『キラー・インサイド・ミー』"The Killer Inside Me"(2010)

(2024/05/04記) (2024/05/04 Amazon prime) 当時は大好きだったマイケルウィンターボトム監督の作品を観るのも久しぶり。 あらすじには違和感を覚えたので少々様子見をしてしまったが、内容は今も 変わらずだった。 ある意味とても文学的で旧弊した世界の描き方に長けている。定型的なものではなく 生々しく違和感のないもの。 彼のある意味の魅力の源泉が彼のその部分に依るものだったというのを上手く 描いている。 多分彼女が一命を取り留めた所か、もしくはそれ以前から周囲も疑って いたのだろうけれど、彼に接する事で判断を誤り続けた。それが故に結果として 更なる死者を出した事で、店は改装され、父親は自殺をし、さらには最後に あのような事にまで。 但しそうとは明確に描かれない。

『THE GUILTY/ギルティ』"Den skyldige"(2017)

(2024/02/12記) (2024/02/12 Amazon prime) こちらもある条件を出して選んでもらった一本。 さっとあらすじだけ読んで臨んだがこれもなかなか面白かった。 ほとんどが音声だけで想像させるシチュエーション。 話が進むにつれて見えていく此方と其方。 それなりに有能ではあるけれどそうあろうと固執しているが故に判断を間違えていくと 思っていたらその根本は。 あれ、何故?が積み重なっていき全容が判明し、たぶん最初から用意された シチュエーションが出来上がる心地よさよ。 ラストシーンからのあれで作品を完成させるあたりもオーソドックスではあるけれど 好きだな。 内容に触れずに話をするのはなかなか難しいな。

『キャッシュトラック』"Wrath of Man"(2021)

(2024/02/12記) (2024/02/12 Amazon prime) いつの間にかタスクバーに居着いていたCopilotに試しで条件つけてオススメ選ばせて みたら出てきたこの作品。 (ちなみに1位はT-34という時点で私の信頼を勝ち取った。) リクエストとはちょっと違っていたけれどそれも含めて面白かったのでまた何か選ばせて みようかな。 という無駄話はこれくらいにして、ジェイスンステイサム色強いのかなと思っていたら それはそうだったけれど、たしかに私の知っているガイリッチーだった。 章立てた時点で何かしらあると思っていたが、ここまでシンプルな話だったとはね。 邦題もミスディレクションだったし、この状況を作る為の念入りな舞台装置もそれと 分かるまで含めて楽しませてもらった。 この誰にも共感出来ないし自業自得な感じとその結末。(誰にもは言い過ぎか。) 誰が誰をの復讐をも1人を除いて存在しないしそもそもそれがこの物語の主旨だからね。 ジャンにブラックラグーンの奴と同じものを感じたのも楽しめた理由のひとつかな。 楽しめたは語弊があるか。

『機動戦士ガンダム サンダーボルト BANDIT FLOWER』(2017)

(2023/04/01記) (2023/04/01 Amazon prime video) テレビ放送で刺激を受けてのBANDIT FLOWERからの視聴。NT一本分時間が 経ってしまったが。 これから6年も経っている事を考えるとリアルタイムな人たちは待ち遠しかろう。 まぁ原作は話として進んでいるだろうが。 さておき展開的には共闘の匂いプンプンさせながらの引きは刺激的。 両者の共通点、というか相違点を常に意識しながら進んでいく話がここで 時間軸シンクロ(なのかな?)もまた良し。 クローディアここで出てくるか。 IFだと判っている分あの音階もまた刺激的。その後のスピーディな掌返しの テンポにも繋がっている。 で、そこまで見せた後に明かされるレヴァンフゥの存在で締めという 畳み方までが見事。 前作では2極(でもないか)という曲調に3極目が加わるけれどどれも 根っこは同じというのもまた良い。 同じ世界観を使って綴る異なる歴史の面白さ、堪能せさせてもらいました。

『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(2022)

(2022/10/31記) (2022/10/31 at Amazon prime video) 冒頭すぐに、このエピソードが映画化されたということより、安彦良和キャラが 動いているのが見たかったんだなと思った。 但し、どうあってもこのエピソードはと思っていたら、まさかこんなことに なるとはね。 ここまであの絵柄の本来の良さを活かしたものが観られるとは思ってもみなかった。 どのキャラも良さが出てた。一人ひとり愛されてるキャラだということが 伝わるくらいに。 幸せな夢を。

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(2021)

(2021/12/12記) (2021/12/12 at Amazon prime video) クエスは変わらないんだね。 彼女や彼女らのさりげない仕草で何者かを推察させ、それ以上の説明のない辺りとかの スマートさ。 それを今までのシリーズの知識と現実で補完された知識でうまく落としてる所がまた良い。 映画的な表現。 大佐というポジションやその目的ごとに取る手段の違いは誰かを思い起こさせるのは ハサウェイの主観も入ってるとみればまた面白い。 それ以上に主観…というか呪いを受けているのはギギだけれど。 その人望の発現の仕方は出発点の立場の違いかな。 父親の呪いといえばそれは二人とも同じなのだが。 今でも彼の頭の中には彼の言葉が棲みついている。 空中換装とかホント好きだよな。 見事な紹介シークエンスでした。

『キング・コング』"King Kong"(2005)

2020/01/02記 (2020/01/01 at NHK-BSプレミアム録画) これはもう濃密な想いが詰まった作品だな。 100年も経たない当時のトレンドに満たされた世界での始まりは単純な富への欲求とは 違うものをそれぞれが欲していて島へと向かう旅路へと巻き込まれる。 その欲が発生したり垣間見えたりする仕込みだけでももうニヤニヤしっ放し。 中でもやはりその道行きへの先導者である映画監督が女優に淡い恋をしていく過程や それを自分が巻き込んだ脚本家に持っていかれる過程がなんとも言えない。 そして島に到着しようやく物語は本番を迎える。 一切のコミュニケーションの可能性が見出せない者たちを挟んで遭遇するコングと その生きる世界。 アンとの初顔合わせでの身体を引っ張って腕を縛る縄を引きちぎる所からその寝ぐらの 一つにまで辿り着くまでの良く五体満足でいられたよなと思うような道行きも 凄かったのだが、それを遥かに上回るコングとアンが心を通わせるまでのシーンの なんと凄い事か。 立体感溢れる地形を思い切り使いまくってのコング達やその追跡者達の道行きは圧巻 だったな。 それこそよくあの場を生き延びたとしか言いようがない。 さらに、そこまでは犠牲者はそれほどではなかったものの追跡者達が一度 追いついた後の凄惨さよ。 もう無理じゃんと思った所で、先に一人で戻るという死亡フラグを実行していた バクスターが援軍を連れてくるという光景よ。 ここで船長の頼もしさを再確認した上での捕獲作戦。 今までの行動のすべてを自己肯定していたフィルムを失った映画監督が一番厄介な プライドという欲を焚き付けて望むその様とコングとアンとの絆の対比が それどころじゃない状況の上に成り立っている様がまた素晴らしい。 そして物語は再び立体感溢れる街NYへ。 もう信頼できるのはバクスターだけだ。 ホントに役者って奴はという坑道のカナリアセンサーの発動後からの素晴らしい事。 すっかり意欲を失ったコングのこの上ない地雷を踏んでゆくステージの進行で勢いを つけた彼の怒りはヒロインとの邂逅というインターミッションを経て クライマックスへと突入する。 当然のように導かれるエンパイアステートビルとその上から見る光景の美しさは 島でのそれを彷彿とさせ最終局面へ。 そうよ。これが観たかったのだ。 コング対複葉機。 それがアンとの心の絆を交えながら延々と描かれていく事の至福よ。 島での対蝙蝠の状況を凌ぐ 高度でのそれで一番怖かったのはビルのテッペンにハイヒールで立つアンの姿でした。 何かもうキャラクターの一人一人を追いかけるだけでお腹いっぱいになるような この作品を作る為の欲に勝るものもまたなかったのだけれどね。

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988)『機動戦士ガンダムF91』(1991)

(2019/08/18記) 『機動戦士ガンダム逆襲のシャア』(1988) (2019/08/17 at シネフィルWOWOW録画) 『機動戦士ガンダムF91』(1991) (2019/08/18 at シネフィルWOWOW録画) と続けて観たので比較しながらの感想など。 今観るとどちらも昔の映画のごった煮感というか細かい所をうまく端折って2時間と いう枠に詰め込んだ事による味が上手く滲み出ていて懐かしさ混みで堪能させて いただきました。 今って何から何まで描かないとになるか話の筋を追うだけのダイジェストになるかが 多いからなあ。 それはそれで良い所もあるし、それこそはまらないと悲惨な事になるから難易度高いし、 今は2時間という枠が昔ほど優先順位高く無くなったからな。 この点に関して特に『逆襲のシャア』は見事だったと思う。F91はちょっとやり過ぎな 部分もあったしちょっと集中力が途切れた。 逆襲...で不満点があるとすればアストナージのエピソードがやや浮いた感じに思えた くらいかな。あそこは入れるのであれば彼ではない誰かの方が良かったように思う。 音楽は逆襲...が同じ作曲者であるZからの流れがうまくハマっていたのに対し、F91は スターウォーズっぽいフレーズが各所に見られていたな。そこは音楽に限らず だったように思う。 話戻って主人公達の周りに起こる出来事のライブ感も実体験から来るリアルが今と 比べると多いなとも感じた。 それは今が暴力、性、差別、ハラスメントなどに対する表現規制に対して敏感に なっているからというのもあるだろうな。 それはそれで正しいとは思うけれど。

『傷物語〈III冷血篇〉』(2016)

(2018/06/24記) (2018/6/24at日テレプラス録画) そしてやり過ぎ度はさらに増していく。 けど、それでも原作小説には抗えないのだよなぁ。結末に対する力技がやはり 足りない。 例え一番力を入れるべき場所に全身全霊が注がれていても。 もしかしたら三部作にしたのは各話の出来にフィードバックかけたかったから? たしかに尻上がりによくはなってはいたのだがどうなのだろうな。

『傷物語〈II熱血篇〉』(2016)

(2018/06/24記) (2018/6/24at日テレプラス録画) vsヴァンパイアハンター三本勝負。 ホント、何で分けたんだか。 さすが熱血篇をうたうだけあって同じ手法でも相性の良さは鉄血篇とは段違い。 基本何かしらのオマージュだけで構成されているが故に映画化しやすいと思っていた この傷物語なだけはある。黄金バットパロ、否、魔人ドラキュラオマージュな所 なんかはもう笑うしかない。 本来はこっちだよな。

『傷物語〈I鉄血篇〉』(2016)

(2018/06/23記) (2018/06/23at日テレプラス録画) これが『劇場版魔法少女まどか☆マギカ』が犯した一番の罪か。 お金も時間も与えてはいけないものに与えてしまうとこんな事になるという見本 みたいな作品だったな。 学生の卒業制作だったらありかもしれないし、少なくとも作品を分割公開する意味が 分からない。 公開時期を譲った作品が大ヒットしてこの作品がそこまで重要なものではなくなった からと言ってここまで振り切れる事も無かろうに。 さらに言えば好きな原作にこんな事されてしまうのは正直悔しい。 もう少し本編よりのアプローチであるだけでも面白いものになったのになあ。

『黄色いリボン』"She ware a yellow Ribbon"(1949)

(2017/09/11記) (2017/09/10 at イマジカBS 録画) 世に言うジョンフォードの騎兵隊三部作の第二作。 退役間近な騎兵隊の大尉の数日間。 カスター将軍と彼の第七騎兵隊が全滅したばかりで先住民との関係が一触即発の 状況の中での最後の定期偵察任務がとてもジョンフォードらしく描かれている。 改めて見ると主題歌が有名なだけで『アパッチ砦』よりも地味なんだよな。 それでいてまったく飽きさせないどころかあっという間の数日間を 楽しませてくれるのは見事。 そして『アパッチ砦』と同じくある意味武器商人が鍵となるわけだが その末路の違いも興味深い。 まあそれよりもジョンウェインを堪能できるというところにすべてが 集約されてしまうかな。

『君の名は。』(2016)

(2016/09/04記) 『君の名は。』(2016)を観賞。 (2016/9/4 at T・ジョイ PRINCE 品川 シアター3) これは確かに。 そのあとにいくつもの言葉が続く作品だな。 一皮剥けたとか、予想以上に今まで通りなのにエンターテイメントしてるとか、 ある意味ひとつの完成形だったとか色々な言葉が繋がってくる。 文法はそれこそ怖いくらいに今までからまったくぶれていない。 それこそ突き詰めていった結果としての今。 エモーショナルなのにどこか第三者的な視点。それが見るものの心にひどく 引っ掛かる。 それはホンの少しの小さな嘘だったり、それを自らが第三者的な視点で 眺めているところだったり。 映画館で予告を観ていた時には、コレほどの期待は無かったんだよな。 それがこのロケットスタート的な広がり。 心ざわついた果てに観に来てしまった次第。 それに十分答えるほどの作品でした。 (以降2018/01/03追記) (2018/01/03 at テレビ朝日) 提供企業のお遊びと狙いが色々と楽しかった。 本編は、やはり個人的には新海監督の作品の中で例外的に大好きと言える作品でした。 粗も感情で押し切ってしまう所が良いな。

『きんいろモザイクPretty Days』(2016)

(2016/11/15記) 『きんいろモザイクPretty Days 』(2016) (2016/11/15 at 新宿バルト9シネマ シアター9) 天衝監督はテレビアニメ「きんいろモザイク」の第1話や最終回「グリザイアの楽園」の 作戦シークエンスなんてこともあったからもしかしたらと期待していたんだよね。 ただ、これでそれをやるなんていうのは少々期待が過ぎたか。 その片鱗はしの脚本の芝居(本番)に見え隠れしていたけれど、あれを膨らませて しまっては主題がどっかに消えちゃうからな。 あくまでメインエピソードはしのとようこが何故あの学校に入れたかだから(違う)、 そのための密度の濃い時間でした。 ウェルメイドなファン向けスペシャルエピソードをOVAに先行して劇場で 公開しましたという体でした。 ただしそれにしてもここまでヒドイ投げっぱなしな音声はさすがにちょっと 悲しかった。 音大きめにしておけば良いだろう的な投げっぱなし感。 もう少し気を使えないのだろうか。 これだからバルト9とは相性悪いんだよな。〉わたし

『傷だらけの天使』(1997)

(97/04/29記 at Niftyserve FJMOVIE 4番会議室)  『傷だらけの天使』を観ました。あえてハンディキャップとなるタイトルを 選び、そして観た後に、「これは『傷だらけの天使』と言うタイトル以外考え られない!」と思わせる映画でした。(ただしTVの『傷だらけの天使』とは 若干ニュアンスは違うのですが。)  私はこの映画が気に入ってしまった。  最初、「阪本順治が『傷だらけの天使』を豊川悦司と真木蔵人で撮る。」と 聞いた時には、「え〜〜」と思いました。何か違うんじゃないかと。だからあ まり積極的に観ようとは思っていなかった。  なのに観に行ったのは、(たしか)映画館での予告編でぱっと原田知世と目 が会ったから。(笑) それだけでふと観に行ってしまった。(笑)  そして、観て判ったのは、豊川悦司も真木蔵人も、もちろん原田知世も、す べての登場人物が血となり骨となり、『傷だらけの天使』と言う映画になって いた事。それも。TVの「傷だらけの天使」はどちらかと言うと書き文字でで っかく『傷だらけの天使』と言うイメージだったけど、この映画『傷だらけの 天使』はでっかい画面に小さい文字で『キズダラケノテンシ』と言うイメージ でした。  映画を観おわった後は、いつもは映画を観るためだけに使っている眼鏡を、 少しずらして鼻の上にかけ、ずっとその余韻に浸っていました。そしていつも 家と帰る途中の街が、自分の知らない街に見えた。そんな映画でした。 kaname(CXE04355)

『奇跡の海』"Breaking the Waves"(1996)

(97/06/13記)  『奇跡の海』を観ました。(5/31シネマライズ渋谷) いや、観たというのは正確な表現ではないかもしれない。事前に「万全な体 調でないと観るのが辛い映画」といろいろな所から聞いていたにも関わらず、 「やや疲れている状態」で観てしまった。途中で気分の悪さに耐えられなく なり、かと言って出る気は無かったので、目をつぶってその場にいると言う 事をしたからだ。  最終章近くになってようやく目が開けられるようにはなったが、気分は最 悪、とても物語に入り込める状態にはなれずじまいで終わってしまった。  話としても絵としてもとても好きだし、こんな状態にならなければきっと 取り込まれていただろうに、延々と続く手持ちカメラの映像に耐えられなか った。  『道』や『ライアンの娘』にも通じるものがあるこの話にはすごく惹かれ ているのだが、体が受け付けてくれない。そんな状況がとても辛かった。  ベスの純粋さも、ヤンのベスを思う気持ちにもすごく気持ちが入ってしま う。周りに受け入れられずとも、ひたすらお互いを思う・愛する気持ち。  そして最後、傷だらけになり、神父に罵られながらも神に召される彼女に すごく入れこんでしまった。  しかし、それでも彼女が受けたものすべてを私は観ていない。それがすご く悔しい。  いつかまた。今度はきちんとベスと向き合って。

『キッチン』(1997)

(97/12/14記 at Niftyserve FJOYCINE 4番会議室)  『キッチン』を観ました。(97/12/13 at 渋谷シネアミューズWEST)  当日は初日と言うこともあり、富田靖子の舞台挨拶なんかもあって 良かったのですが(^^)・・・、映画の方は何故か乗ることができませ んでした。  この映画は、吉本ばななの原作『キッチン』を愛している人には、 薦められません。逆に、この映画を好きになってしまった人には、 原作『キッチン』はどうにも違和感を覚える作品にみえるかもしれ ません。 (以降はこれから観る人は出来れば読まないでください。)  私は、観ている間、どうしても違和感を拭うことができなくて、そ れが居心地悪くて、観おわった後、原作の方を読んでみました。そこ でやっとわかりました。この映画は、原作を理屈で理解して、視点を 変え、原作のシチュエーションシチュエーションをうまく使いながら 話を再構成しただけの作品だって。監督は、この原作を愛してはいな いだろうし、俳優達も、原作とは関係無しに仕事としてこなした作品 にしか見えなかった。それはそれで映画を作るうえでは必要のない事 だったのでろうけれど。  違和感を覚えたのは、ところどころ原作と同じシチュエーションが 出てくること。それでいて、そのシーンシーンに愛情がまったくない のが、居心地の悪さに繋がったのだと思います。逆に言えば、そうい うシーンはその部分を映画なりに消化して出来たシーンになっている のですが。  ただし、普通の映画としての視点で観れば・・・、どうだったの でしょう?  好きな話をベースにした映画を観るのは、本当に難しいですよね。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 かなめ(CXE04355) URL http://plaza2.mbn.or.jp/~kaname/ http://member.nifty.ne.jp/kaname/ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『きっと、うまくいく』"3 Idiots"(2009)

(2013/11/05記) 『きっと、うまくいく』を観ました。 (2013/11/2 at 飯田橋ギンレイホール) 出だしが、まあらしいと言えばとてもインド映画らしいのだけれど、飛行機離陸時に携帯で 話し出したりさらには…がちょっと笑えないを通り越していました。 これは駄目かもしれないと思った。 いやインド映画というよりは香港映画でお馴染みのと言った方がしっくりくるか。 そして、ランチョー登場から彼に関わるエピソードが積み重ねられるに従って、この作品が 価値観をひっくり返すことに主眼を置くというか爽快感を持ってくる作品だと判ってくる。 そして、時には度を超した、とは言っても冒頭越えはないけれど、事を行い、それに対しては 罰を受ける事になる。こともあるようになってくる。 その積み重ねが一つの出来事を引き起こしそこがきっかけになってすべてが無に帰するかと 思った時。 まあ既に未来は最初からある程度提示されていて安心して観ていられるので、むしろどう やってここから未来(現在)に繋げていくかを楽しめるんだよなあ。 だから不意打ちの感動ではなくこちらも準備した上での感動というハードルの高いものに なり、それを本作品は叶えてくれる。 そこに至るまでには、例えばランチョーが良家の息子であったり、ましてや何か宗教的な 臭いもする家に見えてしまったり(これは単なる私の誤解だった)なんてこともあるのだ けれど、あらかじめ見えている線路だったり、さらには何気なく振りまかれている将来への 伏線だったりをうまく散りばめて昇華させている。 それも細かいところまであげるとかなりのシーンが未来に繋がっているあたりは本当凄い。 さて、インド映画にお決まりのミュージカルシーンだが本作にもあるにはある。 その使い方は中盤のダレ場のみであるあたりも良かったな。 当然それは恋のシーンで、実はそれまで敵対していた学長にもうひとつ敵対要素を 加えられるシーンでもあるのだが。 序盤の学長初登場のシーンとこのシーンがクライマックスにけっこう繋がっているん だよな。 他にも伏線の2度3度の使い回しが逆にブラインドになって効果的だったり何気なく ワザモノな作品でした。 ラストの1ピースがAll Is wellに繋がるだなんて思っても見なかったよ。あの場では。 ホント楽しかった。 そうそう、最後にヒロインとランチョーが途中から小雪とマツケンにしか見えなかった ことを書いておこう。

『逆境ナイン』(2005)

(2006/08/13記) 『逆境ナイン』を観ました。(at DVD) 冒頭の玉山鉄二の棒読みさ加減に一瞬不安は覚えたものの その後はだんだんテンションが上がってきて、島本ワールドを 楽しめたという感じでした。 しかしながら最後の試合の漫画的な(映画的でない)部分、 コマ(画面)の中に居る人たちだけで台詞を言いながら 盛り上がるシーンの(映画であるがゆえの)観客置いてきぼり 感にはちょっとテンションが下がってしまった。 (まぁ、これは羽住監督のテレビドラマでの作品、「恋人は スナイパー」でも似たようなシーンがクライマックスであった ので、もしかしたらこの人の特色なのかもしれないが。) でもまぁ漫画をストレートにそのまま起こすと一人芝居感が 増すんだなとあらためて実感。 他の部分の処理は面白かったのになぁ。

『劇場版機動戦士Zガンダム −星を継ぐ者−』(2005)

(2006/08/13記) 『劇場版機動戦士zガンダム −星を継ぐ者−』を観ました。 (at WOWWOWでの放映の録画) あぁ懐かしいなぁと思いつつ、鑑賞に突入。 冒頭部分の今ひとつはっきりしなくなってしまったカミーユの キャラクタや、この詰め込み過ぎ状態ではいらないと思われる 唐突なカミーユに殴られるジェリドのシーンなど、その他 ダイジェスト感(よくいえば早い展開)に違和感を感じつつも 最後にはやはりそれでも懐かしいなぁというところに 落ち着いたかな。 それにしても「映画」としての下手さが目立つ。 ある意味小説版ガンダムの読後に近い憤りさえ感じました。 思えば、あれを読んだのがきっかけで「これなら自分も何か 書けるかも」と当時文章を書き始めた時に使ったペンネームが 今の私のハンドルネームであるというのはまた別の話。

『劇場版機動戦士ZガンダムII  −恋人たち−』(2005)

(2006.10.22記) 『劇場版 機動戦士ZガンダムII 恋人たち』を観ました。 (2006/10/22 at WOWWOW録画) 既に前作は観ているからか、テレビ放映されたものの 再編集を観ているというよりは、より「劇場版」として 割り切って観ていたように思う。 さらに例の「フォウの声」を聴いた時点で、これはもう テレビ放映のものとは完全に違うものとして作ったんだなと より強く思うようになった。 自分で考えていたよりも、やはりフォウの声はあの声という 認識が強かったんだなと意外に思った次第。 すると、今度は新しく作り直していない部分の映像に強く 違和感を覚え始める。 これなら中途半端に昔の絵なんか使わずに全部作り直して しまった方が変な反感喰わずに済んだのに。特に昔の絵で フォウがしゃべっているシーンなんてみっともないったら ありゃしない。(新しい絵はしっくりいっているのにね。) あのゴタゴタも含めて、そういう部分がすごくみっともなく 感じてしまった。 あと、中途半端感でいえば、なんで今時あの程度のCGを ところどころにインサートするのかがとても不思議。 自分たちの技術の無さを露呈するだけだろうに。 それこそ20年以上前じゃないんだぞと思ってしまう。 まぁそういう部分はあるものの、前作よりもやりたかった 事がより見えてくる作品にはなっていた。 カミーユのキャラクタをこういう風に変えたかったのね。 周りのシチュエーションをまったく同じような状況に おいた上で。 劇場版という作品に触れる時間の長さの違いもそのやり たかった事に対してプラスに作用していたように思う。 まぁ、これはこれでいいのかな。 今まで語った事も含めて、まぁ作者がこんな感じだから こんな感じになるのだろうなぁという意味で、納得(という のか?)できる作品ではありました。 しかしホント、全編新作にすればよかったのに。 なんだかんだ言って怖かったんだろうなぁ。すべてを新しく することは。

『劇場版機動戦士ZガンダムIII  −星の鼓動は愛−』(2006)

(2007/10/22記) 『劇場版機動戦士ZガンダムIII  −星の鼓動は愛−』を観ました。 (2007/10/28 at スカイパーフェクTV! アニマックス) 2作目を観てからずいぶんと間が空いてしまった。(約1年前) そのせい…よりもきっとそもそも本編忘れちゃってるからだろうなあぁ… 途中から「あれ、こんな展開だったっけ?」とか「固有名詞を忘れている」 とかいうことしきり。 2作目まではここまでではなかったのになぁ。 けどこれは変えたんだなというところもあり、覚えていないけれど絵の古さ から推測できるところもありで何か頭の中ぐちゃぐちゃになりながら観て いました。 今回限りは初見のほうがまだ分かりやすかったかもしれない。 けど、それ以上に通しで観るにはテンポの緩急が悪いシーンも多くて まるで花やしきのジェットコースターより古いものに乗ったような 感じでした。 最後のあのシーンはどうまとめるのかなぁと思ったら、う〜むこれも ちょっと中途半端な気が。というよりはある意味今まで観たものの 寄せ集め感が強かった。 アイデア枯渇しちゃったのかなぁ。という感じで少し残念な気も します。 これだけ観るとやはりシロッコに心を持っていかれてしまったほうが 良かったような…。と、これを言ってしまうと作った意味がなくなる のか?(笑) まぁZZに繋げられなくはないかんじではあったけれど、これを観ると やはり『新ヱヴァ』のほうが良いアプローチだよなぁ。 (まぁたぶんあれを作った意味はちょっと違うのだろうけれど。) それにしても、最後セイラさんが出てきて声どうするのかなぁと 思いきやそう来たかい。(笑) だったら他の人の声も変えない方が良かったんじゃないと思う のだけれど、これは神様権限だからしかたないのか。(^^; というわけで、中途半端感漂うまま終わってしまったなぁと 思う事しきりな作品でした。

『ギャラクシークエスト』"Galaxy Quest"(2000)

(2001/02/25記 at @nifty FMOVIE 2番会議室)  『ギャラクシークエスト』を観ました。(2001/02/24 at 渋谷シネ クイント)  アンチトレッキー(ただし実際にはそれでもアンチではない)と 言いつつ、映画版『スタートレック』シリーズほぼすべてとオリジ ナルは観ている身としては、噂を聞くかぎりでは、「これは見に行 かなきゃいけないだろう」と思っていたのですが、ようやく今になっ ての初鑑賞。 (以降、内容に触れます。)  ネタそのものは、たとえば(嘘のくだりは)新井素子の「いつか猫 になる日まで」とか、(TV番組をドキュメンタリーと思いこんでし まうという話は)長谷川裕一の「ヴィクトリーマン舞い上がる」(だ っけ?)、また内臓ひっくりかえる話も梶尾真治あたりが何か書いて いたような気がするぞって感じで、目新しいものはなかったし、アメ リカのコンベティション(!)も「まぁ(^^;」なのですが、それらを B級然として作る事なく、手抜きなくしっかりと作る事によって、こ んなにも面白いものにしてしまわれるとは、思ってもみませんでした。  ILM(あ、そういえばしっかりYUSEI"スーパードライ"UESUGIも クルーとして参加していましたね)もスタンウィンストンも本領発 揮という感じで良かったなぁ。宇宙やスターシップなんざぁ感涙もの でした。こういう意味での感慨は、『スターシップトルーパーズ』以 来かも。  シガニーウィーバーにボタンを押させ(てましたよね?たしか)る あたりも何だし、1秒オチみたいなお約束だけど苦しいものも好きで すし、オタクの使い方も、無用な思い入れは一切排除したところにと どめてはいるもののおいしいところはすべていただきという感じで好 きだなぁ。最後のオチをやりたいがために、技術主任を地球に残すと いうあたりも好きだったりします。後は、「シナリオライターは・・」 も。(^^)  それでいて、何の説明もないものの、タガード艦長の最初のあの 行動が、彼らの母星にどういう影響を及ぼしたかということを、絶妙 なタイミングのワンカットで説明しちゃったりするんですよね。 (たしか、最初は「母星」と言っていた場所が、次に来た時には、 「基地」(だったかな?)という言い方になっていたりした後に、 あのワンカットですから。)  そういった形で、「オチ」を優先させるところと「話のテンポ」を 優先させるところのバランスも、よかったです。  もう「うまい」の一言ですね。(^^) kaname(CXE04355)

『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』"Captain America : Winter Soldier"(2014)

(2014/07/14記) 『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)を観ました。 (2014/07/13 at 機内上映) キャプテンアメリカの存在は昔から知ってはいたのですがはてどんな戦い方をするのかは まったく知らなかった。 なので余計に、基本的に肉弾戦、打撃系の戦い方というのが新鮮に感じたかな。 そしてまあそれよりもアバンが良かったな。 あの件をいろいろな形で彼と会う度に繰り返していたからな。 スタークというかフューリーとどう関わりがあるかもようやく判った。 まあマーベルヒーローズはアイアンマンの1しか観ていないのだけれど。(^^; あともう一度前に戻ってだが結果としての敵味方のシャッフル具合もちょうど 良かった。 それが最後までバッキーがどうなるのかというところのドキドキ感に繋がっていた ような気がする。 ナターシャのソビエト製に対する食いつき具合が地味に好きだ。 好きだと言えばかなり初期の磁気テープ6万本程度でパーソナリティまで納まっている ゾラ博士がいいな。(笑) きっと行ってもギガオーダーじゃないか? そんなわけで楽しませていただきました。 投稿者 kaname 時刻: 8:33

『ギャングオブニューヨーク』"Gangs of New York"(2002)

(2003/01/02記 at @nifty FMOVIE 2番会議室)  『ギャング・オブ・ニューヨーク』を観ました。(2003/01/01 at T・ジョ イ大泉 シアター7)  実は、最初にこの作品の話(というよりはタイトル)を聞いた時に、全然違 うジャンルの映画だと、何故か勝手に思ってしまっていたのですが、予告編な どでその内容が明らかになっていくに従って、期待が高まってきた次第。 (以降、内容に触れます。)  個人的には、「復讐譚」というのは最も好きな話のひとつであるので、そう いう意味での期待が一番大きかったかな。  そんな中で、その復讐の発端となる最初の闘いで、ダニエル・デイ=ルイス とリーアム・ニースンが、各々のスタイルの闘いをしていたことに、まずは納 得。ビル・ザ・ブッチャーはその名の通り「肉屋」の刃物の扱い方であったし、 一方のヴァロン神父は、ズボンに入っていた筋から判断するに(元)軍人であ るらしく、サーベルの使い方をしていました。  その直後に神父に対してとったビルの態度により、この復讐が(肉体的では なく精神的に)一筋縄では行かない事を予感させるもので、これでも好感を得 る。  そして、まぁそれ以降も、ダニエル・デイ=ルイスの存在感の凄いこと。 テンションの張った部分も然る事ながら、彼が撃たれた後、ジェニーが包帯を 取り替えるために手をかけた時に一瞬にして父親の顔になるところ! それまでにそれらしい説明が無かったにもかかわらず、その一瞬で理解させる 見事さといったら惚れ惚れします。  そして、対するディカプリオやその他の役者陣も、それぞれにちゃんと味が あって、なかなか良かったと思って観ていました。  ところが、彼の正体を知るジョニーが嫉妬からアムステルダムの正体をばら してしまうくだりになって、ちょっと物足りなさを覚える。 確かに、話の展開としてはおかしくないのだけれど、なにか納得のいかないも のを感じる。  さらにその後のビルがアムステルダムを生かしておく事に対しても、ある説 明はつくにせよ、ここも納得が行かない。  ホント、両方ともあらすじを書く分には理屈が通るのだけれども、それを絵 で見せてもらっていないような気がするのがとても残念でした。  あと、クライマックスとなる徴兵制に対する暴動と主人公達との闘いが重な るところ。 これも判りづらいですよね。下手をすると偶然か意図的かかも誤解することに なり、せっかくの設定がもったいない。 ここらへんは、アメリカの歴史背景を理解していないと辛いのだろうなぁとは 思いましたが、それでもちょっとね。  こういう部分がもう少し納得のいくものであれば、本当に良かったのだけれ ど。 ただまぁ、それでも面白い作品ではありました。 2003/01/02(木) kaname(CXE04355)

『CURE』(1997)

(98/01/01記 at Niftyserve FJMOVIE 4番会議室)  『CURE』を観ました。(98/01/01 at 銀座東劇) この映画を、元旦の銀座、しかも映画が終わって映画館を出るとちょ うど夕暮れになる時間帯に観る事が出来て幸せでした。  大晦日でも、1月3日でもなく、かろうじて1月2日ならばかろうじ て味わえるであろう、 そして、新宿ならかろうじて味わえるかもしれないが、渋谷では決して 味わえないであろう、 さらには明るい昼でも、真っ暗な夜でもない微妙な時間帯。 そんな状況下で、この映画を観る事が出来てとても幸せでした。  これだから、映画館で映画を観るのはやめられない。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 かなめ(CXE04355) URL http://plaza2.mbn.or.jp/~kaname/ http://member.nifty.ne.jp/kaname/ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『CUBE』"Cube" (1997)

(98/10/20記 at Niftyserve FYOUGA 2番会議室)  『CUBE』を観ました。(98/10/20 at シネセゾン渋谷) 最初、名前を聞いた時は、 「『スフィア』(球体)の次は『CUBE』(立方体)かい!(笑)」 なんて思っていたのですが、予告編は面白そうだし、映画が始まったら映画館は 凄く混んでいると言うし、これは観に行かねば! と思いつつも、そのお客さん の多さと言うやつに尻込みして行きあぐねていました。  それが、平日にちょっと行けそうな日が出来たので、やっと観に行くことがで きました。けど、それでも午後5時の回とはいえ、結構人は入っていたなぁ。  さて、肝心の映画ですが、始まってから2時間弱の間、ただただ映画に没頭し ていました。確かに面白い! (以降ネタバレ) しかし、観終わってから、「あの最初の奴の役割はいったいなんだったんだろ う?」って言うのが気になりました。誰か教えて!(笑) 〜〜〜〜〜 98/10/20(火) 〜〜〜〜〜〜 かなめ (CXE04355) mailto: takashi.miyamoto@nifty.ne.jp     kaname@a2.mbn.or.jp URL http://plaza2.mbn.or.jp/~kaname/ http://member.nifty.ne.jp/kaname/ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(1969)

(2000/04/02記 at @Nifty FMOVIE 2番会議室)  『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』を観ました。(2000/03/29 at 自由が丘武蔵野館)  この作品、噂ばかり先行して聞いていたので、ホント、観たかっ たのですよねぇ。しかし、その内容がゆえにビデオ化は不可能と いうことだし、映画館に観に行くしかない。 というわけで、機会があったので行ってきました。 (以降、内容に触れます。)  オープニングこそ、他の石井輝男の作品の域から出ていないなぁ と思ってしまったものの、話が進んでいくと、確かに、これは「江 戸川乱歩全集」をタイトルにつけるべき作品だということに、ホン ト納得してしまった。まさに江戸川乱歩の世界オンパレード!!  これを本来の乱歩の世界と言わずして、なんというかとも言うべ きこの世界には、脱帽するしかないです。まるで文章をそのまま映 像化されてしまったかのよう。主人公のモノローグにしても、明智 小五郎の登場にしても。(笑)  そして、その映像の作り方の粗野さ加減が、いつもの石井輝男調 で良いのですよ。この人は、ある時代の劇画をそのまま映画化して しまう事に対しては、右に出るものはホントいない。  ラストの花火のシーンなんて、昔の漫画ってホントこういう感じ だったよなぁというのを、そのまま映像化している。この映像に、 ナレーションされている文章が被されば、ホント、そのまんま。  さらには、土方巽と言うキャスティング。このキャスティングを 100%生かしきっているんじゃないかと言い切ってしまえるくら い。  繰り返しになってしまいますが、ここまでして用意された世界に は、ホント、脱帽するしかありませんでした。  そして、 原作のある小説の映画化、というよりは、原作者の表現している世 界観を映画化すると言う点においては、ホント、手本にしてほしい 作品でした。  昔から、個性のある作家の映画化に関しては、その作品のみを読 み砕いて、忠実に映画化するのではなく、その作家の作家性を十分 に理解し、解釈した上での映画化、映像化と言う形をすべきだと思っ ていたのですが、それを、あらためて実感させてもらいました。  そういう点での代表的な例は、ひとつは、ロバートアルトマン監 督レイモンドチャンドラー原作の「長いお別れ」こと『ロンググッ ドバイ』。 この作品は、原作を自分の時代に置き換えて、さらには自分の従来 のスタイル、スタンスを貫いて映画化することで、今まで何本も作 られてきたチャンドラー原作の作品の形だけの映像化、それこそ、 『3つ数えろ』に至るまでの作品群が、如何に陳腐であったかを証 明してしまったのでした。とは言っても、チャンドラーはそういう 作品の中で、脚本を書いているものもあるのですが、それらは、原 作から受けるインパクトからはちょっとほど遠く・・・思えてしま うくらいの作品でしたので、原作者が単に映画用に脚色しなおすと いうのも一長一短と言う話にもなります。  もうひとつは、これはまだ頑張る余地があった作品ではあるので すが、初期の007シリーズ。  初期の007シリーズは、原作があって、ある程度はその原作に 基づいて映画化しているのですが、細かいエピソードや、キャラク タなどは、シリーズの他の作品をかなりアレンジしているのですよ ね。 もっとも代表的な例で言えば、『007/ロシアより愛をこめて』 で、ボンドの敵となるのが、原作ではロシアのKGBであるのに対 し、映画ではスペクターとなっている部分。そういえば『ドクター ノオ』も同様。 こういった部分は、ある種、原作者の意志を踏みにじってる部分も あるかと思うのですが、原作者のファンに関しては、「あり」です。 (笑)  他にも、原作の「サンダーボール作戦」で出てきた、鮫のエピソ ードは、『ユアアイズオンリー』や『消されたライセンス』などに も出てきて、ファン心をくすぐってくれたり・・・、まぁ要するに、 如何にファン心をくすぐってくれるようなエピソードやギミックを うまく映画の中にちりばめらせることができるかが、原作の魅力を 映画化する上でのポイントに置いてもらいたい点ですよね。 さあて、段々話がずれてきたぞ。(笑) 話を元に戻して。 とにかく、この作品は、江戸川乱歩の作品の入門書としては、最適 のものだと思います。 まさに、「江戸川乱歩全集」という看板に偽りなし! と言ったと ころでしょうか。 kaname(CXE04355)

『キルビル Vol.1』"Kill Bill Vol.1"(2003)

(2003/10/25記 at @nifty FMOVIE 2番会議室)  『キル・ビル Vol.1』を観て来ました。(2003/10/25 at ヴァー ジンシネマズ六本木 スクリーン7) 日本でこの作品を観られることがこんなにも幸せなことだったとは。 つい一昨日、それまでは気になっていた程度であったこの『キル・ ビル』であったのだが、とある情報を耳にした途端、一気に私の キルビル魂(そんなものあったのか?)に火がついてついてしまい、 仕事帰りに六本木のヴァージンシネマズまで夜中に座席を押さえに 行き(ヴァージンシネマズは前々日から座席指定チケットを押さえ ることが可能、さらには木曜日はオールナイトなのでおそくまで チケット売り場も開いています)さらにその帰りに劇場内のPXにて サントラまで買ってしまいひたすら聴きまくり。 さらに、そのサントラ内にあった予告編ムービーで今さらながら 情報収集。 そんなこんなで、六本木初日初回(しかも一番好きな席での鑑賞) という最高の条件で向かった電車の中には、栗山千明扮するゴー ゴー夕張のコスプレがいっぱい・・・いや、それは違う普通の女 子高生だ・・・なんていう訳のわからない状況にまでなりつつの 鑑賞となりました。(あ、これが日本でこの作品を・・・の理由の ひとつね。) スクリーンは都内、いや日本屈指のスクリーンである六本木ヴァー ジンシネマズの7番スクリーン。 さすがにまだよく知られていない映画館だけあって7割くらいの 入りであったものの、劇場内にゴーゴーはいなかったが、グリーン ホーネットマスクに黒服の集団やらあきらかになにかのオフ集団 などがいる中、劇場の幕が開きました。 (以降、内容に触れます。) 凄すぎ。 ここまでツボにはまったものは近年観たことがないかもしれない。 えげつ無さも相変わらずであったものの、無駄なものは一切無し。 女ひとりの復讐というジャンルムービーにおける最高のテーマを ここまで見事に描ききってくれるとは思ってもみませんでした。 カタコトの日本語をしゃべる主人公たちも、それを逆手にとったか のような通訳の入り方も、いかにもな嘘と虚構に包まれたオキナワ やトウキョウ(ロケ地お台場)も、時間軸を自在にシャッフルする タランティーノチックな構成とマンガチック(というよりは一部 マンガじゃん(笑))な演出で、トビキリの話に仕上がっていま した。 なかでもはまったのは、千葉真一がらみの一連のシーンや、刀が 機内持ち込み可なエアーオキナワの機内。 さらには刀携帯のバイクなんて許されていたのか>ニッポン。(笑) しかも、こういったパートへの導入の前、オープニングで、正統派 なハリウッドB級アクションを持ってきたことで、決して全体の雰 囲気を笑いの方向にひきづられない様に予防線を張っているという 周到さ。 オーレン・イシイの過去パートも凄かった。ここまでやるか。 ここでしっかり声優として前田愛が使われていた(けどたぶん誰も 気付いていない)というのもマル。 ってなことはおいたにしても、ここでビルが出てくるとは。 そうそう、ビルで思い出したけれど、ザ・ブライド(本名は伏せ字 になっているけれど、間違いなく女性器の呼称でしょう。故に、は じめに名前を聞かされた女の子があっけにとられているし、伏せ字 は日本語で三文字だし、トラックのキーやペイントには頭を抱えて いる)がビルに撃たれる直前のザ・ブライド(でまた思い出したけ れど、これはフランケンシュタインの花嫁でもあるのだな、そうい えば。頭に金具が埋めこまれているし)の"your baby..."という台 詞の使い方のうまさにはまた痺れた。 なのに最後またそういう伏線で終わるか!というほどの言葉使いの うまさ!!!! あ、また思い出した。 田中要二はマスク付けていても一発で分かるな。(笑) 國村隼って『魔界転生』でも同じくらいインパクトある役やって いなかったか?(記憶違い?) まぁ、麿赤児はそのままとして、千葉真一と大葉健二を除くと、 日本人キャストのなかで今回出色の出来なのは、やはりゴーゴー 夕張こと栗山千明。 紹介のシーンでの「刺したかったのに刺されちゃったねぇ」は やるだろうなあとは思っていたものの、ここまでやってくれる とは。 そのうえ、あの格闘シーン。 自分の脳天直撃なんてまるで深作さん、いや石井輝男?なんて 部分がまた全体を引き締めてたりもして、一番の見せ場と化して いました。 で、まるで往年の日本映画を思わせる映像美あふれるシーンや、 チャンバラとカンフーミックスの凄惨でアクロバティックなシーン が続いたあとに、最後は雪の日本庭園かよ。(笑) 決め台詞はすべて日本語というのもまた素敵としかいいようがない。 こういうのは高倉健やロバートミッチャムに見せてあげたい。 あ、ウディアレンにも。 で、ここまで出しておいて、『ブレードランナー』なダリルハンナ や『レザボアドッグス』なマイケルマドセン、そしてあのデビッド キャラダインが残っているだなんて、まったくなんていう贅沢!! ホント、いったいどうしてくれよう。 kaname(CXE04355) P.S.ちなみに、前述のキルビル魂を呼び覚ました前情報とは、 「エンディングロールで「怨み節」がフルコーラスで流れる」とい う情報でした。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (2012/12/22追記) 『キル・ビルVol.1』"Kill Bill Vol.1" (2003) 『キル・ビルVol.1』"Kill Bill Vol.1"(2003)を久々に観ました。 (2012/12/22 at スカパー! ザ・シネマ) ロードショー公開時以来だからホント久しぶりだ。 だからアニメパートのことなんてすっかり忘れていたよ。そういえばI.G.だったな。 オーレン・イシイのアニメパート吹替の前田愛を女優の方と勘違いしていたな〉昔 それはさておきやはり独特だよな。 基本いろいろなものの再構成なのだけれど、時間軸をいろいろいじったりとかそのやり方はやはり彼っぽさに 満ちている。 一方でアラも目立つ。やはり観たい絵に対して完璧じゃないんだよな。 そこも含めてのB級っぽさも彼らしいのだけれどその上を狙った上での結果だからな。 ごっこっぽく見えてしまうところをうまく処理できていないのが今の私には引っかかってしまうようだ。 頑張っただけじゃなくてその上。 うまくいってる部分があるから余計に目立つんだろうな。 それにしても栗山千明は良いな。(笑) 風祭ゆきに青葉屋の女将やらせたりとかも好きだ。 まあ一番好きなのは恨み節なのだが。(笑)

『キルビル Vol.2』"Kill Bill Vol.2" (2004)

(2012/12/22記) 『キル・ビルVol.2』"Kill Bill Vol.2"(2004)を観ました。 (2012/12/22 at スカパー! ザ・シネマ) 1は観てたけれど2は初見。 その1とかなり連続性が高い話だったので今回連続して観れたのは良かったのだけれど、さすがに長い。 そのうえさすがに会話劇メインだからちと飽きていた部分はある。 けど1のあの引きとか1の最初のパートとかが対ビル戦でちゃんと生きてたりとか、1では2人倒すのがやっと だったのに後3人もどうすんだよとか、今回はカンフーマスターかとか、1から見るとダブルキャストが2人も いたりとかダリルハンナにはあれやらせたかっただけかい!(笑)とか、4歳の子供に子連れ狼見せるん じゃないよとかやはりネタは面白い。 まあなんと言ってもやはりデビッドキャラダインなんだけれどね。 けれども一番好きなのは恨み節(笑)

『銀色のシーズン』(2008)

(2008/01/15記) 『銀色のシーズン』を観ました。(2008/01/12 at 日劇PLEX 日劇2) 今回は久々に初日初回、舞台挨拶付きでの鑑賞。 久々といえば日劇2での鑑賞もホント久しぶり。 さて、ここからはネタバレ付きの感想。 オープニングシーンの雪面のアップ。そして踏みしめる音。 しばらく行ってないよなぁ。なんてことを思い出させてくれる。 そこから先のスキーシーンは日劇ではなくもっと良いところで観たいと 思わせてくれる。 後はひたすら映画に身を任せるのみ。 個人的には、雪の上に横たわるヒロイン、雪降る空を見上げるヒロインの 画面アップには思わずうるうる来てしまった。 そういえば夜の雪山への対空砲や、空から舞い降りて救出に来るシーン なども、それぞれ別のものを思い出していた。 脳内こじつけなのだろうけれど、どれも好きなシーンなんだよなぁ。 田中麗奈が「動機」を淡々と語るシーンも好きだな。 変に感情爆発させないで淡々とってのが良かった。 隣のゲレンデはもしやそういう展開に持って行くのかと思いきやその話を 語るための舞台とクライマックスのためだったのね。考えすぎた。(^^; しかし、図らずも舞台挨拶で羽住監督の言っていた「この作品は観る人 それぞれで違う作品に見えるように作った」(だったかな?)というのは この作品を表すのに一番良い表現かもしれない。 雪山、というだけでそこは特殊な空間。 そこはそれぞれが思い出を置いてきている場所だから。 ーーーーーーーーーーーーー 『銀色のシーズン』(2007) 2008/12/01 at WOWOW   (2008/12/01記) 昨日、ふとテレビ欄を観たら、『プレデター2 HDリマスター版』(TV朝日)と 『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』(NHK-BShi)などと並んで、『銀色のシー ズン』(WOWWOW)があったのをみつけて慌ててテレビを着けたところ既にク ライマックスシーン。 けど観てたらやはり通しで観たくなり、DVD引っ張りだして来て鑑賞。 クライマックスを直前に観てしまったせいか、よけいに「再びスタートに立つま での物語」という意思を強く感じました。 で、その後に最初から観たので、主人公三人組が「銀」「祐次」「次郎」という 名前の意図にも気づく。(勝手に妄想するとも言う。) この2つって、共に私の好きな要素じゃないかということで、初見の時に言葉で 言い表せなかったことの理由を少し見つけたような気がしました。 そして、今回かかったバイアスの状態で見ると、よけいにあの三人の行動に思う ところがあるよなぁ。思い入れたっぷりになってしまいました。 対する七海も初見でインパクト受けたダークな具合は2度目にだいぶ薄れたもの の、そこに至るまでのシーンをまた違う形で観る事が出来たし。 ううむ、やっぱり劇場で続けてもう一回観ておくべきだったな。 ーーーーーーーーーーーーー (2009/02/14追記) 今回は地上波放映での感想。 (2009/02/14 at フジテレビ) 「やっぱり、下ばっか向いてちゃ駄目だね。」 この台詞の後の銀の表情の移り変わりが好きだな。 初見の時はその後の「ワァー」のインパクトのほうが強かったけれど、自分のスキー レクチャーがここに繋がった瞬間とそこからの銀は愛おしいな。(変な意味ではなく。 (笑)) という感じで、今回は銀視点で割と観ていたように思う。 七海視点で観ていた時や全体を俯瞰して観ていた時とまた違うもののように楽しむ事が 出来ました。 で、またこういう部分が個人的には『Love Letter』と対になって考えてしまう部分でも あるのだよなぁ。 あの作品以降、雪降る中空を見上げる女の子のアップ観るだけで涙が出てくるようになっ てしまった身としては、あの作品を何度も違う視点違う妄想の中で観てきた身としては どうしても被せて観てしまう自分が居ます。 『Love Letter』を樹(男)視点で観たときには、「あ、これはもしかしたら、すべて 雪山で遭難して死に行く樹の、死の前の妄想に過ぎないんじゃないか。」みたいに考えた 事もあった。 さすがに今回はそこまで妄想はしていないが、それでも銀視点で観た銀色の世界は、 銀にとって凄く優しい世界で、それでも銀は何をしていいのかわからない。 それが、前述のひと言、今まで自分が居た世界で最初から目の前に転がっていたひと言 ですべてが進みだしていく。 そんな作品だと感じました。 こうやっていろいろな見方をさせてくれる…いや、したくなるこの作品は、これからも 何度もいろいろなものを見せてくれるのだろうなぁ。

『キングダム/見えざる敵』"The Kingdom"(2007)

(2008/11/17 at テレビ)   (2008/11/17記) 『キングダム/見えざる敵』を観ました。 珍しく最初から(笑) ほぼ予備知識なしで観たのだけれど、オープニングタイトルから思い切り 引き込まれました。 そして、これだけデリケートな題材をある意味古典的なバディプロットを 用いつつ、そこで終わるものではないものにちゃんと落としているあたり が、これだけの撮影協力を受けられた理由なのだろうなあ。 観るものを引き込ませ、ここに落とせるものに出会えるのはそうないこと。 見ないようにしている現実。 それを(別の理由ではあるものの)感じられる場所にいるときに観る=出会 えたことはとてもよかったと思う。 ただ、一方でそれは驕りなのだろうなあということは判っている。 …何か別の話に進んでいきそうなのでここらへんで止めておきますが、 良い作品でした。 で、終わって寝ようと思ったら、次の番組が"THE HOLIDAY"だと! 私を殺す気か。(笑) というわけで泣く泣くテレビを消しました。

『君さえいれば/金枝玉葉』"金枝玉葉"(1994)

(99/05/30記 at Niftyserve FMOVIE 2番会議室)  『君さえいれば/金枝玉葉』を観てきました。(99/05/29 at 飯田橋ギンレ イホール)  前々から、割と、良い評判を聞いていた上に、監督が『ラブソング』のピー ターチャン監督(どうやらアメリカ資本の最新作"The Love Letter"が公開さ れたらしい(?))と言うことで、心の転換点の表現のうまさをまた見せてく れるのではないかと期待して観に行きました。基本的な粗筋はまったく耳に入 れずに。 (以降、内容に触れます。)  しかし、この監督も、「少女漫画的要素」をうまく題材として消化する事が うまい人 ですね。(というほど本数は観ていないのですが。(^^;)  話の展開やエピソードは、本当に少女漫画的というかなんというか。そうい う所も非 常に好きなのですが。  今回のこの作品では、デパルマ的なキャラクタの写し方(洗面所で鏡を見て いるかのような、キャラクタとカメラの関係)で、主役3人の表情を捕らえつ づけて、「この人の感情はこう!」というのをはっきり見せ続けながら、感情 の転換点では、さらにカメラとキャラクタの距離を近づけ、細かい表情の震え や、涙の滴り方、果てには、キャラクタ達の吸う息、吐く息まで見せてくれる。  さらに、ポイントとなるエピソードへの伏線の張り方(蛍光ライトやエレベー タなんて、見事としか言いようがない!)などですっかり映画に飲まれた状態 で、 ダメ押しでユーロウのレッスンがあって、もうその時点で、次に何が来るか判っ ていたのですが、泣かされてしまいました。  そして、その調子で、『ボクらはいつも恋してる! 金枝玉葉2』へと望ん だのですが、こちらのほうは、さらに増えたキャラクタ達の多様さや、今まで のキャラクタ達の前作では見せなかった部分に戸惑ってしまい、やや、トーン が落ちてしまいました。 かなめ(CXE04355)

『金髪の草原』(1999)

(2000/10/03記 at @Nifty FMOVIE 2番会議室)  『金髪の草原』を観ました。(2000/10/02 at 銀座テアトルシネマ)  大島弓子の原作であるということ(一応、アニメーション版の『綿の国星』 を除けば、劇場にかかった作品はすべて観ている・・・と言っても、『四月 怪談』と『毎日が夏休み』だけであるが)も去る事ながら、今度のこの『金 髪の草原』は、脚本・監督が犬童一心監督である事。  そしてさらには、その監督が脚本を手がけた『大阪物語』の主人公でもあっ た池脇千鶴が本作品でも主人公であることが、この作品を観たかった一番の 理由でもありました。  この監督の作風に、大島弓子は絶対合うという妙な確信もあったし。 (以降内容に触れます。)  さて、その確信は大当たりだったような気がしました。 『四月怪談』がジュブナイルな映画としてまとめる事に成功し、『毎日が夏 休み』が普通の映画という域までテンションが落ちていたのに対して、この 『金髪の草原』は、まさにそのままの大島弓子の世界のように感じました。  前2作は、割と男の子が見る女の子的なものが強かったのに対し、この作 品はもっと嫌な所(というのは変だが)まできちんと描いている。  例えて言えば、それは親友である子の主人公に対するヤキモチの焼き方で あるとか、隣の家の女の子の存在そのもの、そして主人公である子の屈折の 仕方とか。  そして、そういった部分のいやらしさ、もしくは人間臭さが、同監督の前 作(とはいってももちろん脚本だけではあるが)である『大阪物語』でも出 ていた犬童一心監督らしさ、と言う形で、見事にでていたように思います。 kaname(CXE04355)