雑記帳


夢をかなえる希望の光

『空想科学読本』という本がある。結構人気があるらしく、続編が何冊か出ている。
読んだことのない人のためにどういう本かを説明すると、

アニメや特撮などで当たり前のように行われている
いろいろなことを実際に行ったらどうなるかを
検証している本
である。

例えばゴジラ。放射能を浴びて巨大化したと言うが、実際にやろうとしたらどうなるか?そして巨大化した後、どうなるか?ごく単純な数字を並べるだけで非常に面白い結果になる、ということをつらつら書いている本である。

さて、これらの中で「これはなんなんだ」的に書かれているのがレーザー兵器である。
巨大ロボットが出てくるアニメでは当たり前のように使われ、特撮・映画でもふんだんに使われているレーザー兵器。だいたいのイメージとしてはこんな感じか。

巨大ロボットが使う場合

目や胸などから太い光線が「みー」と言う音と共に発射される。光線はすぃーっと延びていき相手に命中。

戦闘機などが使う場合

たいてい機関銃・ミサイルの延長線上にある兵器で、残弾数を気にせずに撃てる以外の違いがない。

人が使う場合

これまた拳銃の延長線上にある武器。残弾数を気にせずに撃てるが、まれにバッテリーを気にするものもある。

そう、簡単に言えば

これまで使用していたミサイルなどと同じ性能を持つ兵器。
ただし、残弾数などを気にせずに使える。
という非常に悲しい兵器なのである。


この辺は当然筆者の厳しい追及をうけている。何しろレーザー兵器の一番の特徴はその速さなのだ。
レーザー兵器の速さは光の速さと同じである。光の速さは真空中で秒速30万キロ。大気中では若干落ちるがそれほど変わらない速度である。地球上で撃った場合、相手がよけるような余裕は当然ないのだ。だが実際には兵器でひょいひょいよけている(ただし主人公とボスのみ)。これはもう、狙いそのものがずれているからとしかいいようがないのだが、その様子はない。

結局、これらのレーザー兵器はどうやらレーザー兵器ではないのではないかという非常に曖昧な推測しかできていなかったのだが、最近事情が変わってきたのだ。

光の速さは真空中では秒速30万キロ。しかし、光の通る空間に何があるかで速度が変わる。大気中では若干遅くなるし、水中ではもっと遅くなる。ただし、その速度の違いはせいぜい光の屈折という現象で確認できる程度で通常は秒速30万キロで扱ってもそれほど影響はない。
しかし物によってはかなりの減速をする。最近発見された速度は我々の常識をはるかに越えた速度である。

その速度はなんと秒速17メートル
まだまだ速いよ、と思う方へ。

秒速17メートル=分速1060メートル=時速61.2キロ
である。そう、自動車で楽に追い越せる速さなのだ。

これだと今までのアニメや特撮で表現されたレーザー兵器がすべて実現可能になる。何しろ100メートル進むのに6秒近くかかるのだ。普通に歩いていてもよけることが出来る。

では、どのような物で空間を満たせばよいのか?特殊な物だと実現が難しくなるのだが、これがナトリウム蒸気である。ナトリウムならそこら中にあるから調達は難しくない。
問題はナトリウムをどうやって蒸気にするか、である。

百科事典で調べると、ナトリウムの沸点は約900度である(この際正確な数字はどうでもいい)。この程度の温度なら鉄を溶かす温度を作るよりも楽に出来る。めでたしめでたし、と思ってはいけない。

まず第一に、このナトリウム蒸気を相手のところまで充満させなければならないのだ。何らかの方法で自分のところからナトリウム蒸気を噴きだしても相手のところに届くまでに冷えてしまっては目的を達成できない。そのためには溶鉱炉の中か、噴火している真っ最中の火山の火口の中などで温度を保つか、とにかく大量に吹き出すか、しかない。
だが、熱対策が出来る巨大ロボットや戦闘機ならいざ知らず、生身の人間では命に関わる温度である。拳銃タイプでの実現はなかなか難しいと言わざるを得ない。

そしてもう一つの問題は、ナトリウム、と言う物質の性質だろう。ナトリウムはとにかく単体では非常に不安定な物質である。水の中に放り込むと水と反応し、その反応の熱で溶けてその勢いで空気とも反応する。百科事典によると「空気中で融点以上の温度になると炎を上げて燃え上がる」のだそうだ。
当然融点は沸点よりも低い。そう、ナトリウム蒸気を噴き出すと、とたんに燃え上がるのだ。これではレーザー兵器ではなく、火炎放射器である。待て、下手をすると爆発しそうだ。しかも自分の周りでだけ。

うーむ、意外といけそうに見えた秒速17メートルの光は思わぬところで崩れ去ってしまった。そもそもレーザー兵器がちゃんと表現されていればこんな事考えないんだけどね。

以上。



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