう)  また、本当におバカな映画だということも改めて実感しました。出だしは ちょっとつらいかもしれないけれども。 やはりこの手のオールスターキャストハチャメチャ映画は大好きです。 以上、今回もあまり映画の紹介にはなっていない...そして懲りていない KANAMEでした。

3.そしてその4年後

(98/08/12記 at Niftyserve FYOUGA 2番会議室)  しかしまぁ、なんて今年は映画館でNIFTYな知り合いに会うことが多いのか なぁなkanameです。(その前の回の上映の『オースティンパワーズ』にまで 懐かしい知り合いを見かけるし。(^^;) と、独り言はさておいて、『007/カジノロワイヤル』を観ました。(98/ 08/12 at シネセゾン渋谷)  私は、この映画が好きで、実は4年程前にパルコSPACE PART3にかかった時 にも観に行った(そして当時の映画フォーラムに書き込みもした)のですが、 やはり今回の上映も観に行ってしまいました。しかし、今回も行って良かっ たぁ!  心なしか、(映画館の設備の差か)プリントも4年前よりはっきりとして いるような気もするし、4年前に限定販売として作られたはずのパンフレッ ト(レコードのジャケットタイプ)なんてものまで売っている。(ただし現 在品切れ中)  そのうえ、スクリーンで観るこの映画は、やはり格別です。ピーターセラーズ のやっている細かい芸までもつぶさに観ることができるし、その他にも細かい 事はいろいろやっているからね>この映画。 (以降、ネタバレあり)  今回改めて気づいたのは、ピーターセラーズが、きっとそのひとつひとつが 有名な誰かの形態模写をやっているのであろうこと。  おおまかな所はなんとなくわかるんだけれど、かなり細かいセリフまで、 「芸」をしている。やったぁ、これでこそピーターセラーズだって唸っちゃ いました。それにしても主役のくせに、話の半分過ぎまで出てこないで、その 上話の途中で死ぬなよな>セラーズ(^^;  というくらい出てこないセラーズも好きだし、こてこてのウッディアレンも 好きだな。一説にはこの映画の脚本にもかかわっているとのこと。  オーソンウェルズも意味もなく手品したり目のアップ出したりとか、ひとり 飄々としているデビッドニブンも好き。  その他にも意味も無い、力比べとか、スパイ学校のデザインとか、ああ、意 味のないものをあげたらきりがないぞ。ボーンフリーネタなんて、今じゃほと んどの人が判らないだろうし、話の繋がらなさも凄い。さらわれた女を追っか けるのに凝った(しかもどう笑えばいいのか判らない)ネタをひとつ披露し て、次のカットで囚われの身になっていたりとかあっても、「まぁいいや」っ て気になっちゃうからなぁ。(こういうのとっても好きだし。)  あと、電話ボックス→ベルリンの壁ネタなんかも好きだけれど、やはり私が 一番好きなのは、この映画の主題歌「ルックオブラブ」がかかるシーン。 このシーン、すごくきれいで好きなシーンなのですよ。 音楽に合わせてスローで動くアーシュラアンドレス(出るなよ(笑))とセ ラーズ、そしてその手前に大きな水槽があって・・・、ああ、これは観てもら わないとわからない! なんで、この映画で涙を流さなくちゃならないのって くらい、このシーンで私は感動して泣いてしまいます。  しかし、こんな映画もう作れないだろうなぁ。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 かなめ(CXE04355) mailto: cxe04355@nifty.ne.jp takashi.miyamoto@nifty.ne.jp kaname@a2.mbn.or.jp URL: http://member.nifty.ne.jp/kaname/ http://plaza2.mbn.or.jp/~kaname/ http://plaza2.mbn.or.jp/~kaname/theater/ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『女王陛下の007』"On Her Majesty'S Secret Service"(1969)

(97/07/11記 at Niftyserve FYOUGA 4番会議室)  まだ夜が明けきらない暗闇に近い砂浜で繰り広げられる格闘シーン。 夕映えのスイスの山並みを背景に編隊を組んで飛ぶヘリコプタ。  こんな絵を見せてくれたのは、この『女王陛下の007』が初めてなのでは ないのだろうか?  (ドラゴも含めた)悪党どもは昼日中、思い切り太陽の光を浴びて笑みを絶 やさず、対するボンドはどこも日の当たらないところばかり。  おまけに007シリーズ唯一無二の悲しいラストシーン。どちらかと言うと ハリウッドメジャー系エンタテイメントだった007で、これだけの禁じ手を 使って今から30年近く前に作られたとは思えない映画を作ってしまった監督 のピーターハントはやはりすごいと思う。  その才能って言うのは、『女王陛下』以前の007映画で、有名な導入部エ ピソード、例えば『サンダーボール作戦』での人間ロケットや『ゴールドフィ ンガー』での秘密基地爆破から酒場へのシークエンス、『ロシアより愛をこめ て』でのスメルシュの訓練のシークエンスなんかを監督していたらしい。同じ くその後の導入エピソード、例えば『私を愛したスパイ』でのユニオンジャッ クのシークエンスとかを監督していた第二班監督のジョングレンが、その後、 『ユアアイズオンリー』みたいな傑作を撮っているところをみると、007シ リーズの第二班監督って言うのはなかなか侮れないかもしれない。  話は飛んだがこの映画の凄いところはまだまだある。 本編の中のかなりを占める雪山のシーン。雪崩もあるし、吹雪もある。スキー での追跡シーンとかそれに続く、有名な雪上車から掃き出される雪が血の色に 染まっていくシーン。前述のヘリコプタのシーンから続くサナトリウム襲撃の シーンなんかではボンドが足元を滑りながらマシンガンを撃ちまくるシーンな んていうのもある。(かっこいい。)  挙げ句の果てに、ボブスレーでの格闘! あんな悪魔的なスピードの出る乗 り物に乗って、コースに頭擦りつけるわ、引きづられながらも飛び移るわ、そ して最後にはネックハンギング。なんで生きているんだ>ブロフェルド!  ここまでアクションで楽しめて、その上最後に涙が頬を伝わったりする。こ んなに面白い映画だったのに、監督のピーターハントも、主演のジョージレイ ゼンビーもこれっきり。  まあ、それも、この映画をカルト化している理由のひとつなんでしょうね。  あとひとつ。 この映画、007シリーズでは一番の異端(カジノロワイヤルを除く)扱いさ れているけど、実は一番原作に近い精神の話になっているんですよね。原作で 唯一映画化されていない原作シリーズの処女作『カジノロワイヤル』を筆頭に 暗い終わり方をする話が多い。  エンディングで美女を抱いて羨ましい終わり方をする映画群に対して、悔し い、苦い思いで映画館を出るこちらの方が原作好きとしては正統派かもしれな い。(まあ、原作の『女王陛下の007』はシリーズ中もっとも異端の話なん だけれどね。)  と、言う訳で、久々に『女王陛下の007』をビデオで観ました。 kaname(CXE04355) ーーー以降2023/09/23追記分ーーー (2023/09/23 グランドシネマサンシャイン シアター6) シリーズ60周年記念上映での鑑賞。 4Kレストア版。 やはりフィルム上映を念頭において作られた作品はこうやってレストアされるとカット毎の クオリティや質感のバランスでつまづいたりもするのだけれど、それらを差し置いても 当時のセットやロケーション、やりたかった事見せたかったものをここまで綺麗に 見えるのは良いなあ。 紗をかけたダイアナリグのアップとかはその前後とのコントラストがきつくなったり とかはあるのだけれど、例えばドラコの誕生日パーティーでの闘牛シーン、Mやボンド、 ドラコの各執務室の内装。そういった本筋でない所にも心奪われてしまう。 で、そういったもの一切合財を体験した後に続くのが、ボンドの正体が割れて ケーブルカーの機械室に閉じ込められてからのそれこそ小休止を挟むものの延々と 続くアクション、そしてロケーション。 実を言えばここら辺だけビデオで何十回もひたすら見続けていたこともあるくらい 好きな所をここまで素晴らしい状態で観られる素晴らしさ。(語彙がない) スキーチェイスの素晴らしさ、BGMのオンオフで作られるリズムやサスペンス。何回も 繰り返されてやっと得られる成果とか、なんとかやりすごそうと下を向いた足元で サッと止まるスケート靴とか吹雪をやり過ごし夜が明けてからの再スタート。 果ては圧倒的な雪崩のシーン。 そこから物語上必要最低限な手続きを経てあの夕陽をバックに3機編隊で飛ぶヘリの シーンの美しい事。 あれは本当に涙出てきた。まあその後に本当に泣かされるんだけれどね。 どうしよう。色々と止まらなくなってきた上に取り止めも無くなってきた。 レイゼンビーにしてもダイアナリグにしてもいいんだよねとか、それこそあの オープニングシークエンス!とか、ユアアイズオンリーのアバンとかカジノロワイヤルの あのシーンとか延々と語っていたくなる。 観られて本当に良かったよ。 できれば雪崩と夕陽のシーンのためだけでも良い劇場で。 あ、ここまでピーターハントにもジョングレンにも触れていない。(笑) それよりもまずはMGMとUAのオープニングロゴの鮮明な事。 それに続く深夜のカーチェイスから夜明けの海岸、そして早朝の格闘という光源の移り 変わる時間帯での一連のシークエンスはこれドルビービジョン案件だよなあ。 前述のパーティーシーンやピスグロリアに入るシーンは昼間でしっかり景色を 堪能なのだけれど、これまた前述のピズグロリアからの脱出シークエンスは 夜から始まって馬小屋までが日付を跨ぐ前。 そして逃走再開から雪崩までが完全に日が昇ってからでトレーシー救出が夕陽を バックに。ん?あれ朝焼けだっけ? こういった時間帯跨ぎで刻々と景色が変わる中のアクションシーンが わかってるなあという感じなんだよなあ。(上から目線) 話変わるがカーリングのシーンはトレーシー救出の際にマシンガン撃つボンドと 同じ場所で同じような体勢なのが地味に好きだったりする。 好きなシーンといえばメッサヴィー卿の私邸のシーン。 執務室というかその前室のマネペニーへのありがとうを受けての目線を交わさない ボンドとの会話は大好きだ。 口紅の8があの体勢でよくあそこまで綺麗に描けたよなあとかボンドが手持ちの アイテムを工夫してドア解除の細工を作って出て行ったのに、戻ってきたら 爪ヤスリであっさりとでのシーンも好き。 これまた地味にピズグロリアで彼女達と初めて会う一連のシーンの後ろで (だったよな)整えられるたぶん風景自慢だったであろう元レストランの名残りを 示すディナーの準備や、それがたまたま居合わせた?現地人員の台詞にも 出てくる所との相互補強。 あの建物が風光明媚なのは前述の救出劇の時にさらに実感するのだけれど。 ここら辺も語り足りないが次へ行こう。 メインタイトルでの今まで振り返りでコネリーボンドのそれまでが流れて、さらに 辞表を書いて身辺整理の為片付けているボンドの机の中から出てくるアイテムとBGM。 ドラコの執務室へ連行されるシーンで掃除してるおっちゃんの口笛。地続きの 作品だよという感じである一方でこの作品はコネリーとは合わないよなと思う一方で 次作のダイヤモンドはレイゼンビーには合わないよなというあたりはある程度 当て書きとなる部分やアドリブなんかもあったりするのかな。 と、これでようやくレイゼンビーの話ができる。 初登場のシーンはその顔つきまで含めて違和感あるのだけれどアクションシーンの 映えはあの体格も活きていてボンドになってるんだよなあ。それら踏まえて ラストシーンでは紛れもないボンド。もっともらしくないようにみえるシークエンス なのだけれど。 さて、ここもまだまだ語り足りないのだけれど、まだピーターハントが出てこない。 これじゃ永遠に終わらないから先にジョングレンに触れておくか。 この作品の前までこのシリーズの第二班の監督と編集をしていたピーターハントから その仕事を受け継いだのがジョングレンでその後ムーンレイカー以降彼も監督と なるのだけれど、本作オマージュ的な所がそれらにあってそれも好きなんだよなあ。 諸々の権利がクリアになってようやく再登場したプロフェルドっぽい奴の特徴が あれなのが、その直前の墓参り含めて本作の続きであったり、そのユアアイズオンリーは 鳩との関係性や頂上の寺院など、けっこう本作の匂いが強くて好きだったりする。 同様に監督は違うがリビングデイライツやカジノロワイヤルが好きなのも少なからず 本作と同じ匂いがあるからというのもある。 と、ここまで書いてもまだ出てこないピーターハント。 まあ今まで書いたすべてがピーターハントの魅力なのだけれど、それは置いても彼の 魅力はアクションシーンだよなあ。何よりもスキーシークエンス。このカット割最高だし これだけでも永遠に観ていられる。そういえば、そういうシーンがあると知らずに 観ていた『インセプション』であんなシーンがあった時には血脇き肉踊ったよ。

『007/ゴールデンアイ』"GoldenEye"(1995)

(96/01/03記 at Nifyserve FMOVIE 3番会議室)  『007/ゴールデンアイ』を観ました。私にとっては待ちに待ったシリー ズ最新作。初めて観た映画が『007/私を愛したスパイ』だったし、好きな 小説家がイアンフレミング、その昔『カルトQ』で「007」のお題が出た時 は、本当に出場しようかと悩んだくらいの007好きだったもので。(しかし、 あまりにも長い準備期間があったために最近はすっかり忘れていました。(苦 笑))  さて、期待の結果は、よりスピーディで簡潔になっていて、ある意味では一 番原作のイメージに近くなってはいるのですが、私の好きだった、間とテンポ が失われてしまっていたのがとても残念。『インディジョーンズ』ものとかは、 そう言った所を受け継いだので、面白かったのにねえ。  そういう意味で、よくも悪くも『NEW BOND』と言う所は本当でした。 これが良い方に傾くか、悪い方に傾くかは、次の作品にかかっていると思いま す。本作では、まだなんとも言えません。  けど、面白かったですよ。  あと、パンフ開いていきなりネタばらしは勘弁して欲しかったな。と、これ は自分が悪いか。(苦笑) KANAME(CXE04355)

『007/トゥモローネバーダイ』"Tomorrow Never Dies"(1997)

(98/03/07記 at Nifyserve FYOUGA 2番会議室) 『007/トゥモローネバーダイ』を観ました。(98/03/07 at 立川シネマシ ティ シティ1 先行オールナイト)  来年の11月には、もう次回の作品の公開が決定していると言うことで、ダ ルトン=ボンドからブロスナン=ボンドに移行するまでの長い空白を埋めるか のように、新作のペースがあがってきた007の最新作は、シリーズものと言 う制約の中で、なかなか面白い作品でした。 (以降、ネタバレあり)  やぁ、もう、何が嬉しかったって、あの音楽の使い方!! 私の大好きな名 曲「007」は使われなかったものの、あのフレーズは懐かしかったぁ! 今回の音楽担当のデビッドアーノルドは、なかなかに007映画が好きだった らしく、その音楽の使い方は感涙ものでした。  そしてオープニングタイトル!! 最近はカイルクーパーひとりに、お株を奪われっぱなしですが、007映画の 楽しみのひとつと言えば、このオープニングタイトル!! それが今回は面目 躍如とばかりでこれもとても嬉しかったです!! で、本編ですが・・・、 実は、今回は先にノベライズを読んでからの鑑賞だったのです。というのも、 このノベライズをした作家レイモンドベンソンは、現在、原作者イアンフレミ ングの後を継いで007シリーズを書いている3代目のボンド作家で、この人 の書いた007シリーズは、この作品が邦訳第一作めとなるので、映画よりも 何よりも、実はそちらの方が興味があったからなのでした。ですので、出版さ れると同時に買って読んだのですが、これがなかなか面白くて、またこの作家 の007好きな所もよくわかってしまったので・・・、 故に映画のほうの話の展開に関しては、何とも言えません。 が、それを置いといた話にしても・・・、 今回の話はやや展開に説明不足のところが多くて、それが少し不満でした。  だもので、このままでは今回はいまひとつだったなぁと思いはじめたところ に・・・    ミシェル・ヨー!!  話の展開が、ややそういう傾向にある上に、ボンドや、他のキャラクタが 全体的に沈みがちだったのに対し、彼女が出てくると、絵が生きる生きる!! 特に、ボンドとのコンビネーションプレイ、中でもバイクのシーンは最高に 楽しませていただきました!! あとは、まぁ、スタンパーがなかなかなキャラクタでまあまあ良かった程度 かな? で、そうそう、ハロング湾として出ていた所ですが、「どこかで観たことがあ るなあ」と思っていたら、あの『007/黄金銃を持つ男』で出てきた、あの 島じゃないですか。何となく形に見覚えがある湾だったし、小島だった。 さらには、アストンマーチンも出てきたし、『ドクターノォ』で観たような ショットは出てくるし、かと思えば、ロジャー=ボンドは良くこういうシーン があったなぁとかなかなかにそういう所では楽しませていただきました。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 かなめ(CXE04355) mailto: takashi.miyamoto@nifty.ne.jp     kaname@a2.mbn.or.jp URL http://plaza2.mbn.or.jp/~kaname/ http://member.nifty.ne.jp/kaname/ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『007/ワールドイズノットイナフ』"The Word Is Not Enough"(1999)

(2000/02/06記 at @nifty FMOVIE 2番会議室)  『007/ワールドイズノットイナフ』を観ました。(2000/02/05 at 池袋シネマサンシャイン4番館)  「え? 007の新作が全米ボックスオフィスでNo.1?」 前回の007シリーズ『トゥモローネバーダイ』も、例えばボンドの 相棒となる中国の女性諜報部員としてミシェルヨーを起用したりして 「従来の枠を超えた作品」を模索していたこの007シリーズでした が、今回は、監督に『ネル』のマイケルアプテッド、ボンドガールに ソフィーマルソー(!)、悪役にロバートカーライル(!)というま た予想が出来ない布陣。  あと、ジョンクリースがQの後がまとして出てると言うのも、どう なり得るのか予想出来なかったな。(^^) ただし、『007/ゴールデンアイ』が同シリーズ中最もつまらなかっ たと言うことと、歴代ボンドの中で、原作のボンドに実は最も近い雰 囲気を持つティモシーダルトンを降ろした後として、今ひとつの感を 脱し得ないピアースブロスナンが、またもボンド役と言うことに不安 を覚えつつ(ただし、『トゥモロー・・』でややポイント回復)も、 意欲あるキャスティングが、ボックスオフィスに結果として出てきた 事が、なんと嬉しかったことか! というわけで、公開初日のオールナイトに早速観に行ってきました。 (以降内容に触れます。)  さて、結果としては、「これはプロデューサの勝利だな。」と 思いました。監督やキャストの人選も、今回のこの作品に関して はすべてマル。  また、007シリーズには、さすがにシリーズを何本も続けて いるだけあってか、その何本かに一作の割合で、「シリーズから 趣きは外れてしまっているものの、映画としては快作足りえる作 品と言うのが出現するのですが(具体名を挙げると『女王陛下の 007』、『007/ユアアイズオンリー』『007/リビング デイライツ』)、その何本か現れる快作のひとつとして、あらた にこの『007/ワールドイズノットイナフ』が増える結果とも なりました。  さて、その大あたりな人選。  まず、マイケルアプテッドをこの作品に選んだのは大あたり です。というか、この脚本となったのがまず大あたりか。  前作『007/トゥモローネバーダイ』は、アクション面にお いてハリウッドにも吹き荒れる「香港アクションの旋風」を受け 入れ、今までにない空気を送りこんでくれました。 ところが、一方で、「主役が目立たない(特にアクションシーン)」 という2次災害も発生。話の上でも、やや底が浅くなっている 部分も見受けられました。(ただし、これはシリーズの宿命か。)  それが、この映画では見事にフィードバックが入っていて、 その際たる部分が、脚本にかなり影のあるものを持ってきた事と その部分をアクション系の監督ではなく『ネル』のマイケルアプ テッドにして、エレクトラとレナード、そしてボンドの関係を、 アクションの中で見せるのではなく、ストーリーの中で見せる事 に見事成功した事。  このソフィーマルソー=エレクトラ、ロバートカーライル=レ ナードのキャスティングも見事でした。ただ、レナードが悪役の キャラとしてはやや弱いことが、残念かなと思える向きもありま す。しかし、それもある意味意図的なものなので、マルです。  一方、アクションシーンも、実に長く豪華にみせてくれる。 本当に贅沢な作りの作品となっていました。まぁこのアクション シーンの贅沢さは、007シリーズは特別ですからねぇ。  ただ、このアクションもドラマも豪華にしたことで、かなり 長い作品に見えるかもしれません。けど、それでもこの作品は こういう形にして良かった! ピアース=ボンドの中で一番の 作品となっています。  あと、そうそうジョンクリース。そうかぁ、そういうキャラク タで来たかぁと目から鱗でした。 そして、この作品でジョンクリースと役周りを交代となるQこと デズモンドリューエン。この人の登場シーンの最後は、ある種 意味深いものになっているのが、なんとも言えなかった。  さて、こんな感じで従来の壁をようやく破った本作ですが、 良く観ると、ボンドのキャラクタと言い、ソフィーとバランスを 取るためのもうひとりのボンドガールとして、デニースリチャー ズを起用(これもあたり)と言い、実は、ムーア=ボンドとコネ リー=ボンドの中間を狙っていて、しっかりシリーズの雰囲気も 復帰させているんですよね。これも見事。  さらには、オープニングシークエンスからタイトルロールの 見事さは、ホント、007シリーズで、ここも、とても嬉しかっ たです。 ただし、「ああ、作品が終わった!」というところで日本語の曲。 それも、なんでこんなに声量も何もない、ハズレな人選を、ここに 持ってくるかぁというのをやられてしまい、すーっと映画から 覚めていく自分というものを体験させてもらえたのは、良いと見る べきか悪いと見るべきか。(笑) kaname(CX04355)

『007/ダイアナザーデイ』"Die Another Day"(2002)

(2003/03/30記 at @nifty FMOVIE 2番会議室)  『007/ダイアナザーデイ』を観ました。(2003/03/23 at 渋谷パンテオン)  シリーズ40周年、20作目、そして原作シリーズも50年記念というトリ プルの節目であるこの作品。果たしてどうなのか? (以降、内容に触れます。)  個人的には今まで今ひとつしっくりいかなかったブロスナン=ボンドでした が、前作で吹っ切れたのか、今回は本当にはまっていました。  そして、やはり節目の作品ということで、『007/私を愛したスパイ』並 みの「記念作品」的な内容。 過去の作品へのオマージュと大作的な雰囲気に溢れ、ファンとしては嬉しい限 りでした。 ただまぁ、先に読んだノベライズに比べるとオマージュ的な部分はややインパ クトが弱かったか。 それでも、Qセクションの秘密のアジト的な雰囲気は『007/黄金銃を持つ 男』のそれを髣髴とさせてくれたり(まぁ地下鉄の駅という設定は『007は 二度死ぬ』のタイガー田中のアジトか(^^))もしたし、なにげなくそして所狭 しと並べられた過去の遺品(007/サンダーボール作戦』のジェットパック や『007/オクトパシー』のアクロスターとか)も良かったし、今回のボン ドカーもかの『私を愛した・・・』のロータスエスプリクラス(^^)。 世界を縦横無尽に駆け抜けるその様も、北朝鮮・香港・キューバ・英国そして アイスランドと多岐に渡っていましたし。 なかでも、やはりキューバを出したのは良かったな。昔のジャマイカっぽさが なんとなくあって『007/ドクターノオ』の雰囲気も味あわせてくれました し。 悪役の設定も久々にらしさが出ていたな。 『007/ロシアより愛をこめて』も悪の組織は実はロシア(当時はソ連か) の諜報機関ではなく、その機関を隠れ蓑にした別組織であったりとか、味方で あったはずの人物が実は敵であったりするところは『007/ユアアイズオン リー』か。 『ロシアより・・・』といえば、さすがに鏡裏の盗み撮りはちょっと強引過ぎた かな。(^^) マドンナも出てくるフェンシングのシーンはどことなく『007/ムーンレイ カー』のヒューゴドラックス邸を思い出してしまったりもした。 そうそうマドンナといえば主題歌とオープニングタイトルも良かった。 銃弾をCGで書いたのはいただけなかったけれど、『・・・二度死ぬ』や『00 7/ゴールドフィンガー』を髣髴とさせるものがありました。  音楽のデビッドアーノルドも全般にわたってシリーズに忠実なスコア(と いうよりはジョンバリーのよくやってた方法)で面白かった。ここでこれをい れるのはそうだよなぁと特に思ったのが英国に戻ってきた時。うまく説明でき る自信がないのでここは書き捨ててしまうけれど。(^^;  そしてこのシリーズの楽しみの一つのプレタイトルシークエンス。 ここはちょっとノベライズの方が良かったかなとは思うものの、この手があっ たかと言わんばかりのアイデアものだったし、またこれがクライマックスに繋 がったりもするあたりは『ロシアより・・・』『黄金銃・・・』を髣髴とさせてくれ る。 敵の秘密基地が崩壊寸前で・・・のシークエンスもしっかり入れてくれていたな。 パインウッドスタジオを使うからにはあれをやってもらわないと。(^^) と、こういう止めどもないことを書いているといつまでも続きそうな、そんな 嬉しい作品でした。 kaname(CXE04355)

『007/カジノ・ロワイヤル』"Casino Royale"(2006)

[2006/12/05記] (2006/12/03 at ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン8) 『007/カジノ・ロワイヤル』を観ました。 (2006/12/03 at ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン8) 製作者であるイオンプロにとってはもちろんのこと、 私にとっても念願の映画。 MGM、そしてコロンビアのロゴマークが出てきた時には まさに万感の思いでした。 ホントこのためだけに結果的には一時的なものとなって しまった買収劇があったのではないかと思えるくらい。 そしてその内容も充分に満足のいくものでした。 原作のいくつかの肝となるシーンをすべて持ち合わせて いて、それでまた新しい話を作ってしまうとは。 脱帽です。 この作品になくてはならないものがすべて揃ってる。 ヴェスパーは当然として、フェリックスもルネ・ マチスもいる。 しかも戸田奈津子訳にも関わらず、あの台詞は井上 一夫訳と同じという嬉しさ。 そしてさらにオープニングシークエンスからホントに ハードなこと! ブロスナンを除くすべての歴代ボンドが一作はあった ハード路線を今回は完全に越えたな。 ピーター・ハントも真っ青だよなあ。 作品にちなんだオープニングロールも久しぶりだなあ。 これがないとねえ。 そしてダニエル・クレイグ。 今回の一件でホントにピアース・ブロスナンのことが 嫌いになったのは差っ引くにしても充分です。 エヴァ・グリーンも最高。 いやぁ、これぞボンドガール。 唯一少し残念だったのは、あの前フリがちょっとあから さますぎたかな。 傷はそれくらいか。 なんだか懐かしいものの洪水に包まれてしまったかの ようでした。 ********** [2008/01/28記] (2008/01/26 at DVD) DVDを買ったので『007/カジノ・ロワイヤル』を久々に観ました。 (2008/01/26 at DVD) いやあ、やっぱり原点回帰してくれて良かった。 迷走していたブロスナン=ボンド時代の暗黒ぶりが嘘のようです。 しかも原作の中でも最もああいうトーンで描いて欲しい「カジノ・ ロワイヤル」ですもの。 既にタイトルは使われているので無理だとは思うけれど、「ムーン レイカー」や「私を愛したスパイ」も原作に近いトーンでリメイク してもらいたいと思ってしまうくらい。(あれらはあれらで別な意 味で好きではあるのですが。) オープニングタイトルも(映画の)シリーズ最盛期の良さを取り戻 しているし、デイビッド・アーノルドのスコアもジョン・バリー節 から最後にモンティ・ノーマンなんていう粋な事してるし、何より も、今の時代でも(今を取り込みつつ)正統派アクションをしっか りと贅沢に見せつけてくれる。 原作エピソードへのエクスキューズとそこにさらに新しい事を練り 込んで楽しませてくれるうまさも復活してくれて言う事無しです。 唯一無かったのが刻印と皮膚移植くらいなものか。 これでこそと思わせてくれるものをほぼすべて用意してもらえて、 それこそ40数年に渡る待望を満を持して叶えてくれたイオンプロと MGM、そしてコロンビア映画に感謝ですな。(あれでUAのロゴなん て出てきた日には感涙を超えて号泣ものだったかもしれない。) ********** [2020/08/12記] (2020/08/11 at Movie Plus録画) このメロディラインの使い方。 時代を取り入れたアクションの数々。 それでいて元々原作の持っていたある種のストイックさも持ったこの作品。 例のくだりに入るまでは自由な所はかの『カジノロワイヤル』と同じなんだよな。 それこそがかの原作の顔といえば顔なので。 残念ながらかの方はそこ止まりだけれど、こちらは原作のもう一つの大きな トピックがクライマックスとして用意してある。 シークエンスシークエンスでの仕掛けも面白い。 その中でもやはりヴェスパーが彼をボンドにしていくのは彼女の原作での役割に 二重の意味を持たせてくれるという意味でも良いよな。 そういう彼を知っているからその後の彼をその前提で見続ける事になるのだから。

『007/慰めの報酬』"Quantum of Solace"(2008)

[2009/01/18記] 『007/慰めの報酬』を観ました。 (2009/01/17 at MOVIX亀有 シアター9 先行上映) 前作に引き続き、相も変わらずハードな上に、数々の仕掛けにしびれさせていただきました。 ホント良いわ。 (フレミング生誕)百年のお祝いにある意味ふさわしい作品ではあったかな。 (以降ネタバらしますので要注意) のっけ、アヴァンタイトルのアクションから思い切りハード。 例えば同じくワインディングロード使った『007/リビング・デイライツ』を彷彿させつつも カット割りの格好良さと速さにしびれさせてくれる。 さらに、前作の続編だということが提示され、メインタイトル(これがまたしても格好良い) の後に、この世界の世界観をひびを入れるひと言。 「私たちはMI6やCIAに常に監視されているのではないかとびくびくしていたよ。」(ってな感 じのひと言) 「なぁ、そう思うだろ?」 スパイ映画の定番とはいえ、そこから間髪を入れずアクションシーン(しかもまたもやハード) を突っ込んでしまうあたり格好良すぎる。 そしてこのアクションもものすごくエッジの効いたもので…というよりはほとんど観客おいてき ぼりに近いほどのもの。 生温いアクションなぞありやしない。 続いて、シエナ(記憶違いかも)、ロンドンと続いた場所表記のロゴが何となく気になっていた のが次のハイチで「このロゴかよ!」ということで、「あ、ここも遊んでいる(凝ってる)のね」 ということにようやく気づかされる。 何もかもが最初に「もしかしたら」と思わせておいて次に、「ドン!」とそのままのものを出して くるのね。 象徴的なのが「観た事があるようなダイビングシーンのカット」があって、そこからし ばらくしたら「オイル」のシーン。前者はたしか『007/ムーンレイカー』後者は言うま でもなく『007/ゴールドフィンガー』。 で、そこであらためてアヴァンのワインディングロードも再び思い出される。 エア・チェイスも『007/リビング・デイライツ』や他のものを彷彿とさせてくれたなぁ。 そういえば、ここでのボンドとカミーユの関係も伏線ありの世界。 ボートチェイスでのお互いの役割分担をここでしっかりと行動で示す事でお互いの関係 の変化を明確に表すもののひとつにしている。 しかし、カー・チェイス、パルクール・チェイス、ボート・チェイス、エア・チェイス となんとまぁ贅沢な事か。 元に戻す。 もうひとつ象徴的なのがさきほど挙げたひと言。 しばらくしてこの世界観を完全に壊してくれるひと言を出してくれる。 そこで、決してラングレーも味方ではないという事を提示し、さらにフェリックス・ラ イターに「それをさせるか!」なんて事まで状況を作る。 これには本当にしびれました。 ルネ・マティスもそうなんだよなぁ。 けど、この二人とボンド自身にはさらにしびれさせてくれるシーンを用意してあり…。 ああ、何か書いているだけで涙出てきた…。 で、少しだけ元に戻って、この話に加わっているものたちの顔ぶれの提示の仕方もまた 格好良く、同時にこの世界が今までの(『007/カジノ・ロワイヤル』以前の)ボンド映 画のものではなく、小説「カジノ・ロワイヤル」以降提示し続けたイアン・フレミング の想像した世界により近い世界をよりリアルに表現させようとしている事に気づかされ る。 例えば、『007/ロシアより愛をこめて』で原作「ロシアから愛をこめて」からひとひね りしてスメルシュの陰謀であった「スパイに死を」の計画を実はそこに潜入しているス ペクターのものに変えてしまったのは見事だと思ったけれど、スメルシュ自体の提示が あまりにも唐突過ぎたので荒唐無稽にみえてしまったのだけれど、こうやって徐々に煽っ ていくと決してそのように見えないのだな。 スメルシュの存在の(一応)終わった世界でもう一度出した「スパイに死を」(『007/ リビング・デイライツ』)はそれなりに成立していたか。(ってあれは「スパイに死を」 そのものはブラフだったけれど。) そう、ル・シッフルからホワイト、グリーンと続いたこの世界の先には間違いなくスペ クターが存在している。 しかもこの先のシリーズでも、最後までスペクター本体を提示しないまま終わり、最後 まで想像の範疇にそこがあるかもしれない程度で終わらせてくれるかもしれない。 なんと甘美な世界である事か。 と、少し暴走してしまったので軌道修正。 今回のボンドのパートナーはまた本当に魅力的。 正直予告まではそこまでとは思わなかったのだけれど、実はヴェスパー・リンド(エヴァ・ グリーン)に勝るとも劣らないくらい魅力的だった。 しかも今回ボンドは一度も手を付けていない。(あれ、ヴェスパーもそうだっけ?忘れ た) そういえば彼女のトラウマの使い方も見事だったなぁ。 目の前で仇である将軍が同じような行為をしようとしているところで仇を討たせ、これ で伏線終わりかと思っていたらもうひとつこんな伏線まで用意していたとは。 で、思い出したが、小説のほうでのヴェスパーにたいしての最後の一言は、ボンドにとっ てはこういう意味だったというのをマティスを使って示してくれていたなぁ。 一方で小説世界でのヴェスパーとトレーシーの扱い方の矛盾(というほどでもないか) を、このシリーズではボンドはヴェスパーの扱いをまるでトレーシーと同じであるかの ように扱っている。 この世界では小説のヴェスパーとトレーシーを合わせたキャラクターがヴェスパーなの だろうな。 たぶんこの先もトレーシーは出てこない。ということなのだろう。 と、ここまで妄想を膨らませていくと、本当に原作が好きな人間が作り上げた世界なの だろうなぁということにあらためて気づかされる。ホント、うまく咀嚼してくれている。 で、一方で過去の映画にたいしてはというと、前述のようにオマージュというか彷彿と させてくれるシーンをいくつも用意してくれている。 果ては、あの無駄に豪華な要塞ホテル。(ホテルというのはこの場合隠語なのか?って たぶんそうだな。) あの存在は過去のシリーズを意識したものという以外なんといえば良いのであろう。 弱点をその登場ののっけからさらしだしてくれているし、そしてその期待にそぐわぬ活 躍をしてくれているし。 さて、また元に戻そう。 「最も貴重な資源」=「水」はあまりにも判りやすい展開であったな。 ただし、それはこの世界であれば当然の事。(そして西部劇…いやそれ以前の世界から 普遍のお約束) まぁ、ここはあまり突っ込まない事にしよう。 最後、ヴェスパーの敵討ちをああいう形で終わらせるとは思っていなかった。 MI6もボンドもただ前述のひと言にたいして負けている訳ではないということも示してく れている。 クレイグ・ボンドの世界観の足固めはこれでひと通り終わった。 エンディング・ロールでJAMES BOND WILL RETURNも示してくれた。 さて、このボンド次はどこに進んでいくのか? 期待通り、いや期待以上のものを楽しみにしています。 ********** [2020/08/12記] (2020/08/12 at Movie Plus録画) ダニエルクレイグからのシリーズが今までと比べてとてもしっくり来るのは、小説的な 佇まいがそこかしこに見られるからかなとこの作品を久々に見て改めて思った。 それでいてがっつりあるアクションシーンやら過去作品のオマージュやらが 散りばめられているという所が好きなのだな。 実は初見の時はそれほど気に入っていなかったのだけれど、それには作品とは 関係ない別の理由がしっかりあったというのもあるのかな。 フレミング特有の真実をたくみに使った大嘘に対して、物を変えてシンプルに 成立…というか石油で窒息するという現代の環境で目にする事の多くなった 事象に差し替えてオマージュしてるあたりは大好きな所だ。 まあMrグリーンなだけあって環境を逆手に取ったネタが多かったな。 作中で一番好きなのは初見から変わらずマティスとの最後のシーン。 これを見て原作そのままのボンドが今そこに立っていると思った。 何だよ大好きなんじゃん私。

『007/スカイフォール』"Skyfall"(2012)

(2012/12/01記) 『007/スカイフォール』を観ました。 (2012/12/01 at ユナイテッド・シネマ豊洲 スクリーン10) これでもう3作めなんだな。 すっかり自分のカラーを持ったポンドも板に付いてきたダニエル・クレイグは今回も上半身裸度やら椅子に縛られて やら銃創やらそのほか傷だらけやらでした。 さて、これからは本格的にネタバレ ええと、ある人物が名乗った時点でいろいろ判ってしまいました。 その人の名はマロリー。まあメッサヴィーならより判りやすかったんだけれどさすがにそこまではやらなかったか。 そして、彼の秘書といえば…最後にやはり名乗りましたね。 …と実は誤読してしまいました。 昔ポンドのモデルのひとりに登山家のジョージ・マロリーが入っていたような気がしたんだが気のせいでした。 Mの着く名が出てきた時点で何か勘違いしたか?〉私(笑) 結果は当ててしまったのでなんと言っていいのやらだけれど。 さて、そんなバカな話は置いといても、また過去作品への愛が詰まった作品でした。 とても判りやすいアストンマーチン、ギアシャフトのヘッドは予想通りだし、やはりそのボタンはあれなのね。 ちゃんとフロントのマシンガン使ってくれたし、けどさすがにリアウィンドウの鉄板はなかったか、とか。 人肉大好きそうな動物が庭に放たれているとそうなるよね、とか、やたら自分語りが好きだったりとか(誰が?)、臨時 作戦本部ってそうだよね、とかQ課が出てくるときはたいていハンドガンが最初だよねとか(けどブースロイド少佐では なかった)、香港マカオ方面で象徴的な1度目の死からの蘇りなシーンがあったりとか、カジノは必須だしマーケットも 必須だよね。 電車はやはり屋根の上の殴り合いでトンネルありだし地下鉄は歩いてれば電車来るし情婦のボートに潜入は基本、 狙撃のシーンはその手順をしっかり見せるし銃撃戦の弾切れで銃捨てて死体から銃奪うのも基本。 ガラスは派手に割れるしフロントガラスは銃弾受けたら曇って前が見えないから銃床で割る。 地下鉄には誰も知らない道があるし凍った湖の上を歩いてたら落ちるよね。 エージェントとしての適性試験は不合格なのもデフォだ。療養所行きにならなかっただけありがたいと思わないと。 そして、かつてのエージェントはいつしか敵になる。 うん、やっぱり自分に番が廻ってきたら全部やりたいことばかり。 そして主題歌はジェームズポンドのテーマをうまく混ぜたもので個人的にはサンダーボールを思い出す。 さあて、そんなディテールを置いて作品そのものの話になると、影響受けてるなと思われるのはやはり『ダークナイト』か。 故に本国やアメリカではヒットしても日本ではヒットしないんだろうな。 けど好きだ。 愛してる。 残念だったのは久々の実写映画でやはりマナー悪い遭遇率が高かったこと。最近は訓練された子ばかりが多かった から、映画観る気なくてスマホずっといじっている右隣と「あ、戸田奈津子さんだ」とか独り言の多い左隣に挟まれて しまった。 なっちにさんづけしてるのは初めて聞いたよ。 意味の分からない訳は健在でした。〉なっち ********** [2020/08/12記] (2020/08/12 at Movie Plus録画) スパイに死を。 死の淵から数ヶ月経ての職場復帰。 Qから支給されるPPK。と、思ったらベレッタは本来の使われ方しているし。 そしてアストンマーチン。車内からはスクリーンプロセス調。 メッサヴィーだとあっさりわかってしまうからな。 などという事はあれど、不特定多数の個人の集団が連鎖しているという本来の幽霊な 設定に戻っているのは良いな。 そして連続性が高いが故にこうやって集中してみるのもまた楽しい。 残りはあと1本。

『007 スペクター』"Spectre"(2015)

(2015/12/05記) 『007 スペクター』"Spectre"(2015)を鑑賞。 (2015/12/05 at TOHOシネマズ新宿 Screen 9) 『カジノロワイヤル』から仕切り直してここまで続いてきたシリーズも、満を持して ようやくこのタイトルに辿り着いた。 ああ、そうか。 ここにたどり着くための今までだったんだな。 この新シリーズから張られ続けたものたちが007/James Bood誕生の次の到達点として 見事な形になっていました。 目指していたのは、原作とそれまでの映画の要素をコラージュして「今」の形に再構成 したものだったのか。 当時以上にシュールな存在と化していたスペクター。 当時のまま作るともうオースティンパワーズにしかなり得ないし、何よりもこれは 「今」なスペクター。 ブロフェルドを名乗るときの服装、そしてペルシャ猫。 再登場の際の義眼や傷痕がほぼ映画そのままなのがなんともいえない。 そしてコラージュされたものたち。 アバンの死者の祭りはさながら『死ぬのは奴らだ』で、列車のコンパートメントやら 鏡の裏側の隠し部屋は『ロシアより愛をこめて』、山頂のサナトリウムや雪山の麓の 小屋に突っ込んだり、セスナ機のカーチェイス、股裂きより怖い高速椅子、果てには ムーンバイクや隕石までと目白押し。 オクトパシーや珍魚ヒルデブランドとかまでホントによく詰め込んだな。 挙げ句の果ては、いや、ポンドそれはダメだ。マドレーヌがテレサポンドの ポジションに収まってしまうぞと言わんばかりの終わり方。 次回作に2つの未来を感じさせて終わった。 ひとつは、まだ生き残っているであろうブロフェルドの用心棒により、まるでテレサの 時のようにボンドの横に座るマドレーヌを奪われ、原作の二度死ぬさながらに復讐鬼と 化すボンドという図式。 もう一つはマドレーヌがミスターホワイトの後を継いでいたというパターン。 あるところから茶番を見せられていたというパターンだな。 どちらの未来なのだろうか。 話を戻そう。 MI6のあれって元々今回を見越してのものだったのかなあ。 あと、アバンのコントのような建物爆発の真相は? そのアバンのヘリアクションの背景はCGだよなあ? たぶん4Kが一番映えたのは北アメリカの夕日なシーンかな。 そしてブロフェルド登場以上に苦しんでいるように見えたのはボンドがいかにしてベッド インするかまでのシークエンス、とか。まあとりあえず原作と映画全部見直してから きやがれ的な作品でもありました。 いやあ楽しかった。 ********** [2020/08/12記] (2020/08/12 at Movie Plus録画) 山の診療所。 列車のコンパートメント。 ブロフェルド。ヒルデブランド。 映画の方の007シリーズを今風に解釈するとこんな感じかの本拠地でのやり取り。 さて、今回見直してみて下手に知っているつもりになっていたが故に色々誤解 しながら見ていた所がけっこうあった事がわかった。 何で?と思っていた所もある程度話が繋がった。 このままいくとマドレーヌはトレーシーになってしまいそうな終わり方をしたが、 まだ掌の上で転がされている感があるショットをわざわざ残しているんだよな。 さて、これからどこへ進んでいくのだろう。 次回冒頭で既に別れていたりすればとてもらしいと思ってしまうのだが、この4作で 既に連続性が高いからなあ。

『戦場にかける橋』"The Bridge On The River Kwi"(1957)

(2007/08/17記) 『戦場にかける橋』を観ました。(2007/08/16 at テレビ東京) 初見は中学生のとき。そして最後に観たのが二十歳くらいだったと 思うので20年ぶりの鑑賞ということになるのかな。 (以降、ネタバレあり) しかし今改めて見返してみると、やはりけっこう忘れているなぁ。 シアーズ少佐やウォーデン少佐のパートがあれだけ長かった事など すっかり忘れていました。 さらに、当時は誇り高き英軍将校というものの格好よい部分にのみ 惹かれていたが、実はそれほど単純なものではなく、英軍将校であ るニコルスン中佐やウォーデン少佐が、いろいろな部分で実は最初 から自己矛盾や狂気を最初から抱えていることや、それを共に米軍 のしかも将校ですらないどころか身分詐称までしているシアーズ少 佐に気づかされるという図式など、いろいろなものが重なりあって いることに、今更ながら気づかされました。 そういう意味で、昔はなぜこれをデビッドリーンが?と考えていた ものが、たしかにこれはデビッドリーンだなと今回初めて思えるよ うになりました。 今回はテレビ放映の鑑賞だったのでまた近いうちに見直したなぁ。

『戦争のはらわた』"Cross Of Iron"(1977)

(2000/02/27記 at @nifty FMOVIE 2番会議室)  『戦争のはらわた』を観ました。(2000/02/26 at 渋谷シネア ミューズ イースト)  この作品は、中学生から高校生にかけての、まだ映画を見始め たばかり、そして今までで一番量を見ていた時期に出会ったもの で、その中でも特に好きであった作品。当時は監督で映画を見る なんて事はしていなかったにも関わらず、この作品の監督である サムペキンパとジョンフォードだけは、例外的に好きであった頃 に出会った作品でした。 (ちなみに、同じ頃小説で何よりも好きだったのは、レイモンド チャンドラー。いかにして、今の自分にとっての理想が築きあげ られたかが、今となっては、とっても判ってしまいます。(笑))  それだけに思い入れは強くて、今回、東京は渋谷のシネアミュ ーズのスクリーンでのリバイバルは、本当に嬉しかったです。 (以降、この作品及びペキンパ監督の他の作品の内容に触れます。)  さて、久々に再会したこの作品。やはり記憶のかなたになっていて ところどころ、記憶違いやら忘れていたところやらを思いださせても らったというのもあるのですが、それよりもまず、あらためてこの作 品のテンションの高さとその持続性を再確認させてもらいました。  同じくペキンパ監督の最高傑作だと思っている『ワイルドバンチ』 は言うに及ばず、『ゲッタウェイ』や『バイオレントサタデイ』など 他のほとんどの作品において、かなり最初から最後までハイテンショ ンが続くのですが、息の抜けなさにおいては、この作品が最も高いか もしれない。安らげる場面は、ほとんどないです。この監督お得意の スローモーションと同時多発なカット割の、まさに応酬!  逆に、唯一安らぎに近いものを得られる(けど裏切られる)女性ロ シア兵士たちとのエピソードは、その後に起こる事により、初見の時 から、最も記憶のすり替えなしに、覚えている事が出来ている箇所に なっています。ああいうシーンって初めて観たというのもあるし。(^^;  記憶違いや、たぶん観た時の(ノーカット度と言う言い方は変かな) 状態の違いで、細かい部分は違っていたものの、強烈な印象として残 っているのが、療養所のシーンと、この物語の核心へと繋がる、前線 に取り残されるシーン。記憶と幻想が交互に入り混じった療養所のシ ーンでは、意外と、野菜をむさぼり食う兵士達の狂気な部分をすっか り忘れていたりはしたものの、仲間達の居場所に戻るスタイナーのシ ークエンスは覚えていた。  前線に取り残されるシーンでは、クルーガー(?)が残壕に取り残 されているシーンは忘れていたものの、ロシア軍の戦車に追いかけま わされるシーンはやはり凄い。このシーンの凄さは、同じような凄ま じさの『プライベートライアン』クライマックス部分が、逆にすべて をすっきり見せている事と好対象で、同時多発的なカット割が、訳の 判らなくなるほど続くことで、その場面を際立たせている。逆に、 『・・ライアン』のほうが、このシーンに対するアンチテーゼなのか もしれない。  この作品の中で、個人的に最も印象的なのが、ジェイムズメイソン 扮するブラント大佐の副官であるキーゼル大尉=デビッドワーナー。 ジョンフォードの作品なんかだと、このポジションが一番おいしいポ ジションなのだが、それを、見事に踏襲している。  一方で、サムペキンパ的に最もおいしいポジションである、主人公 の相棒たる部分にいるクルーガーは、たしかに良い位置にはいるもの の、そもそもこの作品でのスタイナー小隊の面々の活躍の場って、も のすごくカット割が多くて、さらにはそれを補助する(無駄な)説明 もない。そこも、また凄く好きなところであるのだが。  そして、いよいよ主人公たるジェームズコバーン=スタイナー伍長 (途中から軍曹)であるが、この人が最もかっこいいのは、やはり この『戦争のはらわた』だと思う。『荒野の七人』や『大脱走』のク ールさも、逆にそれを逆手に取った『電撃フリント』シリーズの彼も やはりかっこよいのだが、このスタイナーには遠く及ばない。 何物にも迎合せず、自分の信念を貫き通す一方で、部下や少年、女性 に対し、言葉を使わずに態度で見せる優しさを持つこのプロフェッシ ョナルが最後にみせる笑いは、この作品と同じく少年少女の無垢な風 景(『戦争・・』では歌声)から始まる『ワイルドバンチ』と同じく、 止まらない涙へと繋がるものであった。  プライドと弱さの入り混じったマクシミリアンシェル=ストランス キー大尉との最後の行軍に続くこの笑いは、観た後しばらくは耳から 離れないものになるであろう。  信じる者、信じなければ生きていけない者に裏切られたシーンから 貯めに貯めた後のトリービッヒへの・・。そして、「笑い」へと続く この長い長いクライマックスは、まさにブラディ・サム、サムペキン パ監督の新骨頂でした。 kaname(CXE04355) P.S. そういえば、この作品でも"Why Not."、使っていました。(ただし、 『ワイルドバンチ』の時と、意味は違うのですが)さて、どこでし ょう?(^^)